ダイオプテーズ

Last-modified: 2020-09-03 (木) 23:57:32


23.ダイオプテーズ
宝石言葉:再会

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あらすじ ※ネタバレ注意※

ショートカット
アバンタイトル
魔法戦士の家の前
記念式典会場

 

アバンタイトル

自室で物思いにふけるアザリー。
ディカルアとの決戦から一年が経過していた。
(ディカルアと“彼”が行方不明になってから、世界の狭間は消滅した)
世界の狭間の消滅により、
勇者と大魔王による感情循環システムは無くなった。
これに伴い、小さな勇者と魔王の役目も終了し、
彼らはもとの世界へと帰還する。

場所変わって、イカルガの避難所。
ワタルの祖父が家族に迎え入れられていた。
タクヤ兄妹の姿も見える。
「魔王となった時、ワタルの声が聞こえたんだ。
魔王となってもなお、呼びかける声が。
子どもを縛り付けるのはいつだって大人だった。
自分も例外ではなかったと思い知った」
自責の念を匂わせる祖父を、ケイスケが労る。
「……でもさ、縛り付けるだけじゃない、
皆が大好きだって気持ちを教えてくれたのもこの繋がりだよ。
ワタルも言ってただろ?」
その気持ちを嘘にしなくていい世界になった。
だから祖父は帰ってくることができたのだと。
その様子を見守っていたタクヤ兄妹が頭を下げる。
ワタルを魔法戦士の儀式に巻き込んでしまったのは自分達だと。
そんな二人に、シマカは微笑む。
「大丈夫だよ。間違ってないんだよ、その気持ち」
大切な人と一緒にいたいという気持ちを、兄は護りたかったのだ。
だからシマカは信じている。
兄に会いたいという気持ちも、きっと護ってくれるはずだと。
「この気持ちで、ワタルお兄ちゃんと繋がっているって」

再び場所が変わる。どこかの通りを、男の子と女の子が走っている。
両親にプレゼントの花を買ったようだ。
しかし、それを持っていた女の子が転んでしまい、花束は投げ出される。
心配する男の子に女の子は花束を台無しにしたことを謝る。
そこに両親がやってきて、転んでいる娘を見て心配する。
「パパ、ママ!」
「ごめんなさい、これ、落としちゃって……。
パパとママの結婚記念日に買ったのに……。」
男の子と女の子は、肩を落とす。
しかし、花束を拾った両親は
「物なんて二の次よ。
おめでとうって思ってくれている、それが嬉しいの。」
と感謝を伝え、それを聞いた子ども達は笑顔を取り戻す。

勇者と大魔王だけが、世界の狭間の神だけが、
感情エネルギーに向き合うのではなく、
生きる者一人ひとりが受け入れる仕組みへと変わった。
新しい仕組みにより世界の狭間は不要になり、
小さな勇者と魔王はもとの世界へと帰ることができた。
魔法戦士たちは間違いなく、世界を繋いだのだ。

再び場所が変わってアザリーの部屋。夕方になっている。
窓辺で物思いにふけるアザリーのもとに兵士がやってくる。
魔物討伐一周年の記念式典の予行練習が行われるのだ。
「今行くわ」
と告げると、再びアザリーは思いをはせる。
(あなたを勇者にしたのは私。
あなたが助けてくれたこと、嬉しいと思ってしまったから。
あなたの大切な人を大魔王にしたのも私。
あなたには他の人だっている、そんな当然のことを拒絶したから。)
誰に聞かせるでもなく、アザリーの口から声が漏れる。
「どこにいるの、ワタル」

魔法戦士の家の前

夜、魔法戦士の家の前でアヤネは、帰宅したクオンを迎え入れる。
ここ最近クオンは書物庫に通っているようだが、
今日はズーマ塔まで行ってきたらしい。
「魔法陣は使い物にならなかった」
と報告するクオン。二人ともに無念な気持ちに押し黙るが、
アヤネは気持ちを切り替えて笑顔を見せる。
「スミカちゃんとヤマトさんに、お戻りになったとお伝えしますね。」
家の中に入ろうとするアヤネの背後で、物音がする。
ワタルの安否が分からないことへの複雑な感情を抑えきれず、
クオンが地面を蹴ったのだ。
「置いていかねえって、言ったじゃねえか……」
寂しげな呟きに、扉の前で沈黙するアヤネ。

場所変わって、魔法戦士の家のキッチン。
テーブルの上に本を広げているスミカに、ヤマトが声をかける。
「明日の式典の練習か?」
スミカは首を横にふった。
その本は、クオンの机にあったもので、
異世界に関する考察などが書いてあるらしい。
帰ってこないワタルへの不安から、
過去の思い出を次々にまくしたてるスミカ。
特に、ワタルが迷子になった時は大変だった。
「あの時は見つかったからよかったけど──」
スミカは、不安をヤマトにぶつける。
「……帰ってくるよね?」
しかし、ヤマトは淡々としていた。
「……ワタルの意思なんだろう。皆で幸せになれる世界にする。
そのために自分で選んだことだ」
それを聞いたスミカの口調が荒くなった。
「それでいいの!? 仕方がないで、納得できることなの!?」
ワタルのことを考えているのはヤマトも同じだ。
「それが大切な人の意思なら、受け止めないといけないだろう!」
しかしスミカはそれを「あるべき論」だとし、
ヤマトの本心ではないと反論した。
「アタシが聞きたいのは、ヤマト自信の本当の気持ちだよ!
結局、ヤマトにとってのアタシはただの面倒な幼馴染みでしかないの?
本当の気持ちのひとつも見せられない、そんなに信じられない存在なの?
「生きたい」って言ってくれたのは、本当の気持ちじゃなかったの……!?」

記念式典会場

翌日。記念式典会場では、王様の演説が始まっていた。
「――この世に生きる者には皆、平等に権利と義務を与えられる。
「感情に向き合う」権利と義務だ。
それを放棄し、一部の者に押し付けた結果が、
魔物との戦いであった。教訓にせねばならない
その権利と義務を果たすために必要になるもの。
それこそが「他の者との繋がり」だ。
この先も、何度も、幸福を求める感情はぶつかりあう。
だが、逃げてはならない。
自分の価値を不当に下げ、幸福を得るに値しないのだと、
そう言って逃げることはたやすい。
その逃避は周りの者を傷つけるだろう。
自分の価値は正しく評価せよ。自分ひとりで生きていると思うな。
それを一人ひとりが実行できる。そのような国にしたい。
これが余の願いである」
王様の演説が終わり、魔法戦士たちの番がまわってくる。
代表としてスミカが演説を始めた。
クオンとアヤネの力を借りながら、
はじまりの気持ちを思い出す切っ掛けとなったことへの感謝を述べる。
しかし、「幸せだと言える」と言いかけて言葉が止まる。
ワタルがいないのに「幸せだ」とは言えない。
スミカは泣き出してしまう。
アヤネはスミカに寄り添い、クオンは悲しみを悟られまいと背を向ける。
そして、ヤマトの脳裏には、スミカの、王様の、
そしてワタルと、幼い日のワタルの言葉が次々と浮かんでいた。
そしてヤマトは、大声でワタルを呼ぶ。
「&size(20){ワタル……!}」
それは、紛れもないヤマトの本当の気持ち。
それに応えるように、扉が開く。
中に入ってくる人物を見て、魔法戦士たちは彼に駆け寄る。

……つながっていたいんだ。
誰かが悲しんでいる時に、
はじまりの気持ちを教えられるように。
自分が辛い時に、温かい気持ちで、
救ってもらえるように。
世界の狭間から脱出する時も、
ここに戻ってくるまでの間も、聞こえたんだ。
皆がオレを呼んでくれている声が。
その声を聴かせてくれたんだ。
そう、あの人が。

所変わって、どこかの高台。
一人たたずむディカルアのもとへ、クワエリエレズが駆け寄ってくる。

はじまりの気持ちに嘘をつかなければ、
人は繋がっていられる。
そのつながりがあれば、
はじまりの気持ちを思い出せる。
生きたいという気持ち。
幸せになりたいという、その気持ちを。

~Fin.~

※ネタバレ注意※

考察 ※ネタバレ注意※

折りたたみ内のメインキャラのセリフは、
文字色をそれぞれのイメージカラーにしています。
「ワタル」「スミカ」「ヤマト」「アヤネ」「クオン」です。
それ以外のキャラの色もメインキャラに準じて決めています。
詳細は折りたたみ内最初に記載しています。
ほぼ全ての会話を掲載していますので、ご注意ください。

 

 

第23話。最終回のタイトル「ダイオプテーズ」の宝石言葉は「再会」。
誰との再会かはもはや文字にする必要なし。
文字にしないことに感動と余韻がある。

この回は、今までとは違いアバンタイトルに回想シーンがない。
その代わりに、世界の狭間の神との戦いから一年後の、
様々な場所の描写が入れ替わり立ち替わりされている。
その時に流れるBGMは、
通常戦闘曲のアレンジバージョンが使われている。
無界版でも、エンディングに通常戦闘曲の
オルゴールバージョンが採用されていたので、
「エンディング曲」と「通常戦闘曲」に繋がりを持たせるのは
作者の意図だろう。

世界の狭間の消滅により、感情処理の仕組みが変わった。
ディカルアや勇者、大魔王、小さな勇者に魔王。
特定の人間のみが痛みを背負うのではなく、
自分の感情の循環は自分の責任で行う仕組みへと変わった。
「皆の幸せを望むなら、痛みもまた皆で背負うべき」ということだろう。

本作に込められた思いは、国王の演説に集約されていると思われる。
最後、式典会場に「彼」が入ってきて、
徐々に画面が下にスクロールするのだが、
よく見ると「彼」の正体を察することができる
ギリギリのタイミングで画面が明転する。
最後の最後に、自分が「呼ばれる側」になった「彼」。
結びの言葉の前に、最後にヤマトがワタルの名前を叫ぶシーンについて、
作者様がコメントへのレスで補足をされていたので、それを付け加える。

>作中に出てくる『』つきの『世界』は『人の心』のことで、
>ヤマトが自分の『世界』に嘘をつかなくなったことで、
>ワタルの「嘘をつかなくていい世界にする」という『世界』と繋がったという意味で。
>最も残酷な生い立ちでありながら大魔王という枷まで背負うことになってしまった
>ヤマトに、「祈りが届く」という幸福を贈りたかったというのもあります。

物語を振り返ってみれば、スミカ・アヤネ・クオンも、
自分の本心に気づいていなかったが、
彼らは既にそれに気づき、自らに打ち勝っている。
ヤマトが本心をさらけ出すことが、
「彼」を帰還させる最後のキーだったのかもしれない。

これにて、5人の魔法戦士たちの物語は、幕を閉じる。

実際の会話

ショートカット
魔法戦士の家
記念式典会場

 

アバンタイトル

♪オフ

─世界の狭間の神、ディカルアとの決戦から一年の月日が流れた。

──自室の窓辺にたたずむアザリー──
※ 「アザリーのセリフ」

(ディカルアと”彼”が行方不明になってから、世界の狭間は消滅した)

──場面転換──

♪エンディング(曲名:光と音の輝き/配布元:M-ART)

─世界の狭間の消滅によって、世界の仕組みは変わった。
勇者と大魔王が小さな勇者と魔王を生み、
やがて感情の循環のために世界の狭間に封印される。
そんな感情エネルギーの処理の方法はなくなった。
役目を終えた小さな勇者と魔王は、自分のいるべき場所へと帰ってきた。

──避難所となっている体育館──
※ 「ワタル祖父のセリフ」「ケイスケのセリフ」
「シマカのセリフ」「タクヤのセリフ」
「ココロのセリフ」

「……魔王となった時、ワタルの声が聞こえたんだ。
魔王となってもなお、呼びかける声が。
子どもを縛り付けるのはいつだって大人だった。
自分も例外ではなかったと思い知った。」

──ワタルの祖父、後悔をにじませる──

「……でもさ、縛り付けるだけじゃない、
皆が大好きだって気持ちを教えてくれたのもこの繋がりだよ。
ワタルも言ってただろ?
その気持ちを嘘にしなかった。嘘にしなくていい世界になった。
だから、じいちゃんはここに帰ってきた。」

「魔法戦士の儀式にワタルを巻き込んだのは僕達です。
ずっと謝りたかった。」

「謝って許されることではないけれど。本当に、ごめんなさい。」
「大丈夫だよ。間違ってないんだよ、その気持ち。
大切な人と一緒にいたい。
その気持ちを、ワタルお兄ちゃんは護りたかったんだ。
だからね、私、信じてるよ。
「ワタルお兄ちゃんに会いたい」っていう、
私の気持ちも、きっと護ってくれるって。
この気持ちで、ワタルお兄ちゃんと繋がっているって。」

──場面転換──

──勇者と大魔王だけが、世界の狭間の神だけが、
感情エネルギーに向き合うのではなく、
生きる者一人ひとりが受け入れる仕組みへと変わった。

──どこかの通り。幼い女の子と男の子が走っている──

小さな女の子
お父さん、お母さんー!

──女の子が転び、持っていた花束を落とす。──

男の子
大丈夫!?

女の子
お花が……。ごめんなさい、ごめんなさい……!

──はじまりの気持ちが濁った時、
その人の身体は苦痛を味わう。
その気持ちが強ければ強いほど。

──子ども達の両親が慌てて走ってくる──

父親 
二人とも、どうしたんだ!?
男の子
パパ、ママ! 
女の子
ごめんなさい、これ、落としちゃって……。
パパとママの結婚記念日に買ったのに……。

──母親、花束を拾う──

母親 
ありがとう。その気持ちが、とっても嬉しいわ。
物なんて二の次よ。おめでとうって思ってくれている、
それが嬉しいの。

女の子
うん!

──場面転換──

──けれどその痛みを受け止めることで、
はじまりの気持ちがよりかたいものになる。
幸せを諦めないこころへと繋がっていく。
そう、彼らは世界を変えた。新しい世界の仕組みを作り上げた。
皆が幸せな世界を望むのであれば、痛みもまた、全員で背負うべきなのだ。
新しい仕組みにより世界の狭間は不要になり、
私達小さな勇者と魔王はもとの世界へ帰ることができた。
魔法戦士たちは間違いなく、世界を繋いだのだ。

♪フェードアウト

──アザリーの部屋。夕方、兵士がアザリーを呼びにくる──
※ 「アザリーのセリフ」、「」なし=兵士のセリフ

♪オフ

アザリー様、まもなく式典の予行演習が始まります。
「今行くわ。」

──用件を伝えた兵士、戻っていく。アザリーの表情が陰る。──

(あなたを勇者にしたのは私。
あなたが助けてくれたこと、嬉しいと思ってしまったから。
あなたの大切な人を大魔王にしたのも私。
あなたには他の人だっている、そんな当然のことを拒絶したから
どれだけの月日が流れても、これは私の、一生消えない罪)

──アザリー、ふと思う──

(人々の感情が生んだ、魔物軍との戦いが終わって、
明日で1年がたつのね)

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──場面転換、タイトル表示。──

魔法戦士の家

♪オフ

──夜、魔法戦士の家の外。アヤネが立っている。
そこへクオンが帰ってくる。──

「本日も書物庫へ?」
「ズーマ塔まで行ってきた。
魔方陣は使い物にならなかったが。」

──二人、暫し沈黙。アヤネ、笑顔を浮かべる──

「スミカちゃんとヤマトさんに、
お戻りになったとお伝えしますね。」

──アヤネ、家の中へ向かう。その背後で地面を蹴るクオン──

「置いていかねえって、言ったじゃねえか……。」

──クオン、寂しげな表情。
家の扉の前で、クオンの言葉を黙って聞いているアヤネ。
場面転換──

魔法戦士の家・キッチン

♪オフ SE時計の音

──ヤマトとスミカがいる。机の上でスミカが本を広げている。──

「明日の式典の練習か?」
「……クオンくんの机にあった本。
異空間に関する考察とか書いてある。」

「……ホント、一年もどこで迷子になってるんだろうね。
地理学の授業で寝てるからこういうことになるんじゃないの?
無遅刻無欠席が取り柄だーとか言うけどさ、
アタシ達が起こしに行かなかったら、何回遅刻していたことか。
アタシがブローチなくした時さ、
隣町まで探しに行ったワタルが迷子になって、
結局ワタル探しで一日終わってさ、ホント、先のこと考えないんだから。
あの時は見つかったからよかったけど──」

──不安げなスミカ──

「……帰って、くるよね?」
「……ワタルの意思なんだろう。
皆で幸せになれる世界にする。
そのために自分で選んだことだ。」

「それでいいの!? 仕方がないで、納得できることなの!?」
「それが大切な人の意思なら、受け止めないといけないだろう!」
「ほら、また「あるべき論」じゃん。
アタシが聞きたいのは、ヤマト自信の本当の気持ちだよ!」

──スミカ、立ち上がってヤマトに詰め寄る──

「結局、ヤマトにとってのアタシは
ただの面倒な幼馴染みでしかないの?
本当の気持ちのひとつも見せられない、
そんなに信じられない存在なの?
「生きたい」って言ってくれたのは、
本当の気持ちじゃなかったの……!?」

──場面転換──

魔法戦士の家・朝

♪プロクト(曲名:上級者の部屋/配布元:音楽の卵)

「偉い奴の有り難いお言葉を垂れ流すだけの式典か。
さっさと城に行くか。遅刻すると大臣あたりがうるさそうだ。」

──チャット──
「わざわざ一周年記念式典やるとか、血税の無駄遣いだろ。
誰が望んでるんだよこんなの。
他にやりてえことが山ほどあるのに。」

「またそういうこと言って……。」
「卒業式の校長の挨拶で
「皆さんが入学した時に同じ話をしましたが──」とか言うけど、
入学式の挨拶なんて誰も覚えてねえよ。」

「言い返せないのが何か悔しい。」

記念式典会場

※ 「大臣のセリフ」「王様のセリフ」

 

 

♪記念式典(曲名:sky/素材集:Dignified Fantasy Music Vol.1)

「――この世に生きる者には皆、平等に権利と義務を与えられる。
「感情に向き合う」権利と義務だ。
それを放棄し、一部の者に押し付けた結果が、魔物との戦いであった。
教訓にせねばならない。
その権利と義務を果たすために必要になるもの。
それこそが「他の者との繋がり」だ。
この先も、何度も、幸福を求める感情はぶつかりあう。
だが、逃げてはならない。
自分の価値を不当に下げ、
幸福を得るに値しないのだと、そう言って逃げることはたやすい。
その逃避は周りの者を傷つけるだろう。
自分の価値は正しく評価せよ。自分ひとりで生きていると思うな。
それを一人ひとりが実行できる。
そのような国にしたい。これが余の願いである」

──演説が終わり、王様が壇上を降りる──

「ありがとうございました。
つづいて、魔法戦士の四名よりご挨拶を頂戴いたします。」

──4人が壇上へ上がる。スミカが代表して言葉を述べる──

「えっと、本日はこのような場にお招きいただき、えーっと──」

──クオン、小声で助け船──

身に余る光栄に存じます。
「み、身に余る光栄に存じます。
皆様からいただいたお力により大役を果たすことができました。
あ、ありがと──」

──アヤネ、小声で助け船──

深謝申し上げます。
「深謝申し上げます。
プロクトで魔法戦士として戦う中で、
私達も成長させていただきました。
始まりの気持ちを思い出す機会をいただけました。
この先も忘れずに精進してまいります。
そして、私は幸せだと、胸をはれる─」

──スミカ、言葉が途切れる──

「幸せ、だと……。」

──スミカ、言葉を続けられない。
ヤマト、アヤネ、クオン、スミカを気遣う──

「……ごめんなさい。」

──スミカ、泣き出す──

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「不安だよ、心配だよ、寂しいよ!
絶対帰ってくるって、根拠もなく言い聞かせて、
それでもやっぱり怖くて……!」

──アヤネ、スミカの傍に寄る。悲しげな表情──

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──目を伏せたクオン、無言で背を向ける。──

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──ヤマトの脳裏にスミカ、王様、ワタルの言葉が過ぎる──

それでいいの!? 仕方がないで、納得できることなの!?

自分の価値を不当に下げ、幸福を得るに値しないのだと、
そう言って逃げることはたやすい。
その逃避は周りの者を傷つけるだろう。

皆の痛みからは逃げない。けど、皆で幸せになる道も諦めない!

だから、せんしになる。
だれも、うそつかなくていいように。
さいしょの、ほんとうのきもちのまま、いられるように。

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──扉が開く。4人の魔法戦士、壇上を駆け下りる。
待ち望んでいた人のところへ──

……つながっていたいんだ。
誰かが悲しんでいる時に、はじまりの気持ちを教えられるように。
自分が辛い時に、温かい気持ちで、救ってもらえるように。
世界の狭間から脱出する時も、
ここに戻ってくるまでの間も、聞こえたんだ。
皆がオレを呼んでくれている声が。その声を聴かせてくれたんだ。
そう、あの人が。

──場面転換。どこかの高台にたたずむディカルア。
クワエリエレズが駆け寄ってくる。──

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はじまりの気持ちに嘘をつかなければ、人は繋がっていられる。
そのつながりがあれば、はじまりの気持ちを思い出せる。

♪スタッフロールⅠ(曲名:アドベンチャラーズマーチ/配布元:Modest Studio)

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♪スタッフロールⅡ(曲名:Musicbox1/素材集:Light Novel Standard Music Vol.2)

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ワタル達がイカルガに帰れたかどうかは、異界版でも明言されていない。
補完者が無界版クリア後に作者様から聞いた話だが、
綺麗にハッピーエンドにするとご都合主義になりかねないし、
あえてプレイヤーに結末を委ねた方がいいということで落ち着いたとか。

尚、ここまでサブイベントを全く見ていないという人は、
サブイベント会話集の「お人形を届けて」を見ると、
王様のアザリーに対する思いが分かる筈。
そして、魔跡地の秘密のイベント後チャットを全部見ると、
イカルガに帰るための手がかりが一つ示されている。

そして、最後にネタバレを付け加えさせて欲しい。
ワタルの分け隔てのない優しい性格は、
22話でディカルアを助けるためのものだったと、制作者ブログにて語られていた。
あの時点で、一瞬の迷い無くディカルアを助けに飛び出せるのはワタルだけであり、
ワタルが主人公に据えられているのはこのためでもあったとのこと。

※ネタバレ注意※

攻略

♪エンディング(曲名:光と音の輝き/配布元:M-ART)
♪プロクト(曲名:上級者の部屋/配布元:音楽の卵)

アバンタイトルを終え、魔法戦士の家でのイベント後、操作可能になる。
行けるところはプロクト中央エリアのみで、テレポレスも使えない。
道場でのEPスキル習得は可能。
町の人の会話が変わっている場合はあるが、それ以外に特にイベントはない。

プロクト城

♪プロクト城(曲名:city today/素材集:Dignified Fantasy Music Vol.1)

  • 兵士の中には会話が変わっている場合があるが、特にイベントはない。
  • 謁見の間で王様に話しかけるとイベント進行。

♪記念式典(曲名:sky/素材集:Dignified Fantasy Music Vol.1)

  • イベント後エンディング。お疲れ様でした。
    あとはクリア後要素を楽しんでね♪ Goodluck!

♪スタッフロールⅠ(曲名:アドベンチャラーズマーチ/配布元:Modest Studio)
♪スタッフロールⅡ(曲名:Musicbox1/素材集:Light Novel Standard Music Vol.2)

→クリア後要素を見る