2030年初頭、この世界は突如として生き地獄へと変貌した。理由なんてものは見えない、少なくとも水面下で動く陰謀など一般人に観測できるわけがないからだ。今や"活きている"のは極東の島国程度、それすら風前の灯火だというのだから忌々しいことこの上ない。  その発端は例の「緋月総研」だってことをついこの間小耳に挟んだ。だが、生きた心地もしないこの組織で延々と働いてる俺からすれば、そんな話など僥倖とも不幸ともわからないがな。  ____今、俺の手記を読んでる奴がまっとうな野郎ならここから先の話は無視してくれて構わない。そのほうがよほど時間と体力、それと…幸福でいられるだろう。