怜ちゃん/怪文書1

Last-modified: 2020-09-08 (火) 01:38:14

皆隊長の事が好きなんだね
まぁ私には関係ないけど
でもまぁ叢雲の件とか成子坂で受け入れてもらった件とか一応手間かけてるというかお世話になった分は返さないと気分が悪いし…
チョコだけじゃなくていろいろ返したいとは思ってるよ…その…見てくるのとか触って来るのとかも目はつぶるけど…私なんか見て面白い?
それなら楽でいいんだけどなんか物足りないというか…
特に私何もしてないし…
でもそういう事期待されても本当にそんな魅力ないから…困るよ…

怜ちゃんはツンデレというか素直になれないんじゃなくて素直に受け取れていた愛情が今までに何度も取り上げられてきたせいでじゃあもういいよ愛情なんていらないからって背を向けちゃっただけで本当はどうしようもなく愛を求めてると思うんだよねだから一度築いた繋がりにこだわるしもしまた壊れてしまったら怜ちゃんは完全に一人になってしまうような気がするんだ毎晩自分は絶対いなくならないよ大丈夫だよって声かけないと寝れない怜ちゃんとずっと抱き合ったまま互いの存在を繋いでいたいんだけど怜ちゃんどこへいくにも裾をつまんでついてくると周りの目がその嫌じゃないよ?だけどね職務質問されてる最中に「私はこの人から離れられないから…」って潤んだ眼で言わないで駄目違うんです僕は

(楓:コーヒーを卑しくすすめる怪文書に対して)
なにやってるのさ…
コーヒーばかりだとトイレも近くなるしカフェインの取り過ぎもあまり良くないよ
何事も過ぎたるは及ばざるが如し
別に私には関係ないけど一応世話になってるしまぁ忠告なんてだいそれたものじゃないけどこれココア
ポリフェノールが入っているのと優しい甘さで温まるってのもいいんじゃないかな
ココアはとにかく粉が沈殿しやすいから少量の牛乳を温めたものを含ませてよく練るんだ
カップも温めておくのが気遣いかな…
別に礼とかいらないよ
世話になった分の恩返しだから

受けた恩を返すこと。
なるべくならそういった借りを作らない方がいいのだけど私はどうも信用されていないらしく世話を焼かれてしまうことが多いから必然的に返すものがどんどんと膨れ上がっていくのだ。
最近は特に成子坂でのアクトレス関係で世話を焼かれている。
これには少し困ってしまう。隊長も隊長だ。そこまで私なんかにかまうことないのに。
バレンタインのときに少しは返せた気がしたのに気づけばあっという間に返すべきものが増えてしまっている。
そう伝えると隊長はいつものへらへらした顔を少し引き締めると私に言う。
貸し借りというものは借りたものを返して終わりではない。そこには必ず気持ちが乗るから互いにプラスになって戻っていく。それを繰り返すことで人と人とが強く結びついていくんだと。

そんなこと言われても困る。私はそこまでの人間じゃないし。少しドヤ顔になった隊長は可愛い女の子の世話を焼くという自分の欲もあるから気にすることはないと笑った。可愛い?誰が?
可愛いというのはこう、ちがう。少なくとも私じゃないはずだ。
気になんかするようなことじゃないのにふと頭の中をぐるぐると言葉が回る。
どうしよう。湯船に浸かりながら考えていたせいか湯あたりしたのだろう。そうに違いないそうでないと困る。
でないと私は……
脱衣所で体を冷やしながら私は湯冷めするまでまた思考のループにはまっていった。

隊長…これ
手間を掛けさせた分だけ手間をかけて作ったチョコ…他意はないから…もしこれで足りないってんなら…そうね
借りは一度に返した方が気分がいいし…その
足りない分は今ここで身体で払うよ
でも私貧相だからそういうのはちょっと…え?嫌いじゃない?私の身体の話だよね
私なんか抱いたって面白くないから本当に…本気?
本気で言ってるんだよねそれは…冗談や嘘だったら許さないから
そう…
じゃあ…そうする
身体で払うよ…隊長
私を抱いて

隊長の脳がドローンに入れられて人質になってるから成子坂に入社したのいいよね
そのうち研究改造用のヴァイスの装甲に反応してドローンを中心に異形のヴァイスが構築されてヴァイスの意思に乗っ取られかけて成子坂製作所ぶっ壊しながらヴァイスムーブしてると隊長ボディが制御失って倒れてその事実が発覚する
アクトレス達はみんな動揺するけど怜がいち早く止めないと本人もこんなこと望んでるわけないって出撃してショックのデカイ成子坂組を置いて叢雲組が追いかけて出撃するけどそこにはヴァイスの大群が来てて正気を取り戻した隊長が他のヴァイスに攻撃してもじゃれてると思われているのか無事なままでアクトレス達に気づいた隊長が「怜…答えてくれ…俺は人間だよな?」って言って怜がさあね…って武器を構えると楓達に止められるんだけどそれを見て覚悟を決めた隊長がその場のヴァイスを巻き込んで自爆するの
その残党と残骸を片付けながら妖風が目にしみる。涙が止まらない怜ちゃん儚げでいいよね

よろちゃんとかフミカ姉とかこの会社の子たちものすごく適当な名前付けられてるんじゃないかって思っちゃって心配しちゃってつい無断で名前の意味を調べてきちゃったよごめんね怜ちゃん
怜って字は澄みわたっていることを表す「令」と心がくっついた字で合わせて心が透き通っているさま、転じて聡い・賢いっていう意味なんだって怜ちゃん
また怜はレンもしくはあわれむとも読めてその読み方だと慈しむ・思いやりを持つって意味らしいんだ怜ちゃん
つまり怜ちゃんの両親は怜ちゃんに澄みわたった心を持って色々なことを気にかけたり思いやることが出来る子になりますようにって意味で怜って名前を付けてあげたんだと隊長は思うよ怜ちゃん本当に両親に愛されて生まれてきたんだね怜ちゃん
って怜ちゃんに言ったら「なんで今更そんなことを思い出させてしまうのさ…ひどいよ隊長は…」って伏し目がちに呟きながら出撃していくんだけどその足取りはいつもより少しだけ軽くなったように見えたんだ怜ちゃん

そういえばやめてよね隊長が力でアクトレスに叶うわけないじゃない的な逆レシチュって見たことないね
隊長が悪いんだ…あんなに突き放しても追いかけてくるから勘違いしちゃうよ
責任とって貰うからね手間かけさせるけどこれからもそのよろしく…
手間掛けさせた分はきっちり支払うからさって絶妙に関節極めてきて「逃げないでよ隊長…触るのと触られるのが逆になっただけでしょ」
ってじわじわと抵抗する気力を奪い去りながら怜ちゃんのものにされたい

ことりあそびじゃないよ隊長
わざとやってるよね?まぁいいけどそれを言ったのはあんたで100万人目だし…嘘に決まってるでしょ
どうしたの急に名字で呼ぶなんて…もしかして私何かした?教えてよ…私はまだ返してないもの多いし…その今愛想を尽かされたら困…ううん
嫌なんだ……
隊長…教えてよ…え?深い意味はない?
…信用してもいいんだよね?
……そうなんだ…良かった…これからも名前で呼んでくれる?怖かった…手握ってよ…隊長……

「ねえパパ…次の任務なんだけど」

数日前に冗談で怜にパパ呼びを言いつけたら本当にパパと呼ぶになったのだがそれからの攻勢はとどまるところを知らなかった
目を伏せて恥ずかしげにパパ…と呼ぶ怜はもういなく彼女の思いに従うままに甘えるすべを得たのだから

「ごめんなさいパパ…書類整理してたらね…コーヒーこぼしちゃって汚れちゃったの…」

いいよいいよ気にするなそもそもアクトレスに事務仕事押し付けてるのが悪いんだから
文嘉もどちらかにさせてあげたいもんだが

「パパ?今は私が悪いことしたんだよ?ねぇ…怒って?それとも私のことはどうでもよくなっちゃった…?」

もうずっとこんな調子である
隙あらば抱きつこうとしてくるしどこ行くにもついてこようとするし他のアクトレスの子とはなそうとすると途端に機嫌が悪くなる

やれやれと思いながら頭を撫でる幸せそうに目を伏せている怜を見てどうしたものかなと思案している隊長に怜のほの暗く歪めた口元とその表情は見えなかった

数日後…

怜がパパ呼びでガンガン攻めてくるのが止まらないそんなある日のことだった

「ねえ隊長…ちょっと時間いい?」

突然怜は前までのクールな美少女に戻っていた
素に戻って恥ずかしくなったのだろう
二つ返事でいいよと答えると聞かれたくない話だからと給湯室に連れていかれる
それでどうしたの?と聞くと後ろ手にドアを閉めた怜は瞳を潤ませながらなだれかかってきた

「私ね…パパだーいすき。私パパと結婚する」

耳元に熱い吐息混じりの声が吹きかけられ脳が危険信号をビリビリと放った
何とか逃れようとするも関節をうまく押さえられているのか体重差でひっくり返せない

「逃げようとしても無駄だよ。隊長は私だけの世話を焼けばいいの。ずっと一緒に。いなくなったりしないで…ね?パパ」

軽率な行動が怜の欲望を刺激して後戻りできないところまで来てしまった
後悔してももう遅いが抵抗はしなければならない
必死にドアノブに手を伸ばすも鍵がかけられており逃げられない
怜は服を乱暴に脱ぎ去りながら密着し俺の首を舐める

「いっぱい気持ちよくするから世話かけさせてね…パパ♥」

隊長…たまの休みに昼からお酒もいいけど飲み過ぎは体に毒だよ
私なんかが言うことじゃないかもしれないけど…お世話になってる隊長にはなるべく健康でいて欲しいと思ってるんだ
でも私お酒なんか飲んだことないし…何が効くとかよくわからない…ごめん
水分をとって…汗をかいて…まずこれ水…飲んで…
汗は…私なんかで嫌じゃなければ一緒に汗をかく運動なんてどう?
上手くできるかわからないけど頑張るね…

隊長…昼もう食べたの?
別に相談とかじゃないよ…手間もそんなにとらせない…と思う
出撃待ちの間手持ち無沙汰だったから厨房を借りて料理を作ってみたんだけどどうかなと思って…楓さん達に振る舞っても良かったんだけどちょっと不安でさ…ってのは嘘だねきっと
私が食べて貰いたいんだ
手作りの料理を隊長に
口に合うかどうかわからないけどもし決まってないのならできれば食べてみて欲しい
手間かけた分の手間…以上に色々込めたから…

隊長…遅くまでお疲れさま…私なんかのお手製でよかったら夜食でも…ごめん必要なかったみたいだね
え?食べるって…いいよ夜中に食べ過ぎってのも身体によくないし…その…もし嫌じゃなかったら交換してお互いの夜食を食べるなんてどうかな
あ…そのー食べたいものが合ってて口にあえばの話だけど…ってもう食べてる!?
もう…ずるいよ隊長は…私もいただきます

隊長は…私をおいていなくなったりしないよね…?
いつもの川原で何を話すでもなく沈む夕日を見ていた怜はポツリと言う
夕日に照らされた表情はこちらから窺い知ることができない
確かに年齢差はある
今日の帰りに事故に遭うかもしれない
失うことの辛さを知っている彼女は故に失うことを恐れる
だからなるべくなにも持たずに生きてきた
かける言葉が見つからない
ただ後ろから彼女の熱を感じて
自分の熱を伝えることでしか今ここに二人がいるということを伝える術がなかった
怜は肩を震わせながら小さな声でありがとうと言った気がした
日が沈んで真っ暗になるまで影は重なったままだった

はじめましてお客さん・・・指名してくれてありがとう
レイカって言います、今日はよろしくね・・・
怜・・・一体どうしたんだ?って
隊長がはじめたんじゃないのこの遊び?・・・そう楓さんに聞いたけど
遊びじゃない?そう、遊びじゃないんだ・・・
楓さんとしたことも?いやそういうことじゃないって?
ふーん、そうなんだ・・・なんて冗談
ごめんからかって・・・今のそれっぽいかな?
ゆみさんをちょっと真似てみたいんだけど・・・心臓に悪い?
ごめんなさい・・・これは隊長を労ってあげるためだって言われてたんだけどね
二人に秘密にされてたからちょっと意地悪しちゃったんだ・・・悪い子だね私


じゃあお客さん、最初の一杯をどうぞ
うん、いい飲みっぷり・・・私も一緒に乾杯してあげられるといいんだけど
そうだ、次からはソフトドリンクも用意してくるね・・・
お客さんが迷惑じゃなければだけど・・・え?どうしてお客さんって呼ぶのかって?
そうしたほうがそれっぽいかなって・・・違った?
様になってる?本当に褒められてるのかな・・・
怜はなんでもきっちりこなすって感心してるんだよ・・・か
仕事中もこれぐらい大胆に褒めてくれてもいいと思うんだけどね
私はいいんだけど・・・りんや楓さんがね
仕事中に褒められた事をよく話すからさ・・・すごく喜んでた
だからもっと褒めてあげて欲しいかなって・・・


呼び方の話だったね・・・え?隊長さんでいいって?
いつもと殆ど変わらないけど・・・大丈夫?
仕事の事を忘れたいからお店に行くって聞いたからさ・・・
だから名前も変えてみたんだけど・・・源氏名だっけ?
こういう細かい所に凝れば雰囲気出るかなって・・・ちょっと面倒だけど
気を使わせてごめん?隊長が謝る事じゃないよ・・・
でももし悪いと思ってるなら雰囲気作りに協力して欲しいかな
そうだ、お兄さん・・・なんて、どうかな?
それとも名前、きちんと呼んだほうがいい?
それは恥ずかしい?・・・そっか、そうだよね・・・
じゃあお兄さん・・・少し思ったんだけどさ
使い分けるの面倒だからさ・・・明日からも同じように呼んでいい?
でもちょっとおかしいかな、隊長のことお兄さんだなんて
私の好きにしていい?ありがとう、じゃあ明日からこう呼ぶね・・・
お兄ちゃん♥

怜は髪下ろしたりとかしないの?
突然何を言い出すんだこの人…という困った顔の怜に慌てて説明する
いつもポニーテールだけどバレンタインの衣装のときは変えてただろ?その髪型も可愛かっただろ?下した怜も可愛いってことじゃねえの!?
「…」
怜は警戒を解かない…説明失敗したこれは無理やりでもやるしかないってことよね?
「…いいよほら、こんなの見て楽しいの…?どうでもいいけど」
髪を無造作に留めていた紐を取ると柔らかな髪が怜の背中に落ちる
…うわめちゃびじんさん…
絹のように艶やかな髪は陰のある表情の怜を神秘的な美しさで彩っている
髪がふわりと空調に押されて揺れるたびに怜のシャンプーのにおいが流れてきて鼻をくすぐり脳をくらくらとさせた
とても似合ってるよ!髪下ろす日もあっていいんじゃない!
と興奮しながら伝えると
「だって…髪をまとめないと家事がしづらいし…料理に髪が入るの嫌でしょ?こっちの方が過ごしやすいわけ」
怜らしい可愛い理由だ…仕方ないこのレアな怜を目に焼きつけないと…と見開こうとしたときそっぽを向きながら怜が言う
「まぁ…お風呂上りとか寝るときは自由にしてるかな…そのときなら…見せてもいいよ…」

…隊長、どうでもいいけどさ、そういうのやめた方がいいよ
他の人が勘違いするし、隊長だってそういう噂されるの嫌でしょ
私なんかいいから、隊長はいつも通りみんなと接してあげて
…別に私が嫌とかじゃないよ。ただ私のことで隊長やみんなが嫌な気持ちになるのが嫌なだけで…
っ、隊長…?苦しいよ…急に抱き着くなんて本当に何考えてるのさ…
今なら誰も見てない…って、そういう問題じゃないんだけど…
その眼やめてよ…直視できないから…
ちょっとだけ…ちょっとだけだよ、もう…

話題に出てたニシシ顔っす(出撃時のリンちゃん画像)
いいよね…リンは私なんかと違って明るくて可愛くて誰に対しても分け隔てなく人見知りもしないし私が持ってないものをみんな持ってると思うよ…自分と比べるのもおこがましい話なんだけどさ
バカっていうのもあとに正直がつく…誰かが見ててあげないと騙されちゃいそうな無垢さで…
だから私と同じように隊長にはリンのことも気にかけてほしいと思ってる
差しでがましい話だと思うけど覚えててくれると嬉しいな…
私にとってリンはかけがえのない…その…友達だから…

怜の心の一端に触れた俺は怜の家族になりたいと思った
だから俺は決めたんだそしてこの思いを伝えようと
「怜。俺の妹になってくれ…絶対に最期まで一緒にいるから俺を兄と呼んでくれないか?」
右手を差し出し彼女の返事を待つ
突然こんなことを言って困惑しているだろう…
永遠と思われるかと思ったその沈黙は思いの外早く終わりを告げた
「何言ってるの隊長?そんなの嫌に決まってる」
そりゃそうかどう考えてもいきなりこんなこと言われたら気持ち悪すぎるよな…差し出した手を下ろしかけながら自分の浅慮を後悔しかけた時その手を両手で握られる
「隊長は私の事妹としか思えない?なら仕方ないことだと思うけど私は隊長と兄弟じゃなくてずっと隣を歩く恋人…夫婦…家族になりたいよ…」
掴んだ手を怜は自分の胸に当て
「どう?私の鼓動伝わってる?隊長に触れてもらってどんどん早くなってる…そんなに大きくないけどその分近いところで抱きしめられるんだよ…」
俺達は歪なところから始まりこれからどうなるかは誰にもわからない

(怜の☆4スーツについて)
こんなのがいやらしいって…変わってるね隊長は
というか普通面と向かって言う?そういうこと
まぁ…なんでもいいけどね
私で興奮したんだ…それもヴァイスと戦うために特化した服に
え?どんな服であれ用途に特化された服は美しさを感じるものだって?競泳水着とおなじ?
よくわからないけどこだわりがあるのはわかったよ…でもその手に持った競泳水着を試着してくれってのはよくわからないかな…
でもそんなに言われたら無下にもできないし…
今ここで着替えればいいの?返事を聞かなくてもわかるよ
期待してるもんね…さっきから私の目を見てないの気づいてないでしょ?
でもいいよ
私だけを見て…隊長

温泉怜ちゃんシリーズ

「バレンタインのお礼が温泉旅行ってどういうことさ…隊長…」
怜は好きだろ?温泉旅行
「まぁね…あれからおばあちゃんと何度か行っているけどさ…
おばあちゃんもたまには好きな人と一緒に楽しんで来いってノリノリだったし…」
いろいろあったが打ち解けた怜は以前と比べ者にならないくらい心を開いてくれていた
何度か食事には誘っていたが今回は思い切って旅行に誘ってみたのだ
お風呂上りに合流し母屋と湯屋をつなぐ渡り廊下を怜と二人で歩く
「少し肌寒いね…」
すっかり陽は沈み薄暗い照明に照らされた廊下の中、怜は身を寄せてきた
「湯冷めしないように暖めてよ」
まだ言い訳をしないと素直に甘えられない怜が愛おしくそっとその少女の肩を抱いた

  • お風呂上がりの怜と母屋の部屋に戻る
    窓から雪の積もった中庭を見下ろせる一部屋の和室だ
    「良い眺めだね…」
    浴衣姿の怜と窓際に並ぶ
    しっとりした黒髪と少し火照った白い肌、浴衣の襟元から少しだけ覗くうなじ…いや絶景かな
    「どこ見てるの、隊長」
    気づかれていた
    「部屋も一室で布団も隣りあわせだし…いったい何を期待してるんだか」
    部屋が一部屋なのは急な予約でここしか部屋が空いてなかったからで、何もやましい気持ちがあって旅行に誘ったわけではないのだと言い訳する
    「まぁ、いいけどね」
    なにが「いい」のかが物凄く気になる
    「明日は温泉街を観光するんでしょ?今日は早く寝よ」
    そう言って躊躇いなく並んでいる布団に入っていく怜
    「どうしたの?隊長も早く寝なよ」
    促されるようにして自分も隣の布団に入る
    怜との距離が近い…息遣いまで聞こえてきそうなほど
    「おやすみ隊長」
    おやすみ…と返すとしばらくして静かな寝息が聞こえてきた
  • 怜と温泉旅館で迎えた朝、目が覚めると腕の中にすっぽり収まった怜と目が合った。
    「隊長、起きたんだ。おはよう」
    自分の左腕は怜を腕枕し、右腕は怜の体を巻くように抱き着いていた。
    理解が追い付かない。自分が知らないうちに怜の布団に潜り込んだのか…。
    「びっくりしてるね…ごめんね隊長。朝、寒かったから隊長で暖まりに来た」
    さらに体を密着させながら続ける。
    「誰かに抱まれながら寝るの…小学生の時以来なんだ…。お父さんが死んだときからはずっと一人だった気がする」
    胸に顔をうずめながらわずかに肩を震わせる怜。
    「ね…アレしてよ…足で私の足を挟むやつ…」
    促されるように怜の華奢な足を挟んで暖める。傷つけないように。痛くないように。優しく。父親のように。
    「ありがと…あったかいね…」
    背中をよしよしと撫でているとしばらくして怜の震えは収まった。
    「パパ…」
    その小さな寝言を聞きもらすことはなかった。
  • 朝の温泉街を怜と二人で歩く。
    まだ早い時間なので店も開いてなければ出歩いてる客も少なく、ただ川の流れる音だけが静かに響き渡っていた。
    怜はこちらの腕に腕を絡めている。
    普段だったら、そう言うことをする子ではないが、辺りに人気がないのと旅行の解放感もあってか今日は積極的に距離を詰めてきている。
    「隊長、見えたよ、あれ」
    怜が指さしたのは川の中州にある小さな小屋。看板には足湯と書いてあった。
    「すごいね…本当に川の中に温泉が湧いてる」
    階段を駆け下りて履物を脱ぎ二人で足湯につかる。
    「これなら隊長と一緒に入れるね…」
    手でお湯を掬って膝からかけながらそんなことを言う怜。
    捲り上げた浴衣の裾から覗く白くてしなやかな足をお湯が伝う様に目を奪われる。
    「また視線がいやらしいよ…隊長。まぁいいけど…この後はどうしようか。竹細工の工芸品も見たいし、上流の滝まで散歩するってのもありだね」
    近くの有名な庭園まで足を運ぼうか。おばあちゃんのお土産に黒饅頭を買っていかないと。これから二人でしたいことを次から次へと言葉にする。
    「たくさん思い出を作ろうね…隊長」
  • その日は目一杯怜と楽しんだ。
    豊かな自然に恵まれた景色を楽しみながら散策し、工芸品店で緻密な寄せ木細工に感嘆し、日本庭園で一服し、温泉街に戻りお土産屋さんも見て回った。
    見知らぬ地で二人で過ごす時間はまるで夢のようで、あっという間に過ぎていった。
    「明日の朝にはもう帰らなきゃ行けないんだよね、隊長」
    そうだな、と返す。
    もう一泊旅館で宿泊したら「新幹線」に乗って東京シャードに帰らなければならない。二人きりの時間の終わりは刻一刻と近づいていた。
    「帰りたく、ないな…」
    身を寄せながらつぶやく怜。
    そう言うわけにはいかない。旅行だったらまたいつでも連れてきてやる。
    「でも、さ…隊長と初めての旅行は今この瞬間しかない…」
    正面から抱き着いて怜。その背中に自然と手を回す。
    「ね、旅の最後にさ…思い出が欲しいな。絶対に忘れられない思い出が」
    もはや抵抗は一切ない。ねだるように顔を伸ばしてきた怜と口づけを交わす。
    旅館の一室で二人の影は重なり、その日隊長は初めて怜を抱いた。
  • 怜と結ばれた一夜を明かした後、二人はそそくさと身支度を整え旅館をチェックアウトした。
    若干の気まずさと気恥ずかしさで口数は少なくなっていたが不思議と嫌な空気ではない。むしろどこか穏やかなすっきりした面持ちで家路につく。
    私鉄路線の駅のホームで二人並んで帰りの電車を待つ。二人の手はしっかりと繋がれていた。
    「ねぇ、隊長…」
    なんだ、怜。
    「前隊長に言ったよね…隊長となら自分を変えられる。変わっていける気がするって」
    あぁ。
    「変われた…と思うんだ。今なら素直に隊長を頼れるし、少しだけど甘えられる。前の私じゃこんな事言えなかった」
    握った怜の手に少し力が籠る。
    「だから、今なら言えるね…隊長、愛してる…。それと、今後ともよろしく」
    こちらこそ、よろしく。
    と返したところで電車の汽笛がホームに響いた。
    「あ、来たね。電車」
    ゆっくりと速度を落とし停車する。目の前でドアが開き、乗り込み、閉じる。旅の終わり。
    明日からはまたいつもの日々に戻ることになる。しかし旅の思い出はいつまでも消えない。思い出とともにまた新しい怜との日々が始まるのだ。 …fin

あっ…隊長……おかえり
今日は早かったね…
成子坂の皆からチョコ貰ったりして帰って来るの遅くなると思ってた
まぁ……私にはどうでもいいけど
ご飯の支度できてるから早く部屋に荷物置いてきて
……えっ?私からのチョコ?
ばっかみたい…あるわけないじゃん…
第一私みたいなのがそういうの…似合わないでしょ?
もう……馬鹿なこと言ってないでさっさとする!
……晩ご飯食べたらお風呂の後にホットチョコレート用意するから
それで我慢してよね

アンタが隊長?
ふーん…悪くないかな…
こういうのが好きなの?隊長
それっぽいって私こういうキャラだと思われてたの?
でもこの子年上に対して生意気だよ…ぶっきらぼうでなんか怖いし…
隊長の趣味ってなんかかわってるね
まぁ別になんでもいいんだけど
…私そっくり?冗談でしょ

「こんなの別に手伝ってくれなくてもいいって言ってるのに…」
仕事帰りにスーパーへ買い出しに行ったら怜とばったり出くわした
怜も同じような用事だったので荷物運びを申し出たのだ
二人暮らしにしては少し荷物が多かったの問いかけてみた
「最近おばあちゃんも腰の調子が悪そうでさ…時間があるときはこうして買い物してるんだ
いつでも行けるわけじゃないから…おばあちゃんが買い物しなくて済むようにちょっと多めにね」
食材がぎっしりつまったエコバックの持ち手の片方を怜が持ちもう片方を自分が握る
全部は持たせてくれない、自分の全部を人に任せたりしないのが怜という子だ
それでも、少しだけでも頼ってくれることをうれしく思う
ただその荷物の持ち方がまるで夫婦みたいだな…と思いつつその事は口に出さないでいた
「なんか…まるで夫婦みたいだね…」
不意をうたれた
「いや、冗談だけどさ」
良く見知った堤防の上を怜と一緒に歩く
いつかこの場所で独りで人知れず泣いていた少女はもういない
「ね、今日は夕飯まだでしょ?良かったら食べていきなよ…私なんかの料理でよければさ」

「隊長、お疲れ様。コーヒー淹れてきたよ」
執務室で仕事をしているとやってきたのは、手に2つのマグカップと小脇には参考書を抱えた怜だった。
熱いコーヒーを受け取りながら礼を言う。
「ちょっとお願いがあるんだけど、机使わせてもらっていいかな…仕事の邪魔はしないから」
本来なら待機中のアクトレスは待機室や休憩室で自由に過ごしてもらっているのだが。
「ほら、休憩室で勉強するってのも迷惑でしょ…ここなら静かに勉強できると思って」
そう言うことなら、と快諾する。
彼女はこの辺では名門中の名門である聖アマルテア女学院の通称アマ女の生徒だ。
アクトレスなら手厚く援助してもらえる代わりに高い学力を要求される。
無理はしてないか?と問いかける。
「無理…うん、してるかも…元々私なんかが入れるような学校じゃないからさ。
授業も試験もついていくのがやっと…」
怜にしては珍しく弱音を漏らした。
「本当は中学卒業したら働くつもりだったんだ私…。
でもおばあちゃんがせめて高校くらいは出ておきなさい、そのくらいは何とかするって言うから…」
よしよし…と自然と頭を撫でていた。
「その撫で方…おばあちゃんみたい」
こちらに寄りかかり胸に顔を埋めてきた怜。背中にも腕を回しできるだけ優しく頭を撫でる。
「うん…ありがとう。十分充電できた…また、頑張りたい時はお願いしていいかな…隊長」
もちろんだとも。それから自分は仕事に怜は勉強を続け、二人だけの夜の時間はゆっくりと過ぎていった。

隊長は成子坂再興で忙しいしまだ結婚について考える余裕ないよね
それでいいと思う
落ち着いたときにゆっくり誰と一緒になりたいか将来のこと考えてみるのもいいんじゃないかな
ご飯作ったりとかその程度だけどそのときまでは私が支えるからさ
手遅れになるなんて心配する必要はないよ
隊長がすっかりおじさんになっても隣にいたいって思う子一人くらいはいるだろうし
まあべつにどうでもいいんだけど

隊長…バレンタインデー終わったけどこの衣装どうする?
多分前に言った通り着ないんだろうけど…まあどっちでもいいよ
でもどうせ着ないならこの服でその…プレ…チなんて…
いやなんでもない…聞かなかったことにして
…聞こえてたんでしょ?どうする…?
私はどっちでも…ううん…いいと思う

隊長…相談があるんだけど…
うん…忙しい所ごめんね…
私ってさ…お世辞にも恵まれた家族ってわけじゃないでしょ…?
そんな私がさ…ちゃんと母親やれるのかな……って
ちょっと…こっちは真面目に話してるんだから頭撫でないでよ……もう
……だんだん大っきくなる自分のお腹見てるとさ…
最後に見たお母さんの顔が頭をよぎって私もああなるんじゃないかって不安になるんだ…
パパ…私ちゃんとやれるのかな……?
この子を私みたいに悲しませる事ないのかな…?
あっ……
………あったかい……
ふふっ…おかしいね…
こうやって抱きしめられてるとさっきまであんなに押しつぶされそうだったのにどうでもよくなってくる…
ありがとう……パパ

皆が食堂で宴会を繰り広げる中、淡々と出撃を繰り返していた少女の姿がそこにあった。
おかえり、怜。
「ただいま、隊長。おにぎりシェル取ってきたよ…それにしてもおにぎりって…」
うん、そうだよね俺もよくわからん…
ところで怜は宴会に参加しないのか?
「ううん、私はパス。騒がしいのは好きじゃないし…」
そうか…おにぎり食べていくか?
「それ、イージスとの交換用だから食べちゃダメでしょ。文嘉さんもまだ出撃して集めてるのに…にしてもおにぎりを交換ってなんだろうね」
うん、そうだねやっぱり俺もよくわからん…
「ところで隊長…聞いておきたかったんだけどおにぎりの具材って何が好き?」
え、俺か?そうだな…南高梅とか昆布とか…
「渋いね隊長。分かった…明日は作ってきてあげるね。交換用は食べちゃダメだけど自分で作ってくる分にはいくらでもたべていいよね」
それは、その悪くないか
「気にしないで隊長…自分の分のついでだから…解析装置から出てくるのより、真心こめて握るから」

私は歳の差とかは別に…気にしたことないかな
…どうでもいいけど、隊長はそういうの気になるんだ?
…そっか、倫理的に外では言えないよね
じゃあ、隊長の家でなら聞いてもいいよね?
大丈夫、口は堅い方だから。隊長も知ってるでしょ
…決まりだね
ちゃんと隊長の口からハッキリ聞かせてもらうから、ね

「おかえり、隊長」
成子坂製作所から帰宅すると出迎えてくれたのは怜だった。
そう言えば以前何かあった時のために合鍵を渡してはいたのだが、こうして出迎えてもらったのは初めてだ。
どうしたんだ急に。
「洗濯物、また溜め込んでたでしょ」
うっ…どうもバツが悪いところを指摘されてしまった。
「ほら、洗濯しておいたよ。今畳んでるから少し待ってね」
中に入るとテキパキと洗濯物を畳んでまとめるはじめる。みるみるうちに洗濯物の山が消えて行った。
上手いもんだな。
「おばあちゃんに仕込まれたからさ…その、花嫁修業とか言ってさ」
少し頬を染めて俯く怜。
溜まらなくなって後ろから抱きしめる。
「ちょっと、洗濯ものしまってるんだから邪魔だってば…」
そう口では言いながら抵抗はしない。
「片付け終わったらさ…お夕飯にしようね、あなた」

少しお腹に入りそうなもの買ってきたから置いとくね
隊長は不健康な生活繰り返すからすぐ体壊すんだよ
もしまた倒れたら大変だし元気になったら合鍵もらうから
遠慮とかしないでいい別にたいした負担じゃないし
隊長って洗濯物すぐ溜めるし掃除も丸く掃くだけだよね
そういうのよくないよ
たまに料理作ってタッパに詰めて冷蔵庫にいれておくからちゃんと食べて健康にしててよ
皆の大事な隊長なんだからさ

夕刻、休憩室で少し休憩のつもりでソファーに横になったはずが思いの他深い眠りについてしまったらしい。
目が覚めると枕元に違和感があった。
視線を下にやるとそこにはいつものクッションではなく白い柔肌が…
「あ、起きたんだ」
声の聞こえた方向…視線を上に向けるとそこには怜の顔があった。
膝枕である。何故に。
「休憩室のソファーで休もうと思ったら、隊長が邪魔で座れなかった…ただそれだけ」
嘘だ。ソファーなら向かい側も空いている。
「うるさいな…休憩室では静かにしなよ」
はい、すみません…。
またとない機会だ。太ももの柔らかさを堪能する。
「起きたんならさ…起きなよ」
ごめんもう少しだけこのまま…
「そ…別にいいけどさ」
そのまま、束の間の天国を満喫した。数分後、休憩室に顔を出した成子坂の面々に見つかってどやされるまで。

お仕事してると
「もう…隊長ってばまたそんな疲れた顔して…」
「前に私に対して『頑張りすぎだ』って言ってたのにそれじゃ人の事言えないじゃん」
「まぁ…私には関係ないしどうでもいいけどさ…隊長がそんな疲れた顔してるとみんなが心配するでしょ?」
「少しは休憩したら?ほら…自販機で飲み物買ってきてあげるから…」
「本当にしょうがないんだから……今夜は特別だよ?……私だって恥ずかしいんだからね…」
って怜の声が聞こえるっすよね
病院っす
㌧っす

怜ちゃんと高級料理店行きたいっす

どんな反応するか見て見たいっす

気後れするしテーブルマナーとかも分からないからてんやわんやになる怜ちゃん可愛い
後日お礼とお詫びに例ちゃんちに招待されて怜ちゃんの手料理を楽しみたい
もちろん食卓に上がるのは何の変哲も無い長かなのにつけとお味噌汁それから野菜の盛り合わせだけどそんなことより怜ちゃんの手料理が食べれるのが嬉しすぎて涙しちゃう
そんなこんな怜ちゃんと談笑してたら居間のほうからお婆ちゃんがきちゃって「怜や、この人がお婿さんか?」なんていわれちゃって怜ちゃんかお真っ赤にしちゃって本当可愛いよね怜ちゃん

「私…こんなに幸せでいいのかな?」
生まれたばかりの子供を抱きかかえながら涙をぽろぽろと溢す怜の姿が頭に浮かぶ
ピンサロ編でピンサロ通いを追及されたり
陰謀編で「隊長の淫棒です!」と楓さんが暴走した時は流石に焦ったけれど
以降の成子坂製作所は何の問題もなく順風満帆
叢雲に引き続きノーブルヒルズ・ホールディングスも潰れ
AEGiSも度重なる汚職で壊滅状態だ
怜の妊娠が発覚してからの挙式やら何やらは大変だったけれど…
先日ついに生まれた可愛い第一子と幸せそうな怜の笑顔を思えばそれもいい思い出となる
もっと頑張って怜をもっと…もーっと幸せにするぞ!!と俺は決意を新たにするのだった!

だからだろうか
後ろから自分に迫り来る居眠り運転のトラックに気づくのが遅れたのは

「まったく隊長は相変わらずうっかりだね」
後ろを振り返るとそこにはギアに身を包んだ怜がいた。そして私は怜に抱きかかえられ空中に、トラックは道端の電柱に衝突していた。
なんで怜がここに…。今は家で娘といたはず…。
しかも様子が辺だ…今目の前にいる怜は俺の嫁になった怜ではなくまるでであった頃の高校生の姿をしていた。
「さぁ、なんでだろうね…神様が隊長を助けてやれって言ったのかも」
私を地面に下ろすとじょじょに光に包まれ消えていく怜。
「もう時間みたい…私と、私の子供をよろしくね、隊長」
そう最後に言い残すとそこには跡形も無く消えていた。
しばらく呆然としているとパトカーと救急車のサイレンが遠くから聞こえてきた。
そうだな…愛する怜と娘のためにも気を引き締めないと。
そう自分に言い聞かせるように呟くと私は今日も成子坂に出勤した。

ふと気がつくとそこは辺り一面真っ白な空間だった
「ここは一体……?」
なぜ自分がこんな所にいるのか…
確か自分は連日の長距離運転で重い瞼を擦りながら…擦りながら……?
『そう、君は居眠り運転で事故を起こして死んだんだよ』
「!?」
唐突に頭の中に響く声に思わず身構える
『おっと、そんなに警戒しなくていい。僕は君たちの言うところの「神」って奴でね…特別に君に新しい人生を授けようと思うんだ」
何を言っているんだこいつは?と一瞬思ったがそんな疑問を意に返さず謎の…「神」の声は響く
『まぁ…こちらの不手際でもあるしね…ある種のチート能力とも言われる才能もあげるから勘弁して欲しいな』
そう告げられると共に暖かな何かが身体の中に広がっていくのを感じる
『もう一つ…悪いと思うけど性別はどうにもできなくてね……君は女の子として生まれるんだ』
「ちょっ…!」
『幸せな家庭と並外れたアクトレスとしての能力でそこは我慢して欲しいな…じゃあそろそろ時間だから』
一方的に告げられ俺の意識は最後に青い綺麗な鳥の姿を映し光に飲まれるのだった

ベッドに腰掛けた自分の股の間で怜の頭が前後に動いていた。
頭の動きに合わせふわふわと揺れるポニーテール。上気した肌、うっすらと滴る汗。
「はうっ…あぁむ…れろっ…」
一度口内から男根を解放すると、玉袋の付け根から亀頭までの裏筋を怜の舌が這い、痺れるような快感が背筋を伝う。
「れろっ…れろぉんちゅ…」
舌先でカリの裏を一周し、さらに鈴口を丹念に舐める様にねぶった後亀頭に口づけをした。
怜の舌や唇から与えられる怒涛の性感に耐えられず男根は何度も痙攣し脈を打つ。
「そろそろだね…はむっ…んっんっんっんんんぅっ」
男根を加えた後喉で舌で扱き上げる怜。
あまりの激しいピストン運動と怜の喉の感触、それとこの少女の体内を自分のモノが支配している感覚がこみ上げ、彼女の喉奥で大きく絶頂した。
二度三度…四度五度六度…取り止めのない射精はすべて彼女の食道に流し込み、怜もそれを受け入れていた…。
「ぷはっ…最初は口でするなんて信じられないと思ったけど…悪くないもんだね、こう言うのも」
股の間でまだ痙攣の続く男根をもてあそびながら怜は妖艶に微笑む。
「まだまだ夜は長いよ、隊長」

怜ちゃんは煮物が得意な芋ガールっすよ

派手さにかけるっすよ

どうでもいいんだけど…「」長ってさ…和食と洋食どっちが好き?
私はおばあちゃんに色々教えてもらった和食の方が得意だけど色々作れた方がいいと思うし男の人の好みに合わせて作ったことないから…参考程度に聞いてみようと思っただけ
それで?何が一番好きなの?…肉じゃが…そう…肉じゃがはまぁまぁ作るかな…
チョイスが地味だね「」長 でもさ…ほっとする味だし好きになるのも分かるかな…
良かったら今度余った分持ってくるよ…味付けが気に入るか知らないけどさ コンビニ弁当よりはマシだと思うから

怜別れよう

えっ…
ごめん…もう一度言…やっぱり言わなくていいよ
わかった…何かしちゃったんだよね…私…
ごめん…なさい…アクトレスも辞めます…顔合わせにくいもんね…
いやこんな言い方卑怯だよね…私が耐えられないだけ…
やっぱり私はどうしたってなにもかも失うんだ…これまでのもきっと偶然なんかじゃなくて私自身のせいで…きっとこれからも…
どうしようもないバカだ…わたし…どうしてこんな…隊長…ごめんなさい…隊長…さよなら…

はじめは何番でもいいと思ってた…ただ隣に居られればそれでいいと思った…
でも次第にあの人が私以外に見せる微笑みやふとした眼差しが苦しくて、いつか全部私以外の誰かに取られちゃうんじゃないかと思って…
自分でもここまで嫌な女だとは思ってなかった
私は楓さんを応援するって約束したのに諦めなきゃいけないのにだからあんなにも冷たくしたのに…
でもそんな嫌な子な私にもあの人はいつも通り微笑んで、いつもの眼差しで見つめてくれて…私、誰にも奪われたくないんだって気付いちゃった…
だからごめんね楓さん…楓さんならきっと許してくれるよね…

ダイエット?私はしたことないかな…
隊長は痩せた方がいいと思う?
そう…よかった
今のままの私が好き…なんだね…このままを維持できるように頑張るよ
普通にアクトレスとして活躍できるように頑張ってるだけでそこまで努力とかはしてないんだけど隊長が気に入ってくれてるならもう少し注意してみようかな…もう少し太ってもいいって?
それは胸の話?確かに大きい方じゃないけど…
そうじゃないって…隊長はその…挟んだりする本好きでしょ…この前偶然見ちゃっただけだから私物漁ったとかじゃないよ
ナイズリもまたオツなものって…何をいってるのかはよくわからないけど今日やってみる?
夜あけといてね

その日は残業で遅くなり最後の一人で帰るつもりだったが、まだトレーニングルームに明かりが灯っていた。
怜である。
今日もずいぶん遅くまでやってるな。そろそろ閉めるぞ。
「私は凡人だからさ、人一倍努力しなきゃ、楓さんやリンにどんどん離されていくから」
そうは言っても無理はよくない。それにもうだいぶ遅い時間だ。帰りは送っていこう。
「いいよ、一人で帰れるって」
少しでも長く怜と一緒にいたい。
「そ…そう言うことなら好きにすれば」
まだ人の好意を素直に受け止められないみたいだが、言い方を少し変えるとそっけなくだが受け入れてくれるようにはなった。
そして帰宅中の電車内、隣に座った怜が気づくと眠って、こちらの肩に頭を預けていた。
やっぱり無理してるんじゃないか。
すっかり安堵した表情で眠っている。次にはもう目的の駅なのだが、揺すっても起きる様子がない。
仕方ないおばあちゃんの家までおぶっていくか。すっかり夢の中の怜を担ぎ上げる。
「………ありがとう、隊長」
何か聞こえた気がするが、寝言として処理しよう。

  • 助手席で寝ちゃう怜ちゃんVer
    その日は残業で遅くなり最後の一人で帰るつもりだったが、まだトレーニングルームに明かりが灯っていた。
    怜である。
    今日もずいぶん遅くまでやってるな。そろそろ閉めるぞ。
    「私は凡人だからさ、人一倍努力しなきゃ、楓さんやリンにどんどん離されていくから」
    そうは言っても無理はよくない。それにもうだいぶ遅い時間だ。帰りは車を出そう。
    「いいよ、一人で帰れるって」
    少しでも長く怜と一緒にいたい。
    「そ…そう言うことなら好きにすれば」
    まだ人の好意を素直に受け止められないみたいだが、言い方を少し変えるとそっけなくだが受け入れてくれるようにはなった。
    そして帰宅中の車内、隣に座った怜が気づくと眠っていて静かな寝息が聞こえてきた。
    やっぱり無理してるんじゃないか。
    すっかり安堵した表情で眠っている。もうおばあちゃんの家の前に付いたのだが…軽く揺すってみても起きる気配がない。
    仕方ない玄関口まで担いでいくか。すっかり夢の中の怜を助手席から担ぎ上げる。俗にいうお姫様抱っこである。
    「………ありがとう、隊長」
    何か聞こえた気がするが、寝言として処理しよう。

えっ仮眠室で寝てる子の枕元に水溶き片栗粉入りコンドームを!?

隊長…最低…
でもようやくその気になってくれたんだね…嬉しいよ…
いつもは寝てる隊長からなかに直接貰ってたけどゴムを使ってるとはいえ自分の意思で入れてくれたんだ…
でもこれからはお互い起きてるときに生でしようね?
どうでもよくない…大事なことだからね
家族をいっぱい作って幸せな家庭が築けるといいよね隊長

ねえ隊長、おぼえてる?私たちがここに来たばかりの頃
初めて会った時の印象は、正直、不甲斐ないというか、あんま頼れなさそうな人って印象だったかな
リンは運動が好きな人なら問題ない!ってはしゃいでたけど、楓さんが言う志とかも、私にはよくわからなかったし…
ふふっ、今じゃこんなにも頼りにしちゃってるのにね…
あ、そういえば今日は楓さんの特訓に1日付き合うんじゃなかったっけ?
いいの?私とこんな風に2人きりで喫茶店でお話なんかしちゃって?
まあ、私は別にどっちでもいいんだけどさ
なんて…嘘、正直、私の方を優先してくれて嬉しいって思っちゃってる
隊長が私のこと裏切らないって今なら心の底から信じられるから…
隊長、私ってずるい女かな…

怜ちゃんはポケットから変なお菓子や飴出して来そうっす

どうしたのさっきから咳込んで…喉が痛いならはやく休んだほうが良いと思うんだけど…
はいこれおばあちゃんがよく舐めてるのど飴、この時期はよく効くんだってさ
なんでって…隊長に倒れられたらその…困るし…
いや…私はどうでもいいんだけど…ほらみんなの隊長っていうかさ…その…だから今日はもう温かくして寝なって…

四日くらい事務所に缶詰で隊長だいぶ臭くなってるっすけど一部の子はそんな隊長の匂いに発情しちゃうっす

わた夜露ちゃんとシタラさんと怜はそれっす

かえでさんは道場で嗅ぎ慣れてるだろうからこっちに入らないっす

その…隊長、失礼だけどちょっと臭うよ
…私は別に平気なんだけど…他の子に隊長が嫌われちゃうのは私も嫌だから…
着替えなら更衣室にあるはずだし、その間に私が洗濯しようか?
遠慮しなくていいよ。いつも隊長にはお世話になってるんだし
それじゃ更衣室の前で待ってるから、服だけ出しちゃって
………隊長の服のにおい…隊長が今まで着てた…隊長…んっ…ふぅー…ふぅー…

隊長…あんまり女の子に近づきすぎない方がいいよ
特に背の低い子は大きい男性に威圧感を覚えるっていうし
みんな隊長のことは慕ってると思うから凹む必要はないんだけど一応
まあ…うん
私はこれくらいの距離に慣れてるからべつに今までどおりでいいよ
私の方からこれくらい近づいてしまうこともあると思うし
え…よかった? なんで…ふうん…まあどうでもいいけど

クリアしたら隊長を1日独占出来る権利が貰えるって言って楓さんにコンボイの謎を渡したらかれこれ数時間死んだ目でやってるっす

怜が自由時間つまらなそうなのにずっとやってるから怖くなって
それ有効期限切れてるっすよって言ったら少し俯いてぽろぽろ涙落とし始めたっす
最初は自分が泣いてるのにも気づいてなかったみたいでちょっとして狼狽えだして
必死でしばらく涙止めようとしてたんすけど顔覆ってしまったっす
何でとかバカみたいとか言いながらオフィス飛びだそうとしたところで
帰ってきた隊長とぶつかって決壊して抱きついて大泣きしてたっす
とても冗談とは言えない空気だったっす……

隊長…何やってるの?
プラモ?男の人はみんな好きっていうけど隊長もなんだ…
えっ?これ私に?いいの?貰っちゃって…
スパローとエクシアどっちがいいかって言われても私にはわからないよ…隊長が決めてくれると嬉しいかな…
うん…ありがとう、大事にするね…
いやいやいやって何…作れぶんどどしろ?ブンドドって何?
よくわからないけど、楽しそうだね隊長
私初めてだから色々教えて欲しいな…手間、かけさせちゃうね
ってなんでそんなに喜んでるの怖いよ…でもそっか…私のガンプラ…ふふっ
隊長と一緒に作る私のガンプラかぁ

チョコは…どうかな…?隊長…?
まあ、別に、どうでもいいんだけどさ…
その…初めてつくったんだ…そういうの…
あ、あんまり美味しくなかったら無理して食べなくてもいいから…
え、あ…お、美味しい…?
でも、そっか…うん、頑張ってよかった…かな
誰かのために自分から何かをするのってすごく久々だったから
拒絶されたり嫌な思いさせたらどうしようってちょっと不安だった…
なんて、私らしくもないかな…
隊長に対してはついつい思ってることをそのまま口に出しちゃうね
なんでだろ、ほんとに不思議な人…
でも、そんな隊長だから、きっとこんなにもみんなから…
ふふっ、負けられないね…
ん、こっちの話、ほら、指に溶けたチョコついてるよ
しょうがないな…んっ…ほんとだ、おいしいね隊長…

寒い日はコタツに限るな…コタツで丸まってテレビでも見ながら餅でも食べたい気分だ、なぁ怜。
「ン…ふっ…それには同意してあげるけどさッ…
なんでずっと胸を揉んでるのさ…」
テレビに流れてるのは怜の出撃シーンのビデオ。しかしテレビに放送できない際どい部分アングルの映像だ。
それを二人で見ている内に叢叢してきて今に至るというわけだ。
怜のお餅は人並みサイズだが、手の平にギリギリ収まらないかどうかのフィット感が素晴らしい。
背中から覆いかぶさるように弄っているので表情こそ見えないものの、白磁の肌は肩まで紅を指し凛と澄ました普段からは想像もできない程に熱い息を吐く怜を見てどんどんSPゲージが溜まっていく。
「アッ!……フゥ…ンッ………どうでもいいけどさ、さっきから、固いのが当たってるんだけど……
わたしももう限界だし…もっと温め合おうか…」
そう言った怜の表情にはかつての全てを拒絶していた頃には出来なかった笑顔があった。

何時もの様に残業を終え、戸締まりをしトレーニングルームへと足を運ぶ。
「お疲れ、隊長。今日も遅かったね…」
トレーニングを終え既に制服へと着替えて怜がこちらを待っていた。
遅くなってすまない。わざわざ待ってくれて無くてもいいんだぞ?
「ううん…そんなに待ってないし。待つ時間も私、好きだしね…」
嬉しい事をサラッと言ってくれる…まぁいいおばあちゃんが心配するだろ?送っていくよ。
「ん…ありがと…ハイ車のキー」
すでにスタンバイしていた怜からキーを受け取り車に乗り込む。
最近の怜はずいぶんこちらに懐いてくれたのか素直に感情を出してくれるようになった。拒絶されていた昔が嘘のようだ。
まぁ…あの頃はあの頃で違った可愛さはあったんだが…

赤信号待ちでそんな事を考えながら、助手席ですっかり眠ってしまった怜を見る。
表情は安堵を浮かべ、無防備な姿で寝ている。起こさないようにそっと上着を掛けてやりチラリと寝顔を確認する。
…こうして見ると、歳相応の顔をしている。
「やっぱり可愛いよな…」
つい声に出してしまい焦って口を抑える、幸い怜が目を覚ましてしまうことは無かったが。
上着に埋まる様に寝相を変え耳まで赤くなっていた。暖房が効きすぎていたのだろうか…

怜の家へと到着し、肩を揺すり起こしてやる。
「ん…ん゛ん゛…お、おはよう隊長…
ゴメンね、寝ちゃってたよ…」
何故か顔が赤い気がするが風邪だろうか…体調管理を徹底しないとな…
怜を玄関まで送ってやり。自分も帰ろうかと踵を返した時、
「あ…、きょ…、今日さ…忘れてたんだけど。おばあちゃんが近所の集まりで家に居ないんだ…」
そ、そうか…まぁ怜なら一日くらい…「今、一人になりたくないからさ…
ってここまで言わないといけないの鈍感過ぎない…?…どうでもいいけどさ。」
顔を真っ赤にし頬を膨らませながら言うそれはまるで子供の様で、
「なにさ…なんで笑ってるのさ…バカじゃん…」
明日は休みだ、仕事も無い。早起きなんかしなくてもいい。
お婆さんには申し訳ないが一晩だけ泊めてもらうことにしよう。

「あ、隊長またプラモデル作ってるんだ。…今度は女の子のプラモデル…?」
休憩がてらプラモを作ってると現れたのは怜だった。
「ふーんこういうのも好きなんだ、どうでもいいけど」
今作ってるのは○トブキヤのアクトレスシリーズ。
パーツ分割が細かく、また顔などは高精度のタンポ印刷で再現され、特別な加工をしなくても丁寧に組み立てさえすれば素晴らしい出来栄えに完成する。
まさに神がかったキットシリーズだ。
「へぇ…有名アクトレスってプラモにもなるんだね」
だが私はそれに留まらない。
理想のプラモ、理想のアクトレスを再現するための努力は惜しまない。
「…ん、このパーツどこかで見たような…え、これラプタービーク?」(※怜ちゃんバズ)
そうだ、今自分は既存のキットを改造して怜を再現しようと奮闘していた。
そして今しがたアイペイントを終えた怜本体を手渡す。
「あ、これ私だ…凄いね隊長」
なんてことはない。怜のことは毎日よく見ている。
「…ねぇ、隊長…」
なんだ?
「どうでもいいけどさ…私こんな胸大きくないよね?」
あ、それはその…
「…ふーん…これが隊長の理想の大きさなんだ」
その後該当箇所は修正を余儀なくされ怜が機嫌を直してくれるには数日がかかった。

凪さんは怜ちゃんのママで片親で苦労してた双子の面倒もみてたけどAEGiSの秘密を知ってしまって成子坂ごと潰されたに違いないっす
双子の親父と駆け落ちしたってことで処理されたに違いないっす
嘘っす

「ゴー…シュート!!」
俺と怜はスタジアムに各々のベイをシュートする
うまく中央にウルボーグブルーメッキバージョンをシュートできた俺に対してドライガーSを外側に放った怜のベイは大きく弧を描きながら中央のウルボーグに攻撃を仕掛ける
しかしウルボーグは態勢を崩しながらもスピンギア内のベアリングで回転を維持し続け僅差でドライガーの後に回転を止めた
「また負けた…隊長はやっぱり強いね」
「まあな!わはは!!俺のベイにかなうやつはそういなかったからな!!」
回転を止めた俺からのプレゼントのドライガーを大事そうにすくい上げながら怜は続ける
「でも…なんか楽しいな…親子で遊んでるみたい…でも大人げないよ隊長…私だってたまには勝ちたい」
「ベイが強いのに彼女もできないんだ…ベイで負けるわけにはいかない…いかないんだ…」
嫌な記憶を頭をふって霧散させる
「じゃあさ…」
「ん?」
「次の勝負で賭け…しない?私が勝ったら隊長は私の彼氏。私が負けたら私は隊長の彼女。どう?」
俺は…

コ○ブキヤのアクトレスシリーズの新作が発表された。
新作は何と成子坂製作所から二人目の立体化となるシタラのキットだ。
厳密には楓がキット化されたのは叢雲時代の話だったのだがそれは置いておくとして。
「あ、シタラさんもプラモになるんだ。本人も喜んでたね」
模型情報サイトを漁っていたら後ろから顔を出したのは怜だった。そう言えば怜はそう言う話きたことないのか?
「そんな話はあったよ。叢雲にいたころね…でも断った」
何故だ!?
「隊長も知ってるでしょ…あんまりメディアとかで目立ちたくないんだって…」
そう言えばそうだった…。それが理由でピックアップアクトレスの番組のオファーも断っていたのだ。
迂闊なことを言ってすまない…、と謝る。
「いいよ、別に…でもさ」
ん?
「そんな模型じゃなくても…私はここにいるんだから実物ならいくらでも見せてあげるよ…?」
そっぽ向きながらそんなことを言う怜。心なしか少し頬を染めている。あぁ…やっぱり可愛いなぁ。
それはそれとして、俺は怜のスクラッチモデルを作成することを心に決めるのだった。

怜ちゃんとデート 2/24 ~その4まで

なぁ、怜。今度の休日暇か?
「え、これと言って用事はないけど…どうしたの?」
えっとだな…たまたま、たまたまな?知り合いから行けなくなったからって遊園地のチケットを貰って2枚あるんだが…。
良ければ一緒に行かないか?
「それはデートのお誘いってやつかな」
はい、つまりそう言うことです…。
「どうでもいいけど、せっかく誘ってくれるなら変な嘘なんてつかずに普通に誘ってくれた方が嬉しかったかな」
痛いところを突かれ、自分でも顔が赤くなっているのがわかる。
「隊長の誘いなら断ったりしないんだからさ」
そ、それじゃぁ
「じゃぁ、今度の週末は開けておくね、隊長」
ありがとう怜。
「ねぇ、後で隊長の好きなもの教えてよ。お弁当は作っていくからさ…週末、楽しみにしてるね」

  • 怜とのデート当日。
    「怜ちゃんは時間に几帳面なので待ち合わせは早めに行ったほうがいいですよ」
    と言うアドバイスを元に、待ち合わせ時間の40分前に待ち合わせ場所に到着した。
    「あ、おはよう。隊長、早かったね」
    なんともう既に怜は居た。慌てて時計の時間を確認する。腕時計も待ち合わせ場所に指定した駅前の大時計も間違いなく時間の40分前を指していた。
    「何慌ててるの?遅刻はしてないよ」
    それはそうなんだが…。怜より先に到着して待っているつもりだったことを白状する。
    それより、待たせてなかったか?
    「ううん私もついさっき着いたとこ」
    これじゃ立場が逆だな…。思わず苦笑が漏れた。
    「そうかもね『ごめ~ん待った~?』とか、そういうやり取りに憧れてたりする?」
    せっかくのデートだし少しはな…
    それに男が彼女の方を待たせたらしめしが付かないだろう。
    「今度からは気を付けるよ。…でも無理かも。私も隊長と会うの楽しみだからさ」
    こちらの手に腕を絡める怜。今度の待ち合わせは2時間前に来て待っていよう、と心に誓った。
  • 怜と合流し、遊園地に向かう。結果的に待ち合わせ時間がかなり前倒しになったので開園と同時に入園することが出来た。
    「で、隊長。最初に何に乗る?」
    まずはジェットコースターだな。
    「いきなり?」
    早い時間に入れたから人気アトラクションには列ができる前に早めに乗るべきだ。
    そう言えば怜はジェットコースターって乗ったことがあるのか?
    「…無いね。遊園地もほとんど初めてだし」
    絶叫系大丈夫だろうか…
    「結構高いけど、大丈夫でしょ。空なら普段ギアで飛んでるし、私のギアのが高く、速く飛べる」
    青空を見上げる怜の横顔はどこか誇らしげだった。
    =============
    運がよかったな怜!ジェットコースターの先頭だぞ!
    カタカタと吊り上げられライドの中で隣を見ると、普段から白い怜の顔がさらに青ざめていた。
    「ねぇ、隊長…別にいいんだけどさ…手、握ってもらっていいかな…」
    いいけど…大丈夫か?
    「不思議だね…ギアなら自分で思い通りに動かせるけど…シートに体を縛りつけられて持ち上げると…なんか凄く…」
    心なしか身震いしている怜
    そうか…すまなかった…
    そう言って怜の手を握る。
    「ありがとう、隊長…手を握るだけで…隣に隊長がいると思うだけで安心できる…」
    ガコン…と音がしてライドがコースの頂上に着いた。
    「覚悟を決めたよ…」
    どんどん青ざめる怜の横顔に心底不安を覚え…無情にもライドは真っ逆さまに発進した…。
    その日怜は聞いたことない悲鳴を上げた。
  • 初めて乗ったらしいジェットコースターから解放された怜はぐったりとしていた。
    気が回らなくてすまない、と謝るも「乗るって決めたのは私だから…」と青い顔で答えるばかりだった。
    このままではまずい。ジェットコースターの思い出が悲しいまま終わってしまう…。と、道端の屋台が目に入った。これだ、と思い怜をベンチで待たせて買いに走る。
    =============
    「これ…クレープっ…!」
    クレープ手渡された怜の顔がパッと輝いた。
    意外と甘いもの好きなのか?
    「別にそういうわけじゃないけどっ…」
    そう言いながらもクレープをもくもくと頬張る怜は心なしかいつもより楽しげだ。
    「隊長も…食べる…?」
    顔の前にクレープが差し出される。これは俗に言う「あ~ん」というやつではないか?
    しかし、舞い上がるわけにはいかない。嫌がられないよう、極力怜が口をつけてない場所ににかじりつく。
    「ん……はむっ」
    手元にクレープを戻すと、怜は今しがた自分が口をつけた部分を何の躊躇いもなく口にし咀嚼し飲み込んだ。
    唖然とするこちらの視線に気づいた怜は少し頬を染めながら、しかし悪戯っぽい笑顔を向けた。
火星シャード

「隊長……そのさ……剣の使い方、教えてくれてありがとう」
スコアの稼ぎ方について怜と隊長は戦術を練っていた。その中で、ふと隊長が「バズーカはそもそも後方支援に向いてない。どちらかと言えばミドルからクロスレンジ向きだ」と言ったのがきっかけだった
隊長が指導した通りに両手剣を振るってみれば、今まで処理に困っていた広めに陣形を取った小型ヴァイスの群れがあっという間に斬り払え、ヴァイスワーカーなどにも手こずらなくなった
「まあ、楓さんやリン程じゃないけどね、急ごしらえだし。でも、何だか自信が持ててきたよ。いつまでも遅れてばかりじゃない、って」
「はは、いつになく饒舌じゃないか」
「饒舌で悪い?……あっ、そういえば……」
軽口を捌きつつ怜はふと、重大な見落としに気づいたかの様に隊長から目を逸らし、ぱちくりぱちくりと泳がせる
「そういえばさ、なんで隊長がギアの使い方なんか……」
至極当然、素朴な疑問だった。多少の指導は受けただろうが彼は隊長としては成子坂が初であり、経験豊富な訳でもない。楓のように剣術を嗜む家庭に生まれ育ったわけでもないだろう
「……昔、ちょうどお前くらいの年だった頃、フレームランナーやっててな。そらもう前線で国防軍と一緒にな……」
「ふれーむ……らんなー……?」
聞き慣れない単語に怜は余計に混乱した。何かの職業だろうか。でも彼が言うなら、そこで剣術を身に着けたということだろう
「……まあそういうこった、……ああ、お前も『青い鳥』だな、夜明けは必ず来るからな」
「青い鳥……それがどうかしたの?」
「その筋では伝説なんだよ、青い鳥ってのは」
「ふーん……夜明け、かあ……」
隊長があまりにエキセントリックな言動になったので、怜は言葉の意味を問うことをやめた

怜と夜露、横須賀にて

「ねぇ怜……さん!週末買い物に行きましょうよ!親睦を深めるっす!!」
夜露達と和解してしばらくした後、いつもの変な踊りと共に夜露が急にそんなことを言い出した。
「夜露…またさん付けしてる。親睦深める気あるの?どうでもいいけどさ」
「それは…やっぱりまだ慣れないと言うか…」
まったく、この子は子犬のようなまっすぐな目を向けてくる。
「怜さんは憧れの楓さんと同じチームですし…アクトレスとしても尊敬できる先輩ですしっ!」
「同学年なんだしさ、いいよそう言うの。…じゃぁ呼び捨てできたら一緒に買い物に行ってあげる」
夜露は困り顔だが、表情がころころ変わるのが面白くてつい意地悪をしてしまう。
われながら性格がわるい。
「それじゃぁ、怜……」
「……」
「………さん」
====================
「あ、いたいた怜さーーんっ!」
「おはよう夜露」
「怜さん早いっすねっ!まだ待ち合わせの10分前っすよ!」
パワパタと駆け寄ってくる夜露。やっぱり犬みたい。きっと犬だったら尻尾を全力で振っているだろう。
「それで、今日はどうするの?私、横須賀シャードに来るのは初めてなんだけど」
「なら私のオススメのお店を回りましょう!」
「うん、任せた」
こうして夜露との一日が始まった。
====================
「まず横須賀といったらこれっす!戦艦三笠っす」
「夜露は戦艦って何か知ってるの?」
「戦艦はすごい艦っす!恐竜みたいなもんっす!」
「シタラさんの受け売りだね、それ」
「なんでわかったっすか!?」
====================
「お昼は海軍カレーにするっすか?それとも海軍バーガーがいいっすか?」
「なんで海軍なの」
「横須賀だからっす!」
====================
「え、干物センターっすか…?渋いっすね」
「うんおばあちゃんのお土産にね」
「なるほどっ!」
====================
「せっかくなんでおそろいのお土産買って行きましょうよ怜さん!」
横須賀の街中を一日中歩き回り、夕暮れに差し掛かった頃、夜露が商店街の端っこのお店に駆け寄りながらそう言った。
「うん、いいね。でもその三角の旗はいらないかな…」
「マジっすか!?」
落胆する夜露。でもすぐに気を取り直すとまた別のものを持ってきた。
「ならこれっす!横須賀と言ったらスカジャンっす!」
背中には紋章とU.S.AIR FORCE?とか書いてあるジャンパーだ。
「ダメっすか…?」
不安そうな顔をする夜露。
「じゃぁ、お揃いのにしようか…夜露が私を呼び捨てで呼んでくれたら」
「ふゎっ!?」
「無理?」
「じゃぁ…行きますよ…」
「うん」
深呼吸をする夜露。
「お揃いのジャンパーを買いましょう、怜っ!」
「いいよ、夜露」
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翌日、夜露は横須賀シャードで買ってきたスカジャンを来て出勤してきた。
「なんでせっかく買ったのに着てきてくれないんすか!?」なんて本人は残念がっていたけど。
あのジャンパーは今私の部屋に飾ってある。
あんな想い出の詰まったジャンパー勿体無くて着れるわけないじゃない。

学園の子は怜ちゃんにラブレター渡すだけで満足して帰っていくけど
怜ちゃんは断られた相手が傷ついていないかなとか私ってそんなに男っぽいかなとか色々気にしていて
まあどうでもいいんだけど……なんて言いながら隊長に相談したら真剣な顔で怜は可愛い女の子だよって言われちゃって
他にも色々親身になって話してくれたのにその言葉ばっかり覚えていて毎晩思い出しちゃうんだ

「わんこ可愛いなぁ…」
先日のデートの最中、ペットショップの前で不用意にそんな事を呟いてしまったからだろうか
仕事を終えて帰宅した俺を待っていたのは犬耳装備の怜だった
「お…おかえりなさい………わん」
そんなに耳まで真っ赤にする程恥ずかしいなら止めればいいのにいや止めるな
「あの…さ……これ……」
脳の回路が焼き付いてすっかり止まってしまっていた俺におずおずと差し出される紙袋
中身はもちろん
「首輪だ……」
「犬にはご主人様首輪が必要でしょ………わん」
どうした事だ怜が可愛すぎる…
促されるまま当社比の46%可愛い怜の首に首輪を装着する
「ご主人様…似合うかな?……わん」
真っ赤に頬を染める怜と袋の中のプラグ付き犬尻尾を抱えて寝室へと飛び込んだ

背中を流す怜ちゃん

「湯加減はどう?隊長」
怜!?…ガラッと風呂場のドアを開け、入ってきたのは身体にバスタオルを巻いた怜だった。
「背中流してあげるね。ほら、あっち向いて。
残念だけど、変な事するつもりはないし、この下も水着来てるから期待はしないでね」
そんなことを言いながらそそくさと背中を洗う準備をする怜…。戸惑いながらも背中を向けて身構える。
「じゃ、始めるね…」
怜のひんやりとしたやわらかい手の感触が、スポンジと共に背中に触れる。
「ふふっ、やっぱり男の人の背中は大きいんだね」
父親のこともよく覚えてないという怜は…おそらく初めて触れる異性の背中なのだろう。しばらくの間、彼女が洗ってくれるのに身を任せる。
「それじゃ、流すね…前も洗う?」
せっかくだがそれは遠慮しておこう…。おそらく理性が持たない。背中の泡がゆっくりと流される。
「それじゃ私は一度上がるね」
そう言って浴室を後にする怜。
ありがとう、と振り返ると閉じていくドアの隙間から、湯に濡れ張り付いたタオルと透けた肌がちらりと見えた。
…水着なんて着てなかったんじゃないか。

壁ドンしたら目をつぶってすこし顎を上げるのが怜で

「え、何「壁ドン」がしたい…?」
そう、試しにやって見ないか、と冗談交じりで提案してみた。
「別に良いけど、ほら、してみてよ」
立ち上がって壁際で待ち構える怜…あれ意外とノリノリ?
「ほら、早く」
急かされるように怜を壁まで追い詰め壁を…ドン!思いの他良い音が響いた。
「…結構ドキドキするね」
体制としてはこちらが壁を背にした怜に覆いかぶさる形になった。意外と距離が近い…
「ここで終わりじゃないよね…」
怜は目を瞑りすこし顎を上げ、完全に待ちの体制だ…どうする…どうするよ俺…。でも中途半端では終われない。
「………っん」
そのまま怜の顔に迫り唇を重ねる。

「大丈夫ですか隊長。今休憩室の方から大きな音がしましたけど…まぁ」

…隊長は生えてない方が好きなんだ

ふぅん…どうでもいいけどね

「待って…ちょっと待ってリン…!!」
わたしは焦ってリンの暴挙を止める。
確かに隊長のために毛を抜こうとしたのは確かだ。でもだからって…リンに相談するんじゃなかった…
わたしは股間に貼られたガムテープを見て深いため息をつく
「えーでもクラスの男子がスネの毛そうやって抜いてたよ?」
「場所考えてバカ!!」
つい汚い言葉遣いになってしまう。
クラスメイトに見られたら卒倒する子も出てくるだろう。
そんなことはどうでもいい…今はこの股間に貼られたガムテープの処遇について考えなければ…
無情にも館内放送でヴァイスの出現が報じられた。
私はガムテープをきれいに貼った上から専用スーツを纏い走って事務所に向かった…。

リンが怜に「昔青のジャージ着てたよねー」って言ってたのを聞いて怜のジャージかぁ…見てえなあ~…って思ったこと口に出したら怜に聴かれてて「馬鹿言ってないで任務の指示よろしく隊長…」って呆れられちゃってしまったなぁとか思ってたら後日仕事終わりに怜に「ちょっと付き合ってよ」って呼び出されて更衣室前で「ここで待ってて」って待たされて何だろ今日なんかやらかしたっけ…とか思って待ってたら「入っていいよ」って声がかかったから入ったら青いジャージ着た怜がいて何で!?って思わず声に出して言っちゃってやっべとか思ってたら「…たいって…ってたから」って小さく呟いててごめんよく聞こえない…って言ったら「前、見たいって…言ってた、から」なんてちょっと頬を紅く染めて言ってくるんだよね「ごめん、どうでも――」いいなんて言わせるかバカ!って感じで思わず抱き締めてお前はかわいいぞ怜!お前は今俺の眼に映ってる世界で一番かわいい女の子だ!って言ったら見たことないくらい真っ赤になってる怜に「ほんと馬鹿…馬鹿じゃないの…」って悪態つかれたいよねジャージ実装まだっすか

膝枕してくれたお礼に今度腕枕してあげるよって言って「もう…バカ…」ってなる怜ちゃんの俳句を所望するっす

怜に礼 照れるに赤き 腕まくら

ん、今日もご苦労様、隊長
あ、空になったお弁当箱は出しておいてね
…ん、またピーマン残してる…
別にいいけどさ、その歳になってもお野菜で好き嫌いがあるってはずかしいよ?
それに作った人の気持ちも考えてさ…自分で食べづらいなら手伝ってあげるから
ほら、あーん

耳掃除してる間はなんとも言えないすごく優しそうな表情してそうっす

その後隊長が寝落ちちゃって髪をすきながら撫でてたらリンちゃんに出くわすけど慈愛に満ちた表情で片目つぶって唇に人差し指あててしーっ手する怜ちゃんいいよね…

「隊長…また耳垢溜まってない?
耳掃除してあげるからほら、こっち来て…ここ、膝に頭乗せて
うん…結構溜まってるね…………
少し奥まで入れるよ…痛かったら言ってね?
………とれた。少し息吹きかけるよ…ふうーっ…
それじゃ…反対向いて…そう
……………え、気持ち良い?
そっか、良かった……
…はい、終わり………隊長?
寝ちゃったんだ…ふふっ…よしよし」

「ねぇ夜露はいつになったら私を名前で呼んでくれるのかな…」
調査終わりの更衣室、帰りには何を食べようかななどと考えていた時に不意の言葉が投げかけられた。
「今日の調査でもそうだけどさ、最近チーム組むことも増えたのにまだずっと怜”さん”呼びだよね?…どうでもいいけどさ」
そう。最近は怜……さんとも打ち明けてきて。これはチャンスとばかりにリンさんに頼んで、
少しの間楓さん怜さんとチームを組ましてもらうことなったのだったが…
「そんなに私って怖い表情とか態度してるかな?夜露が無理してるならチームを解散でm「ちがうっす!!!!」
それは違う無理などしてるわけがない、
「それは違うっす……怜。怜のこと怖いだなんて思ったことないっすよ。
ただその…呼び捨てにしようと思うと、なんか意識しちゃうというか…は、恥ずかしくて…っすね…」
顔が熱い。自分が言った言葉もなんか変な意味に捉えられられなくもなさそうだが
この際無視だ。勢いのまま抱き着き言葉を繋げる、
「テレビの中で見る憧れの人にこうして触れ合えて、名前で呼び合える。
それって素敵なことだなって考えるとどんどん恥ずかしくなってきて…」
怜の顔も見れない。ただ、抱き着いた腕の中で小さく震える感覚があり、
「フフ…バカじゃん。私と夜露は家族じゃなかったの?
なのにそんなので恥ずかしいなんて…まだまだだね夜露は。…フフフ」
クスクスと笑う怜の顔、そこには拒絶を向けていた過去の表情などはなく、
そうだこの笑顔の為に頑張ろうと思ったのだ。この人の曇った顔なんてみたくないのだ。
「わたし怜を絶対に幸せにしますからね!これからも一緒にやっていきましょうね!」
そんな宣言をして、怜が驚愕の顔の後。少し照れながら「…お願いね」と言ったのは。
抱き着いた自分の姿が下着姿だったことに気付く少し前のことだった。

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どうしてリンがそこにいるの…?
我ながら無茶な心境になっていると思うが一度思ってしまった心が何もなしに収まるはずもなく際限なく暗い気持ちに襲われる
何故隊長はリンにバレンタインイベントの服を試着させたのだろうか…
何故私に一言怜…着て欲しいと言ってくれなかったのだろう
何故リンの衣装を見て隊長は嬉しそうにしているのだろう…
答えは簡単
私の態度がそっけなかったからだ…
もちろんこんな服どうでもいい
ただそう思った心が隊長を喜ばせる手段を一つ潰してしまうという痛恨のミスに繋がった…どうしようどうしよう
私はよりそっけなく行動しバレンタイン当日にすべてをかけることにした

「お休み、隊長」
最近隊長と夜を共にすることが多くなった。と言っても別にいかがわしい意味ではない。
そういったことが全く無いわけではないけど…。
とにかく夜、誰かが傍にいてくれるのはこんなにも安心出来るものか、と思う。
むしろここ最近は隊長が傍にいないと安眠が出来ないことの方が多い有様だ。
父親のことはよく覚えていない…。
母親も寝かしつけてくれたりした記憶もない。
大好きなおばあちゃんは部屋とぬいぐるみを与えてくれてくれたけれど、それでも拭い切れない寂しさがあった。
隊長の寝ている方に少し身を寄せる…。
布団と毛布を伝う体温を感じ、呼吸の音を聞いて、すぐそばにいることに安堵する。
そうして安らかなまどろみに誘われて目を閉じる。
隊長には感謝しきれない…。またこうして人を好きになることが出来たのだから。
でも、素直に礼を言うのは恥ずかしいから、隊長が眠ったのを確認してからこう言うの。
「いつも有難う、隊長」

「久しぶりだね隊長」
風の中、誰もいない墓前にむかって女性が話しかけている。
「ごめんねおそくなっちゃって」
そういいながら妙齢の女性――小鳥遊怜は、手に持った花を墓前に供えた。

彼が亡くなってからここに訪れるのは何度目だろうか。
隊長が亡くなってすぐの頃、毎日のように来ていたのも今では懐かしい話だ。
「それでね、リンなんて結婚式でボロ泣きしちゃって…」
お墓の掃除をしながら近況を報告する。そういえば隊長が生きていた頃もこうやっていつも話を聞いてもらってたっけ。私は慣れた手つきで墓を掃除していく。
「そろそろ私行かないと」
愛おしむように墓石をなでる。そして私は後ろ髪をひかれながらその場を後にした。

「―ッ!」
荒い息を吐きながら目を覚ます。嫌な汗がまとわりつく。枕もとの時計は午前二時を指していた。
不安にかられた私は、無意識のうちに携帯へと手をのばす。
「もしもし、こんな時間にどうしたんだ怜」
電話口から聞こえてきた声は、私の心とは反対に寝ぼけきった声だった。
「いや、何でもないよ隊長。ちょっと声が聴きたくなっただけ」
「怜は寂しがり屋だからなーさては怖い夢でも見たな?」
「もう、からかわないでよ…」
声を聴くたびに温かいものがこみあげてくる。不安が消えていくのが自分でも分かる。
「じゃあおやすみ、怜」
「おやすみ隊長」
通話の切れた携帯を胸にあてる。大丈夫、この人は私を置いていなくなったりしない。今度こそ大丈夫――

翌日、昨晩深夜に隊長が交通事故で亡くなった知らせが成子坂へと届いた。

今日は雪か…
本日の仕事を終え事務所の消灯をし戸締まりをすると、空からしんしんと降る白いものが目に入った。
本来シャードの天候は環境管理システムにより管理され、基本的に天気予報が外れることはない。しかし、こうして時折サプライズ的に予報とは違う天気に見まわれることがある。
非効率的かもしれないが最早文化のようなものだ。
なのでこうして傘の準備を忘れることがある。…仕方ない、とコートのフードを被り外に出ると傘を差した人影が一人。
「夕方から急に振り出したがら、傘持ってきたよ」
わざわざありがとう、怜
「別にいいけどさ…隊長に風邪引かれたらみんな困るから」
怜から傘を受け取り、さす。
駅まで歩くか。
「うん…」
白い雪が振る街を怜と並んで帰宅した。

「おはよう怜、愛してる」
今日も一日元気な挨拶から成子坂の朝は始まる
「もう…やめてよね隊長……」
いつものように頬を染めながらつんけんとした態度をとる怜がとても可愛い
「それに…そういう言葉を考えなしに使ってると逆に女の子から嫌われるよ」
マジか落ち着け
怜に嫌われたら俺はどうやって自害すればいいんだ
「まぁ…どうでもいいけど……私は別に気にしないし」
良かった女神は存在したんだ
俺は正気に戻った
「すまないな怜…次から気をつけるよ……ところで子供は何人くらい欲しい?」
「だからそういう所がダメなんだって言ってるでしょ!……3人くらいかな…」
(なるほど……)
どうやら成子坂製作所の業務計画と並行して
怜との家族計画も練る必要がありそうだ

怜……さんは洗濯前の隊長のYシャツをくんくんしてる姿がよく似合うと思うっす

つい出来心だった。
隊長の洗濯物を片付けていると、ついそのYシャツの匂いが気になってしまい、無心になってそれに顔を埋めていた。
ただそれだけで終わらせておけばよかった。
のみならず、いけない事と知りつつも私は自分の服のボタンに手を書け、下着姿になり隊長のYシャツを身に纏った。
つい先ほどまで隊長が着ていたYシャツに包まれる私…。
安堵と興奮と罪悪感が綯い交ぜになり、鼓動は早鐘のように脈打ち、脳は陶酔していく。
最早自分で自分の制御が効かない…
抑えきれない昂ぶりを慰める為に私は脱衣所の床に横たわり下着の中へと手を差し込んだ。
その後果てたまま寝てしまい、翌朝その現場を隊長に見つかり数日間弄られる事になることをその時の私は知る由も無かった。

怜に怜が中学のときの写真を所持してるのがバレた。
「ねえ隊長…隊長がなんで私の写真なんて持ってるのさ…別にいいけどね…。
知ってるよ。リンから貰ったんでしょ…あの写真リンが撮ったのだし。
でもよりにもよって水着の写真の写真よ、これ。
中学生の女の子のスクール水着の写真よ。ほかの誰かに見られたらどうするのよ。
私はいいけどさ…隊長が捕まったら皆悲しむでしょ。
ほら写真返して。
…何でそんな残念そうな顔してるのさ。
そんなに中学生の頃の私がいいんだ…。
まぁどうでもいいけど…どうでもいいけど、もし家にこの水着まだ残ってるって言ったらどうする?
…ふふっ、写真返してくれたらあとで着てあげるね」
この後めちゃくちゃ水着撮影した。

「ほら、隊長朝だよ…今日は休みだからっていつまでも寝てないで」
休日の朝、怜に体を揺すられ目を覚ます。時計を見ると休日に起きるにはまだはやい時間だった。
「もう朝ごはんの準備は出来てるから」
怜に促され洗面所で顔を洗うと朝食の良い匂いが食欲を刺激した。
「いただきます」
いただきます。良い色に焼きあがった鮭の切り身に箸を通す。うまい。
「…………」
もくもくと朝食を食す二人。テレビの今日のヘッドラインニュースをなんとなく聞きながら時間が過ぎて行く。
「ごちそうさま…あ、食器は後で片付けるから台所に運んでおいてね」
はいはい、と怜と自分の分の食器を纏めて台所に運ぶ。
居間のソファーに腰掛け、テレビのチャンネルを回していると隣に怜が来てそっと寄りかかってきた。
あまり会話は無いがひとときの朝の時間を楽しむ。なるほど休日に早起きするのも悪くないな。
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将来そんな新婚生活が出来たらいいな、怜
「朝っぱらから何言ってるの…別に良いけどさ」

暖かな陽射しの中ロッキングチェアに揺られてまどろむ
隣には何やら編み物をしている長年連れ添った妻の姿
お互い歳をとったものだなぁと不意におかしな気持ちになる
「どうしたの?変な顔をして」
怪訝な顔をする妻に「いやなに…昔の頃を思い出してね…」と返すと
「変な事を思い出さないで…!」と頬を染めて抗議される
こんな所は昔から変わらないなぁ…
ついつい声をあげて笑ってしまったがために一層不貞腐れてしまった
「爺ちゃーん!怜婆ちゃーん!」と呼ぶ声を耳にする
声の方に顔を向けると青みがかった髪の少年と赤みがかった髪の少年、黒髪の少女がこちらへ駆けてくる姿が目に映る
「ほらほら、孫たちの前でいつまでも不機嫌なままじゃいけないよ」
優しく頭を撫でると
「まったく…どうでもいいけど……そっちもそういう所…昔から変わらないね……隊長」
とようやく笑顔を向けてくれた
皺だらけになってもなおその笑顔は昔のように色褪せず輝いていた

近頃楓がなんというか過剰に懐いてくる
年頃の女の子に好かれるのはそれは悪い気はしないがなにせ楓は有名人だあまり変な噂がたっても困るあまつさえそれが恋心だったりしたらあの年頃によくあるはしかのようなもので楓の経歴に傷がつくのは良くない…ということで楓のことを一番知る怜に相談をしてみたわけだ
「叢雲の頃はさトレーニングはトレーナーが、戦闘指揮は楓さんと管制官がって感じだったから直属の上司っていうのかな…隊長みたいになんでも見てくれる人っていなかったんだよ」
「だからずっと気を張ってたんだと思う」「私たちは楓さんに頼ればよかったけどさ…」
なるほどな父親は厳しいし慕ってた姉もでてっちゃったって身近に無条件に頼っていい相手がいなかったわけか
「求められてるのは父性というか兄貴分って感じだろうか…」なんにせよ恋心とは違いそうだなよかった…
「ん?つまりこれはそのまんま怜にも当てはまるわけか」
「…隊長何いってんの」
よしいつもの怪訝そうだけどまんざらでもなさそうな顔だ
「ほら!怜おにいちゃんだぞ!ハグしてやろう!」おうふ脇腹を蹴られためっちゃ蹴られてる
「こらおやめなさい怜足上げるとパンツみえるからタイツ越しとは言えパンツ見えちゃうからはしたないって隊長の脇腹は足踏みマットじゃないってやめて」
「ほんとどうでもいいけど!ほんっと!どうでも!いいけど!そういうところほんと…もう!」
そうはいいつつ目をつぶってハグ受け入れ態勢整えるほんとうにかわいいやつだ
「わたしも楓さんも隊長のこと本気で好きなんだからさ…」
胸元で何か言った気がするがよく聞き取れなかった
ハグしてるところだけ楓が目撃してしまったのはまた別の話だ

バニー怜ちゃんいいよね…

「ふぅん…隊長はこんな服が好きなんだ…」
胸元やお尻部分を直しながら呟くバニースーツ姿の怜
その度にうさ耳がぴこぴこうさ尻尾がふりふり…正直眩しすぎてつらい
「そう言えばジニーが専用装備に着替えたら隊長ってばガン見してるよね……どうでもいいけど…」
じとっとした目でこちらを見つめてくる怜
確実にどうでもいいとは思っていないご様子だ
「それで…隊長はこんなバニーに何をさせたいのかな…?」
うさぎちゃんと言うには好戦的なそれに壁際まで追いやられ
遂に俺は一切の抵抗を諦める事とした
「ふーん…この服に着替えただけでもうこんなにしてるんだ……」
いいえ怜だからです!
そう応えると怜は嬉しそうに摩っていた手を止めジッパーを下ろし始めた
「ふふっ…引っかかって下げにくいよ隊長…」
熱を持った怜の囁きは耳から容易に侵入すると甘く脳髄を蕩かした

わたしもだんだん強くなってきてる気がするよ
頭打ちっていうか達人の領域?に踏み込んだ…なんて言うとちょっと大袈裟かもしれないけど…
もちろんこれからも努力は続けるよ
でもこれも隊長が目をかけてくれたおかげかな、なんてね
でもシタラさんはやっぱり前を行っていて何が違うのか、なんて柄じゃないけど観察してみたんだ
そしたらなんか隊長とのスキンシップが他の人たちより激しいのが目についちゃって
わたしは別にいいんだけど特に隊長からのボディタッチは他の人に見られたら誤解されちゃうんじゃないかな
まあわたしは気にしてないんだけど隊長が困るとわたしも困るし
隊長はやっぱりシタラさんみたいな子が好みなのかな?

わたしなんでこんなこと言ってるんだろう…

「隊長、これ」
ある日、怜から小包を渡された。どうしたんだ急に。
「まだ寒いからさ作ってみたんだ…」
小包をあけると中から出てきたのは毛糸のマフラーだった。
これ手作りか?
「うん…おばあちゃんに作り方教わったから…ちょっと歪だけど…別にいらないなら捨てるなりなんなり好きにしていいけど」
捨てるなんてとんでもない。しかも怜の手作りだ。カシミヤのマフラーなんかよりも価値がある。
「そんな無理に褒めなくてもいいよ…」
口元を隠す怜。心なしか嬉しそうに見える。
でもこの色柄、確か普段怜が使ってるのと一緒だよな?
「ど、どうでもいいけどっ…!私が作ったやつだから材料とか作り方が一緒だから似ちゃっただけだからっ!!」
真っ赤になって否定する怜。素直じゃないなぁ。
「それじゃっ私帰るから…また明日」
お疲れ様。と言って見送る。
仕事が終わったら自分も帰ろう、怜とお揃いのマフラーを巻いて。

休日は一日中怜と裸でくっ付き合いながら過ごすに限る
朝目が覚めるとまだ隣で寝息を立ててる怜のおっぱいにいたずら三昧
先っちょを突いたり吸ったりしてその刺激で目を覚ました怜に
「隊長……何やってるの」とジト目で見られながらおはようの挨拶
まぁそのままキスをしてグシスナウタルに進化したラプタービークで
「もう…っ朝から………っっこんな……っ……んっ!あぁっ!」
なんて矯正を怜にあげさせたりするんですけどね
朝イチアニマを補充して喉はカラカラ…そんな時はサイドテーブルの上に予め置いておいた水差しから水分補充
口に含んでからまだちょっと息の上がっている怜に口移し
ただでさえぬるい水がお互いの口と絡み合う舌のお陰でより一層熱を持っちゃって
こりゃあ治らないなぁなんてやってると今度は怜から口移しで水分補給のお返しをされたりしてね
「隊長……まだ元気だね」と対面座位のままクスリと微笑む怜に尾てい骨辺りがゾクリとしちゃって堪らずそのまま2waveに移行
ちくしょうこの週末調査はなんて長いんだ何回ヤっても終りゃあしない
結局はお互いお腹がグゥ~っとなるお昼過ぎまでベッドの上でイチャコラ
ふと辺りに目をやるとティッシュの山々がd

「はぁ……」
窓の外を眺めながらつい溜息が出てしまう
学校の終わりが待ち遠しい…
こんな事は前まで…
それこそ楓さんやリンと一緒に叢雲で活動していた時には一度もなかったのに…
「あの…怜お姉……た、小鳥遊さん…先程から溜息ばかり吐いていますけどどうかされまして?」
そんなに溜息ばかり吐いていたからかクラスメイトにも心配されてしまう
「いや…何でもないよ……ただアクトレスとしてちょっと…ね」
なんて弁解するけどそれが単なる誤魔化しの言葉だって言うのは自分が一番よくわかる
この原因はアクトレスとしての小鳥遊怜の悩みじゃない…
1人の女の子としての小鳥遊怜の悩みなのだ…
(やはり怜お姉様に男性の陰が…)(根切りですわね…)(ファンクラブに召集を…)(アブソリュート生徒会長にも協力を…)
………うん…でもその前に不穏な話をしてるクラスメイト達に釘を刺さなきゃね
(隊長に迷惑かけられないし…)
そんな言葉を飲み込んで席を立つ…こんな悩みも……悪くないかな

怜、何も言わずにこれを受け取って着てくれ!
「え、ちょ…急にどうしたの隊長っ…!」
怜に紙袋を押し付け更衣室に押し込む。数分後、紙袋の中身を身に纏った怜が出てきた。
「あの隊長…これ…私には似合わないんじゃないかな」
要所にフリルをあしらわれた春らしい萌黄色のワンピース姿の怜。
そんなことない。とてもよく似合っている。バレンタインのお礼代わりに受け取って欲しい、と言う。
「あれは…気にしないでって言ったのに…でも、ありがとう」
あんな手の込んだチョコを貰っておいてお礼をしないわけにもいかないだろう。
それに好きな子にプレゼントをして喜んでもらいたいと思うのは男のサガだ。
「っ!どうでもいいけどっ隊長はすぐそうやって女の子からかうの良くないと思うよっ」
からかってるんじゃない本心だ。
「ならいいけど…」
顔を赤らめて俯く怜。やはり怜は可愛いなぁ。
「ところで隊長…びっくりするくらいサイズがピッタリなんだけど…なんで私のスリーサイズ知ってたの…?」
さ…さぁ何でだろうな…。その後とっちめられて専用スーツ発注時の身体データを盗み見たことが洗いざらい白状されるがそれはまた別の話だ。

隊長?…おかえり飲み会お疲れさま…
また飲みすぎたの…気持ち悪い?大丈夫?
どうでも良いけど…もうちょっと身体を大事にしたほうが良いよ
ほら、ソファーまで運んであげるから肩貸して…よいしょっと
横になる?…今お水持ってきてあげるね…
今日の相手は大手アクトレスメーカーの大事なお得意様だっけ…
仕事のうちなのはわかるけどさ…こうやって家で心配してる人もいるんだから
うん…団扇で風をおくってあげるね…気持ち悪くなったらいつでもいって…
寝ちゃったか…よしよし…

「隊長…どう…?」
着替えを終え現れたのは黒のビキニ姿の怜だった。
「水着なんて普段学校のしか着たこと無かったからさ…リン達に選んでもらったんだけど…変、じゃないかな?」
もじもじと身じろぐ怜。変なもんか。これ以上無いくらい最高だ!
怜の白い肌と黒のビキニのコントラスト、それにしなやかな体つきの怜のスポーティなイメージを強調し、もはや芸術品のように美しかった。
ナイスチョイスだ。今度リンに飯をおごってやろう。
「あんまりじろじろ見られると…流石に恥ずかしいかな…」
すまない。感動のあまりつい凝視してしまった。
「隊長に最初に見て欲しかったからさ…似合っているか不安だったけど…喜んでもらえたなら良かった」
少し頬を染め、上目遣いでなんて事をいうんだ怜。
ダメだダメだダメだ!
「え、何かダメだった、隊長…?」
こんな素敵な怜を他の男の視線に晒すなんて耐えられない…!
「っ…隊長って意外と独占欲が強いんだね…わかった、この水着を着るのは隊長と二人きりのときにするよ」
こうしてビキニは封印指定になり怜は社員旅行でスク水を着ることになった。

「………隊長」「………どうした怜」
「………海だね」「………そうだな」
「………なんで水着?」「………似合ってるぞ可愛い」
そんな会話を砂浜に二人並んでポツポツと交わす
遠くにはビーチバレーに勤しむ面子や泳ぎに興じる面子、筆を走らせるタマちゃんが居る
「……やめてよそういうの…シタラさんに無理矢理着せられて…こんな…面積の少ない水着が私に似合ってるわけないじゃん…」
「いやそんな事はないぞ怜によく似合ってると思う」
なんて返すと顔を真っ赤にしてモジモジ悦ぶ怜の姿に少しクラクラとする
「そう言う隊長こそ…もっとお腹ぽっこりしてるかと思ってた」
怜なりの意趣返しなのだろうか…見るのは初めてじゃないというのに……
……いや違う…これただの照れ隠しだ!
「やだなにこの生き物かわゲフン…あー……俺達も行くか?」
吐露しかけた内心を抑えつつそっと手を差し出す
「そうだね…折角の海だし…」
重なった怜の体温を感じながら俺と怜は人気のない入り江ゲフゲフン海へと二人駆け出した

水着ね…なんでもいいけど中学の頃の水着着てみたよ
さすがに少しきつくなってきたかな…専用服と見比べてどうかな
似てるって前にリンに言われたから…
ところで隊長…着たはいいけどきつくて脱げなくなっちゃった…脱ぐの手伝ってくれると助かるかな…

「ただいまー」
玄関で靴を脱いでいるとすぐに奥からパタパタと足音が聞こえてくる
「隊長…おかえり…」
「ああ、ただ……」
振り向くとそこには裸エプロン姿の怜が居た
その衝撃に思わず鞄を床に落とし呆然としてしまう
これは夢か幻覚かな?頬をつねると痛い…夢じゃない……
そうこうしていると見るからに顔を真っ赤にした怜があわあわと手を振りながら
「水着!水着着てるから!…その…疲れてる隊長もこうすれば喜ぶって……どうでもいいけど…仕事に支障が出たら皆が迷惑するし…しょうがなく…だから…私はどうでもいいけど……本当、どうでもいいけど……」
モジモジしながら言い訳をする怜の頭をそっと撫でる
「ありがとう怜…その気持ちだけでも嬉しいよ」
微笑みかけるとパッと花開いたかのように怜も笑顔になってくれる
「うん…あの……ご飯準備できてるから……ね」
照れ隠しなのだろうか…ぶっきらぼうにそう告げると怜はターンして台所へと駆けていった
程よく引き締まった肌色のお尻がプルッと弾んでいた

「怜結婚しよう」
「はぁ!?」
いかん怜の水着姿に興奮しすぎて我を忘れていた
落ち着け…落ち着くんだ…まだ慌てるような時間じゃない…
イベント期間はまだ先まであるんだ…
「ふぅ……すまないな怜…大丈夫だ、正気に戻ったよ…とりあえず式場予約だよな?」
「ちょっ…隊長!何言ってんの!?落ち着いて!」
しまったまだ冷静になりきれてなかった…怜に心配させてしまった…
俺とした事が……そうだよな…まずは怜のお婆様への挨拶が先だよな…
「やっぱり娘さん…いや、ここはお孫さんを僕にください……かな?」
よし…だいぶ冷静になってきたぞ
「もう隊長…そういうのはまだ早いってば……いや、後ならいいとかそういう問題じゃないけど…」
どうやら怜も喜んでくれているらしい
そんな嬉しそうな怜の姿を見ていると心が段々と落ち着いてきて頭がスゥーっと冴え渡るのを感じる
「よし…」そっとペンと手帳を取り出すとこれから生まれてくる怜との子供の名前を考えることにした