砂浜が見えた瞬間、足を速めた。波の音が聞こえる。
自分でもテンションが高いのがわかる。胸のドキドキが波の音と同期する。
「もー!遅いんだしー!」
思ったよりも大きな声が出てしまった。特に急ぐ気配はなし。なんかだ恥ずかしくなってきた。これはイタズラ決定だ。
特にすごいやつをお見舞いしてやろう。
風が髪をくすぐる。
砂の上を走りながら、思わず笑ってしまった。こんなに楽しい日がまたやってくるなんて、思ってもみなかった。
今日はイタズラするにはもってこいの日。
波打ち際に着くと、足元に冷たい水がびちゃっとかかる。でも、そんなの気にしない。笑顔が伝染する。
私も自然と笑顔になっちゃう。不思議。
「にししー♪イタズラ確定なんだしー?」
いつものように視界に入る。
なるべく記憶に残るように、かわいくあざとく。
──『ちょっともっとこっちみて』より抜粋