焼けるような砂の上で、みんなは笑い声を響かせながらはしゃぎ回っている。青い空に、白いワンピースが舞い、まるでそれが太陽に吸い込まれていくかのようだ。ほんの数時間前、神々と命を懸けて戦ったとは思えないほどの無邪気さ。足跡をつけながら、彼女たちは波打ち際で水を蹴り、髪を振り乱し、笑顔を交わしている。
だけど、私はそれをただ遠くから見ているだけ。いや、見ているわけでもないか。私は今、本を読んでいるんだから。足元には少し角張った、でも表面は滑らか岩。そんな私によく似た岩に腰を下ろし、背中には太陽の熱がじわりと伝わる。
ページをめくるたびに、彼女たちの笑い声が耳に届く。まるで、BGMみたいに。砂浜を走り回る音、波が打ち寄せる音、そんな全てが静かに混じり合って、私の心を満たしていく。みんながはしゃいでいるこの時間、この隙間の刹那を、私はこのひとときの幸せを、しっかりと噛みしめている。
「ねーーえーー、トロイさんも来ませんかーー!」
私に向かって振られる手が、ひらひらと輝く。私は顔を上げると、少しだけ笑みを浮かべて首を横に振る。
今はいいの。この時間だけは、私だけのものにしたいから。
──『炎天下ボーナストラック』より抜粋