「ほら、もうすぐなんだし!」紫亜がまた先を急がせる。
黒猫は視界の端でちらつくだけで、手に届きそうで届かない。
「待って待って、そんなに早く走ったら転んじゃうよ?」
叢裂は必死についていくけど、紫亜はまるで聞いていない様子。
いたずらっぽい笑みを浮かべたまま、先へ先へと進んでいく。
「転んじゃったらお宝はもうもらえないんだしー♪」
「ぶみい? じゃあ走ったらだめだよー」
「紫亜は転ばないんだしー」
「叢裂も転ばないもん!」
黒猫は、そんな会話を知ってか知らずか、まるで2人を誘導するかのように、路地裏をひょいひょいと進んでいく。
「ねぇ紫亜ちゃん、第六層にこんなところあったっけ?」
「黒猫を信じれば大丈夫だしー♪」
紫亜は振り返りもせず、元気に答えた。その背中を見ると、叢裂は不安が薄れていく気がした。いや、むしろ騙されてるのかもしれないけど、楽しいの方が勝ってきていた。
黒猫のお宝──読者はもう忘れているかもしれないが、そもそも紫亜が叢裂を騙そうとしてついたかわいいウソ──を巡る壮大な小冒険のクライマックスが近づいていた。
──『共犯関係トレジャーボックス』より抜粋