高卒やけくそドラフト

Last-modified: 2021-09-09 (木) 22:37:12

2011年に横浜ベイスターズ(当時)が行ったドラフトのこと。
「高卒嫌がらせドラフト」とも呼ばれる。

概要

2012年から親会社がDeNAに交代することが既に決定していたこの年は、TBSにとって最後のドラフトとなった。
ベイスターズは直近10年のうち半数以上最下位になるなど深刻な暗黒期・戦力不足を迎えており、即戦力選手中心の指名になると思われていた。
ところが首脳陣は本指名で高校生選手を8人も指名。即戦力社会人選手は松井飛雄馬ただ一人の指名*1完全に育成前提のドラフトを敢行
しかも全員と契約した場合は支配下枠の70人がすべて埋まる*2ため「やけくそ」「嫌がらせ」などの非難が多く集まった。


指名選手一覧

現役選手の通算成績は2020年シーズン終了時点。名前・出身太字が高卒。

順位名前守備位置出身一軍出場備考
1北方悠誠*3投手唐津商高なし2014年に1度目の戦力外、その後ソフトバンクと育成契約も1年で再び戦力外に。
その後はBC群馬→四国IL愛媛→BC信濃→BC栃木→ドジャース傘下。2020年はコロナ禍でマイナーリーグが実施されなかったためドジャースに籍を置いたままBC栃木でプレー。
2高城俊人捕手九州国際大付高340試合現役。2018年途中にオリックスへトレード、2019年オフに戦力外通告、その後出戻りでDeNA復帰。
3渡邊雄貴内野手関西高なし2016年に戦力外通告を受け引退。
4桑原将志外野手*4福知山成美高630試合現役
5乙坂智外野手横浜高451試合現役
6佐村幹久*5投手浦添商高なし2014年に1度目の戦力外通告を受け阪神へ移籍、2016年に再度戦力外通告を受け引退。
7松井飛雄馬*6内野手三菱重工広島92試合唯一の高卒以外(高卒社会人)。2020年に戦力外通告を受け引退。
8古村徹投手茅ヶ崎西浜高なし2014年に1度目の戦力外通告を受け一旦引退し、2015年は打撃投手。2016年に独立リーグで現役復帰し、2019年出戻りでDeNA復帰。2020年に2度目の戦力外通告を受け引退。
9伊藤拓郎投手帝京高2試合2014年に戦力外通告を受ける。2020年現在は社会人野球・日本製鉄鹿島に所属。
育成1冨田康祐*7投手四国リーグ/香川1試合2013年7月に支配下契約を勝ち取るも、2014年に戦力外通告を受ける。その後は米独立リーグを経て香川に復帰し2016年に引退。
育成2西森将司捕手四国リーグ/香川38試合2013年7月に支配下契約を勝ち取るも、2019年に戦力外通告を受け引退。


実際の成績

結局この年のドラフトは投手陣こそ壊滅的*8だったが、野手陣は桑原将志が外野手転向後にブレイクし球団初のCSおよび19年ぶりの日本シリーズ進出に貢献、乙坂智と高城俊人も十分戦力と言える活躍をしており*9、再評価の進んだ現在では「言うほど嫌がらせではなかった」という見方が強い。
しかしその野手陣も大スターというレベルにまで達した選手はおらず、評価できるドラフトかと言えばそうでもないということで、結局は「過去と比べればマシだがどちらかというと外れ」というよくある無難な評価に落ち着いている。*10
なお、2020年オフに石川雄洋が戦力外となり梶谷隆幸がFA宣言による巨人移籍により退団したため、この時獲得した桑原・乙坂が横浜/DeNA在籍最古参野手となった。*11

現場の意図

2018年に現代ビジネス*12に掲載されたコラムで、当該ドラフトに関わっていた人物が匿名で証言している。
聞き手の村瀬秀信はベイスターズから公式の仕事を請け負った経験があるなど、球団・選手と深い関係を持っていることが窺える経歴から、信頼性の高い証言とされている。

村瀬秀信「TBS体制最後のドラフトで獲得した“即戦力ではない高校生”たち

「そういう話(引用者註:「高卒嫌がらせドラフト」説)は聞いたことありますけどね。そんなわけない。冗談じゃないですよ。あの年のドラフトのことはいまだにいろいろと言われますけど、スカウティングというのは長期的な視野に立ってやっていることです。高校生に偏った指名も、あの当時の確固たる考えに基づいて行ったものです」
あのドラフトに編成として関わった人物は語気を強めて反論した。

村瀬秀信「横浜ベイスターズを誰よりも愛し、そして去っていった男の告白

「ドラフトが終わった直後はああだこうだと言われるのが常ですけどね。スカウティングは5年、10年先を見据えてやっています。僕らは何にも気にしてませんよ。チームの編成というのは、親会社がTBSだろうがDeNAだろうが、球団がなくならない限り連綿と続いていくもの。意図的に貶めるような行為などするわけがない

「あえて支配下選手ギリギリまで獲ったという指摘もね、バカげてますよ。まず、あの時代は負けが続いて即戦力の投手が必要だった。前年までのドラフトも投手の指名が多くなっていたので、野手が不足していてね。特に内野手は2軍のゲームもできないぐらいだったんだよ。この年は野手を獲る年なんです。ただ、野手なんて簡単にできないんだよ。年6~7人獲ってもレギュラー級になるのはその内の1人。さらに上位では即戦力ピッチャーが必要。地元選手も獲りたい……ということですよね」


関連項目


*1 その松井も高卒3年目での指名なので、即戦力社会人というよりは素材型社会人である。
*2 ただしこの年は東日本大震災の影響でクライマックスシリーズがドラフト後に延期となり、CS終了後に下される第二次戦力外通告期間も連動して遅れている。そのため、実際にはドラフト後に第二次戦力外通告によって支配下枠に空きを作る形となった。
*3 藤岡貴裕(ロッテ→日本ハム→巨人)、松本竜也(巨人)の外れ外れ1位。
*4 プロ入り当初は内野手
*5 2014年より佐村・トラヴィス・幹久と登録名を変更
*6 現役時代の登録名は飛雄馬
*7 最終学歴は青山学院大学。この年指名された選手の内、唯一の大卒選手であった。
*8 ここまでのドラフトが投手偏重過ぎのせいで投手がキャパオーバー、二軍まで詰まっていたため他球団へ行ける可能性のある若手が整理されたというチーム編成の失策もある。高田繁GMが「ファームでの登板機会はドラフト上位の若手や1軍からの再調整組がどうしても優先される。これだけ多いと調子が良くても投げさせてもらえないという選手が出てくる。完全に編成の、ひいては俺の責任。申し訳ない事をしてしまった」「うちではチャンスがなかったが、彼らはまだ若い。外に出てチャンスを掴んでほしい」と語っていた
*9 特に高城は高卒1年目の7月から一軍でマスクを被っている。
*10 但し、ドラフト直後から同年のヤクルトドラフトよりはマシと見る向きが強く、ドラフト直後に嫌がらせ指名だと発狂していた横浜ファンにヤクルトファンがうちの指名した選手と全部交換してよと言ったところ、横浜ファンに断られたという話がある。
*11 投手は田中健二朗(2007年高卒1位)と国吉佑樹(2009年育成1位)がいたが、国吉は2021年シーズン途中でロッテにトレード移籍したため、現状田中がDeNAに在籍する最後のTBS戦士である。
*12 講談社が運営するWebメディアサイト。日刊ゲンダイとは別物でスタンスは週刊現代に近い。