世界観/ボウガン

Last-modified: 2023-12-16 (土) 19:24:24

「クロスボウ」のこと。ただし、モンハンではかなり意味合いが異なる。

目次

現実世界でのクロスボウ

  • 木でできた台に横倒しした弓を取り付けた武器。日本や中国などの漢字圏での呼称は「弩」*1
    一見複雑そうに見えるが、実は紀元前からその存在が確認されている極めて歴史のある武器の一種である。
  • 弓は古くから狩猟具や戦闘用の武器として広く使われてきた。
    しかし弓は威力を高めようとすると大型化が避けられず、
    大きくなればなるほど引き絞るために力が要求され狙いもつけづらくなる。
    扱いには高度な技術と筋力、体格も必要となってくるため
    「誰でも照準をあわせて引き金を引くだけで発射できて、しかも高威力」といった武器が求められ、
    そうした需要に合わせてクロスボウの類が生まれる事になる。
  • 弓を引き絞り、ボルト、またはクォレルと呼ばれる専用の短く太い矢を装填し、
    引き金をひっかけることで準備完了となる。
    腕の力だけで引き絞らないといけない弓と違い、
    先端に足をかけるパーツをつける事で背筋力で引けるようにしたり、てこの原理で引けるようにする、
    ハンドルを回して巻き上げる仕掛けを導入するといった工夫で多くの人が扱えるようになったが、
    その代償として連射性や生産性は犠牲になった。
    • 連射性は数でカバーすれば良いという話でいち早く弩を導入したのが東洋、中でも中国である。
      それを輸入する形でイスラム圏、ヨーロッパ圏と伝播していく事になる。
      ヨーロッパ圏では要人を捕らえ、身代金を要求したり
      交渉を有利に進めるためにするのが戦争だった事もあり、
      鎧を容易に貫通して死傷させるほどの威力を誇るクロスボウはやや過剰な兵器であるとされ、
      ローマ教皇の招集した欧州諸国の会議によって、キリスト教徒相手には使用禁止とされるほどだった。
      ただし異教徒に対してはそれ以後もガンガン使ってバンバン殺している。
    • 一方、東洋は東洋でも日本では例外的にあまり使われていない。
      平安時代ぐらいまでは使われた形跡があるものの、起伏の激しい日本の地形に噛み合わず、
      また武士団の成立に伴い戦闘職の専門化が進み、「誰でも使える」という利点が薄れて一気に廃れてしまう。
      戦国時代には、訓練期間や発射速度は変わらず、威力と轟音による示威効果に優れる
      鉄砲が伝来したため、弩は完全にその需要を失った。
      後の江戸時代に成立した日本の伝統武術に、弓術や砲術があっても弩術がないのはそのためである。
  • 近現代では銃の高性能化に伴い弓は戦争には使われなくなったが、
    操作が簡単である事から、塹壕に篭ってのにらみ合いが続いた第一次世界大戦では
    火薬を括り付けて飛ばすという目的で使われていた。
    その後、榴弾を飛ばすグレネードランチャーが登場し真っ向勝負の戦場からは姿を消す事になるが、
    「火薬が必要ない」「銃と比べると発射音が小さい」などの長所から、
    現代でも暗殺などを行う特殊部隊や偵察斥候部隊用としてごく限定的に生き残っているのではとも言われる。
    この用途でも消音器つきの小型銃の方が強力なため、相当に珍しいものになるだろうが…。
  • 現代では狩猟、射的などレジャーとして使われることがほとんどで、
    この分野でも実用性と言うよりは「あえて鉄砲を使わないスタイル」のためのもの。
    日本では狩猟目的の使用が禁止されており、基本的には射的競技のみで使われる。
    入手の容易さと殺傷力の高さから違法な鳥獣の駆除、あるいは器物損壊や
    傷害・殺人目的で使用されてしまうこともあったため、
    2022年の法改正に伴い規定のパワーを越えるものについては所持が許可制になった
    生き物や物品に向けなくても、無許可で所持したり装填や発射しただけで罪に問われるので、
    モンハンのボウガンに憧れた人はきちんと許可を取るか、合法で安全な玩具などをしっかり選んで入手しよう。
  • 「弓(bow)」と「銃(gun)」を組み合わせた「ボウガン」は
    欧米式の弩を輸入販売する際の商品名として作られた和製英語であり、
    その名もズバリ「株式会社ボウガン」が商標権を持っていた。
    わかりやすい名前のせいか同社と無関係の文脈でも西洋弩の通称として広く使われており、
    この辺りは「ホチキス」や「マジックテープ」、「キャタピラ」とも共通している。
    現在では代名詞として広く普及したことを理由に商標登録の更新が行われておらず、
    各種報道などにおいても一般名詞としてボウガン、ボーガンなどと呼称される。
    公的な書類など厳密な区別が必要な場では英語通りに
    「クロスボウ(いわゆるボウガン)」や「洋弓銃」といった表記になる。
    • 弩術に縁が乏しかった日本に於いて洋弓銃が一般認識として普及したのは
      ざっくり説明して1950年以降と解釈しても良いぐらい現代の話である。
      ただ「弩」と言う言葉そのものは江戸期や明治期にも存在しており
      「かつて中国などで使われていた巨大な設置弓(バリスタ)」と解釈されていた。
      巡り巡ってとても大きい有様を「超弩級」と示すなど
      「弩」と言う単語はボウガンとは完全に異なる意味合いとして定着した。

モンハン世界でのボウガン

  • 「腰だめでぶっぱなすのが標準の構え」という射撃姿勢を取るが、これは現実の射撃武器だと珍しい*2
    目測で狙いが付けにくいのに加え、バズーカのように肩で重量を支えたり、
    小銃のように肩で反動を受け止めたりできないため、
    腕力だけで重量と反動を支える腰だめは、あまり用いられない構え方である。
    肩乗せできず、小銃より重くて取り回しにくい小型の機関銃で、
    自分の移動を前提に*3重心を体に引き付け、あまり狙いをつけず弾をばら蒔く時と言う、
    やや限定された状況での構えであり、どちらかと言うと
    ランボーやターミネーターのようなフィクションのイメージが先行するかもしれない。
    • そもそもモンハン世界のボウガンにはスコープがついており、
      射程と精度を高めた狙撃竜弾の射撃姿勢も現実のスナイパーに近いなど、
      射撃時の姿勢安定と照準の使用が効果的なのは既に理解されている。
      モンスターに通じる威力の飛び道具を作るにはどうしても大型化してしまい、
      サイズ的に小銃のような肩付け射撃はできず、かと言って一撃必殺の威力は無く射程も短く、
      モンスターが接近してきた際の回避まで考えたら重心が高く動きにくい肩乗せも厳しいといった、
      技術水準からくる必要性と戦闘スタイルに合わせたものだろう。
      このへんは、現実の機関銃が抱え撃ちをする(させられる)シチュエーションが
      モンスターハンティングの場では頻繁に起きているとも言える。
  • ひとつの場所、ひとつの目標に群がると互いが邪魔になる近接武器と異なり、
    ボウガンのような射撃武器は、多人数が単一の目標に火力を集中させやすい
    ギルドの人数制限の上ではやや活かしきれないメリットだが、
    実際にモンハンでも拡散祭りのような火力集中戦術が存在するので、何気にきちんと反映されている。
    現実で近接武器が廃れ射撃全盛になったのも威力や射程以外にこうした理由があり、
    モンハンのボウガンも技術や素材などの条件さえ整えば凄まじい力を発揮し得るだろう。
    ただし現状に限れば、ハンターが爆薬以上のとんでもない剛腕の持ち主である上に、
    ボウガンやそれに準ずる破壊力の射撃武器も実質ハンターにしか運用できないことから、
    今後よっぽど技術革新が起こらない限りは、ボウガンの時代は遠いものと思われる。
  • 現実の歴史とは逆に、MHシリーズでは先に火器のボウガンがあり、後から弓が登場した奇妙な構図がある。
    いくら自然の素材に火薬や弾丸の素材が揃っているとは言え、銃を作れるなら弩が、
    弩が作れるなら弓が先に作れるはずなので、少々順序が前後していると言える。
    • 理由を付けるとすれば、大型モンスターの狩猟用に使われていたのがボウガンで、
      技術の向上により従来小型動物用だった弓が大型モンスター狩猟に使えるようになったと解釈もできる。
      また、大型モンスターに通じる巨大な弓を担ぐよりは、その筋力を活かして
      既存の剣や槍を使ったほうが確実という脳筋的な事情かも知れない。
  • 使用するのは矢ではなく火薬を装填した弾丸で、構造的にもほぼ銃である。
    武器解説などでもあまり弓の側に拘っているものはなく、
    職人たちにも弓の方を強化する発想は存在しないようだ。
    以上の理由から「ボウガンに弓が付いている理由」は、古参ハンターからも
    「突っ込むだけ無駄なモンハンの伝統」としてほぼ放置されている。
    • 現実のオートマチック銃器も
      「バネが戻る力で次弾を装填する」「撃鉄を作動させる」といった構造に
      反発力を生み出すバネは欠かせない部品なので、
      火薬式の弾薬と、弓=板バネが同居する形態そのものは、
      (コンパクトな金属バネを見慣れたプレイヤーの感覚的な違和感はともかく)構造的にはさほど奇妙でもない。
      引き金を引くだけで撃ちまくれるモンハンボウガンの弓も、初弾装填時のみ手動操作で、
      あとは発射に連動して勝手に動くなど実銃のブローバック機構と同じ動きをしていたりする。
      威力に影響する発射機構は火薬式、弓は次弾装填のための仕掛けであれば、
      作動力を大幅に上回るほどに弓バネを強化する必要も無い事になる…
      等々、実銃と照らし合わせると説明がつきそうな構造になっている。
      • 比較的珍しいそもそも弓が付いてないボウガンに関しては、
        コイルスプリングが入っていると考える事はできる。
        珍しい理由についても、信頼性と耐久性のあるコイルスプリングの生産には高度な冶金技術を要するので
        モンハン世界では弓バネ式が主流と言い逃れる言う余地はあるか。
        いずれ弓ありボウガンにしても弓なしボウ(?)ガンにしても、
        公式で図解が示された事は無いので、
        今のところは「それっぽい構造だがよく判らない」のが実情である。
  • 弾丸はカラの実、カラ骨など中空の自然素材から生産される。
    ゲーム中ではその姿をはっきり見る事はないが、設定資料等に描かれているイラストは
    ライフル弾のように近代的な椎の実型をしている事が多い。
    ただ、大砲の弾は丸型で薬莢も使っていないため、
    モンハン世界の人々が薬莢や弾頭形状の特性を理解して用いているかは不明。
  • パワーバレルやロングバレルを装着し銃身を伸ばすと火力や適正距離がアップするので、
    ライフリング*5が存在している、という解釈もあるが、
    銃身延長はライフリングの無い滑腔銃身*6でも有効な改造なので、
    モンハンボウガンがどちらの方式か、ここからは断定できない。
    MH2のOPなどのようにムービーや紹介映像で弾丸がアップやスローになるシーンでは、
    ライフリング回転しているように見えなくもないものと、
    発射の際に装弾筒*7が分離し、弾丸に安定翼があり回転しないなど、
    滑腔砲の特徴*8が描写されているものが混在していて、
    実機プレイに反映されているのは後者。
    • 同じバレルから発射できる拡散弾徹甲榴弾*9なんてものもあり、
      一部に関しては異常に高性能であるのも特徴と言えよう。
      装弾筒はこれらの大型弾に合わせた口径で貫通弾を扱う為の物かもしれない。
  • とは言え如何に高性能だろうと、そこは基礎工業技術がせいぜい近世レベル*10のモンハン世界。
    近代の銃火器と比較すれば威力*11・射程*12・精度*13ともに大きく劣後する代物である
    この辺りの問題は技術的障壁もさることながら、自然由来で入手も運用もしやすい弾丸が、
    しかし人の手によって工作精度を上げづらいがために生じているボトルネックであると思われる*14
    まあ近代兵器並みの性能*15になったらモンハンの前提が破綻すると言うメタ事情もあろうが。
  • ただし、そもそもモンハン世界の携行火器がボウガンだけかと言えば全くそんな事はなく、
    レザーシリーズレギオスシリーズなどの腰装備には
    弓の付いていない小型の拳銃らしきものが付属しているのが確認できる他、
    MH4の冒頭ムービーでも我らの団団長が手持ちの拳銃を用いて信号弾を打ち上げている姿が描かれている。
    またギルドガードシリーズの腰装備にも銃が付属しており、
    説明文にも「この銃は対飛竜用ではない」旨の記述がある。
    明言された訳ではないものの、この装備の着用者の特質や自然に読み取った文脈から
    おそらく対人用の武器であることは容易に推測ができる。
    既に弓を必要としない携行火器が存在するのにもかかわらず、
    それでも依然としてボウガンという存在が狩猟の最前線で活躍している点については、
    ボウガンはむしろ、弾丸すらものともしない遥かに強大で驚異的な生命力を誇る竜達に対抗する為、
    工房の知恵と技術力を結集させ火薬を用いる銃とクロスボウの特質を掛け合わせ
    火力を追求した結果の巨大火器…といった考察も可能である。
    かの老山龍砲の説明文にも「要塞砲の性能を超越」といった記述が確認できる。
    「要塞砲」が何を指すかによって多少の違いはあれど、少なくともモンハン世界においては
    銃>ボウガンといった式が成り立つものでは無いということは留意すべき点であろう。
    • どこまで真剣に考察するべきかは不明だが、
      ジェスチャーの中に「狙いを定めるポーズ」というものもあり、
      これを行うとハンターは我々の世界で一般に知られる
      「銃を構えるジェスチャー(握り拳の人差し指を前に伸ばし、親指を上に向けたポーズ)」を取る。
      このようなポーズが「狙いを定めるポーズ」として認識されているということは、
      拳銃型の武器がジェスチャーとして通じるほどに浸透している、と解釈することも可能である。
  • 理由は不明だが、ハンターが攻撃力UPの食事や怪力の種などの効果を得ていると
    ボウガンの威力まで上がると言う、よく考えると不思議な特徴を持つ。
    ただ引き金を引くだけの構造のはずなのだが、一体どこに腕力が影響する要素があるのだろうか。
    それとも、攻撃力UP系の補正効果にはボウガンを上手に扱い高い威力が出せるという、
    器用さなどのような部分にも補正を働きかけるということなのかもしれないが。
    • とは言え、これについては使用できる武器が剣などの腕力を要求されるものと
      銃砲類のような要求されないものが混在しているゲーム全般でよく言われることである。
    • 腕力が上がることで射撃反動をより抑えて急所への命中精度が上がるのかもしれない。
  • ボウガンにも当然ながら攻撃力が設定されており、高い方が与えるダメージも大きくなる。
    が、よくよく考えてみるとそれも奇妙な話である。
    というのも、銃器の威力に大きく関わってくるのは、基本的には弾丸の性能とバレル長である為、
    同様の銃身長と同様の弾丸を使用しているのならば、
    どんな素材を使っていようともその威力に大きな差はない筈なのだ。

    ボウガンの強度に応じて火薬の量を調整している可能性もあるが、
    もしそうならば火薬の量を間違える事でボウガンを壊すような事態が頻発しかねない為、それもまた疑問符が付くところ。
  • なお、いまだにモンハン世界で矢を使用するボウガンはバリスタしか存在しない。
    携行可能なボウガンとしては一切存在しないが、
    これが「実用性がないから」なのか「開発すらされていないから」なのかは不明。
    後者だったら、この世界の技術はどんな発展を遂げてきたのか、という話である。
    初代モンハンシリーズでは、単なる弓すら登場していなかったわけだが。
    • 無理矢理解釈するなら、クロスボウは連射性では弓に劣り、威力や射程では火薬銃に劣る。
      前述のように現実でもクロスボウは「訓練の容易さ」「取り回しの良さ」により
      数を揃えることで威力を発揮する武器であり、
      訓練された兵士には弓の方が取り回しが良かった側面もある。
      つまり、超人であるハンターの剛腕で振るう限り通常の弓のような連射性は発揮できず、
      かと言って単純火力でも火薬式ボウガンに勝てない…
      というどっちつかずな立ち位置となるため、ハンターの武器としては採用されないのかもしれない。
      バリスタほどに大型化することでようやくモンスターに通用する威力になる…と考えれば一応矛盾はない。

余談

  • 3及び3Gでは水中でボウガンを使用しているが、
    銃を水中に落とした後そのまま使用すると、内部の圧力が高まり破損する危険があるので、
    銃身内の水をしっかり取り除く必要がある。

関連項目

武器/ライトボウガン
武器/ミドルボウガン
武器/ヘビィボウガン
武器/ボウガン(組立式)
システム/ガンナー
システム/スリンガー
アイテム/弾丸
フィールド/バリスタ


*1 「ど」、「おおゆみ」。なお「いしゆみ」は誤読が定着したもので、本来の「石弓」は拠点の壁から岩石を落とすための防衛兵器で弓とは関係がない
*2 初期の無反動砲などに腰だめ射撃の記録はあるが、すぐに肩に担ぐ姿勢へと統合されていった
*3 機関銃は基本的に地面や土嚢などに置いてから射撃する
*4 ボウガンである以上ボルトと呼ぶべきなのかもしれないが
*5 バレルの内側に施された緩やかな螺旋状の溝のことで、銃弾がバレル内を進むときにこの溝によって進行方向を軸とした回転が生まれる。これによりバレルを出た後の銃弾の姿勢が安定し、飛距離や命中精度、破壊力の向上につながる
*6 現実の古式銃や戦車砲などに見られる
*7 弾丸の外側を覆って口径を増大させる部品。砲口より細い弾丸を扱えるようになる
*8 ライフル砲用の装弾筒も存在するが、これは滑腔砲用の新型砲弾を旧式のライフル砲で撃てるよう「ライフリングを無効化する」為のパーツ
*9 現実で言うと第二次世界大戦辺りに登場した代物
*10 なお、同じ火薬を使った射撃武器である大砲に至っては、中世以下の粗雑な代物である
*11 目視できる程度の弾速では大した破壊力にならないのは道理
*12 弾速からも飛距離は知れており、また仮に数百m単位の有効射程があれば、誇り高いハンターはまだしも密猟者が使って大暴れする筈である
*13 個体差の生じる自然物を、ライフリングが無いか、あっても彫りが甘い銃身から放つのだからむしろまっすぐ飛ばすのも覚束ないだろう
*14 便利な素材に頼る余り、ボウガンの規格が半ば固定化され改良が滞ったり、また素材の限界を超えた性能も引き出せない欠点が生じてしまう
*15 歩兵が携行する小銃でさえ有効射程500m以上はザラ