高卒やけくそドラフト

Last-modified: 2020-09-10 (木) 22:16:00

2011年に横浜ベイスターズ(当時)が行ったドラフトのこと。
「嫌がらせドラフト」とも。

概要

2012年から親会社がDeNAに交代することが既に決定しており、この年はTBSにとって最後のドラフトとなった。
ベイスターズは直近10年のうち半数以上最下位になるなど深刻な暗黒期・戦力不足を迎えており、即戦力選手中心の指名になると思われていた。
ところが首脳陣は本指名で高校生選手を8人も指名。即戦力社会人選手は松井飛雄馬ただ一人の指名と完全に育成前提のドラフトを敢行
しかも全員と契約した場合は支配下枠の70人がすべて埋まる*1ため「やけくそ」「嫌がらせ」などの非難が多く集まった。


指名選手一覧

現役選手の通算成績は2019年シーズン終了時点。名前・出身太字が高卒。

順位名前守備位置出身一軍出場備考
1北方悠誠*2投手唐津商高なし2014年限りで戦力外、その後ソフトバンクと育成契約も1年で戦力外
その後はBC群馬→四国IL愛媛→BC信濃→BC栃木→ドジャース傘下→BC栃木
2高城俊人捕手九州国際大付高317試合現役。2018年途中にオリックスへトレード、2019年オフに戦力外通告、出戻りでDeNA復帰。
3渡邊雄貴内野手関西高なし2016年限りで戦力外、引退
4桑原将志外野手*3福知山成美高596試合現役
5乙坂智外野手横浜高366試合現役
6佐村幹久*4投手浦添商高なし2014年に戦力外通告を受け阪神へ移籍、2016年に再度戦力外通告、引退
7松井飛雄馬*5内野手三菱重工広島92試合唯一の高卒以外(高卒社会人)、現役
8古村徹投手茅ヶ崎西浜高なし現役。2014年に一度戦力外を受け引退し2015年は打撃投手。2016年に独立リーグで現役復帰し、2019年出戻りでDeNA復帰。
9伊藤拓郎投手帝京高2試合2014年限りで戦力外
育成1冨田康祐投手四国リーグ/香川1試合2014年限りで戦力外、米独立リーグを経て香川に復帰し引退
育成2西森将司捕手四国リーグ/香川38試合2013年7月に支配下契約、2019年限りで戦力外、引退


実際の成績

結局この年のドラフトは投手陣こそ壊滅的*6だったが、野手陣は桑原将志が外野手転向後にブレイク、乙坂智と高城俊人も十分戦力と言える活躍をしており、再評価の進んだ現在では「言うほど嫌がらせではなかった」という見方が強い。
しかしその野手陣も大スターというレベルにまで達した選手はおらず、評価できるドラフトかと言えばそうでもないということで、結局は「過去と比べればマシだがどちらかというと外れ」というよくある無難な評価に落ち着いている。

現場の意図

2018年に現代ビジネス*7に掲載されたコラムで、当該ドラフトに関わっていた人物が匿名で証言している。
聞き手の村瀬秀信はベイスターズから公式の仕事を請け負った経験があるなど、球団・選手と深い関係を持っていることがわかる経歴から、信頼性の高い証言とされている。

村瀬秀信「TBS体制最後のドラフトで獲得した“即戦力ではない高校生”たち

「そういう話(引用者註:「高卒嫌がらせドラフト」説)は聞いたことありますけどね。そんなわけない。冗談じゃないですよ。あの年のドラフトのことはいまだにいろいろと言われますけど、スカウティングというのは長期的な視野に立ってやっていることです。高校生に偏った指名も、あの当時の確固たる考えに基づいて行ったものです」
あのドラフトに編成として関わった人物は語気を強めて反論した。

村瀬秀信「横浜ベイスターズを誰よりも愛し、そして去っていった男の告白

「ドラフトが終わった直後はああだこうだと言われるのが常ですけどね。スカウティングは5年、10年先を見据えてやっています。僕らは何にも気にしてませんよ。チームの編成というのは、親会社がTBSだろうがDeNAだろうが、球団がなくならない限り連綿と続いていくもの。意図的に貶めるような行為などするわけがない」

「あえて支配下選手ギリギリまで獲ったという指摘もね、バカげてますよ。まず、あの時代は負けが続いて即戦力の投手が必要だった。前年までのドラフトも投手の指名が多くなっていたので、野手が不足していてね。特に内野手は2軍のゲームもできないぐらいだったんだよ。この年は野手を獲る年なんです。ただ、野手なんて簡単にできないんだよ。年6~7人獲ってもレギュラー級になるのはその内の1人。さらに上位では即戦力ピッチャーが必要。地元選手も獲りたい……ということですよね」


類似例

2019年阪神ドラフト

前年とは真逆で指名した8人中5人が高校生、さらにその全員が甲子園経験者であったためネット上では「甲子園ドラフト」「熱闘甲子園ドラフト」「ミーハードラフト」「スカウトが甲子園から出てない」などと言われた。

順位名前守備位置出身
1西純矢投手創志学園高
2井上広大外野手履正社高
3及川雅貴投手横浜高
4遠藤成内野手東海大付属相模高
5藤田健斗捕手中京学院大中京高
6小川一平投手東海大九州キャンバス
育成1小野寺暖外野手大阪商業大
育成2奥山皓太外野手静岡大


関連項目


*1 ただしこの年は東日本大震災の影響でクライマックスシリーズがドラフト後に延期となり、CS終了後に下される第二次戦力外通告期間も連動して遅れている。そのため、実際にはドラフト後に第二次戦力外通告によって支配下枠に空きを作る形となった。
*2 藤岡貴裕(ロッテ→日本ハム→巨人)、松本竜也(巨人)の外れ外れ1位。
*3 プロ入り当初は内野手
*4 2014年より佐村・トラヴィス・幹久と登録名を変更
*5 登録名は飛雄馬
*6 ここまでのドラフトが投手偏重過ぎのせいで投手がキャパオーバー、二軍まで詰まっていたため他球団へ行ける可能性のある若手が整理されたというチーム編成の失策もある。高田GMが「ファームでの登板機会はドラフト上位の若手や1軍からの再調整組がどうしても優先される。これだけ多いと調子が良くても投げさせてもらえないという選手が出てくる。完全に編成の、ひいては俺の責任。申し訳ない事をしてしまった」「うちではチャンスがなかったが、彼らはまだ若い。外に出てチャンスを掴んでほしい」と語っていた
*7 講談社が運営するWebメディアサイトで、日刊ゲンダイとは別物でスタンスは週刊現代に近い。