「世界の色が変わる感じっていうのかな、わかんないけど」
空を見上げながら、その色彩を想う。
灰色に染まった冬の景色が、夏の鮮やかな景色に変わったような。
「──ああ、そうだ」
全てが生まれ変わったような感じだった。
まるで鮮やかなオレンジ色が世界に滲み出すような。
「もしかしたらオレ、それまで誰にも会わなかったのかもしれない」
きっと一番最初に出会ったのはキミなんだ。
それ以外は本当にどうでもよくて、きっとそれが全てなんだ。
この胸に湛えた万感の想いを、言葉にはしない。
だってそれは、世界でたった一つだけ確実にそうだと言える、自分だけの秘密だから。
──だから。
世界と天秤に掛けてもキミを選ぶよ。
別に滅んでほしいわけじゃないけど、それでも。
──言い換えるなら、毎日一番最初にキミの顔を見たいんだ。
喧嘩していても、怒っていても、悲しくても、泣いていても、毎日一番にキミの顔を見たいんだ。
それから、一日の終わりにも、必ず。
……なんてね?
言ってほしいんでしょ、そういうの。
彼の瞳がそう告げた気がした。
──『フライミートゥザムーン』より抜粋