オーデュボンの祈り

Last-modified: 2009-10-14 (水) 15:39:56
 

伊坂幸太郎 『オーデュボンの祈り』 新潮文庫

 

伊坂幸太郎のデビュー作。
コンビニ強盗に失敗し逃走していた伊藤は、気付くと見知らぬ島にいた。
その島は150年間外部との交流を遮断し孤立している。
島には「江戸時代に作られ未来を予知し、人語を喋ることができるカカシ」、「島の法律として殺人を許されている桜」、
「嘘しか言わない画家・園山」など不思議な人物が住んでいた。
その中でも人間たちに崇拝されているカカシの「優午」はある夜、何者かによって殺害される。
なぜカカシは、自分の死を予測できなかったのか。
「オーデュボンの話を聞きなさい」という優午からの最後のメッセージを手掛かりに、伊藤はその死の真相に迫っていく。

 

この作品はどちらかと言うとファンタジー要素が強いため、ガチガチの本格ミステリーとは違いますが、
ミステリマニアな方もあまり読まない方でも違和感なく入り込める世界観。
かつ非常に分かりやすく、すっきりとした作品です。
物語の舞台である荻島という閉鎖された空間の中で展開されるほんの数日間の出来事が、
テンポよく進んでいくので読んでいて飽きません。
勿論ミステリーの醍醐味である誰が、何故、どうやって、
殺したのかはこの『オーデュボンの祈り』にもしっかりと描写されています。
また作中で「この島にかけているものは何か?」このセリフが何度も繰り替えし出てきますが、
犯人だけでなく「島にかけているもの」は何であるのか。
こちらも推理しながら読むのも楽しみの一つだと思います。

 

担当者 - Y本