常人には思いつかないような、夢とロマンがある無茶苦茶な改造のこと。語源は漫画『プラモ狂四郎』とされている*1。
野球業界では「結果を残せていない選手(主に投手)が一か八かの改造をした結果、見違えるような進化を遂げること」を指す。
【目次】
概要
用語の成立
フォーム改造や新球種取得など、殻を破れない投手が何らかの手段で覚醒を試みる手段は古くから行われている。特に野村克也のヤクルトスワローズ監督時代に代表される「野村再生工場」が代表的。
ただ、「再生」の名前通りに「怪我の影響で以前のような球が投げられなくなってしまった投手」が多く、その方法は「サイドスロー転向」「スライダー・シュートなどコースの左右で揺さぶる投球術を覚える」「左投手がワンポイントとして対左打者に特化」など、地味だが相手に嫌がられる投球スタイルへと転向するものが大半であった。
しかし2010年頃からは阪神・久保康生、ソフトバンク・倉野信次のコーチ指導が注目されるようになる。急に化けた選手の多くが彼らの指導下にいたと推測され、しかも従来の「改造」とは異なり
- 圧倒的な球速アップ(主に倉野コーチ)
- 制球難の投手の長所を落とさずにコントロールを改善する
- 故障持ちでない選手、若手投手も覚醒する
- 速球との相性が良く空振りが取れる変化球の取得
- 外国人投手の覚醒(主に久保コーチ)
といった特徴が見られる。線の細い若手が豪速球をビシバシ投げ込むようになる、球質はいいがノーコンだった選手が球速を落とさずにストライクを取れるようになるなど、夢とロマンを持った言葉として「魔改造」が用いられるようになっていった。
2019年以降
久保コーチが阪神からソフトバンクに移り、2人の魔改造コーチがソフトバンクに揃うことになり、結果として2018年ドラフトで獲得した甲斐野央(現西武)や泉圭輔(現巨人)、2019年ドラフトで獲得した津森宥紀といった具合に1年目にして一軍で活躍するケースが複数出ており、その量産ぶりには筑後の畑から投手が生えてくると例えられることも。
久保コーチが阪神からソフトバンクに移った後も、阪神の投手陣には馬場皐輔、ロベルト・スアレス、小林慶祐、及川雅貴、小川一平など入団当初ポテンシャルを疑われた選手たちが一軍救援陣に入り込み戦力となっており金村曉(一軍投手コーチ)や高橋建(二軍投手コーチ)らの指導が注目されている。
さらに、平均球速が劇的に上昇し急にストレートゴリラ集団になったDeNAの投手陣を作った大家友和、2021年以降のヤクルトを支える救援陣を作り上げた尾花高夫*2、155km/h超の豪速球リリーバーを多数抱えるようになったオリックスコーチ陣等、各所で魔改造を施す指導者が現れており、この為近年は逆に中継ぎ陣の平均球速が低いチームが悪目立ちする傾向が目立つようになっている。
他には、トミー・ジョン手術を受けた投手が、術後に球速が上がって戻ってくるという事例が各所で報告されており、一部にはトミー・ジョン手術は改造手術であるという荒唐無稽な論*3を唱える者も現れている*4。
ちなみに2021年オフ、倉野はソフトバンクを退団しアメリカへピッチングコーチング留学(のちに2023年からTEXのマイナー投手育成コーチ、オフに再びソフトバンクへ復帰)、高橋は古巣である広島に移籍している。
また久保は2020年オフにソフトバンクを退団し社会人野球の大和高田クラブでアドバイザーを務めていたが、2023年より巨人一軍コーチに就任している。
改造の具体例
阪神タイガース
- 藤川球児
ドラフト1位で入団するも入団後数年はパッとしない成績が続いていたが、本人がストレートに強いこだわりを持つようになったことと、山口高志コーチ*5の「球児、右足ちゃうか?」という一言からのアドバイスでフォームを調整し2004年に覚醒。「火の玉ストレート」と形容される豪速球を武器に球界を代表するクローザーとなり、ジェフ・ウィリアムス、久保田智之とともにクローザートリオ「JFK」として一時代を築いた。
その後メジャー挑戦するもそちらではケガもあり結果が出ず、独立L高知を経て2016年に阪神復帰。最初は時の金本監督の意向による先発調整も行ったが、 4月18日には抑えを務めていたマテオやドリスが体調不良でベンチを外れたことで1点リードの9回に登板。2012年以来のセーブを挙げた。
2017年は下記桑原らに押されて敗戦処理だったが2018年からはセットアッパーや抑えを務め、「同一投手による通算150セーブ、150ホールド」というNPB史上初の記録を樹立するなど活躍し、2020年に引退した。
ネット民には「自分の後釜を自分で務めた男」などと評された。
- 能見篤史
ルーキーイヤーの2005年序盤は活躍するが、二段モーション矯正の失敗や精神的な弱さもあって低迷。整理対象候補になりつつあった2009年にブレークし後述の福原や安藤を押し退けエースに君臨。以降はMAX150㎞の速球とフォークや二段投法*6を駆使し長らく先発ローテーションで活躍した。2018年から加齢やスタミナの問題で低迷するも、その後は中継ぎあるいは便利屋として41歳の2020年までチームを支え続けた。
2021年からはオリックス投手兼投手コーチ。2022年に現役引退。
- ランディ・メッセンジャー
1年目の2010年は最速157km/hのストレートを武器に中継ぎを務めていたが、荒れ球による炎上続きでいつしか「滅殲者」と呼ばれるようになる。しかし二軍で先発適性を見出され夏頃に先発転向すると、球速を抑え気味にして制球力と変化球を改善。さらにカーブも取得して調子の波も小さくなり、右のスターターとして阪神先発陣の屋台骨となる。その後も2014年に最多勝、2018年に実働年数8年を超えて国内FA権を取得するなど、2019年に引退するまで10年で98勝を挙げ、長きにわたり阪神を支え続けた。
- ブレイン・ボイヤー
2013年途中、中継ぎ補強のために獲得。当初は投げる度に手を舐める速球が売りの投手だったが、空振りを取れない・好不調の差が極端に激しいなどの理由で二軍落ち。その後は久保コーチとのフォーム改造で安定感が増し一軍でも好投するが、呉昇恒獲得による外国人枠の兼ね合いで同年オフに退団。メジャーに復帰し、2015年には68試合登板・防御率2.49の好成績を残した。
- 高宮和也
横浜では「水差し野郎」「荷物をまとめて横須賀に行け」、オリックスでは「油差し野郎」など散々な言われようで、特に横浜時代はサイドスローにも挑戦するなど迷走気味だったが、阪神在籍時に突如覚醒し左の中継ぎとしてチームに貢献。2014年CS制覇の立役者になる。
2017年に引退。
- 桑原謙太朗
元々威力ある直球と大きい曲がりのスライダーを武器にしており、横浜時代には阪神相手に初先発初完封を達成。しかし制球難がプロ入り後はさらに悪化、放出先のオリックスや阪神でも一軍で結果を残せない状態が続く。
2016年は自身初となる一軍登板なしだったが、2017年に制球力が改善。球速も最速152km/hにアップ*7し「和製リベラ*8」と呼ばれた。同年、最優秀中継ぎのタイトルを獲得。
ただし2019年以降は登板過多による不調と故障もあり奮わず2021年で引退。
- 石崎剛
桑原同様威力ある直球と曲がりの大きいスライダーを持つものの、反面アマ時代から相次ぐ故障や制球難でも知られ2014年ドラフトでも地雷扱いされていた。プロ入り後も故障を重ねたり制球難から一軍に定着出来ない日々が続く。
しかしフォームを以前までのスリークォーターからサイドスローに変更した事で制球力が改善。さらにパワーアップした最速155kmの剛速球を主な武器に、2017年の後半戦以降リリーバーに定着。アジアプロ野球チャンピオンシップにも阪神から唯一選出され、2018年侍ジャパンにも選出された。しかしシーズン中は不振、さらに故障と手術で棒に振ってからは振るわず2019年7月、高野圭佑との交換でロッテにトレードされた。2020年から速球の威力も戻りだしロッテの一軍救援陣に食い込んでいたが2021年は登板なしに終わり戦力外に。
- 福原忍・安藤優也
福原は井川慶が去った後、安藤と共に阪神の右のエース格として活躍していた。しかし、故障が多く課題だったスタミナがさらに低下し成績も低迷した上に持ち前の球速も130㎞/h台まで低下し整理対象寸前になる。しかし山本昌のアドバイスを受け、さらに中継ぎ再転向*9すると球速やキレが全盛期並に戻り選手寿命も伸びた。37歳だった2014年にセ・リーグ最優秀中継ぎ投手となり翌年も受賞した。
安藤も後年はスタミナの問題で成績が低迷したが、その後は福原同様中継ぎに再転向し、もともとの持ち味であるコントロールは健在で、7回の男として活躍した。
安藤は2013年から3年連続50試合登板、福原は2011年から5年連続50試合登板を達成し、2014年~2015年は「7回 安藤、8回 福原、9回 呉昇桓」のリレーを確立した。
- ロベルト・スアレス
ソフトバンク時代はデニス・サファテやリバン・モイネロらの存在に加えてトミー・ジョン手術を行ったこともあり2016年を除き出番は少なく2019年オフにリリースされた。しかし阪神入団後は球速が戻った剛速球とスプリットを武器に、大不振に陥った藤川に代わってクローザーを務める。はじめは劇場型守護神の香りが漂っていたものの、金本時代のマルコス・マテオやラファエル・ドリスより安定した守護神ぶりを見せ、移籍初年度から2年連続でセーブ王を獲得した。2022年からはMLBサンディエゴ・パドレスでプレー。
- 馬場皐輔
入団以来ずっと燻っており阪神ファンからは早くから打者転向を望まれる*10ほどだったが、2020年に140km/h台のスプリットとスライダーをマスターした上に直球のスピードも増したことで開眼。開幕後いきなり故障者と不振者だらけになり救援陣が壊滅したことから活躍の場を得た。2023年の第2回現役ドラフトにより巨人に移籍することになり、退団。
- 小林慶祐
オリックス時代初期こそ中継ぎとして働いた小林だったが、のちに故障や頭への打球直撃などでパフォーマンスが低下し2020年途中に阪神へ放出。しかし、2021年になると力強い速球と鋭く落ちるフォークを武器に一軍中継ぎ陣へ食い込みビハインド要員や火消し屋として活躍を見せ、2023年にはウエスタン・リーグで最多セーブを挙げた。しかしそのオフに戦力外通告を受け退団。
- 藤浪晋太郎
2016年から不振に喘ぎ、2020年も先発で結果が出なかった*11。しかし9月下旬、新型コロナウイルスにより馬場らが離脱したため急遽中継ぎ転向。以降、息をするように160km/h前後の球速を記録している。そして10月19日のヤクルト戦では自己最速かつ球団新記録となる162km/hを記録しつつ、その2球後に149km/hのフォークを投げ、三者連続三振を奪うという離れ技を達成するなど、復活を見せた。
岩崎やスアレスと共に形成した継投リレーは「暴力リレー」「超剛腕リレー」「暴力的勝利の方程式」などと呼ばれたりすることもあった。
登場曲も相まって登板するだけでも雰囲気が変わるため投げる回は固定されず、首脳陣は試合の流れを変えたい時に藤浪を優先して登板させていた。
その後10月28日にオープナーとして久しぶりの先発登板。4回2安打1失点と好投し、以降は再び先発で起用されるようになった。
オフにはフジテレビ系列『S-PARK』の名物コーナーである、現役選手が選ぶ「100人分の1位」の「スピードボール部門」では5年ぶり*12にランクインし2位に選出された(前述のスアレスは4位)。
先発復帰となった2021年はオープン戦で結果を残し、開幕投手を務めた。しかし基本荒れ気味で四球が多く不安定と内容が悪く4月下旬に二軍落ちした。その後、6月からは救援で起用されたが前年と違い打ち込まれ二軍暮らしが長引いて前年の復活がリセットされてしまった。これについてはお股ニキの悪影響を指摘する向きもある。
2022年オフにMLB挑戦を表明し、翌年オークランド・アスレチックスへ入団。渡米後も制球難は相変わらずで一時は防御率が14.40になるなど低迷。アスレチックスの投手陣がクソすぎたせいか、なんとかDFAは回避するも先発から中継ぎに配置転換される。すると徐々に投球内容及び成績が良化し、7月にプレーオフ争い真っ只中のボルチモア・オリオールズへトレードされる。8月6日(現地時間)のニューヨーク・メッツ戦では日本人投手歴代最速記録となる165.1km/hを投じた。
なお高宮・桑原は横浜→オリックス→阪神という経歴を辿っている。過去にも石毛博史・伊藤敦規・加藤康介など実績のある投手が阪神で戦力外から復活した事例がある。ちなみに伊藤と加藤*13はオリックス→横浜→阪神ルートを辿り戦力外から復活・覚醒したため高宮や桑原とセットで「横浜とオリックスを経由しないと覚醒できない*14」というネタが生まれている。ちなみに加藤・高宮・桑原・小林がオリックス経由だったこともあり「信頼のオリックスブランド」と言われることも*15。
福岡ソフトバンクホークス
- 千賀滉大
「魔改造」の代名詞的選手の1人。蒲郡高(愛知)入学後に投手転向、蒲郡高自体が野球が強いわけでもない県立高で卒業時点でも全くの無名選手だったが、千賀本人とすら面識のない野球用品店の店主*16がソフトバンク・小川一夫スカウトに推薦し育成枠で指名されたという異色の経歴を持つ。
入団当初は最速で140km/h台半ばのストレートにほとんど落ちないスプリットが持ち球の投手だったが、吉見一起(元中日)との合同自主トレ中にアドバイスをもらい「お化けフォーク」が完成。一軍定着した2013年には最速で155km/hまで伸び、同年侍ジャパン入りを果たす。
2019年には平均球速で153km/h、当時の日本人2位タイとなる最速161km/hを記録し、シーズン奪三振率でNPB記録となる11.33を記録。
2020年にはパ・リーグでは斉藤和巳以来14年ぶりとなる投手三冠を達成している*17。
2022年オフにはニューヨーク・メッツと5年102億7500万円*18で契約し、育成出身初のメジャーリーガーとなった。渡米後も豪速球と「お化けフォーク」を武器に1年目から先発ローテに定着、1年目からいきなり200奪三振を奪い、リーグ2位の防御率を記録するなど活躍した。
また山口鉄也(元巨人)の持っていた育成ドラフト出身投手最多勝記録(52勝)を抜き、2024年には日米通算100勝を達成した。
- 川原弘之
福岡大大濠高時代*19は最速140km/h台半ばだったが、魔改造を経て2012年7月28日の二軍中日戦では日本人左腕最速の158km/hをマーク。しかし制球力や変化球などが改善できず、肩や肘の手術を経て2016年より育成選手としてリハビリに励んでいた。
2018年から二軍公式戦に復帰。左投手では珍しいスリークォーターに変更し地道に登板を重ねた結果3勝2敗5セーブ、防御率1.75の好成績を引っ提げ翌2019年に支配下登録復帰。
開幕カードから最速152km/hを計測するなど速球が復活、制球も改善され2019年以降は貴重な中継ぎ左腕の一角を担っていた。しかし2021年に戦力外通告を受け、のち引退した。
- 石川柊太
小川泰弘(ヤクルト)の創価大時代の後輩。140km/h台後半のストレートとパワーカーブが武器で小川並みに注目されるが右肩の故障により育成入団。回復後は二軍戦で圧倒的な投球を見せつけ支配下契約を勝ち取る。好不調の波が大きいため先発と中継ぎの両方をこなす所謂“便利屋ポジション”に収まっているが、一軍の戦力として一定の成績を挙げている。現在の最速は156km/h。
2018年は千賀の一時離脱後にホークスの右のエース格を務め13勝を挙げた。2019年は怪我で離脱も、2020年に復帰し最多勝と最高勝率の二冠を記録。2021年は育成出身投手として初の開幕勝利投手となった*20。
- ニック・マルティネス
2021年に日本ハムから移籍。日本ハム時代は打たせて取るタイプだったのが、150km/hのストレート・ツーシームの速球や、従来よりも磨かれたチェンジアップで奪三振を奪いに来るスタイルに変貌。東京五輪でもアメリカ代表として、決勝で日本代表相手に6回1失点7奪三振と好投。(ムエンゴに苦しめられるも)11試合先発ですべて3失点以下、QS率も約91%とその尋常ではない変貌ぶりに、ソフトバンク移籍による魔改造説が取りざたされた。
2022年からはロベルト・スアレス(ソフトバンク*21→阪神)共々パドレスに移籍してMLB復帰を果たし、先発や第二先発・中継ぎで活躍し「10先発・4ホールド・8セーブ超え」と言う史上初の珍記録を立て、2022年のナ・リーグチャンピオンシップシリーズ進出に貢献した。
2024年からシンシナティ・レッズ所属。
- スコット・カーター・スチュワート・ジュニア
2018年MLBドラフト会議でアトランタ・ブレーブスから1巡目(全体8位)で指名された程の有望株だったが、指名後の身体検査で右手首の異常が見つかった事もあって契約提示額が低かったことにより紆余曲折あってソフトバンクへ入団した経歴を持つ。
2021年に1軍初登板となるも、平均150km/hのストレートを武器としながら制球力・走者を置いた場面での投球に大きな課題を抱え、四死球で自滅するスタイルが確立。5回まで100球3失点と言うスタイルが常態化するなど不安定な成績を残し、2022年に至っては1軍登板0を記録していた。
しかし、倉野復帰後の2024年シーズンになると序盤は躓くも、夏前に和田毅や東浜巨らの不調による2軍落ちにより先発ローテーションに入ると突如覚醒。球速を活かした制球力の高いストレートに加えてキレを増したカーブ、そしてこの前年に習得したとされるスプリットは制球力と制圧力を増して決め球と化し、6月28日から6連勝(HQS4試合・QS1試合)とキャリアハイを記録するなど圧倒的なパフォーマンスを叩き出すまでに変貌した。
倉野による魔改造は、千賀らに代表されるように「豪腕投手」作りであることが多い一方で、新変化球や制球力の向上による魔改造は少ない。現役時代は最速でも140km/h台中盤だった倉野が速球派投手を次々一軍に送り出していたことに違和感を覚えるファンも多いが、倉野曰く「工藤公康監督(当時)の現役時代のトレーニングを参考に体幹と下半身のトレーニングを奨励した結果、豪速球投手が次々誕生することになった」とのこと*22*23。
その実績のせいか、三軍投手コーチ→二軍投手コーチ→投手総合コーチと栄転しては魔改造投手を作り出していた。ちなみに本人は魔改造呼ばわりに関して公認済みの模様。また、2023年オフにソフトバンクに投手コーチとして3年ぶりに復帰した際の就任会見では、自ら「2年間、自分自身を"魔改造"して帰ってきました」と語っている。
横浜DeNAベイスターズ
- 三嶋一輝
プロ入り当初は先発要員だったが飛翔癖とスタミナの不安から2年目の2014年以降は燻り続ける。しかしラミレス時代にロングリリーフ要員へ転向し、2018年に中継ぎに専念してからは球速が最速156km/hにまで上がり、豪腕リリーフとして復活。2020年は山﨑康晃の不振もありクローザーとして申し分ない働きを見せた。
- エドウィン・エスコバー
2017年来日し日本ハムに入団。同シーズン途中、DeNAに移籍。
日本ハム時代はストガイすぎた*24ことや先発適性のなさから活躍出来ず専らビハインド要員だった。DeNA移籍後は中継ぎに配置転換されたことで本領を発揮し勝ちパ入りを果たす。2019年には左投手でNPB最速となるMAX160km/hをマーク*25。
また直球と全くフォームが違うにも関わらず速度差の暴力で強引に空振りを取る「バレバレスライダー」を習得し、以前は直球一辺倒だった投球パターンにも変化が見られている。
- 平良拳太郎
2016年シーズン後、山口俊の人的補償で巨人から移籍。元々コントロールは良いがサイドスローなこともあり球速もさほど速くなく引き出しも少なめでどちらかと言えば中継ぎ向きとして見る者も多かった。
しかし2018年になって平均球速が約5km/h上がり最速147km/hを計測。また球の握りなどを調整し後半戦だけで5勝を達成。
2019年前半に故障した影響もあり球速が若干落ちたが、逆にシンカーを高速化し更に安定度が増した。2020年も後半に故障離脱したがそれまでは巨人での大先輩だった菅野智之と防御率1位を争った。
2021年はシーズン途中にトミー・ジョン手術を受け、育成契約で長期離脱。
2022年の7月終盤に支配下復帰し、2023年4月に888日ぶりに勝利投手になる。
- 国吉佑樹
中畑清政権時代から素質を認められながらも致命的なまでのコントロールの悪さが祟り、無事ストガイの仲間入りを果たし星達扱いされ、平田真吾らと共に「横須賀四天王」などと揶揄されていた。
しかし2018年にカットボールを習得しプチ復活すると、翌2019年にはストレートの球速が最速161km/hにまで上昇。改良したカットボールと合わせてロングリリーフや便利屋を中心に活躍。
2021年シーズン途中にロッテへ移籍。
- 京山将弥
高校時代は最速147km程度だった球速が入団後毎年のように上昇し続け、2021年には最速155km/hを記録。平均球速に至っては15km/hも向上した。
入団当初から大幅なスペックアップを果たした2021年頃には、まだまだ荒削りな部分はあるとはいえ若手投手陣の最右翼として期待されていた。しかし、それ以降パッとした成績は残せていない。
- 武藤祐太
2017年オフに中日を戦力外になった後DeNAに移籍すると、剛腕だらけの環境に触発され球速を150km/hまで上げる。更にフォークの質を上げたことで投球の幅が広がり、プルペンの戦力として計算されるまでになった。
DeNAには貴重な、シュートを投げられる投手でもあったが2021年、再度戦力外になり引退した。
- 宮城滝太
2018年に育成ドラフト1位として入団。
入団時の球速は最速142km/h程度だったが、入団後育成選手としての3年間を経て2022年に支配下登録、翌2023年のプロ初登板時にいきなり152km/hを記録。その後の試合では最速154km/hを記録した。
大家友和コーチが2023年シーズンをもって退団することとなったため、実質的に最後に一軍に送り出した改造選手ということになる。
上記以外にも若手投手陣の多くが豪速球やカットボールを取得しており、一時期1軍登録されていたリリーフ陣で最も遅いリリーフ投手の最速が149km/hという事態になったこともある。
これはチーム内に決め球のない投手やコントロールの悪い投手が多く、真ん中に投げても抑えられるボールとして速球やカットボール等を覚えさせるケースが多いためである*26。
大家が2018年に2軍投手コーチに就任して以降、若手投手のみならず再起を図る中堅や新外国人までもがカットボールを習得したという記事が毎年のように上がるためファンからは定期イベントと称されている。
しかし上記の京山や阪口皓亮(現ヤクルト)など伸び悩んでいる投手も散見されている。
オリックス・バファローズ
- 山﨑颯一郎
オリックスにドラフト6位で入団した当初の球速は140km前半程度であったが、トミー・ジョン手術を経て1軍デビューした2021年に最速155km/hの先発投手として期待される。
翌年リリーフに転向すると球団史上最速となる160km/hを記録。8回から9回を任せられる勝ちパターンの一角として活躍している。
- 山下舜平大
2020年ドラフト1位。持ち球がストレートとカーブのみという改造前提としか思えない程の素材型投手として話題になった。
プロ入り後は2年間公式戦登板はなかったが、カーブに次ぐ変化球としてフォークを獲得。しかしそれ以外の変化球は取得せず球速や持ち球の質を上げるという形が取られた。
そして2023年、開幕投手として1軍デビュー。デビュー戦から最速157km/hを記録し、更にシーズン終盤には球団史上最速タイの160km/hをも記録。同シーズンは僅か3球種ながら防御率1.61、9勝(3敗)、101奪三振、奪三振率は9.57という衝撃的な成績を残し新人王を獲得した。
余談
近年はコルビー・ルイス(OAK→広島→TEX)やライアン・ボーグルソン(PIT→阪神→オリックス→SF*27)、マイルズ・マイコラス(TEX→巨人→STL)、ピアース・ジョンソン(SF→阪神→SD)、ライアン・ブレイシア(LAA→広島→BOS)らMLBでは箸にも棒にも掛からなかった、または片鱗はあっても影の薄かったパワーピッチャーが日本で投球術を学び、制球を磨くことで実力を向上させた後、MLBに復帰し活躍するいわゆる「逆輸入投手」が急増*28。
この事から日本で高成績を残した外国人投手に対してメジャー球団が好条件のオファーを出すケースもちらほら出ている。実際、ダイヤモンドバックス傘下からヤクルトを経て逆輸入でレンジャーズ入りしたトニー・バーネットが活躍したり、2019年には前年のドラフトでブレーブスから1巡目(全体8位)指名されたカーター・スチュワート・ジュニアが育成前提の6年契約でソフトバンクに入団した*29ということもあり、米球界からは日本球界そのものが投手の再生工場ないしは魔改造工場と見られているフシがある*30。