魔改造

Last-modified: 2019-11-25 (月) 13:49:35

常人には思いつかないような、夢とロマンがある無茶苦茶な改造のこと。語源は漫画「プラモ狂四郎」とされている。
野球業界では「結果を残せていない選手が一か八かの改造をした結果、見違えるような進化を遂げること」を指す。


概要 Edit

フォーム改造や新球種取得など、殻を破れない選手が何らかの手段で覚醒を試みる手段は古くから行われている。特に野村克也のヤクルトスワローズ監督時代に代表される「野村再生工場」が有名。

ただ、「再生」の名前通りに「怪我の影響で以前のような球が投げられなくなってしまった投手」が多く、その方法は「サイドスロー転向」「スライダー・シュートなどコースの左右で揺さぶる投球術を覚える」「左投手がワンポイントとして対左打者に特化」など、地味だが相手に嫌がられる投球スタイルへと転向するものが大半であった。

 

しかし2010年頃からは阪神・久保康生、ソフトバンク・倉野信次のコーチ指導が注目されるようになる。急に化けた選手の多くが彼らの指導下にいたと推測され、しかも従来の「改造」とは異なり

  • 圧倒的な球速アップ(主に倉野コーチ)
  • 制球難の投手の長所を落とさずにコントロールを改善する
  • 故障持ちでない選手、若手投手も覚醒する
  • 外国人投手の覚醒(主に久保コーチ)

といった特徴が見られる。線の細い若手が豪速球をビシバシ投げ込むようになる、球質はいいがノーコンだった選手が球速を落とさずにストライクを取れるようになるなど、夢とロマンを持った言葉として「魔改造」が用いられるようになっていった。

2019年 Edit

久保コーチが阪神からソフトバンクに移り、二人の魔改造コーチがソフトバンクに揃うことになったが、そのせいか阪神投手は平均球速が下がりコントロールもさらに悪くなるという「逆魔改造」状態になっている。
また平均球速が上がり急にゴリラ集団になったDeNAの投手陣を作った存在として、二軍投手コーチの大家友和らの指導が注目されるようになっている。


改造の具体例 Edit

阪神 Edit

  • 能見篤史
    ルーキーイヤーの2005年序盤は活躍するが二段モーション矯正に失敗したことと精神的弱さから低迷。整理対象候補になりつつあった2009年後半にブレーク。MAX150㎞の速球とフォークや二段投法*1を駆使し2010年代前半のエースに君臨。長らく先発ローテーションで活躍したが、2018年から加齢やスタミナの問題で低迷。その後、中継ぎに転向して40歳を超えてもチームを支える。
  • ランディ・メッセンジャー
    1年目の2010年は最速157km/hのストレートを武器に中継ぎを務めていたが、荒れ球による炎上続きでいつしか「滅殲者」と呼ばれるようになる。しかし二軍で先発適性を見出され夏頃に先発転向すると、球速を抑え気味にして制球力と変化球が改善。さらにカーブも取得して調子の波も小さくなり、右のスターターとして阪神先発陣の屋台骨となる。その後も2014年に最多勝、2018年に実働年数8年を超えて国内FA権を取得するなど、2019年に引退するまで10年で98勝を挙げ、長きにわたり阪神を支え続けた。
  • ブレイン・ボイヤー
    2013年途中、中継ぎ補強のために獲得。当初は投げる度に手を舐める速球が売りの投手だったが、空振りを取れない・好不調の差が極端に激しいなどの理由で二軍落ち。その後は久保コーチとのフォーム改造で安定感が増し一軍でも好投するが、呉昇恒獲得による外国人枠の兼ね合いで同年オフに退団。メジャーに復帰し、2015年には68試合登板・防御率2.49の好成績を残した。
  • 高宮和也
    横浜では「水差し野郎」「荷物をまとめて横須賀に行け」、オリックスでは「油差し野郎」など散々な言われようだったが、阪神在籍時に突如覚醒し左の中継ぎとしてチームに貢献。2014年CS制覇の立役者になる。2017年、引退。
  • 桑原謙太朗
    元々威力ある直球と大きい曲がりのスライダーを武器にしており、横浜時代には阪神相手に初先発初完封を達成。しかし制球難がプロ入り後はさらに悪化、放出先のオリックスや阪神でも一軍で結果を残せない状態が続く。
    2016年は自身初となる一軍登板なしだったが、2017年に制球力が改善。球速も最速152km/hにアップ(しかも桑原は「ムービング・ファスト・ボール」と呼ばれる不規則に変化する速球使いであるため、この球速で球が動く。)し「和製リベラ*2」と呼ばれた。同年、最優秀中継ぎのタイトルを獲得。
  • 石崎剛
    桑原同様威力ある直球と曲がりの大きいスライダーを持つものの、反面アマ時代から制球難でも知られ2014年ドラフトでも地雷扱いされていた。プロ入り後もその制球難から一軍に定着出来ない日々が続く。
    しかしフォームを以前までのスリークォーターからサイドスローに変更した事で制球力が改善。さらにパワーアップした最速155kmの剛速球を主な武器に、2017年の後半戦以降リリーバーに定着。アジアプロ野球チャンピオンシップにも阪神から唯一選出され、2018年侍ジャパンにも選出された。しかしシーズン中は不振、さらに故障と手術で棒に振ってからは振るわず2019年7月、高野圭佑との交換でロッテにトレードされた。ちなみにその高野もまた石崎同様の魔改造を期待されている。
  • 福原忍安藤優也
    2000年代の右のエース格で先発ローテーションで活躍していたが加齢などから来るスタミナの問題で成績が低迷。しかし中継ぎ再転向*3すると、球速やキレが全盛期並に戻り選手寿命も伸びた。特に福原は2014,2015年と二年連続で最優秀中継ぎ投手に輝いている。2019年現在は福原が阪神一軍投手コーチ、安藤が阪神二軍投手コーチを務めている。

以上のように、久保は速球派右腕の魔改造に特に定評があった。2017年に制球難で不振に陥った藤浪晋太郎の改造を望まれていたが、2017年で退団し、翌年よりソフトバンク二軍コーチに就任している。
なお高宮・桑原は共に横浜→オリックス→阪神という経歴を辿っている。過去にも石毛博史・伊藤敦規・加藤康介など実績のある投手が阪神で戦力外から復活した事例がある。ちなみに伊藤と加藤*4はオリックス→横浜→阪神ルートを辿り戦力外から復活・覚醒したため高宮や桑原とセットで「横浜とオリックスを経由しないと覚醒できない」というネタが生まれている。


ソフトバンク Edit

  • 千賀滉大
    蒲郡高(愛知)入学後に投手転向、無名だったが野球用品店の店主がソフトバンク・小川一夫スカウトに推薦し育成枠で指名という異色の経歴を持つ。
    入団当初は最速で140キロ台半ばだったが、吉見一起(中日)との合同自主トレ中にアドバイスをもらい「お化けフォーク」が完成。一軍定着した2013年には最速で156km/hまで伸び、同年侍ジャパン入りを果たす。
    2019年開幕戦では161km/hをマークした。さらに同年9月6日対ロッテ戦にてノーヒットノーラン(育成枠出身の選手では初の快挙)を達成。
  • 川原弘之
    福岡大大濠高時代は最速140キロ台半ばだったが、魔改造を経て2012年7月28日の二軍中日戦では日本人左腕最速の158km/hをマーク。しかし制球力や変化球などが改善できず、肩や肘の手術を経て2016年より育成選手としてリハビリに励んでいた。
    2018年から二軍公式戦に復帰。左投手では珍しいスリークォーターに変更し地道に登板を重ねた結果3勝2敗5セーブ、防御率1.75の好成績を引っ提げ翌2019年に支配下登録復帰。
    開幕カードから最速152km/hを計測するなど速球が復活、制球も改善され2019年現在貴重な中継ぎ左腕の一角を担っている。
  • 石川柊太
    140キロ台後半のストレートとパワーカーブが武器だが、右肩の故障により育成入団。回復後は二軍戦で圧倒的な投球を見せつけ支配下契約を勝ち取る。ただし好不調の波が大きく先発と中継ぎの両方をこなす所謂便利屋ポジション。現在の最速は155km/h。2018年は千賀の一時離脱後にホークスの右のエース格を務め13勝を挙げた。

倉野コーチの魔改造は上記3人に代表されるように「豪腕投手」作りであることが多い一方で、新変化球や制球力の向上による魔改造は少ない。
現役時代は最速でも140キロ台中盤だった倉野コーチが速球派投手を次々一軍に送り出すことに違和感を覚えるファンも多いが、倉野コーチ曰く「工藤公康監督の現役時代のトレーニングを参考に体幹と下半身のトレーニングを奨励した結果、豪速球投手が次々誕生することになった」とのこと*5

DeNA Edit

  • 三嶋一輝
    当初は先発だったがルーキーイヤーの2013年以降は燻る。しかしロングリリーフ要員に転向し、2018年に中継ぎに専念してからは球速が最速156km/hにまで上がり、豪腕リリーフとして復活。
  • エドウィン・エスコバー
    2017年来日し日本ハムに入団、同シーズン途中にDeNAに移籍
    来日当初はストレートガイジ故にドスコバー扱いもされた*6が、中継ぎに配置転換されたことで本領発揮。2019年には左投手でMAX160㎞/hを記録し、またストレートと変化球でフォームが全く違うのに空振りが取れる「バレバレスライダー」も使いこなしている。
  • 平良拳太郎
    2016年シーズン後、山口俊の人的補償で巨人から移籍。
    コントロールは良いがサイドスローなこともあり球速もさほど速くなく引き出しも少なめでどちらかと言えば中継ぎ向きとして見る者も多かった。
    しかし2018年になって平均球速が約5km/h上がり最速147km/hを計測。また球の握りなどを調整し後半戦だけで5勝を達成。
    翌2019年は故障の影響もあり球速が若干落ちたがシンカーを高速化し、更に安定した成績を残している。
  • 国吉佑樹
    中畑清政権時代から素質を認められながらも致命的なまでのコントロールの悪さが祟り星達扱いされ、平田真吾らと共に「横須賀四天王」などと揶揄されていた。
    しかし2018年にカットボールを習得しプチ復活すると、翌2019年にはストレートの球速が最速161km/hにまで上昇。改良したカットボールと合わせて豪腕として復活した。
  • 武藤祐太
    2017年オフに中日を戦力外になった後DeNAに移籍すると、剛腕だらけの環境に触発され球速を150km/hまで上げる。更にフォークの質を上げたことで投球の幅が広がり、プルペンの戦力として計算されるまでになった。貴重なシュート使いでもある。

上記以外にも若手投手陣の多くが豪速球やカットボールを取得しており、一時期は最も遅いリリーフ投手の最速が149km/hなんてこともあった。
これはチーム内に決め球のない投手やコントロールの悪い投手が多く、真ん中に投げても抑えられるボールとして速球やカットボール等を覚えさせるケースが多いためである*7

関連項目 Edit



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*1 スリークォーターとサイドスローの使い分け。現在は使用していない。
*2 マリアノ・リベラ(元ニューヨーク・ヤンキース)と投球スタイルが似ていたため、当時の阪神監督金本知憲が命名。
*3 両者とも新人時代は中継ぎ抑えで活躍したが故障もあり先発転向していた。故にスタミナ問題は常に付きまとった。
*4 さらに言えばオリックスの前はロッテである。
*5 記事リンク
*6 ちなみに、入団当初はコントロールで勝負するタイプの選手だった模様。
*7 「ど真ん中の速球で抑える」というパターンは過去に在籍した長田秀一郎の投球術とも合致する他、現在の正捕手である伊藤光が「甘い球でも抑えられる」ことを投手に求めているという記事が存在している。