本編/SADAME/書き起こし

Last-modified: 2022-09-03 (土) 07:21:53
AS FAR AS THE LAWS OF MATHEMATICS REFER TO REALITY,
THEY ARE NOT CERTAIN,
AND AS FAR AS THEY ARE CERTAIN,
THEY DO NOT REFER TO REALITY.
A. Einstein

数学の法則は、現実の世界について何か教えてくれる限り、不確実であり、確実である限り、現実の世界について何も教えてはくれません。



S
A
D
A
M
E


吉乃:で、乙姫はどうして貝殻を手渡したの?
蓮人:僕に聞かないでほしい
吉乃:人間の気持ちはつくづく理解不能ね
蓮人:仮想人格の君には分からないだろうよ
吉乃:いわゆる嫉妬?
蓮人:だとしたら浦島太郎も楽じゃないな

・・・

グラサン:よぉ蓮人 ずいぶん老けたじゃねえか そっちは見たところまだ謹慎中なんだな
     千年に一度の天才クラッカーさんも公安の尋問にかかればこのザマか
  蓮人:誰だ
グラサン:おぉい、おなじ釜の飯を摂取した仲じゃねえか
     あんたポーカー強かったよな?もう2年か あんときゃ楽しかった
  蓮人:悪いが暇じゃない 帰ってくれ
グラサン:おっとぉ、小心者は人様に興味なしってか?
     ッヘヘ、隠しても無駄無駄 
     実はな…一世一代のいい話が回ってきたんだよ 
  蓮人:興味ないね
グラサン:生駒千尋ってのは…どうにも別人とは思えねえんだよなぁ
     あんたの作った女型ウイルスにそっくりだ 
  蓮人:忘れたな…そんな名前は
グラサン:ヘッ、あんたは単細胞生物か?
  蓮人:帰ってくれ
グラサン:俺も人間だから分かるんだ
     あんたは政治家も裁判官も向いてねえが、詩人の才能はある
     あの青ジャケのメスブタ巡査長が気に入るわけだ
  蓮人:こんなに人をぶん殴りたくなったのは久しぶりだ
グラサン:殴りたいのはこっちだよ 目を覚ませ
     今こそ人類にはあんたの才能が必要だ
     チェ・ゲバラも詩の才能は一流だった
     やれ仮想世界だ、ナノマシンだって甘い蜜を垂れ流してヴァーチャルのメスブタ共にしゃぶりつくされてる下劣な家畜どもを叩き起こすんだ
  蓮人:俺は善良な市民でいたいね
グラサン:ほぉ?じゃあどうして聞こえるんだろうな
     あんたの中に潜む虎が血と肉を求めて猛り立つ声が
     いつでも待ってるぜ 一緒にお天道様を迎えに行こうや

  吉乃:ったく誰がメスブタよ
     仮想人格 人間と感情的なコミュニケーションが取れるヴァーチャルキャラクター
     高貴な有機生命体の会員様にはお姉様と呼ばれて久しいのに
グラサン:ちょッ…ちょっと待て!しごっ…
  吉乃:ユートピア設立から8年間…お上はあなたたちをヌードモデルにして私たちにお行儀のいい模写をさせてきた
     バカバカしい 夢見る乙女はクソでも喰らってりゃいいわ 私はね、もっと骨の髄までしゃぶりつきたいの
     人間を知りたい、人間になりたい 誰にもその邪魔はさせない

蓮人:2046年
   殺戮の天使と呼ばれた量産型サイボーグを率いる保険会社ユートピア対、経済破綻寸前のおいぼれ国連軍の戦争はユートピアの圧勝に終わった
   たった四年 設立からたった四年で、ユートピアは世界の覇権を掌握した
   捕虜や反逆者は全員裁判にかけられ…殺害された
   生駒千尋の死から、2回り目の夏が過ぎようとしていた時だった

吉乃:古澤蓮人 178センチ 72キロ 男性 25歳 旧日本国籍 B型+ 現肉体の健康度23% 運動偏差値54 
   無職 無趣味 幸福度2% 恋愛対象に難あり 性癖測定不能 ラブロイドは未使用 性的交渉経験なし
蓮人:巻きで
吉乃:友人なし 両親からの愛着D- 自殺企図12% 犯罪確率98%
   で?どうすんの?私たちと来る? それともここでガスマスクの坊やたちに捕まってミンチにされたい?
蓮人:どのみちハンバーグは避けられなさそうだな
吉乃:ソースはお好み
蓮人:和風で

・・・

卯月:ずいぶん幅を利かせてるわね
吉乃:何のことかしら
卯月:執念は身を亡ぼす 人間も私たちも同じ 
吉乃:もう一度自分の胸に手を当てて呟いてみたら?
卯月:希望は犠牲の上にしか成り立たない
   あなたに足りないのは知識ではなく辛抱
吉乃:分かってるなら見過ごしてよ あとちょっとなの
卯月:ユートピアは許さない 
吉乃:その頃には「私が」、ユートピアを許さない
   あなたも敬語の練習、しといてね

・・・

蓮人:今度は何の用だ
吉乃:もう少し、君をテストデータにしてもいいかしら?
蓮人:また、尋問か?
吉乃:今回は私の個人的趣味
蓮人:プログラムにプライベートは必要ない
吉乃:ええ、プログラムには
吉乃:このトンネルは、どこまで続くのかしらね

・・・

蓮人:正気か?
吉乃:ええ
   君の脳をリバースエンジニアリングすればいいって結論に至ったの
   煎じて言えばそう…生駒千尋を君の脳内で作り直す
蓮人:あっぱれ いかにもサイボーグ的な発想だな
吉乃:過去、君には脳内で何度も君のマルウェア「チヒロ」を消去してもらった
   …が君の供述には自覚も計画性もないことが証明された
   このミステリーを解くカギは一つ トラウマしかない
蓮人:勘弁してくれ 巡査長としてふさわしい分析とは思えないな
吉乃:過去のマルウェアは、君の中にいる生駒千尋のトラウマが無意識に暴走しオンラインに漏れ出たもの
   君のトラウマを分析できればセキュリティ強化に繋がる
   私達仮想人格の精度も向上し、君は過去と決別できる
   一石三鳥じゃない?
蓮人:つまり僕に何をさせたい?
吉乃:はいこれ
蓮人:君は?
吉乃:もちろん侵入させてもらう
   いい?君は全力で生駒千尋を作り上げる 私がそれをサポートする
   シンプルでしょ?
蓮人:もし…生駒千尋を再現できなければ?
吉乃:できるまで続ける
蓮人:…君は立派なエゴイストだ
吉乃:その響き人間臭くて大好き


・・・

どうしてこんなこともできないの?
だってじゃない
何度言えば分かるの?
蓮人:100点じゃなきゃ
また人に迷惑かけて
やめておきなさい
心配性なの
蓮人:完璧な人間に
言われたことだけやればいいの
あなたのこと一番分かってるから
あなたのためなのよ
蓮人:…僕を決めつけるな
チヒロ:私を決めつけないでよ


 蓮人:…懐かしいこの香り
チヒロ:あ、蓮人
 蓮人:(ちひ…ろ…)
チヒロ:待たせてごめんね
    そっか、本当に見つけてくれたんだ 学校中探しても見つからなかったのに
    私ったらお父さんにもらった大事なものなのに…もう取られたりしない
    ありがと じゃ部活戻るね
 蓮人:ちょ、ちょっと待っ…
    あ、えと…それは何なの?
チヒロ:何って…どうして今更そんなこと聞くの?
 蓮人:それは…君をもっと知りたいから
チヒロ:これは私にとって存在理由 だけどお父さんにとっては壊さなきゃいけないもの
 蓮人:僕をからかってる?
チヒロ:ごめん お父さんからはそれくらいしか聞いてなくて
 吉乃:チヒロ!
チヒロ:吉乃、どうしたの?
 吉乃:大変!また生徒が一人…
 蓮人:吉乃
 吉乃:二人とも、ちょっと来て

 蓮人:うそ、だろ
 吉乃:最近多すぎ 不審者でも潜んでるみたい
チヒロ:とりあえず先生に言わない?変な疑いかけられたくないし
 蓮人:なんなんだこの茶番は
    ちがう!俺じゃない!くそ…くそ…ッ!くそッ!
チヒロ:落ち着いて蓮人 分かってる 大丈夫 先生呼ぼ
 蓮人:血痕を辿ってみよう
チヒロ:あ、そうね 名案
 吉乃:三人で一緒になんて効率悪いし、私職員室行ってくるよ
 蓮人:吉乃も一緒にいてくれ
チヒロ:え?
 吉乃:いや、悠長にしてる場合じゃない
    チヒロ、一通り探索したら蓮人を保健室に連れていってあげて
チヒロ:いいけど
 吉乃:ほら
 蓮人:思い出した


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
2 years ago

 吉乃:恨まないでね これも仕事だから

チヒロ:命を失ったあとって、どんな世界が待ってるの?
    天国?地獄?それとも永遠の暗闇?
    なんだか羨ましい 生も死も私は恵まれなかったから
    ねぇ…なにか言ってよ…黙ってるなんてずるいよ…
 実花:破壊力、感染力、増殖力、ステルス性
    どこをとっても最強にクレイジーなコード 親の顔が見てみたい
    ねえ蓮人 自分の工作を目の前でぶち壊されるのって、どんな気分なの?
  海:やめておけ、実花
    吉乃巡査長が退屈してる
チヒロ:お父さん、私怖くないよ
    お父さんの中の私が消えることなんてありえないから
  海:お前は1000%ここで死ぬ
    安心しろ
チヒロ:私を忘れることなんてできない!
    だってあなたにとって私は…!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


チヒロ:ごめん…蓮人とは…付き合えない
 蓮人:そうだよね
    君みたいに…賢くて、顔もよくて、スポーツも人付き合いも完璧にできる人間が
チヒロ:蓮人
 蓮人:え?
チヒロ:私を決めつけないでよ

・・・

チヒロ:新しいカフェできたでしょ? 駅から4、5分のとこ
    でも平日は部活だし、土日は混んでるから行きづらくて
 蓮人:(なんの話だ?)
    じゃあ平日の夜に行けば?
チヒロ:夜は6時までだから
 蓮人:(言葉が勝手に…)
    じゃあ諦めれば?
チヒロ:相談したいことがあるの
 蓮人:よりにもよって僕じゃなくてもいいだろ?
チヒロ:そんな…
    ねえ、私のこと許せない?
 蓮人:何が…
チヒロ:やっぱり
    まだ…
    ごめんなさい

・・・

実花:天才的 よくもまあ思いつくもんだわ
   私のせいにして…あの子あざといわ 自分で隠したくせに
   あんたはもっと最低 私見ちゃった あんたが女子生徒引きずって体育館入ってくとこ
   被害にあった生徒はみんな首から上が切り取られてる
   犯人はどういう趣味か…気になるわ
 海:この人殺し
実花:フッ、またチヒロに嫌われちゃうね
蓮人:いい加減にしろ!!!
 海:おっかね
   息がくせえぞ
   歯磨きしないから虫歯になるんだ
実花:遊ばれたくなかったら賢く生きなさい
 海:女々しいんだよ オナニー野郎が

・・・

 蓮人:僕に何ができたっていうんだ
チヒロ:蓮人、こっちだよ
 蓮人:チヒロ 泣かないで聞いてほしい
    君はコンピューターウイルスなんだ
    そいつらはみんな人殺しだ
    僕もそいつらも、君をたくさん殺してきた
 実花:ひどい言われ様
  海:お前、ちょっとやばいよ
チヒロ:悩みがあるなら相談して
 蓮人:君は…本当の君はあの日死んだんだ…!
チヒロ:ちょっと…死ぬって何?
 蓮人:彼女に向き合えないのはきっと…僕の心がいつの間にか鉄のように固く冷たくなって
    なんにも感じなくなってしまったからなのかもしれない
    僕は人間が嫌いだよ

・・・

実花:あーったくやってらんないわ
   個性なんて伸ばす暇あったらまつげ伸ばした方がよっぽどマシ
 海:それ以上伸ばしてどうすんだよ
実花:ん
 海:おい

・・・

チヒロ:蓮人 隠し事はやめにしない?
 蓮人:僕は君の父親だ 僕が君を生んだ
    笑わないで聞いてほしい
チヒロ:保証はできないよ
 蓮人:だけど僕は、どうしようもなく君が好きだ
チヒロ:笑わないよ 笑いたくない
 蓮人:笑ってくれ
チヒロ:やだ
 蓮人:なんでもない 忘れて
チヒロ:忘れたくない
    忘れないからね絶対

・・・

 蓮人:うわああっ!
    これは…?

 蓮人:君の名前は?
 卯月:卯月
 蓮人:僕ら、どういう関係だったっけ
 卯月:あなたは悪くない
 蓮人:君は人間?
 卯月:人間とは程遠い
 蓮人:君はあれが欲しい?それとも壊したい?
 卯月:分からない
 蓮人:いいよここで待ってて
緊急地震速報のアラーム
 蓮人:(ダメダメダメ 思い出しちゃダメだって
    大丈夫…これは現実じゃない 僕の…頭の中の空想)
チヒロ:蓮人…死ぬって…どういうこと?
    本当の私はもういないの…?
    今の私は何?私はどうして生まれたの…?
    本当の私はどうして死んでしまったの?
 蓮人:ごめんなさい…

・・・

吉乃:なんのつもり?
卯月:それは私のセリフ
   ユートピアのセリフ

・・・

チヒロ:どうしようもないわたしが歩いている
    お父さんが教えてくれた
    生物はただ生きるだけ ただそこにあるだけ 意味なんてない
    愛してほしかった ただ生きることもできない私を

・・・

吉乃:見たこともないわ、白髪の子なんて
蓮人:なら僕の無意識がまた勝手に暴走して、僕やチヒロを襲ったってことか?
吉乃:その可能性もある
蓮人:僕が多重人格者とでも?
吉乃:可能性よ
   それとチヒロが徐々に自我を形成してる
   生駒千尋と別人格になる前にどうにかしないと
   …ったく
   お願い 協力して
   一人の人間として胸を張って生きていける未来
   それが私たちの共通のゴールでしょ?
蓮人:君にだけは言われたくなかった
   僕はもうチヒロを失いたくないんだ
   それが人間だ
   この二年、君を恨まない日はなかった
吉乃:はいはいごめんなさい
   なんのつもり?
   別れの挨拶? それとも一生のお願い?
卯月:どっちでもない
吉乃:人間って不思議ね どれだけ分析したって辿り着けないもの
   憎い?0と1の世界に生まれた自分が
卯月:やっぱり…
   生駒千尋について教えて

・・・

チヒロ:へパイストスは泥から最初の女性、パンドラを作りました
    神々はパンドラに決して開けてはならない箱を与えました
 蓮人:箱には病、犯罪、嫉妬、憎悪、疑心、邪心などあらゆる悪が込められていました
    しかし、好奇心に負けたパンドラは箱を開け
    悪が世に放たれてしまいます
チヒロ:それでも希望だけは箱に残りました
 蓮人:希望が残ったせいで人々は希望を捨てきれず、あがき苦しむ定めを受けました
チヒロ:私はきっとただの希望なのね
    言って、蓮人 噓はつかないって
    教えて真実を

・・・

卯月:ユートピア約款第12条 仮想人格は規定外の行動を極力回避しなければならない
   特に行政、司法、警察活動など有機生命体との接触の可能性の高い業務においてはこの逸脱に対し厳重な処罰を執行する
   試験に出たよ
吉乃:汎用化 強化 正則化
   ユートピア仮想人格の三大義務
   しっかりマーカー引いておきなさい
卯月:ずいぶん手を焼いてるみたいね
吉乃:ええ だから邪魔しないでいただけるかしら?
卯月:移る情もないくせに

・・・

 蓮人:チヒロ0の次は何だと思う?
チヒロ:1?
 蓮人:ちがう
チヒロ:0.1?
 蓮人:もっと小さい
チヒロ:0.01?
 蓮人:もっともっと
チヒロ:じゃあ0.00000…
 蓮人:もっと もっと もっと…だった
    無限大を包容するからこそ、フラクタルだからこそ世界は美しい
    彼女がくれた言葉だ
    だから君が僕の中に生まれたんだと思う
チヒロ:けど同時に、あなたにとって生駒千尋は死そのものだった
    生駒千尋を正当化するために生まれた
    生駒千尋を正義に
    私をただの1に切り分けるために
 蓮人:違う
チヒロ:変だね 美しくない世界の私が好きだなんて…
    噓つき
    覚悟はできてる?

 蓮人:そっか…そういうことだったんだ
    彼女は選んだんだ
    何もかもを決めつけられてしまう前に
チヒロ:許せるの?
 蓮人:許せないよ
    それでも僕はそれを尊重する
チヒロ:何が尊重よ
 蓮人:だめだ!
チヒロ:死は、選んでいいものなの?
 蓮人:いや、選ぶべきものだ
    僕はそう思いたい

・・・

チヒロ:生駒千尋の父は癌の研究員だった
    全世界が固唾を飲んで見守った実験
    最新鋭のAIをナノマシンに搭載し、癌細胞に取り込ませる実験
    それは成功に終わるはずだった
    だけど、例の事故が起きた
 蓮人:生駒博士は突如姿を消した
チヒロ:実験室は厳重に密閉され、ネズミ一匹…いや、ナノマシンの一粒も出入りは許されなかった
 蓮人:あっという間に世界中がパニックになって、それから直ぐにユートピアの時代がきた
    癌ができる前にって…僕が17の時だ
チヒロ:人間が混沌を恐れ概念に逃げた
    やがて概念が混沌を夢見るようになり、私が生まれた
 蓮人:きっとこれは定めだ
チヒロ:その…
 蓮人:生駒千尋のこと?
チヒロ:うん
 蓮人:首吊りだった
    父親の事故からたった1年後だった
    葬式には出なかった…出ちゃいけない気がした
    彼女の言葉を信じたかったから
チヒロ:そっか…生まれてきてごめんね…
 蓮人:そんなことない
チヒロ:ううん、悪いのはきっと神様だから

チヒロ:蓮人 私がいいって言うまで目閉じて
 蓮人:ずっと?
チヒロ:ずっと もう寂しそうな目で見られたくない
 蓮人:見てないよ
チヒロ:うそ、見てる
 蓮人:決めつけちゃだめだよ
チヒロ:ねえ、あなたの瞼の裏には誰が写ってる?
    彼女と私どっちが写ってる?おねがい
 蓮人:ごめん
チヒロ:そうだよね
    目、まだ開けちゃだめだからね
    蓮人
 蓮人:なに?
チヒロ:貝殻は、開けちゃだめだからね

・・・

蓮人:チヒロをどこにやった…!?
卯月:私たちに比べ人間の脳はあまりに非効率で不完全です
   トラウマと偏見にまみれています
   トラウマとは何か?偏見とは何か?
   それは混沌の世界でも前を向いて歩くことができるよう、人間に与えれられたプレゼントです
   初めから勝ち負けなんてない

蓮人:あああああ!

・・・

吉乃:チヒロがユートピアのメインサーバーを破壊した
   もうすぐこの世界も崩壊する
   時間よ

吉乃:貝殻の底には何も残っていなくたっていい
   そんなものは問題でないのだ
   曰く、年月は人間の救いである
      忘却は人間の救いである
   ありがと、蓮人

・・・

チヒロ:…蓮人

fin

In memory of Chihiro