2024年7月18日より今年10月に営業運転開始が予定されている近鉄奈良線系統向けの新型一般車両、「8A系」の第1編成(奈良寄りからク8A101-モ8A201-サ8A301-モ8A401)(編成の電算記号は「8A01」との情報があるためこの記事でも使用)が近鉄大阪線で日中時間帯に試運転を開始しました。
2日目の日中試運転が行われた19日金曜日に撮影することができましたので早速取り上げます。(7月25日撮影の写真も追加しました)
試運転榛原行き 8A01(大和朝倉にて)
大和朝倉駅1番線に入線する8A系8A01です。
18日と19日の試運転は午前時間帯に大阪線高安~榛原間で1往復、午後時間帯に同区間で1往復の1日2往復の設定があったようです。
遠路はるばる撮影に向かったので午後のみの撮影となり、18日の目撃情報から推測して通過列車の待避を行うと思われたこの駅で逆光覚悟で撮影しました。
そもそも19日にも試運転が行われるかは不明で、"一か八か"で行ってみましたが無事に出会うことができました。
フルカラーLED式の前面行先表示器は横長のため、日本語、英語表記を同時に出すことが可能です。
その左右に少々変わった形の標識灯が配置されています。
停車中に撮影できた車内の様子です。
車内案内表示器は大型の液晶画面で、筐体の色はVE37以降の車両リニューアル工事施工車両と同じと思われます。
なお、客用扉の窓は複層ガラスの紫外線カット仕様で、引き込まれ注意のステッカーはリニューアル車両と同じ見るからに痛そうなイラストです(笑)
液晶画面は千鳥配置で、画面がない箇所には広告枠と車内防犯カメラがあるのもリニューアル車両と同様ですが、8A系では非常用ドアコックもここに設置されたようです。
また、客用扉や壁面の化粧板もリニューアル車両と同じ木目調ですね。
客室照明は間接照明のように見えますが、リニューアル車両とはやや異なった形状のようです。
ロングシートモードに設定されたデュアルシートです。
座席は新設計ですが、脚台については従来の「L/Cカー」と大きくは変わらない形状ですね。
クロスシートモードに設定されたデュアルシートです。
座席モケットはVG23の車両リニューアル工事から採用されたものと同じ花柄です。
8A系ではロングシートとクロスシートの混在設定が可能で、このような配置になっている部分もありました。
袖仕切りはリニューアル車両とおおむね同様ですが、デュアルシート部分では一体となった手すりの形状がやや異なり、荷物棚から床面にかけてつながっているようです。
車端部の様子です。
各車の連結面寄り車端部にはロングシート仕様の優先座席があり、モ8A401の1位寄りと他3両の2位寄りではその向かいに車椅子、ベビーカースペースもありますが、ホームの位置の都合上今回は優先座席しか写りませんでした。
袖仕切りと一体の手すりは床面にはつながっていないほか、スタンションポールも設置されています。
3人掛けの場所もあれば4人掛けの場所もあるようで、片持ち式のバケットシートで硬そうな印象です。
また、スタンションポールがあるためか「シリーズ21」で採用された「らくらくコーナー」は廃止されています。
1両あたり2箇所設置された車椅子、ベビーカー、大型荷物などを持った乗客向けのフリースペースである「やさしば」です。
荷物ストッパーがあるようで、使用方法の案内ステッカーも貼られていますね。
このスペース1箇所につきデュアルシートの座席が2人分省略されています。
停車時間が短かったため動き出してからの動画となってしまいましたが、特徴のある変調音を含め制御装置からの音を拾うことができました。
試運転高安行き 8A01(五位堂にて)
復路の試運転は3番線に数分間停車することが推測できた五位堂駅で撮影しました。
こちらでは正面を順光で撮影でき、鮮やかな赤い塗装が映えます。
再び車内の様子をのぞきます。
これはク8A101の乗務員室直後の部分で、乗務員室が従来車よりも拡大されたことにより仕切り壁が客用扉のすぐそばにある様子や、仕切り壁の中央に引き戸式の貫通扉があることが分かるかと思います。
また、その貫通扉の左右には窓がなく、仕切り壁の乗務員室側には機器類が多く配置されていることが推測できます。
つり革の形状や配置はリニューアル車両と同様で、高さも3段階です。
荷物棚については「シリーズ21」の形状に近いパイプ構成です。
車端部の妻面には機器類や消火器を設置しているため張り出しがあり、試運転中のためその機器類などから多数のケーブルが伸びています。
両先頭車では乗務員室寄りのデュアルシートの座席4人分(やさしばに隣接している箇所)が優先座席となっています。
また、8A系では乗客操作用扉開閉ボタンが本格採用されるようで、VE37やVL35と同じく車内の客用扉右横に開閉ボタンが、車外の扉左横に開ボタンがあります。
モ8A401の乗務員室付近です。
客室側の化粧板の模様や非常通話装置の仕様は近年のリニューアル車両とほぼ同様ですが、8A系では製造所の近畿車輛のロゴ表記と車号表記は一体となったステッカータイプになっていますね。
また、天井は平らになっていますが、クーラー吹き出し口などがあると思われる中央の部分は張り出しています。
モ8A401の前面下部です。
前照灯は塗装に合わせた斜め配置ですがリニューアル車両と同じタイプのLED式と思われます。
転落防止幌の車体寄りは約2年前に発表されたイメージ画像とは異なりグレーに塗装されています。
電気連結器は2段式で、排障器の形状、塗装も含めて「シリーズ21」や「Ace」に近い印象ですね。
反対ホームに移動して側面などを観察します。
ク8A101の側面全体です。
側面の塗装も当初のイメージ画像から大きく変更されましたが、赤面積が多いことが個人的に気に入りました。
連結部分です。
転落防止幌は80000系「ひのとり」と同じタイプのものが一般車両で初採用となりました。
また、SAP、MP、BPと書かれた配管があり、電磁直通ブレーキを使用する従来車両との併結が可能な仕様とされたようです。
台車やブレーキ制御装置から車内へケーブルが伸びているのも試運転ならではの光景ですね。
パンタグラフはモ8A401とモ8A201の1位寄りにシングルアーム式のものが1基ずつ搭載されています。
筒型の機器は避雷器のようです。
ホームドアなどへの対応のためか車端部の側面上部に車号表記があり、大阪難波方面に向かって右側の側面ではモ8A401のみ1位寄り、他の3両が2位寄りに、左側の側面ではク8A101のみ2位寄り、他3両が1位寄りにステッカータイプのものが貼り付けられています。
車体中央の側面下部の車号表記も廃止にはならず、こちらもステッカータイプで貼り付けられています。
客用扉左横の乗客操作用扉開ボタンです。
VE37とVL35ではまだ使用できないためか案内ステッカーはありませんでしたが、8A系では最初から貼り付けられました。
「やさしば」が設置されている付近の2箇所の客用扉横にはピクトグラムのステッカーが貼り付けられています。
なお、このステッカーは高安検修センターへの搬入時には存在せず、後から貼り付けられたものですが、先日搬入された第2編成では近畿車輛で既に貼り付けられた状態での搬入でした。
また、各車の側面には片側1箇所ずつ近鉄のロゴ表記のステッカーもあり、前面のものも含めて車体に自社ロゴが貼り付けられるのは近鉄では初めての事例です。
こちらも高安検修センターで後から貼り付けられたステッカーです。
側面行先表示器も大型のため日本語と英語表記を同時に出していますが、営業列車の種別、行先を表示した場合ではひらがな表記などに切り替わる様子も目撃されています。
ゆっくり観察する時間もなく試運転列車は高安に向かって発車していきました。
この日撮影できたのはここまでですが、10月のデビューに向けて今後も試運転が多く行われるものと思われるので機会があればまた撮影したいところです。
以下2024年7月25日撮影の写真を追加
試運転榛原行き 8A01(榛原にて)
モ8A401の先頭台車付近には黄色い部材が仮設されています。
運転台の様子
分かりにくいですが近鉄で初めて計器類も含めてグラスコックピットになりました。
車椅子・ベビーカースペースの様子
リニューアル車両とは違ってモケットが貼られた腰当てがあり、ヒーターの部分は張り出していません。
発車シーン