「これでさよならだな……」
香祐は口元の血を拭った。
「なんで、なんであんたが死なないといけないのよ!」
きっと私の声は彼に届いていない。彼の耳は、良すぎる耳はあの音の爆弾でやられてしまっている。
でも私は言わずにはいられなかった。
「私があんたに会わなければ、そうすればあんたは死ななくてすんだのに。私の所為で――」
そっと香祐が私の頬に手を当てる。
「なんて言ってるか聞こえねぇけどよ。泣くなよ。笑え」
そう言って笑った。自分がもう死ぬというのに。
「へへっ、女の子助けて死ぬなんて俺もカッコいいぜ」
「バカ……。こうゆうのバカ……」
彼の後ろから朝日が昇ってきた。逆光で彼の顔が見えない。彼の顔を消さないで。
「やっと、ちゃんと呼んでくれたな俺の名前はこうすけじゃねぇ。こうゆう――」
最後まで言い切れず彼は私に寄りかかった。心臓の音は――聞こえなかった。
08/02/05(火)02:38:20 No.11459569
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