朱音ちゃん/双子怪文書

Last-modified: 2019-12-06 (金) 01:55:02

怪文書(朱音) / 怪文書(天音) / 怪文書(二人)

双子系怪文書-双子がいっぱいコレクション

「お姉ちゃん…本当にやるの…?」
天音がまた腰の引けたことを言う
「当たり前でしょ?どうもあの成子坂は隊長と比良坂夜露が所属してからうまく転がり始めたみたいなのよ。比良坂夜露はまぁいいとしてマネージメントで影響力の大きい隊長から潰すべきよ!」
私達はホテルの一室にいて隊長を呼び出していた。
天音は私と同じ顔に扇情的な服を着て肌を上気させている。恥ずかしいのだろうが私とほとんど同じなんだから誇りを持って胸を張ればいいのに。
まぁそんなことはいい。手順は簡単だ。二人で隊長を籠絡し決定的な瞬間になる直前で写真を撮り脅す。
待ってなさい成子坂…私達が潰してあげるわ…
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コンコン…とノックの音が響く。
隊長が来たんだわ!私は急いでドアを開けると想像どおり隊長がいた…のだが…
「誰その人…」隊長は女連れだった…。
「私は四谷ゆみ。隊長をホテルに呼び出すなんてだいたーん!でもちょっといやかなーりきな臭いって思ってついてきちゃった♡その格好見ればわかるわ。良からぬこと企んでるでしょ」
四谷ゆみと隊長は部屋に入ると後ろ手に鍵を締めた。天音は顔を真っ青にして震えている…
これはもしかしてかなりまずいのでは…
「ちょっとおいたが過ぎる子にはお仕置きが必要よね?大丈夫ちゃんと二人共最後には隊長にしてもらえるようにするからイき狂いなさい?」
私は四谷ゆみに、天音は隊長に押し倒され屈辱の時間を過ごす羽目になるのだった…
続きはろだで!

「隊長肩こってない?揉んであげるわよ」
「あの…お茶とお菓子です…根を詰めすぎないでくださいね?」
双子がめっちゃ世話を焼いてくるというかベタベタしてくる。天音は机にお茶とお菓子を置いてあーんしてくるし朱音は背中に胸を押し付けながら肩を揉む…ってなんだそれ体勢辛くない?
勿論なにか打算の上での行動なのは見え見えだが。取り敢えず背中の感触は楽しむとしてこの行動になんの意味があるのかを考える…までもない。
綺麗どころが集まっている成子坂製作所だが浮いた話が一つも聞こえない残念なアクトレス達の棘のある視線をバシバシと受けているからだ。どうして…
「隊長きもちいい?」「隊長…美味しいですか?」
でもまぁ…二人とも可愛いしとりあえずこのままでいいかな…
そんなことを思ったのが表情に出たのか一層視線が冷たくなった気がした。

取り敢えずこのままの状況だと俺の胃が持たないので一人ずつ問いただすことにした。まずは天音からだ。業務終了後にファミレスにこっそり呼び出し席に座り、単刀直入に問い詰める。
「え…?その…ご迷惑おかけしたのでなにかできることはないかと思って…迷惑だったでしょうか…?」
うんうんかわいいねえ目が泳ぎまくってる。
「素直に話したら悪いようにはしないよ。朱音の差金だろどうせ。取り敢えず被害が俺一人で済んでるし朱音にも軽く言うだけにしておくから」
「うっ…その…すみませんでした…拾ってまで頂いたのにこんな…確かにお姉ちゃんの言う通りに隊長をろうらく?して成子坂のチームワークを崩そうって…」
よく言えたねえ偉い偉い。だいたい想像どおりだったが手段が露骨で健全なのは所詮は高校生ってところか。じゃあ次は朱音だと、天音に聞いた朱音の連絡先に呼び出しをかけた。
「なんの用よ。なんで私の連絡先知ってるのよきもちわるい!」
開口一番これだ。朱音は事務所では甘々にベタベタだったがわざとらしすぎた。これが本来の対応だろう。
「連絡先を勝手に聞いたのは悪かったよ。でも事務所であんな事されたら何が目的なんだって疑って当然だろ」
「へー。ただのバカじゃないみたいね。成子坂のくせに」
このクソガキ…と思いはするが態度を見てはっきりわかる。足が震えてるしさっきから焦点が定まらない。人気のないところで誰にも見られる心配のない場所だというのもわかっている筈だ。
「あんまり大人をなめちゃいけないよ」
襟を掴んで壁に押し付ける。ズルっと足を滑らせ朱音はその場にへたりこんだ。
「なぁクソガキ。何でこの期に及んでお前が優勢だと虚勢を張れるんだ?自分の立場わかってんのか?」
「私は…いや…何するつもり…?い…いや…」
ちょっと興奮してきた…が今日のところはそういうことが目的ではない。
「天音に連絡先聞いたって言っただろ。何もないと思ったか?洗いざらい全部吐け」
朱音はか弱い女の子の様にめそめそしながらわるだくみの一部始終を話し始めた。

二人のどちらかだけ助けてやると言われ私はどうなってもいいからお姉ちゃんだけは…と言おうとしたところで姉が速攻で土下座して逃がしてもらい呆然としたまま取り残された妹をあまりにも不憫に思った成子坂の面々が優しく慰めて反省した妹も少しずつ成子坂に馴染み始めたところで旧叢雲の流れの新興企業のアクトレスとして姉が調子に乗ってるのを見つけて容赦なく叩き潰してほしい

別々の場所で尋問して同じことを聞く奴やりたいっす

全裸で排泄制限して両手両足拘束に頭には袋被せた状態のまま閉鎖環境な部屋へ入れて
3日間眠らせずに爪先立ちと逆さ釣り状態の繰り返しに時々尋問で水ぶっかけたり電気ショックっす?

大事な事はまず身体の拘束と衣服や排泄の自由を奪って人間扱いしない自尊心へし折るとこっす
常に辛い姿勢を取らせて水を掛けたり大音量で音楽流したり眠らせない環境へ置くことで睡眠を邪魔するっす
あと誰かと意思疎通させないのも大事だと聞いたっす

あ…天音をあげるわ!こいつグズだけど見かけだけは私に似てるから身体とかその…アレとか悪くないわ!
女子高生好きにできるとかあんたみたいなおっさんには滅多にないチャンスよ!
悪くない取引でしょ!…ねぇどうなの…でしょうか…

  • あーあー見捨てられちゃったね?天音ちゃん
    朱音がちゃんと謝るなり天音ちゃんを庇うようなら許してあげようと思ったのにね残念だよ
    じゃあ始めようか天音ちゃんの好きなこと
    お姉ちゃんに教えてあげなよ

実はARGisは了リスが人間を管理するために作った組織で、粛清対象となった東京シャードを確実に消すため危険なアクトレスは成子坂に集めて業務停止にさせたとは知らず「私たちが正義よ!」って思い上がった双子の前に蠍の群れ放ちたいよね...
ご丁寧に全て話した後、津軽シャードに左遷させられて悔しそうにLIVE映像をみる夜露ちゃん達と通信させて「ちが...そんなつもりじゃ...」って言わせたいよね

「ねえお姉ちゃん…誤解だったのはわかってもらえたけど…やっぱりもう一回謝りに行こうよ…」
そう消え去りそうな声で私に訴えたのは妹の天音だった
「はあー?なんで私が謝りに行かないといけないのよ!そもそも勘違いさせたのはお互い様でしょ!」
「あぅぅ…余計なこと言ってごめんなさい…お姉ちゃん…」
まただ、気の弱いこの子はすぐに謝る、私に謝ると天音はどこかへ行ってしまった
…でもこれでいい、成子坂への妨害工作を発案したのは私だ
向こうも謝りにきたとしても歓迎はしてくれないだろう、罵詈雑言を投げられようが傷つくのは私だけでいい
あの子は私がいないと何もできないんだから
「とはいうものの…やっぱり気まずいものはあるわね…」
そう自分を奮い立たせ成子坂まで来たものの、やはり入りづらい…
受付はなかったようなので事務所と思わしき場所へと向かう
なんと言われるのだろう…怒られるだろうか、謝罪すら受けいれてもらえないだろうか…不安は募る…
「そ、そのっ!この間は悪かったわね!謝りにきたあげたわよ!!」
「あっ!ほらっ!隊長さん!ねっ!お姉ちゃん来てくれたでしょう?」
…そこにいたのは成子坂の隊長の隣で笑う天音の姿だった

「うちの天音を返しなさい!」
天音が入った扉が閉まる前に、私は意気揚々と成子坂の事務所に突撃する
最近、天音の様子が何かおかしいと思い放課後、後をつけてみればやはり宿敵であるはずの成子坂へと向かっていた
「あ!お姉ちゃん!ね?隊長さん言ったとおりです!ちゃんと謝りに来てくれました!」
「違うわよ!あんた何敵と馴れ合ってるの!!帰るわよ!!」
私は天音の腕を引いて成子坂から連れ出そうとする、何を考えているのこの子は…あれほど復讐を誓った相手だというのに…
不意に、もう片方の腕を掴まれる
「ち、ちょっと!何するのよ!離しなさいよ!このセクハラ男!」
想定外の事態に私はちょっとしたパニックに陥る
「な、な、何よ!私に乱暴しようっての!気に入らないならやりなさいよ!こ、この卑怯者!!」
威勢良く噛み付いた私の目の前で隊長が腕を振り上げる
え?殴る気…?その先の痛みを想像して私はぎゅっと目を瞑る
…痛みは来ない、その代わりに手渡されたのはカードキーだった、出入りにはこれが必要なのだという
「し、知ってたわよこのくらい!バーカ!!!」
後日、私はカードキーを握りしめ、これをどう返しに行こうか頭を悩ませるのだった

「…色々と迷惑かけたわね、まあお互い様だし水に流しましょ?」
私は鏡の前で謝罪の言葉をつげる、うん、完璧だ
これで成子坂の連中も私たちのしたことを許してくれるだろう
そう満足げに1人うなづいていると部屋の外から天音がのぞいているのに気がついた
「な!?い、いつからいるのよ天音!声くらいかけなさいよ!」
私は少し動揺するがとっさに立て直す
「お、お姉ちゃん…?その、一応確認するけど…謝る練習を、してたんだよね…?」
不安そうな顔で天音が私に問いただす
「…え、ええ、そうよ、恥ずかしいところ見られちゃったわね」
「あ、あの…あんまり言いにくいんだけど謝るという行為から微妙に逸れてたような…ちょっと迷子になってるというか…」
「な、なによ!今のどこが間違ってるっての!ちゃんと謝れてたわよ!…たぶん」そう言い返す私に対し天音は俯いてしまった
「あ、天音…?」心配になり声をかけると、次の瞬間
「お姉ちゃん!そこに座りなさい!!」「え?」「いいから!!!」「は、はい…」
ここまで怒った天音を見たのは久々だった…そこから私は自分がどれだけのことをしでかしたのか…天音から3時間もの間、説教を受けるのだった…

成小坂に来てからというもの、天音は少し変わったように思う
今までは私にべったりだった、私と同じ顔をしたあの子が今では沢山の友人に囲まれ楽しそうに笑っている
お姉ちゃんみたいになりたいと、私の後ろをついて回ったあの子はもういない
私から離れていくようで、少しさみしいものはあるけれど、姉として、むしろ喜ぶべきことなのだろうとも思う
ある日のことだった、その日、天音は珍しく、出撃時にも関わらず上の空のようだった
理由を聞き出そうとしても「お姉ちゃん…その、ゴメンね、先に帰ってて…」そう言い残し、天音はそそくさとどこかへいってしまった
最近はいつもこうだ、昔はいつも一緒に帰っていたのに…
帰宅する途中、更衣室に忘れ物をしたことに気づいた私は何気なく隊長の様子でも見て帰ろうと思い、事務所に顔を出そうとしていた、そこで私が見たものは…
「隊長…好きよ、大好き…んっ…ねえ、今日でもう一年になるね、私たちが付き合い始めて…ね、ずっと一緒にいてね…?んっ…あっ、こら…もうっ…天音には…もう少しだけ内緒にしてね…?大丈夫、あの子には、私からしっかり伝えるから…」
そこにいるはずのない私と、隊長が絡み合う姿だった

「誕生日おめでとう!!」
突然の歓迎に双子は挙動不審になった。
「なんのつもり!?こんなことでほだされると思ったら大間違いだから!!」
「まぁまぁ」
声を荒げる朱音にローソクを立てたケーキをずいとお出しする。天音にもワンホールずつだ。
小結さん謹製だからうまいに決まってる。
ショートケーキとチョコレートケーキにそれぞれハッピーバースデー朱音と天音と、それぞれの名前を書いたプレートが乗っているのを見て一瞬二人の表情が緩んだのを見逃さなかった。
「いろいろあったけど成子坂のアクトレスの総意で二人の誕生日を祝うことに決定したから民主主義で拒否権はありません。嫌ってほど歓待されて帰ってください」
「多勢に無勢…仕方ないわね」
「お姉ちゃんさすがにそれはかっこ悪いよ…」
やいのやいのと言いながら二人を祝う盛大な誕生パーティーが幕を開けた

「お姉ちゃん…」「あ…アンタ本当にやるの?」
浴室で震える琴村姉妹を前にそっと剃刀を手に取る
「もちろん…これは君達への罰であり誕生日の祝福でもあるんだよ」
さあどちらから先にやる?…と暗に目で問いかける
「お、お姉ちゃん…私が…」「うるさい!あんたは私の後よ!言う通りにしなさい!」
強がりながら手を後ろに組みこちらに秘所を突き出して晒す赤音
強がってはいるがやはり年相応に初めての体験への恐怖があるのだろう
震えるそこにシェービングクリームを吹き付けると
クリームの冷たさに「ひゃっ…」と可愛らしい声が漏れる
「動くなよ…動くと誤って傷つけちゃうかもしれないからな…」
そう告げてショリ…ショリ…と剃刀の刃を当てていく
「んんぅ…ふぅ……っっ!」
顔を真っ赤に染めて羞恥心を堪えながら刃を受け入れる朱音…
妹の前での剃毛…そんな異常な経験が何を彼女にもたらしたのだろうか
つるつるに剃られた秘所から糸を引く淫液がその全てを物語っていた

「なーにが猫耳アクトレスよ!!あったまおかしーんじゃないの!!」
お姉ちゃんが何やらまた社会への憤りを爆発させているみたいです。聞きたくないなぁと思いながらどうしたのお姉ちゃん。と聞くと早口が帰ってきたのです。
「ちょっと聞きなさいよ天音!SNSで注目アクトレスの誰に猫耳をつけるか投票で決めようなんて規格が持ち上がっていてね!」
うん
「イージスはアクトレスを着せ替え人形か何かと勘違いしているのよ!!だから成子坂の暴挙も許されたんだわそうに違いない!」
うん
「大体なんで私の名前が候補にあがってないのよ!!おかしいでしょ?こんなの絶対不正が絡んでるに決まってる!!」
うn?
「ええと、あのねお姉ちゃん…結局お姉ちゃんは猫耳をつけたいの?」
「はぁ?そんなわけないじゃない!!話聞いてた?天音」
聞いてたからそうとしか思えないんだけど…うーん困ったなぁと思ったら話を聞く前に呼び出していた隊長が偶然通りがかりました。
「じゃあ隊長さんに誰が一番猫耳が似合うのかはっきりさせてもらいましょう」
私は駆け出しました。適当に逃げるつもりがなぜか私まで猫耳をつける事になったのはまた別の話です…

「ああっ!これは…! 琴村姉妹!!ああ…まさか、まさか…、重要な投票をしようとしている相手が、このように投票対象に入っていないとは… こ、子供相手に信じられん!俺なら断然巨乳の女。アクトレスで言うと、ジニー・Gがいいのに。しかし、この運営以外にこの猫耳を実装できる者がいないのも確かだ。
つつがない投票の進行のため、俺はあえて、あえて社会道徳をかなぐり捨てて、見て見ぬふりをしなければ。そうなのだ、これは『超法規的措置』!
俺は成子坂製作所のため、ふたりの不幸な少女の人生を、あえてあえて見て見ぬふりをするのだ。
あーっ! 最低だ最低だ。俺はなんと最低な隊長だ。
故郷の両親よ、楓よ、怜よ…。
この隊長の魂の選択を、笑わば笑え!
見なかったことにしよう!」

双子は水着も可愛くてよかったっす…
安易にお揃ではなくてあえて姉の方に可愛いフリフリ水着で妹の方にセクシー路線の際どいの持って来たあたりスタッフほんとにわかってくれてるっす…
ああでもどっちか片方しか水着交換できないのは辛いっすね…
いっぱいお布施して双子水着を揃えろと言う運営からのお達しっす
はぁ双子かわいい…

双子妹が先行きの不安から隊長に身体を売るのいいっすよね…妊娠発覚して姉に相談する妹っす

姉は完全にオーバーフローっす

真理は笑ってるっす

「ひぐっ…おね、お姉ちゃん…どうしよう…」
グズでトンマな私の妹が泣き叫ぶ。神宮寺真理の用意した隠れ家での生活から約二ヶ月が経った。外出は極力せず、必要なものは通販で揃える。とは言っても人間、ずーっと部屋に缶詰とはいかないため私と妹も夜中にこっそり外出してたのだが
「お姉ぢゃん…赤ちゃん…赤ちゃんデキちゃったよぉ…」
わんわんとピンクの棒、妊娠検査薬を片手にへたり込む妹の姿に私は目眩を覚える
「あんたいつの間に!相手は誰なの!?」
いくらお金に困ってもウリだけは絶対にしない。そう二人で約束したのに。なんでこうも妹は
「な、成子坂の隊長さん…抱かせてくれればっ…知りたいことを教えてくれるって…わた、私!お姉ちゃんのために」
私のため、と言われ思わず言葉が詰まる。しかし妊娠だ。堕ろすにしても産むにしても時間と金がかかる。私は妹から目を離し壁際に立つ神宮寺真理を見た。ここは下手に出るしかない
「あの…お金!工面してほしくて…」
「ん?何か勘違いしてない?私が面倒見るのはキミ達二人だけ。お腹の赤ちゃんは自分で何とかしてね?」
そう言って神宮寺真理が去る。私は妹と同じように床にへたり込むのだった

次は隊長に直談判しに行った朱音が毒牙にかかるっすねよろしってるっす

「お前の所為で!天音は!」
金は出してくれなかったが情報はくれた。神宮寺真理の言った通り隊長はこの日、深夜まで成子坂製作所で残業に勤しんでいた。天音の手を引っ張り、隊長な相対する。神宮寺真理が使えない以上ここは孕ませた相手に責任を取らせるしかない。
「全部全部お前らの所為だ!凪さんがいなくなったのも!ノーブルヒルズがなくなったのも!先生が逮捕されたのも!全部!全部!」
わかりやすい敵を前にして私の口からは堰を切ったように今までの恨みつらみが溢れ出る。別に全てが目の前の男の所為ではないことはわかっていたがそんなことは関係ない。
「天音!あんたも何か言いなさいよ!……天音?」
カッと燃え上がった頭の火が少し収まり隣を見ると妹の姿がない。握っていたはずの手は空を切る。キョロキョロと周りを見渡すと妹は成子坂の隊長のそばによって抱きついていた。
「天音…なにしてるの…?」
「隊長さん!ちゃんとお姉ちゃんを呼んできました!」
今までの暗い表情とは一変、顔に笑顔を咲かせる天音が頭を撫でられ嬉しそうにする。
騙された。ハメられた。誰に?妹?神宮寺真理?成子坂の隊長?
訳がわからず私は膝から崩れ落ちた。

 

「ひぐっ…くそっ…くそっ…こんな男に…」
私はベッドでぐったりと横たわり隣で熱心に腰を振る妹の姿を見る。私と同じ顔、同じ身体の人間が心底気持ち良さそうに声をあげる。一方の私はどうだろう。成子坂の隊長と妹に捕まり、純潔を晒した。どんなに助けを求めても誰も助けてはくれなかった。だってそうだ。わざわざ人の来ない時間を狙ったんだ。下半身を見れば生臭い白と赤が私の身体を汚している。いつの間にか壁には神宮寺真理がカメラを構えていた。そうか私はこの場にいる全員にハメられたんだ。神宮寺真理は私を裏切った。妹も私を騙した。成子坂の隊長は言わずもがな。私と同じ声の女が高らかに獣のような声をあげぐったりと成子坂の隊長の上に重なる。絶頂したのだろう。そして私も妹のように先程喘いでいたのかと自覚する。妹の中からソレが引き抜かれ、妹が私のヨコに寝かせられた。
「お姉ちゃん…これでお揃いだね…もうこれで安心だよ」
何が安心なのかわからない。でも妹に手を握られ、施設で二人きりのことを思い出した。目線の先では神宮寺真理が成子坂の隊長とキスをしている。
なんだかどうでもよくなって私は目を閉じた。

天音の変化に気付いたのは、成子坂に来て三月程経った時だった。
二人揃って出撃することが減ってきた事について、私が隊長に申し入れようと天音に声を掛けたことが変化の始まり。
「お姉ちゃん、隊長さんは何か考えての事だと思うよ。」
「あんた、私の後ろじゃないと駄目じゃない、あんまり成績悪いと居づらくなるわよ。」
今までなら「そうだね・・」と下を向いていたはずなのに。
「隊長さんはそんなことないって言ってたよ・・私は前衛でも問題ないって・・」
「はあぁ?私の言ってることが間違いだって言うの?」
今までなら「そんなことないけど・・」って私の手を取っていたのに・・
「お姉ちゃんだって、隊長さんと二人で話してるとき楽しそうじゃない。」
怪訝そうな顔の天音に、デリケートな部分を突っ込まれた。
「ぐっ・・し、仕方ないでしょ、あ、愛想の一つもなかったら追い出されるかも知れないのよ。」
隊長は威張ることなく、卑屈でもなく、私たち二人を成子坂の一員として扱ってくれることが心地よい。
他のアクトレスもそうだが、成子坂の雰囲気は隊長が作っている。
今まで私たちが感じてきた疎外感や居心地の悪さが当たり前の環境とは違う・・そう、凪さんと
いるような・・・
「お姉ちゃんは隊長さんのこと信用してないの?」
不安そうに口元に手を持って行きながら、天音が続ける。
「私は・・隊長さんのこと、信用してるよ・・今までの人たちとは違うって・・」
「そんなの分かんないでしょ?あんた、私と隊長とどっちを信じるの?」
自分の気持ちや態度を棚に上げて、確認する。
「そりゃあ・・お姉ちゃんだけど・・・」
「そうでしょ?まあ、あんたがそれでいいならもう少し様子を見てもいいわよ。」
あまりにしゅんとしている天音を見て、私も少し譲歩する。
「ありがとう、お姉ちゃん。次は怜さんとニーナさんで出撃するの、お姉ちゃんも見ててね。」
ぱっと顔を上げると、天音はうれしそうに次の出撃プランを確認し始めた。

それから一月後、天音の成績はうなぎ登りに上がっていた。私と言えば、緩やかに下降気味・・。
属性の違いもあるが、最近出撃頻度は天音の方が多くなっていた。戦闘から戻ってきた天音が私に気付き、
手を振っている。でも、ギアを外して真っ先に向かうのは・・・隊長の元。
今まで見たことがないような自信に溢れた笑顔で、隊長と話している。
ズキンと胸が痛いのは、私が天音のポテンシャルを引き出せなかったからなのか、それとも隊長に天音を獲られた
からなのか、それとも・・・
私はそこにいることが苦しくなっていた。

河川敷をぼんやりと歩いていると、自転車に乗った隊長が後ろから声を掛けてくれた。
嬉しいのに気が引けるような、経験したことのない感情が私を苛む。
「・・気分でも、悪いのか?」
「そんなことない。」
「・・なんか辛そうだぞ。天音と何かあったのか?」
図星を突かれて、私は感情的になってしまった。
「隊長が・・隊長が天音を取ったくせに!!私なんかいなくても、隊長がいれば天音は・・」
「そんなことないぞ、天音はいつもお姉ちゃんがどうとか言ってるし。」
隊長はしれっと答えると、後ろの荷台を指さして続ける。
「済まないな、朱音。こんなところじゃ何だし、まあ後ろに乗りなよ。」
今度は恥ずかしいのと嬉しいのが混ざったような・・そして、自転車は二人を乗せて河川敷を走り出す。

自転車は喫茶店に止まると、隊長が何か食べて行こうと誘ってきた。
一食浮かせようと私も一緒に入ってテーブルに着く。
「まぁ、たまには奢るから好きなモノ頼んでいいよ。」
ニコニコと笑いながら隊長がウエイトレスさんに声を掛ける。
「えーと、アイスコーヒーと・・」
「とんかつ定食。あと、食後にフルーツパフェ。」
どうやら嬉しそうにしていたらしく、隊長はほっとしているようだ。
「・・よく食うなぁ・・元気でたならいいけど。」
二人乗りしている間特に何もしゃべっていた訳でもなかったが、何か落ち着いてきていることは
私も気付いていた。何だろう・・・この気持ち。
「天音を取られた・・・と思わせたなら説明しなかったことが理由だな。」
少し真剣な顔になった隊長をみていると、つい10分前の鬱いだ気分が嘘のように落ち着いてくる。
「御免なさい・・私もイライラしてたから・・・」
「気付いていたかもしれないが、天音はパワー型のエミッション適性と俺は思っている。」
届いたアイスコーヒーにフレッシュを入れて混ぜながら、隊長が続けた。
「格闘センスもかなりある・・と言うより格闘向きだ。だから基本シューターの朱音とはいい相性ではある。」
そこまで言うと、コーヒーを少し飲み、私の瞳を見つめる。
「が、朱音がいると依存心からか、天音は持ってるポテンシャルの半分も出せていない。誰が悪いわけでもなく、
 二人の関係性がその結果を生んでいる。」
多分、この人以外にそんなことを言われたら、食って掛かってしまうだろう。
私もそういう風にしていた事の自覚がないわけでもなかった。
「・・・」
「珍しく反論なし・・か。実際天音が大事なのは端から見ててもよく分かるからな。」
ここで私のとんかつ定食が出された。
「まあ、食べなよ・・冷めると美味しくなくなるからな。」
「・・・頂きます・・」
ここのとんかつは初めてじゃないけど、こんなに美味しかったっけ?
「まずは・・天音の能力を引き出すことから始めた。結果は朱音も知っての通りだ。」
食べながら話を聞いていると、少し引っ掛かる部分が出てきた。
「私の能力は・・」
「そう来るだろうな。元々アクトレスとして平均以上の能力はある。が、それは天音を守ることを念頭に置いて、
 の話と思っている。」
「でも、最近の成績は・・」
箸を置いて俯いてしまう。隊長はアクトレスの管理・指揮が仕事なのだから。出来ない子の私に構ってる時間はない
はずだ。でも、何で?私を呼び止めたのだろう。不安が頭をよぎる。
「良くないのは恐らく天音と離したせいだと思う。以外に依存していたのは朱音だったのかもな。」
私は姉として、妹を守らないといけない。たった一人の私の家族なんだもの。でも、天音は・・
「・・・怒らないのか。相当応えたようだな・・・ごめん、順番を間違えたか。」
「順番?・・・順番って・・?」
「天音より朱音の方がデリケートだってこと。普段の感じだと朱音はしっかりしている印象だったから・・
 お姉ちゃんをしていただけで、実際は天音より相当繊細だな。何か納得したよ。」
強がっていたこと・・しっかりとした姉を演じていたこと・・いつの日からか、それが当たり前になっていた。
「先に朱音の方を手当すべきだったのかもな。・・ごめんな。」
頭を撫でながら、隊長が謝ってきた。天音にも言われたことがある。無理しないでって。
無理なんて思いもしなかったけど、実際はそうだったのかも知れない。隊長といると落ち着くのは、
素に近い私で居られるからかも。この人は私より私を理解してくれているのかも。
私の今まではこの人に会うためにあったのならいい、と少しセンチメンタルな想いもあるのかな。
「俺に付いてきてくれるなら、朱音のポテンシャルを引き出して見せる。でも、朱音にも選択権はあるから・・」
「何それ、プロポーズ?」
「・・まあそう取ってくれてもいいよ。とんかつ食いながら返事するのもどうかと思うけど。」
冗談でもその返事は嬉しかった。
「何調子乗ってんだか・・・じゃあ、ちゃんと責任取ってね。」
フルーツパフェのシャンティを一さじ掬って、隊長の口元に差し出す。
「天音と同じくらい信用してるから・・今は私を見て・・・」

お姉ちゃんと隊長さんが二人乗りで河川敷を走ってる・・・?
お姉ちゃんが先に帰ったと聞いて、小走りに追いかけた。遠くに見つけたと思ったら、傍に隊長さんが
居ることに気付いた。川の方に身を隠しつつ、様子を窺っていたら、自転車で町の方に向かっていった。
「・・・なんだろ・・」
二人が仲良くなることの安堵感と、お姉ちゃんと隊長さんの間にある空気は私の望む二人の関係では
ないような気がして・・複雑な気持ち。でも、ザワザワしたものが勝っているように思えた。
・・・お姉ちゃんが今まで醸したことのない雰囲気で隊長さんを見ている。
「わたしの隊長さんだよ・・・」
私をお姉ちゃんの世界から独り立ちさせてくれたのは隊長さん・・・今の私を満たしてくれるのは
お姉ちゃんじゃなく、隊長さん。
「お姉ちゃんでも、隊長さんは渡さない・・・」
天音の目に僅かな狂気が宿った瞬間であった。
隊長は順序を間違えたのだ。

朱音がリン、ジニーと出撃してまもなく、指揮室の隊長は戦況をモニタリングしていた。
「お姉ちゃんはどうですか?」
気がつくと隣に天音がいる。そっと隊長の肩に手を添えながら、天音は朱音のステータスを写すモニターを
確認していた。
「体力オバケとベテランのサポートだ、付いて行くのも一苦労だな。」
ニヤリと笑いながら、隊長はそれぞれのモニターを確認していた。
「・・・なんだか、楽しそう。」
拗ねた様子で天音が独りごちる。ちらりと隊長が自分の様子を気にする素振りを見せたことで、
天音は少し満足した。
「今日は非番じゃなかった?」
コーヒーをすすりながら隊長が尋ねる。自分の予定を隊長が把握していることは少し意外だったが、
それ故に天音の機嫌は更に良くなった。
「えへへ、そうなんですけど・・・隊長さんに会いに来ました。」
紅潮した頬に後ろ手に身体をくねらせ、少し恥ずかしそうな素振り。
元々の可愛らしさに破壊力十分なインパクトを添えて天音は隊長を見つめた。
「あ、ああ、そうなんだ・・・。」
コーヒーを飲みながら目を上に逸らせることで、隊長は動揺を抑える。
若く可愛い女の子に囲まれていても、その子達が好意を寄せていることが分かっていても、仕事と割り切ることで
隊長は事なきを得ていた。しかし、何故かこの姉妹は気になっている事も事実である。
朱音はともかく、天音が自分に好意を持っているであろうことは薄々気付いていた。
仕事中ということで気をモニターに向け、雑念を払うことにした。
モニター上では、朱音がリンに振り回されていることが手に取るように分かる。
「朱音、もう少し後ろに下がれ。リンのサポートは基本ベクトル合わせ出来れば十分だ。
 スナイパーライフルの射程を考えて。」
「了解・・」
余裕がないことが分かる返事を聞いて、隊長は軽い溜め息を付いた。
「お仕事邪魔しちゃ駄目ですね・・」
天音が上目遣いで尋ねてくる。残念な気もするが、ホッとしている自分に気付く隊長。
「ま、そうだな・・」
「じゃあ、お仕事終わったらお食事一緒にどうですか?」
天音は自分にしては大胆な誘いであることを隊長がどう思うか心配だった。
しかし、モニター越しに朱音を見る隊長の視線が自分に注がれているそれと同じ事にも気付いていた。
「別に構わないけど・・・朱音はいいのか?」
「昨日、お姉ちゃんとお食事したでしょ・・私も行きたいなぁ・・」
それを聞いた隊長はてっきり朱音から聞いたのだと思った。
「なんだ、そういう(タダ飯)ことか・・・分かったよ、じゃあ6時に事務所でいいかい?」
「6時に裏の河川敷で待ってます。遅れないで下さいね。」
そう言うと、天音はにっこり笑って指揮室を出て行く。天音の計画は着々と進行していた。

アキ作戦が終わって以来、随分とヴァイス討伐任務は減っていた。
定時に上がる事も、珍しくはなくなっている。ジャケットを羽織り、隊長は帰路に就こうと成子坂を出た。
「お疲れ様でした。」
「じゃあね、隊長。」
所属アクトレス達がみな挨拶してくる。軽く手を振り、河川敷へと向かおうとすると朱音が声を掛けてきた。
「お疲れ様、隊長。今日の出撃はどうだった?」
胸の前で手を握り、少し嬉しそうな朱音を見た隊長はニヤリと笑う。
「付いて行くのがやっとだったろ?」
「そ、そんなことないわよ・・でも、少し下がれという指示から・・」
「周りが見えるようになった、ってとこかな。」
少し悔しそうな顔をする朱音。
「でも、リンに付いて行くだけでも大したもんだ。あと何回か同じチームで出撃してもらうけど、
 次はジニーとリンの動きを観察することが任務だ。」
「うげっ、また同じ?・・・じゃあ、体力回復しとかなくちゃ・・・じゃあね、隊長。」
ひらひらと手を振ると、朱音は疲れた様子で帰って行った。
河川敷に向かおうと振り返ると、ふと天音との約束に朱音にも声を掛けようかと思ったが、
(でも、そうすると天音の意図(朱音にタダ飯食べさせた)とずれるかな)
と思い直し、天音の待つ河川敷へと向かった。

さて、河川敷のコンクリート部分にはうっすら頬を紅に染めた天音が落ち着かない様子で座っている。
そこに怜が通りかかり、お疲れ、と挨拶しながら通り過ぎていく。
何度かチームを組んだ時からすると、少し様子が違うように感じたがあまり気に留めなかった。
「あ、お疲れ様です。」
返事の挨拶はいつも通りなので、怜はすっと帰って行った。
「・・・そろそろ隊長にご飯食べさせないと・・距離が開いてきたかな・・」
などと考えながら。
怜の姿が見えなくなってしばらくした後、天音のところに隊長が現れた。
「お疲れ様でした、隊長さん。」
花も恥じらうような笑みで天音が隊長を迎える。
「お待たせ・・かな。さて、何が食べたいの?」
少しドキッとしたが、平静を装い隊長が尋ねる。
「何でもいいです・・・隊長さんとお食事できるなら。」
恋する乙女の潤んだ瞳に桜色の頬、化粧など全く必要ないくらいに天音は美しい。そんな女の子からの言葉に、流石に動揺を隠せなくなる隊長。
「あ・・いや・・困ったな、未成年に酒は駄目だし・・」
すっかり舞い上がってとんちんかんな事を考える。
「いつも隊長さんが行ってる所がいいなあ。隊長さんは何が好きですか?」
「そうだなあ・・って、デートで行く場所じゃないよ?」
思わず隊長が口走った言葉に、天音は顔を真っ赤に染めた。
「デート・・って・・嬉しいなあ。」
「え?・・あ、ゴメン・・こんなおっさんとデートはないよな・・」
照れ隠しに頭を掻いている隊長に、天音が優しくフォローする。
「デートならもっと嬉しいですよ・・」
「じゃあ、と、取っときの所に行こうか。ははは・・」
完全に天音に飲まれた隊長は、起死回生の場所に天音を誘う。それは高層ビルの最上階にあるバー・・・
の傍のイタリア料理店であった。河川敷から大通りに出たところでタクシーを拾い、そこに向かう。
他の所属アクトレスに見られていないか周りを警戒しつつ、天音とそのレストランに入った。
移動中、天音は顔を紅潮させつつ、チラチラ隊長を見ては嬉しそうに微笑んで下を向く・・を繰り返していた。
少し冷静さを取り戻してきた隊長は、そんな天音をかわいらしいな、と思っていた。
今までの環境を考えると、よく曲がらなかったなと感心しつつも、朱音の性格も肯定的に捉えられた。
平日の夕方、席は空いていた。向かい合わせに座り、天音用にノンアルコールのスパークリングワインとオレンジジュース、
そして自分用のシャンパンをグラスで頼んだ。
「パスタは何がいい?」
「えっと・・・」
天音は今まで来たことのないところで食べたことのないものが載っているメニューと格闘していた。
「・・分かんないです・・」
「スパゲティはどんなのが好き?ミートかボンゴレならどっちがいい?」
「ミートソースかなぁ・・」
「じゃあ、こっちで適当に頼むよ。」
隊長はボロネーゼとマルゲリータのピザ、ライスコロッケを注文する。
「ここはそんなに気負わなくてもいいから、たまに来るんだ。」
「へー・・誰とですか?」
ジト目で隊長を見ながら、天音が尋ねる。
「一人で来るのがほとんどだよ・・そうだな、ゆみと芹那、あと深沙希さんくらいかな。」
「むー、デートですか?」
「・・ならいいんだけど。まあ、大人の付き合いって奴かな。二人きりで来たことはないよ。」
自嘲気味に隊長は続けた。
「基本、誰かと二人ってのは避けてるんだけどね・・・勘違いしそうになるから。」
「勘違い?」
天音が不思議そうに尋ねたところで、最初の一皿目が出てきた。
「ピザは熱いうちに食べよう・・」
手際よく切り分けて、天音に勧める。
「さ、どうぞ。」
「わぁ、頂きます・・」
天音は嬉々としてピザを頬張る。美味しそうに目を見開き、一切れをあっという間に平らげた。
「美味しい・・こんなに美味しいものがあるんですね・・」
「口に合うかは分からないけど、これを飲んでみて。」
隊長はノンアルコールのスパークリングワインを勧める。そっと一口飲んだ天音は、不思議そうな顔をする。
「こんなの飲んだことないですけど・・美味しいですね。」
続けて口をつけると、更に不思議そうな顔で隊長を見つめた。
「味が変わってるような・・さっきの方が美味しかったような・・」
「それだけ分かれば十分だよ。後は好きな方をどうぞ。」
満足そうに微笑むと、隊長はそっとオレンジジュースを差し出す。天音はすぐにオレンジジュースに口をつけると、
ホッとしたような表情になる。
「ま、そうだろうな。」
楽しげにそう言うと、隊長は自分のシャンパンに口をつけてうん、とうなずく。
「何時からかな・・・こっちの方がうまいと思えるようになったのは・・」
まだ高校生の天音がうまうまと食事しているのを見ながら、先ほどの可愛らしさと虜にされた表情とのギャップに
苦笑してしまう。
「?」
その隊長の表情を見た天音が首をかしげる。今日の天音に惚れない男はいないんじゃないか?と思うほど
可愛らしさと爽やかな色気に満ちていた。
「朱音には何食べたか言うなよ。」
「どうしてですか?」
「ずるいと言われそうだからなあ・・」
「お姉ちゃんは昨日何食べたんですか?」
「あれ?朱音から聞いたんじゃなかったの?」
天音は少し表情を曇らせた。何か悪いことを言ったのだろうか。
少女のものと思えぬ翳りを湛えた目には、微かな狂気。
「昨日、見たんです。二人乗りで喫茶店に行く隊長さんとお姉ちゃん。」
「ああ・・」
「なんかずるいです・・お姉ちゃんだけ・・」
ずるい?隊長は天音の表現が引っ掛かった。
「なんで隊長さんは昨日お姉ちゃんだけ連れてったんですか?」
ではこのシチュエーションは問題ないのだろうか。
「隊長さんは・・私をお姉ちゃんから卒業させてくれました・・」
天音の視線は射貫くように隊長を見つめながら続ける。
「私は・・隊長さんのものになりたいです・・・お姉ちゃんは私を守ってくれるけど、
 お姉ちゃんの決めた私から外れることも許してくれなかった・・」
「大切だから、そうなんだよ。」
「私は・・隊長さんのおかげでアクトレスとして自信が持てました。お姉ちゃんの後ろでは
 跳べなかった壁を越えさせてくれました。」
「それは天音に才能があって、努力の方向を示しただけだよ。」
射貫く視線に対し、優しい目でそれを受け止める隊長に、天音の表情は戸惑うように揺れる。
「こんなこと・・言うとおかしな子と思うかも知れませんが・・・」
普段おとなしい分、その言質には重みがある。
「今の私は、隊長さんがいないと駄目なんです・・昨日、お姉ちゃんと一緒に居るのを見たとき、
 凄く複雑な思いでした。お姉ちゃんはきっと隊長さんが好きなんだと・・仲良くなってくれる
 ことは嬉しいけど、お姉ちゃんに隊長さんを取られるなら・・」
この時の天音の目で、隊長は自分の行動に対する結果を痛感した。
「生きていけない・・行くところも戻るところも無くなっちゃう・・」
ポロリと涙を落とす天音の肩は震えている。付き合っている訳でもなければ、当然将来の約束など
していない相手に吐露する言葉でもなかろう。元々依存心の強い子に対して寄り添いすぎたのかも
知れない。
「天音が・・必要なら傍に居るよ。成子坂の隊長の時は限界があるけど。」
まだ若い彼女は直に自分からも飛び立つだろう、その時までは・・・。仮に添い遂げるとしても、後悔しない
と思えるだけ幸せと思えた。
「ほんと?一緒に居てくれるんですか?」
少し拗ねたような、はにかみの表情の天音。
「ああ、責任取ります。」
「じゃあ、今日から一緒に住んで下さいね。」
天音の言葉に飲みかけのシャンパンを吹き出しそうになるが、なんとか堪えた。
そんな隊長を微笑んで見ている天音に、本気か冗談か聞くことが出来なかった。

朱音に取っても、この事実は衝撃だった。
事の顛末を天音から聞いてすぐ、半ば取り乱した様子でやってきて隊長に詰め寄る。
「天音のことは・・お願いするしかないけど、私を見てくれるってのはどんな意味だったの?」
「成子坂の隊長として、という意味だったんだけど・・・勘違いさせたのなら謝るしかない・・。」
「謝らなくていい・・私も天音の気持ちに気付いていたのに・・私も隊長に構って欲しかった・・。」
相手が他の・・例えば怜であれば、朱音も引く気はなかったが、天音であれば姉として引かざるを得ない。
素直な目で隊長を見つめる朱音の表情は、それは切ないものであった。
「あーあ、天音と時々代われたらなあ・・隊長は・・気付いてくれる?」
「分かるよ・・朱音と天音は違う人であることくらいは知ってる。」
「ベッドで気付いても、そのまま抱いてくれるなら・・・許してあげる。」
「そんなことがあれば僥倖だよ・・有り難う。」
「バーカ、礼なんか言わないで・・天音をよろしく。」
そう言うと朱音は振り向いて部屋から出て行った。
しばらくして、天音が代わって入ってくる。
「お姉ちゃんがおめでとうって言ってくれました。」
「良かったね。でも、結婚する訳でもないのになあ。」
「私は・・そのつもりですよ。」
「おいおい、俺なんかでいいのか?」
「でなきゃ、お姉ちゃんに譲ってます。」
後ろ手に首を傾げて、微笑みながら天音が身体を寄り添わせる。
そっと肩を抱いて、天音の耳元で囁く隊長。
「じゃあ、天音が成人したら結婚しよう。」

五年後、結婚した二人の間に双子の女の子が生まれる事になる。怜や楓ですら、割って入れなかった。
いや、割って入ろうとしたが、出来なかった。二人分の想いを天音と共に育んで行った結果として・・。


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