「もうさ、ほんと信じられないんだけど、あの2人!」
闇虹の愚痴は止まらない。変なスイッチを押してしまったようだ。
美術館の片隅にしゃがみ込んだまま、彼女は周囲を警戒しつつ口も動かし続ける。
「言ったよね?久条くんも聞いたよね?派手すぎるのはダメって!『忍び込む』の意味わかってないでしょ、絶対!」
どう考えても仮面舞踏会に堂々と参加するのは『忍び込む』に含まれない、と闇虹は訴える。
まだ2人からの合図はない。目的の大魔典ラクリモサが盗み出されるまでの待機時間は闇虹のおしゃべりタイムになっていた。
「しかも、あの衣装!あんなのいつ用意したの?あれを作る時間があるなら仕事手伝ってほしいんだけど!」
闇虹は深いため息をついた。それからすぐに、また話し始める。
その言葉は、言葉通りの気持ちと、それを実現してしまう彼らへの確かなリスペクトが感じられる。ある種の自慢というか。
彼らがどれだけ型破りでも、その全てを楽しむ姿に対しての不思議な自信が伝わってくる。
「でもさ、あいつらやるって言ったことはやるんだよね、絶対」
本当にどうかしてるって思うけど、と添えながら闇虹が微笑む。
「はぁ、仕方ないなぁ。それを支えるのが QUEEN のお仕事か!」
そう、闇虹なのだ。第六起源魔術教会の傍若無人と、笑顔を支え、その破天荒な快進撃を誰よりも応援し、支えている屋台骨は。
第六起源魔術教会の暴走が誰のせいか、という話になれば、間違いなく首魁たる鉉覇と、それを助長する煤墨と、その暴走を楽しんで手伝ってしまう久理や濡羽、玄鉄と、絶対に実現させる闇虹がいるからなのだ。
──6人揃って第六起源魔術教会なんだね。
私が呟いた小さな声は、遠くから聞こえる喧騒の連鎖と、夜の街に飲み込まれた。
はじまるのだ、鉉覇と煤墨による大怪盗が。
これからはじまるのだ。4人の怪盗団が巻き起こす大騒動が。
とんでもない困難が待ち受けているかもしれない。
それでも、外で待っている3人と、今ここにいる3人の魔術師たちは楽しく愉快に痛快に、この怪盗を成し遂げるのだと信じられた。
「仕方ないなぁ」
そう言う闇虹の顔には、どこか楽しそうな笑みが浮かんでいた。