天に煌めく聖剣は竜の心に恋をする

Last-modified: 2025-01-02 (木) 02:23:19

「失恋、しちゃいましたね」

カノンがそう呟く頃には、神域はキラキラと煌めく粒に包まれ薄夕暮れの空の先から位相反転の青空が顔をのぞかせていた。

恋する乙女同士の『恋バナ』は、時に激しく雷雨が打ち付け、それでも、その一撃一撃の中に明確な愛が感じられた。
当然、それは互いに理解の範疇にないものであったけれども、だからこそ、彼女たちには『恋バナ』が必要だった。

そして、「食する」と「終わらせる」という理解り合えないがどこか似通った2人の最上級の愛し方は、きっと最後の最後で通じ合えたのだと運命は思った。

『失恋』──…
おそらくは、この世界に生まれ落ちた恋の99%以上は失恋にて終わりを迎える。
恋の運命とも言ってよい、自然の摂理である。
だが、重要なのは100%ではない、という点だ。

ミカグラとカノンのそれは、確実に『失恋』を迎える愛し方であり、その定義で言えば正確には恋ではないのかもしれない。
けれど、運命は明確に、彼女たちは「恋をしていた」と確信していた。

カノンと、ブレイドラインと、そして自分が引き起こしたこのミノトという「世界の終わり」は永遠に成就しないはずだったミカグラの恋を成就させるに至ったのだ。

ミカグラのそれは「恋」だった。あるいは、今も。

ならば、カノンのそれもまた「恋」であるはずだ。

運命はミノトで町人から聞いた言葉を思い出していた。
──『恋は人を成長させるからねぇ』

髪をかきあげながら、微笑み失恋を語るカノンは、いつもより少し、大人びて見えた。


──『天に煌めく聖剣は竜の心に恋をする』より抜粋