一定期間に渡り一般的物価水準が継続的に上昇し続ける現象を現す英語、
インフレーション(inflation)の略。主に経済学における用語である。
経済学では緩やかで安定したインフレが好ましいとしている。
急激なインフレは収入は増えないが物価(=出費)が上がるために購買力の低下が発生し、
実質的な価値の低下を引き起こす。
ちなみに対義語はデフレーション(Deflation)。縮めてデフレ。
- 特に極端な物価上昇はハイパーインフレーションと言われ、有害とされる。
- これ以上は話が逸れてしまう為、より詳しく学びたい方は別サイト・文献を参照にしてほしい。
目次
創作物におけるインフレ
- 上記から転じて、(創作物やゲームにおいて)年月の経過と共にステータスやスペック等が上がり続ける現象を指す。
簡単に言うと強いキャラ、装備が後から後から登場し続ける様な状態である
(逆にステータスやスペックが下がっていく事はデフレと呼ばれる)。
なぜ戦闘水準が上がり続けることをインフレと呼ばれるようになったのは定かではないが、
世界的に有名な漫画「ドラゴンボール」からという見方が強い。- 当漫画は「強敵がどんどん出てくる」のが特徴的であり、
物語が進むにつれて、前の強敵を倒した主人公より強い新たな敵が出現という構図が表れる。
そしてサイヤ人編の最初の強敵ラディッツが「戦闘力」という概念をはじめて持ち込んだことで
キャラクターの強さが敵味方問わず明確な数値で表されるようになり、
敵の戦闘力を上回る仲間たち、そしてそれをさらに上回る敵の登場……とインフレが激しくなっていき、
もはやラディッツなど存在しなかったのではないかと思えるほどの凄まじいインフレ状態が起こった。
結果『強敵が現れる→主人公サイドがパワーアップして強敵を倒す→
パワーアップした主人公サイドでも対処できない更なる強敵が現れる→主人公サイドが更にパワーアップし…』
というループのことを「(強さの)インフレ」と呼ぶようになったとされる。
- 当漫画は「強敵がどんどん出てくる」のが特徴的であり、
- ゲームにおいては同一デザインのゲームをアップデートし続ける設計のゲーム特有の現象をいう。
オンラインゲームではアップデートにより新しい要素が追加され続けるものだが、
そのアップデートが「今までいた最強の敵よりも強い敵の追加」であったり
「今まであったプレイヤーの最強武器よりも強い武器の追加」と言うものだった場合、
繰り返されれば繰り返されるほどプレイヤーも敵の戦力が上がり続ける。- オンラインゲームやTCGなど、既存のものに何かしらの要素を追加する…、
即ちアップデートの概念が存在するゲームでは、このようなインフレは「宿命」といっても過言ではない。
なぜならすでに存在しているアイテムと同等またはそれ未満の性能のものを追加しても、
すでに既存のアイテムを入手し尽くしたプレイヤーからは見向きもされないからである。
キャラクター性を重視しているゲームであればそれによる差別化は不可能ではないが、
モンハンのように個々のキャラクター性がそこまで重視されていないゲームデザインの場合、
既存のプレイヤーにも入手する動機を作るため、
新しいギミックなどの追加*1や単純に上位の効果の導入*2が避けられない。
また、敵に関しても既存のボスを倒せるほどに装備や技術を高めたプレイヤーに
「手応え」のあるコンテンツを用意すると上記の性質を持つことになる*3。
そのため、オンラインゲームでは上記の性質を持つアップデートは避ける事が困難であり、
一定の歴史を持つゲームであれば大なり小なり敵味方双方の強化が行われている。
しかし、その規模が膨大(もしくは重ねた時間が膨大)すぎて、
当初のバランスから見れば次元が違うほどの領域に至ってしまうケースも少なくない。
- オンラインゲームやTCGなど、既存のものに何かしらの要素を追加する…、
- 一方で、コンシューマーゲームでは、同一デザインの作品をアップデートし続ける事はあまりなく、
大幅な新要素を追加する場合は、続編を製作するという形で追加される事が多い。- これはスクウェア・エニックスが展開する、
「FINAL FANTASY VIIリメイクプロジェクト」のような「分作形式のゲーム」に関しても、
「分作は事実上の続編として扱う」形で、前作との互換性を切り捨てている事が多い。
- また、任天堂から「ブレス・オブ・ザ・ワイルドの続編である」と正式に発表されている、
「ゼルダの伝説 ティアーズ・オブ・ザ・キングダム」については、
ゲーム開始直後は前作クリア後を彷彿とさせる強力なステータスでゲームが始まるのだが、
ゲーム開始から間もなく起こる、とある出来事で弱体化する形でステータスがリセットされ、
結果としてゲームバランスがリセットされる…という例もある。
上記のようなインフレと、それに起因する問題が起こる事を避ける工夫が行われている。
また、バランス調整を語る際に「(前作と比較して)○○がインフレしている」と言われることもあるが、
上記でいう「インフレ」には該当しない。 - これはスクウェア・エニックスが展開する、
モンハンにおけるインフレ
- MH界隈でこの用語が使われるようになったのは、2014年以降のMHFからであると言われる。
その経緯やインフレが齎した影響が、いわゆる「オンラインゲームのインフレ調整」
としては極めて特筆すべきものであったため、以下に詳細を記す。
MHF
- MHFは元々2007年にMH2をPC専用・オンライン専用ゲームに改修して生まれたものであるため、
元々のゲームベースはMH2で、プレイヤーハンターの攻撃力(武器倍率)は大体240前後、
防御力も高いもので600前後の数値であった。
これはG級のないメインシリーズならば近年の作品でもおおよそこれくらいである。
だが、それから10年以上が経過したMHF-Zの時代においては、
一般的な(特に強烈なやり込みを要求されない)プレイヤーハンターの防御力はスキルなど込みで、
2000~3200と元の4~5倍に膨れ上がっており、
攻撃力に至っては、武器倍率600はゲーム開始から数日もあれば容易に到達可能、
プレイスタイルや武器種・状況によっては、1000どころか4000を超える人すら存在する程である。- 参考までに、メインシリーズで特に攻守の水準が高くなったMHXXでは、
武器倍率は最も高いもので410であり、防御力は最大強化で900台中盤程度である。
- 参考までに、メインシリーズで特に攻守の水準が高くなったMHXXでは、
- 当然モンスターもそれに伴い強力なものになっており、
MHF-Zにおいて最強格のモンスターとして定義されていた「辿異種」は、
最高難度のものであれば体力30000、全体防御率0.06~0.15、
物理肉質が最も柔らかい部位で30~40程度しかないという凄まじい耐久力を誇り、罠も全く効かない。
メインシリーズのG級最上位レベルの全体防御率が0.5程度と考えても、
実際の耐久力差は5倍どころの騒ぎではない。
だが本作では、熟練したハンター4人ならこれらを5分未満で討伐することが普通に可能であり、
完全ソロでも5分未満の討伐は不可能ではない。
プレイヤー、モンスター共にベースとなったMH2から見れば壮絶な戦闘力強化が成されている事が分かるだろう。- ちなみにモンスターの攻撃倍率は、
2012年末をピークとしてそれを根本的に上回るモンスターは登場していなかった。
メインコンテンツであるG級では、モンスター側の攻撃力の強化ではなく
ハンター側の防御力の弱化によって難易度の上昇を図っている事や、
単に攻撃力が高いだけのモンスターが、2013年以降嫌がられるようになってきている事などが理由である
(G級クエストや、即死の記事も参照のこと)。
ただし、前述した防御力2500オーバーの装備が広く普及し、
モンスター側も中威力の執拗な連続攻撃*4があまり好まれなくなった2017年以降は、
技の威力の調整は細かくされているものの、特に高難度のコンテンツでは攻撃倍率が大きく増加している。- また、攻撃倍率に頼らない即死技も多く、超高速のスリップダメージを与える攻撃や、
対策なしではたやすく即死に繋がる状態異常、体力を無視して即死判定を与える技など、
単純に防御力や元気のみなもとなどのダメージ減算効果に頼れないモンスターも多い。
- また、攻撃倍率に頼らない即死技も多く、超高速のスリップダメージを与える攻撃や、
- ちなみにモンスターの攻撃倍率は、
- 一応、現在のHR帯ではメインシリーズと比較してもそこまで極端なハンター、モンスターの戦闘力差はない。
特にHR4までは、難易度調整の関係上MH2時代レベルの装備でも容易にクリア可能になっている。
HR5からがメインシリーズでのG級相当と考えれば差し支えなく、HR6は特筆的な難易度になってはいるものの、
それでも上記のようなとんでもない強化は見込めない
(例えばHR7までは、一般的な武器倍率は350程度、防御力は600~700前後にしか到達できない)。
だが、現在のMHFにおけるHR帯は、公式の言を借りるなら「チュートリアル」であり、
シリーズ経験者や事前情報込みでプレイしていれば、数時間程度でG級昇級が可能になっている。
そしてそのG級でも、概ね数時間程度(2017年2月より。それまではもう少し時間がかかった)で、
防御力1800台・武器倍率600台の装備環境を構築することができるようになる。
詳しくはエントラシリーズ、フロガダシリーズ、ハンターナビ、こちらの武器群の記事等を参照のこと。- また、武器種のバランス調整に伴う上方修正が繰り返し実施されてきた関係で、
HR帯でもハンターの戦力に関して言えば、
サービス開始当初のバランスから見れば全くの別物と化していると言える。
- また、武器種のバランス調整に伴う上方修正が繰り返し実施されてきた関係で、
- MHFはサービス開始当初からこのような超絶的なインフレ調整をしてきた訳ではない。
元々はハンターの火力をあえて減らす施策を実施したこともあり、
装備についても露骨に高性能(数値的な意味で)なものを実装するようなことはなかった。
かつての剛種(当時は特殊古龍)や、ラオキリンに代表されるような、
バランス調整の拙さから爆誕したとんでもないモンスターや、
特定条件下で途轍もない破壊力を発揮してしまった超速射、乱舞改、
爆撃オーラアローといった存在はあったが、これらはインフレ調整の賜物とは言いがたいだろう。
- そんな中、MHF運営側がハンターとモンスターの相互強化に着手せざるを得なくなったのは、
2012年以降大量普及した「秘伝防具」が原因とされている。
同年のフォワード.4アップデートにて、それまではヘビーユーザーの持ち物とされていた、
高火力を実現する秘伝防具が一般層に急激に普及する*5事象が起こり、
一方のモンスター側は剛種特異個体止まりであったことから、
(2011年以前と比べて)モンスター側に手応えがない*6という声が大きくなったのである。
しかも秘伝防具は装備選択の自由という面で極めて大きな悪影響を、極めて短い期間で齎してしまったため、
秘伝防具以外の高火力装備として天嵐武具・覇種武具の実装を急遽実施、
モンスター側も、それに見合った強敵として極めて強いインパクトを持った「覇種」を実装し、
現在ほど極端ではないものの、従来の状況から見れば大きなインフレが起こることになった。
ただし、MHF運営としてはこの状況は完全に想定外であったことが後に言及されている。
- そして明確にハンター・モンスターの強化に着手していくという、
現在の方向性がはっきり示されたのは、2013年のMHF-G1アップデートにおける、
バランス調整の拙さが原因で起こった大問題、通称「G1ショック」と言われる事件がきっかけと見られる。
上述したようにフォワード.4以後のインフレはMHF運営にとって想定外であり、
それ以前より開発が進んでいたMHF-G1ではフォワード.4以前の環境をベースに、
そこから見れば確かに強力な「G級装備」や「G級モンスター」を用意していた。
だが、上述した環境を経由してきたハンター達にとっては、
これらの装備やモンスター達が魅力的には映らず*7、
運営Pの言を借りるなら「面白みも無く、ただ時間だけが無駄にかかる」ものと評されてしまった。
この事件をきっかけに大きな方針転換が行われ、手間はかかるものの武器倍率500を超えるG級武器Lv50、
防御力が1800に達するG級防具GXシリーズが実装され、
その手間も、MHF-G2後半とMHF-G3に大幅緩和された事で、多くのプレイヤーに強力な装備が渡ることになった。
- そして、MHF-GGでは非常に強力な新武器種の穿龍棍と、
G級昇級後直ぐに入手できるエントラシリーズが実装され、現在の環境の基礎が完成。
穿龍棍が強力すぎるということで弱体化を予想するプレイヤーも多かったが、
MHF運営側は「他武器種の上方修正」という方針でその差を埋めることを約束し、
約2年かけて、全11武器種の上方修正が行われることになった*8。
また同アップデートでは絶対防御態勢という、元のコンセプトとしては防護スキルだが、
後にむしろ火力スキルとして極めて強力と認知されるに至ったスキルが登場、大普及することになる。
2015年からは硬直化したスキル構成に一石を投じるべく、様々なスキルが実装され、
同年末には究極のやり込みを行うプレイヤー向けに、エンドコンテンツとして
「G級進化武器」と「不退スキル」が実装された。
また同時期より、プレイスタイルによる火力差を埋めるための装備・スキル側のテコ入れも行われるようになり、
2016年夏頃になると、GG時代から見ても(そこまでに比べれば緩やかだが)
平均火力は更に強化される状況にあった。
- モンスター側についても、GG以降「手応えが無い」という声が再び多く上がるようになり、
至天征伐戦、天廊の番人といった従来の延長線上にある純粋な強敵モンスターや、
始種・遷悠種といった「手応えが無いと言われてしまう理由」に着目し、
MHFらしくありながら、シリーズの原点に立ち戻る設計のモンスターが登場するようになった。
そして2015年12月からは上記の極致と言える「"極み"モンスター」と呼ばれるモンスターが現れ、
クエスト設定などで物議を醸したものの強烈なインパクトを残すことになった。
- MHF-Zでは「ハンターとモンスターが極まる」というアップデートコンセプトに基づき、
ハンターは極ノ型と辿異武具、モンスターは辿異種という大きな変化が起こり、
インフレは更なる一歩を踏み出すことになった。
武器の性能そのものはG9の「G級進化武器」が未だ最強(上位派生を除く)の地位を保っており、
攻撃スキルも、スキル単体の効果で言えばG時代のスキルを超えるものは存在しない。
が、スキル発動限界を増やしたりスキル自体を強化できる辿異武具や優秀な装飾品の実装、
2018年以後はそれに加え多くのプレイヤーに秘伝スキルが行き渡るよう対策された事から、
多くのハンターがG時代を大きく上回る「総合力(最終的な武器倍率と言い換えてもいい)」を手にするようになり、
G時代前半期に比べれば緩やかではあるものの、確実に強化が進んでいる。- また、Z移行直前のG10アップデートよりHRシステムが大幅に簡略化・緩和され、
上述した「HRはチュートリアル」という状況が概ね完成した。
総じて、ハンターの平均的な火力は更に引き上げられたといえる。
- モンスターについてはZ以降の"極み"モンスターもG時代の"極み"モンスターを基準にしており、
ステータスベースで言えば強化されている*9が、動きなど総合面で言えば大きくは変わらない。
高ランク帯の辿異種も、上述したように攻撃力などに変化はみられるものの、
根本的な(必要な対策の有無も含め)難度は大きくは変化していない。
逆に、低難度の辿異種は攻撃力や全体防御率などが弱体化する調整が実施されており、
どちらかと言えばだが、G時代終盤から一歩上を行っていたモンスター側の強化に、
プレイスタイルを問わない形でハンター側が追いついてきている、と言えるか。
- また、Z移行直前のG10アップデートよりHRシステムが大幅に簡略化・緩和され、
- その後MHFは2019年12月を持ってサービス終了となった。
後述するがサービス終了が予告されたゲームではその後極端なインフレが発生する事が多いのだが、
MHFの場合は予告通り新しい武器や防具、モンスターを追加することがなく、
緩和で配布されたものもそこそこやり込んでいたプレイヤーなら持っていておかしくないようなものに留まり、
前述の「進化武器」は最後まで配布されなかった事から、最終的には上記の範囲内で収束した。
とは言え、その凄まじい数値はメインシリーズでは考えられない範囲である。
- MHFではある一時期より、モンスターの強さと世界観設定上の強さはほぼ完全に切り離されるようになった。
例えば現在のMHF-Zにおける、公式で最強と謳われる辿異種は、
元を辿ればいずれも「普通の大型モンスター」が進化を遂げたものであり、
一応同種の大型モンスターをも従えることがPVなどで示唆はされているものの、
こと古龍に匹敵するといった類の設定は示唆のレベルですら皆無である。
更に言ってしまえば、いわゆる古龍級生物であると断定されているものは
最初期の頃に実装されたエスピナスとベルキュロス程度であり、
それ以降に数多登場したモンスターの中には(そもそもの古龍種を除けば)一切存在しない。
これは同じく最強格と論じられる「極み」の名の付くモンスターも同様である。- また、MHFでは商品展開(宣伝)上、ラスボスと言われるモンスターは居ない訳ではないが、
ゲーム上では明確にラスボスとなっているモンスターは存在しない。
これらは、アップデートによってモンスター側の戦力強化(インフレ)を積み重ねていく関係上、
ラスボスや古龍種を超えるモンスターを超えるモンスターを超えるモンスター…という状況が発生し、
そこにいわゆる「世界観上の強さ」を設定していくと、あっという間に破綻してしまう為であると見られる。 - フロンティアはそもそもメインシリーズ(同作の場合はMH2が直系の親)から分岐した派生作品なのだが、
長い間ユーザーの間からはメインシリーズ直系作品の1つであると見做されており、
MHF産モンスターの強さとモンハン(メインシリーズ)における世界観設定上の強さに関しては頻繁に物議になった。
公式サイドでその辺りを完全に切り離すようにしたもの、この件が影響している可能性はあるだろう。
- また、MHFでは商品展開(宣伝)上、ラスボスと言われるモンスターは居ない訳ではないが、
- 色々書いたが、大前提として一般的なオンラインゲームでは、極端なインフレ調整は忌避されがちである。
これはインフレによって、苦労して入手したアイテムが無価値なものになってしまったりするためである。
また、極端なインフレ調整自体、ゲームの展開が行き詰った時に苦し紛れに行われるケースが少なくない、
つまり短期的な延命策で、長期的にはゲーム寿命を逆にすり減らしてしまう可能性が高いためである
(オンラインゲームはその性質上、いかに長期間サービスが持続するかがプレイヤー、運営双方で重視される)。
また、大抵の場合極端なインフレは従来のゲームバランスを崩してしまうため、
逆に遊びにくくなってしまったり、参加のハードルが高くなる事態が起こりやすい。
そもそもサブカルチャーにおける「インフレ」は「ありがたみのないもの」「無駄に増えすぎるもの」という、
ともすればネガティブな印象のあるスラングである。- 一方、ライブサービス型の(かつ、PvE式の)ゲームでは程度の差こそあれど年数の経過とともに
インフレーションは避けては通れなくなる。
プレイヤー心理として長く続ければそれだけ
「より強力なアイテムやアクションでより強力な敵に挑みたい」という欲求は強くなっていき、
ゲーム開発・運営側もそれに応えていく必要があるためである。
インフレ調整はプレイヤーサイドに忌避されがちと言うが結局のところは程度問題であり、
長きに渡ってサービスを続けていると、最終環境が元の設定とはかけ離れた数値になっている……
というのは多くのオンゲで発生している事象である。 - 逆に下方修正や弱い(或いは従来と大差ない)要素の追加、要はデフレ調整が歓迎されるかというと、
それは大概の場合、プレイヤーから非難の対象となりがちである。
場合によってはこちらの方が「延命」と非難されることさえある。
- 一方、ライブサービス型の(かつ、PvE式の)ゲームでは程度の差こそあれど年数の経過とともに
- MHFのインフレは最終数値だけ見ると原型となったMH2とかけ離れてはいるが、
12年間というオンラインゲームとしては長寿と言ってもいい長期間の運営の結果であり、
全てではないにせよ多くのプレイヤーの反応を見ながら進められてきたものである。
特に数値上昇が激しかったMHF-G2~GGの間はまさに前述の「ゲームの展開が行き詰った」
が故に起こったものと解釈しても過言ではないが、その結果MHF内で発生した現象は
「シビアに考えなくても最前線環境で遊べる」という状況であった。
元々MHFはメインシリーズと比較してもハンターとモンスターの戦力差がモンスター側に寄り過ぎており、
しかも要求されるプレイ時間も桁外れに長かったことから、
戦術を極限まで駆使して、とことんシビアにプレイしないとやっていられない状況があった。
だが2014年からは「難しく考えず、それなりの装備を整えて適当に殴ればいい」という状況になり、
2015年以後のスキル変革も「それなりの装備」に変化を齎しただけで、
「難しく考えずこちらのターンになったら殴ればいい」という根本に変化はなかった。
これによって、一般的なプレイヤーにとって害となりゲーム寿命を縮めかねない、
効率厨と呼ばれるプレイヤーが淘汰されることになり、ひいては長い間MHFで蔓延っていた、
効率狩りこそが正義という風潮そのものが完全に打破されることになった。
オールドスタイルのオンラインゲームではインフレ調整で上手くいかなくなるものも散見される中で、
綱渡りだったとはいえプレイヤー心理を掴みつつインフレ調整を上手く行っていった方の作品だったと言えるだろう。- ただし、カプコン側としてはこのようにサービスの長期化でゲーム性が大きく変わっていくというのは
「モンハン」としてはあまり良い傾向ではないという結論に達しているらしく、
MHFのようなライブサービス型のモンハンは今後登場させる予定がないことが言及されている。
- ただし、カプコン側としてはこのようにサービスの長期化でゲーム性が大きく変わっていくというのは
- なお、インフレ調整によって爆弾や拡散弾など、
固定ダメージを与える要素の恩恵が得られにくくなるという事象は起こりうる。
実際に爆弾と拡散弾は、現在のG級では全くと言っていいほど用いられていない。
ガンランスの砲撃や毒ダメージなどは特にその影響を受けやすいのだが、
前者は砲撃Lv9と武器倍率による砲撃威力強化というテコ入れによって、
後者は毒で大きなダメージを与えられるモンスターと、状態異常追撃スキルによって、
それぞれインフレに付いていけるような措置が行われている。- 爆弾については、そもそもサービス黎明期から特殊なクエストを除き、
ダメージ量が乏しいという指摘がなされていた。
その為MHFに限って言えば、爆弾があまり有効でないのはインフレ調整とは無関係である。
拡散弾は一応G級で強化される要素がなくはないが、一般的ではない。
- 爆弾については、そもそもサービス黎明期から特殊なクエストを除き、
- 火力のみならずゼニーのインフレも激しかった。
連戦が常態化することで獲得ゼニーも増え、さらに金策クエストや各種ブーストも多数存在するので、
サービス当初と比べるとハンターが簡単に大金を獲得できるようになった。
当然、新たに追加される武器防具の生産と強化はそれに見合った金額となる。
ゼニーの所持上限はMH2から変わらない999万9999ゼニーだが、
覇種武器などは最終的に合計1000万ゼニー以上要求される場合もあった。
現在では全ての覇種武器は概ね60万ゼニー前後の強化費に落ち着いているが、
それでも他シリーズと比べると莫大な金額であることに変わりはないだろう。
これが問題視されたためか、G級以降は「Gゼニー」(Gz)という新通貨でデノミされるに至った。
こちらも、G級の通常装備は数十万Gz程度で収まるが、
辿異武具などは200万以上のGzが必要となるなど、Z直後にはインフレがあった。
以後については辿異武具の「次」が無く、ゼニーのインフレは落ち着いた。
MHXR
- MHXRはスマートフォンゲームだが、
構造としてはMHF同様、アップデートでモンスターや装備が拡張していくゲームであるため、
サービス開始直後から見れば、様々なインフレが発生していた。
- 2018年5月末に実施されたVer.7.7アップデートからは、
装備の攻撃力・防御力の値のインフレ速度が従来よりも速くなっている。
それまでは強襲武器であれば、約5ヶ月かけて同じくらいの攻撃力の値を有するものが5属性分全て用意され、
その後はやや性能の高いものが5属性分実装され……というサイクルをとっていた。
しかし、Ver.7.7以降はこのサイクルが崩れ始めているのである。
ver.7.7以前の状況から軽く触れていくと、
Ver.7.4のラージャン武器が上記の「やや性能の高いもの」に該当し、
それと同程度の性能を持つ他の4属性が実装されていく……と思われていた。
しかし、オオナズチ(Ver.7.5)とテオ・テスカトル(Ver.7.6)の次のモンスターであるモルドムント(Ver.7.7)の武器は、
ラージャン武器以降の平均であった攻撃力約2100を超える約2300であり、
2月末のアップデートで一度インフレしてからたった3ヶ月後にまた一段階インフレし始めたのである。
同様のペースで8月末、11月末のアップデートでもインフレが起きた。
- それでも、武器に関しては強襲産・ニャン検隊産等を問わず、
武技の性能次第では最新強襲産にすら遠く及ばない攻撃力であっても活躍できるものは多く見受けられるが、
一方の防具はより厳しい状況に置かれている。
例えば、土属性モンスターの強襲防具で最高級の防御力を有するものは、
約450のアカムトシリーズとベルグラ・双シリーズだった時期があるのだが、
その次に強い強襲防具は上記よりも防御力が50ほども低い、
約400しかないベルグラシリーズとゴア・双シリーズだったのである。
その程度の防御力しかない防具を最新強襲クエストで使うとなると、
他の部位の防御力をどうしても大幅に高くする必要がある。
これは課金して得るのが主流な一部のニャン検隊産防具に関しても似た状況となっている。
- また、特に防具は次のアップデートで実装されるモンスターへ対抗するスキル構成になっている場合が多いのだが、
これが雪だるま状態と劇毒を扱うウラガンキン輝岩種、
泥まみれ状態とずぶ濡れ状態を扱うラギアクルス陸征種といった、
あまり使い手がいなかったり属性とは合わない状態異常を扱う変わり種が登場してくると、
必然的に防具の汎用性が低くなり、他のクエストでの使い勝手も非常に悪くなる。
進化先の実装によりスキルが改善される例もあるが、それも実装ペースが遅いためにあまりアテにはならない。
これもある意味では、モンスターが強大になるインフレの弊害と言える。
- これらの状況について、少なくともネット上ではこれに対する厳しい意見も見られた。
MHFのサービス終了告知と時期を同じくしてアップデートが一切行われなくなり、
そのまま翌年11月にはサービス終了となったのでそれ以降のインフレは発生しなかった訳だが……
その他の派生作品
- 現在ではサービスを終了しているが、モンハン探検記 まぼろしの島や、
モンスターハンタースピリッツでもインフレは発生していた。- スピリッツはカード連動型アーケードゲームでありオンラインゲームではないのだが、
こちらは基本的に同一のゲームデザインで基板のバージョンが上がっていき、
新しいカード(モンスターとそれにまつわるハンターの装備)が追加されていくという仕組みになっている。
そして新しいカードはいずれもそれまでのカードに比べて非常に強力なものとなっており、
それらが登場するたびにプレイヤーの環境が大きく変わるという状況が度々発生していた。
- スピリッツはカード連動型アーケードゲームでありオンラインゲームではないのだが、
メインシリーズ
- MHXX以前のメインシリーズにおいては、1作品のアップデートが長く続くことはない為、
上記のようなインフレが起こった例はなかった。
ゲーム全体のバランス調整が旧作と比較してインフレが進んだと評されることもあるが、
完全新作が出るたびに環境もリセットされる(=下方修正される事もある)ので、上記の通りインフレではない。
特にMH4(G)では発掘装備とお守りによって、過去作よりも攻撃力やスキル自由度が上昇したことにより、
(旧作と比較して)インフレが進んだなどと言われることがあるが、
これも次回作のMHXに持ち越されたわけではないので厳密にはインフレとは呼べない。
モンハンの場合は「G級追加」という、既存シリーズの拡張・完全版が発売されるのがお約束だが、
強いて言えばこのG級追加版において前作の上位装備と追加されたG級装備を比較し、
(前作と比較しての)インフレと感じる人もいるようだ。- 特にMH4→4Gでは、MH4でエンドコンテンツとして用意された発掘装備の理想値を、
4GのG★1ランクの武器が普通に超えるようになっているためにそう感じたプレイヤーは多かったようだ。
- MH3GはMH3からの引き継ぎはなかったため、装備ステータスがゼロから調整されている。
そのため、上位後半~G級にかけての攻撃力等の数値はP2G・4Gより低めになっている。
- 特にMH4→4Gでは、MH4でエンドコンテンツとして用意された発掘装備の理想値を、
- MHWorldでは、メインシリーズとしては初めてのアップデートによってモンスターや装備が拡張される
という仕組みが取られており、追加されたモンスターや装備は既存のものと比べて強力な傾向にある。
MHFと比較すると小規模には収まるが、
メインシリーズでは初の明確にインフレが発生した事例と言える。- なお『アイスボーン』は超大型アップデートと銘打たれているが、
事実上の次回作であることから、ここで追加された強力なモンスターや装備に関しては
(無印MHWorldとの比較においては)インフレと表現するのはあまり適切ではない。
またアップデートでの追加装備を除いたマスターランク(G級相当)装備の性能は、
過去作におけるG級相当性能に収まっており、これも前例通りと言える。 - ただし、MHWorldでスキルと装飾品の仕様変更がなされた結果、
ハンターが一度に発動できるスキルが大幅に増え、特に火力面の増大が著しいこと、
その装飾品の収集が主にクリア後のエンドコンテンツとされていたこと、
アップデートで定期的に強力な装備が追加されていたこと、
攻撃チャンスやダメージの増加を狙えるクラッチクローの追加などが考慮されたのか、
マスターランクのモンスターの基礎体力の増加具合が、過去のG級の比では無いほどのインフレを起こしている。
参考までにリオレイア単体クエストの上位→G級での基礎体力の上がり幅を過去作と比較すると、
P2Gでの上がり幅は約1.4倍、直前のG相当作であるXXでの上がり幅は約1.9倍、
それらに対してMHW:I(ソロ体力)での上がり幅は約3.2倍と明らかに頭一つ抜けている。- なお、体力のインフレに関しては、MHWorldから全体防御率が事実上廃止されたことも関係している。
過去作では全体防御率を低くすることで、見かけの体力は大したことなくても耐久力を上げられたのだが、
恐らくダメージ表示の混乱を防ぐためにこれが殆どのクエストで等倍に設定されるようになったため、
単純にモンスターの体力だけで耐久力を上げざるを得なくなったのである。
- なお、体力のインフレに関しては、MHWorldから全体防御率が事実上廃止されたことも関係している。
- MHW:Iのアップデートでは前作以上のペースで初期実装品を超える性能の武器が多数実装され、
最終的に武器倍率で見て100程度の差が付くほどの猛烈なインフレが発生した。
もちろん製作難易度も相応に高いものばかりだが、最終的に初期実装品が最適解となる場面は皆無となった。 - 最終的に担がれる武器が同じものばかりになるというプレイヤーの批判に対応するために
武器の重ね着が追加実装されるなど、開発側も試行錯誤をしていたことが窺える。
- なお『アイスボーン』は超大型アップデートと銘打たれているが、
- MHRiseでは上位までしかなく、武器倍率なども従来の上位から少し上かどうかレベルでしかないが、
ハンターの立ち回りの面において常識を覆すシステムが大量に投入され、
機動力という面においてインフレを実感したハンターが多かったという(余談の項も参照)。
Riseは一応アップデートによるモンスターと武器の強化段階追加が行われたが、
攻撃力にして30あるかないか程度の増加であったことや、
諸般の事情でアップデートという形で対応したのではないかという推測もあり、
そちらの面でインフレというのは特に聞かれない。
- MHR:Sでは過去のG級作品と比較して元から攻撃力の増加が凄まじく、
初期実装の武器で既にMHW:Iの「最強」とされた武器群に匹敵・或いは凌駕する攻撃力を発揮している。
上位の最終強化武器から見ると130近くの強化を遂げているものさえあり、
更にはバランス調整として近接武器種の多くがモーション値を大幅に強化され、
ガンナーも威力強化の手段を設けられたことで、
総合的な火力面においてはメインシリーズ史上最高クラスとも呼べる超強化を発売当日の時点で発現している。
当然モンスターの強化も著しいが、本作では行動面のシビアさはそこまででもなく、
体力と攻撃力を高め、一応ながらハンター側にも利がある仕掛けでもって対抗している。
とはいえ、その体力は最大で8万近くに達するなど、こちらもメインシリーズ史上最高クラスの水準である。- 過去作MHXXにおいて、ラスボスアトラル・カの体力が全体防御率込みで13,641ほど、
超大型モンスター代表とも言える巨大龍ことラオシャンロンの体力が
同じく全体防御率込みで57,000ほどである、ということを考えれば、この8万という数値の凄まじさがわかるだろう。
文字通り超強化されたハンターと超強化されたモンスターのぶつかり合いをインフレと表現する人は多く、
余談の項にもある原義に近い使われ方をされているといえるだろうか。
また、以下に述べるが、その後のアップデートにおいては適切な意味で、かつ類を見ないインフレが起きた。- Ver.11で傀異錬成が追加。
既存の防具に(上手くいけばだが)1部位につきLv2スロット2~3個追加相当のスキルを追加できるようになり、
一気にスキル搭載量のインフレが発生した。
理論上はMHW:Iのドラゴン装備に匹敵、あるいはそれを上回るほどのスキルの搭載すら実現されつつある。
その後のアップデートによって傀異錬成で出現するスキルの種類が増えたりなど、スキルのインフレは止まらない。 - 武器のほうも、傀異錬成により基礎性能を引き上げることができるようになり、インフレが進みつつある。
さらにVer.14では傀異錬成のスロットを拡張するだけで得られる「スロット拡張ボーナス」が実装され、
全てのMR最終強化武器が、攻撃力にして5~10%、属性値は最大で元の2倍強と大幅に基礎性能を引き上げられた。
ここに既存の傀異錬成による強化を追加できるわけで、MHR:Sの武器のスペックは、
メインシリーズ史上最強と言っても過言ではないだろう。 - 一方でアップデートで追加される武器は、MHW(:I)と違いいずれもMHR:S発売時点の水準を逸脱しておらず、
黒龍武器のような、いわゆる「一強」と呼ばれるような武器群は追加されていない。
初期実装のMR最終強化武器を傀異錬成で強化して最適解とするケースも多く、
様々な武器が一線級の活躍を見せるこの「インフレ」は、ユーザーに割と受け入れられている。 - そして、モンスター側もハンターのインフレに呼応するようにインフレを開始。
そもそも初期から実装されていた傀異化の時点で体力も攻撃力も爆増していたのだが、
傀異討究クエストの実装でさらにそれが高まり、LV300では体力10万~15万に達するものが殆どに。
そして極めつけの特別討究クエストでは、体力はLV300のさらに1.5倍前後増加し、20万に達するものも現れる。
だが、極まったハンターはこのような化け物モンスターも10分以内で下せてしまう。
- 過去作MHXXにおいて、ラスボスアトラル・カの体力が全体防御率込みで13,641ほど、
余談
- オンラインゲームではMHFに限らずインフレと呼ばれる現象が起こるゲームが多い。
上でも少し述べたが、まぼろしの島でもサービス末期には壮絶なインフレーションが行われた。
無論カプコン製のオンラインゲーム以外でも、この手の事例は頻繁に耳にすることができる。
理由についてはMHFの項で述べた通りだが、その反響はゲームによって異なる。
- 派手な演出がインフレといわれることもドラゴンボールの戦闘シーンが原因である。
様々なアニメやゲームで光の弾やレーザーで激しい戦闘を繰り広げられている様子を見て、
この漫画を思い浮かべる人も多いのではないだろうか。
また、目にも留まらぬ高速移動を連発したり、地面に叩きつけられた衝撃で岩盤が大きく砕けたり
もろに攻撃を食らった後、攻撃をうけたキャラクターが強固な山や壁をいくつも貫通してふっとぶなど
相手の圧倒的な強さが簡単に分かるように表現した戦闘シーンも当漫画特有のものとして非常に有名である。
- ゲームにおける演出面のインフレに関しては、ハード・ソフト(開発環境)両面の性能向上によって、
開発側で新たな表現手法が用いることができるようになった結果という側面もある。
モンスターハンターではテオ・テスカトルの粉塵爆発が好例であり、
単なる爆発から爆破後の黒煙、高熱による陽炎、衝撃波による周囲の揺らぎと演出がパワーアップしている。
- ちなみにオンラインゲームにおけるバージョンアップ時や続編発売時に
既に存在していた強い要素を下方修正することをナーフ(Nerf)*10
弱い要素を上方修正することをビーフアップ(beef up)*11と呼ぶ。
関連項目
ゲーム用語/延命 - 「インフレはゲーム寿命を縮める」つまり相反する要素だと言われるが、サービスを長期的に継続する上で避けては通れない(つまり延命)要素とも言える。
ゲーム用語/金策 - 経済的な意味で
世界観/ゼニー - 経済的な意味で
ゲーム用語/課金 - 調整が上手く行かないと(ゲームを円滑に進めるための)課金額だけが上がっていく事がある。現実の経済でのインフレによる物価高や増税、円安などのゲーム外部の影響で値上げされる場合もある。