西口文也(元西武、現埼玉西武ライオンズ監督)が現役時代に経験した、3回にわたるノーヒットノーラン/完全試合未遂の総称。本項ではその後の指導者時代も含めて何かにつけて「ノーノー未遂」に縁がある西口の関与した他の例についても説明する。
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概要
西口は1994年のドラフト会議で3位指名を受け西武に入団。以降2015年の引退まで西武一筋21年、沢村賞を始め様々なタイトル・表彰に輝いた実績を持つ一流の投手である彼だが、実はノーヒットノーランないし完全試合目前まで3度もこぎつけながら悉く達成阻止された過去がある*1。そしてこれらの試合全てで28人目のバッターに記録を阻止されたため、これら3つの試合を纏めて「28人目の悲劇」と呼ばれる。
その1:2002年8月26日 対千葉ロッテマリーンズ(西武ドーム)
この日の西口はロッテ打線を福浦和也の四球1つのみに抑え9回2アウトまで到達、打席には1番・小坂誠。ここまで小坂は対西口通算打率が.000であり西口が完全有利だった為、西口のノーヒットノーラン達成はほぼ確定と見られていた。
だが、小坂が打ち上げた打球はセカンドの頭上を越え、捕球に駆けつけたセンターとライトの手前に落ち、まさかのポテンヒット。これには西口もマウンドで苦笑。その後何とか後続は断ったものの、ただの完封勝利に終わったのだった。
その2:2005年5月13日 対読売ジャイアンツ(インボイスSEIBUドーム)
この年始まった交流戦での一幕。この試合で西口はタフィ・ローズや清原和博を擁する最強巨人打線と対決。流石の西口でも苦戦必至とみられていたが、何と西口は清原に死球をぶつけた以外はパーフェクトピッチングのまま9回2アウトまで到達。ここで打席には清水隆行*2。西口は渾身のスライダーで清水を打ち取りにかかる。
だが、清水のスイングは西口のスライダーを完璧に捉え、打球はそのまま右翼席に飛び込むホームランに。西口2回目のノーヒットノーラン失敗とともに完封すら消えるという悔しい試合となったのだった。
その3:2005年8月27日 対東北楽天ゴールデンイーグルス(インボイスSEIBUドーム)
同年創設された楽天との試合。ここまで断然最下位の楽天打線は沢村賞投手を打ち崩せず9回までノーヒットの惨状。しかもこの試合で、楽天は四死球や失策によるランナーすら出せず、西口3度目の正直にしてついに完全試合に手が届きかけていた。そして9回、ここまで打たれていた「2アウトの壁」も乗り越え見事三者凡退、完全試合の条件である「9イニングノーヒット、無四死球、無失策、無走者」を達成した。
……が、よりにもよって楽天の先発・一場靖弘*3も快投を披露*4。こんな日に限って西武打線を散発4安打で零封するという予想外の事態が併発してしまう。
結局9回では決着がつかず、かと言って降板する訳にもいかない延長10回表、続投した西口は先頭の沖原佳典にあっさり安打を許してしまう*5。さらに2アウトになってから山﨑武司に対しても四球を与えてしまう。完全試合はおろかノーヒットノーランも消滅した西口は、その裏石井義人が決めたサヨナラツーベースに対しても苦笑いを浮かべるほかなかった。
完全試合達成者は16人いるが、9回終了時点で完全試合の資格を有しながら延長で逃したのは長いNPBの歴史の中でも西口が初めてであった。その後、2022年に大野雄大が9回まで完全投球を披露しながらも延長で安打を許し、西口の再来となっている(後述)。*6
西口本人が関与した類例
1996年9月23日 対近鉄バファローズ(西武球場)
この試合で西口は初回に先頭の水口栄二にヒットを許すも後続を抑えて無失点。2回以降も三者凡退を繰り返し、終わってみればまさかの27人連続凡退で「逆28人目の悲劇」となった。
2020年9月8日 対オリックス・バファローズ(メットライフドーム)
西口の引退後、背番号13番は2019年から髙橋光成が継承。そしてこの日は髙橋が先発しオリックス打線を吉田正尚への四球一つに抑える快投を見せ、8回終了時点でノーヒットノーランを継続。誰もが西武の背番号13によるノーヒットノーランを期待していた。
ところが9回表、先頭打者の代打・西野真弘にセンター前ヒットを打たれ、ノーヒットノーランならず。西口の状況とは違い9回ノーアウトからのノーノー失敗(25人目の打者)となったが、その直後にマウンドに駆けつけたのは引退後一軍投手コーチになっていた西口本人だったため当時を思い出したファンが続出した。
ちなみに試合後お立ち台に上がった髙橋曰く、西口からは「2アウトまではいけよ」と言われたとのこと。また辻発彦監督は「背番号13が駄目なんだよ」と冗談混じりに語った模様。
2025年3月11日 オープン戦 対阪神タイガース(ベルーナドーム)
この年から西口が西武ライオンズの監督に就任。オープン戦でのベルーナドーム初陣となったこの試合では、先発の菅井信也が5回ノーヒットの好投を見せ、リリーフ陣*7もヒットを許さないまま8回を終える。7回に長谷川信哉が先制打となるタイムリーを放ち、このまま継投ノーヒットノーランの達成なるかとも思われたが、9回に登板したトレイ・ウィンゲンターが2アウトからこの日28番目の打者である1番・前川右京*8にショートへの内野安打を許し、リクエストも判定覆らずノーヒットノーラン達成を逃してしまった。なお西口は試合後「打たれるならツーアウトからだと思ってました」ともはや慣れたようなコメントを残した。
2025年4月18日 対福岡ソフトバンクホークス(ベルーナドーム)
この試合も西口監督による采配。西武先発今井達也は6回までノーヒットノーラン継続も、7回先頭打者の佐藤直樹に四球を与え盗塁されノーアウト2塁になる。続く栗原陵矢に進塁打を打たれワンアウト3塁、そこから山川穂高のサードゴロの間に1失点を許した。試合は9回・平良海馬への継投になり、平良は三者凡退に抑えて2対1で西武が勝利。
結局ソフトバンク打線を継投でノーヒットに抑えたものの「ワンラン」で未遂。ノーヒットワンラン=無安打有失点試合は1964年5月13日の近鉄vs南海以来61年ぶりとなった。
なお、その後今井はメジャーリーグに挑戦し、アストロズに入団。2026年5月26日のレンジャース戦で6回まで球数97球と苦しみながら無安打に抑え、その後救援陣もノーヒットに抑えたことで継投ノーヒットノーランに貢献した。
別選手の類例
2022年5月6日 中日ドラゴンズ対阪神タイガース(バンテリンドームナゴヤ)
「30人目の悲劇」とも。
この日の中日の先発・大野雄大は打たせて取るピッチングが冴え、9回までランナーを1人も許さない完全投球を披露。しかし阪神の先発・青柳晃洋もまた会心の投球で9回2安打1四球で抑えてしまい*9、0-0のまま延長に突入してしまう。
大野は10回も続投するも、30人目の打者・佐藤輝明にツーベースヒットを打たれてしまい、17年振りに延長で完全試合を逃してしまった。奇しくも完全試合を逃したイニングの裏の攻撃でサヨナラ勝ちを決めた(1死満塁から石川昂弥がサヨナラヒット)という展開も一致していた。
但し、大野は2019年9月14日の阪神戦において、ノーヒットノーランを実際に達成している。
2023年8月13日 中日ドラゴンズ対広島東洋カープ(バンテリンドームナゴヤ)
中日の先発・柳裕也は9回まで3四死球を含む4人のランナーを出すも、広島打線に安打を許さずノーノーの条件を満たした。しかし今回も中日打線はピッチャーの好投を援護できず、広島の遠藤-栗林-島内の3人リレーに対し4安打無得点と抑え込まれており、試合は延長戦に突入した。
結局柳は9回終了時点で降板し、この時点で公式記録としてのノーヒットノーラン達成の可能性は消えた。代わって10回表にはこれまで防御率0.00を維持していた守護神のライデル・マルティネスが登板したが、2死から広島・堂林にソロホームランを被弾してしまう。
あわや先発がノーノー相当の投球をしながらチームは敗戦という珍事態発生かという事態に陥ったが、その裏先頭の石川昂弥と宇佐見真吾が広島・矢崎拓也から二者連続ソロホームランを放ち、中日が逆転サヨナラ勝ち。9回までとは一転した空中戦で決着がつくという劇的な幕引きとなった。
2025年9月7日 オリオールズ対ドジャース(オリオール・パーク・アット・カムデン・ヤーズ)
ドジャース先発の山本由伸*10が2つの四球を出すも、9回2死まで無安打投球を披露。しかし28番目の打者である1番ジャクソン・ホリデーにソロを被弾し山本は降板。
その後は継投に入るも、リリーフのブレーク・トライネン*11、タナー・スコットが大乱調で二人がかりでも最後の1アウトを取れずそのままサヨナラ負け*12。チームも5連敗となった*13。
なおMLBの2025年シーズンは継投も含めてノーノー達成者が出なかった*14ため、特に唯一9回2死までこぎつけた山本が快挙を逃したという結果は(試合の顛末も含めて)最悪の形で受け止められることになってしまった。
余談
- 西口は引退会見で「心に残っている試合は?」との記者の問いに上記その②の巨人戦を挙げた。
- これらの3つの悲劇は2012年5月16日OA『マツコ&有吉の怒り新党』内で「新・三大 西武西口投手の哀しい勝利」として取り上げられた。
- 2022年12月25日OA『球辞苑』「完全試合」では、当時西武二軍監督となっていた西口本人がメインゲストとしてスタジオ出演し、自身の未遂記録を振り返った。番組の最後に「完全試合について」締めの言葉を求められた西口は「いや......達成してないんでね。」と哀愁漂う呟きを残し笑いを誘った。
- 大野が完全試合を逃した直後に、西武球団は当の西口(当時二軍監督)にマスコミ各社向けのコメントを出させた。西口曰く、「無失点に抑えるべく打たれた後のほうがギアが入っていた」とのこと。
- ちなみに試合とは無関係だが、西口と大野は誕生日(9月26日)も一致している*15。
- ちなみに試合とは無関係だが、西口と大野は誕生日(9月26日)も一致している*15。
関連項目
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