魔王ですが、なにか?

Last-modified: 2025-01-02 (木) 02:32:39

「う…、運命くんが分裂したぁぁ!?!?」

カノンは目の前の光景に思わず叫んだ。
そこには、分裂した運命が3人。
それぞれ少しずつ違う雰囲気を漂わせながら、呑気にソファに座って微笑んでいる。

「うんめ、たくさん、健康によい、ね」

シオンはのそのそと運命のうちの1人、仮に運命Aの膝元に寝転んだ。
非日常が日常のGARDENでは、たしかにこういうことはよくあるといえば、よくあるのだけれど。

「なんか、ママのところで試験薬を飲んだんだって!
 そしたら、なんか、こうなった的な…?」

プロブレムが指を立てながら事情を説明する。
原理や理屈はまったくもってよくわからないが、とにもかくにも運命が今3つの体に分裂してしまっていた。

「おおおちついてください2人とも!こういうときは深呼吸して、れれれ冷静に状況を分析しましょう!」

「カノンがいちばんあわてんぼうさん、ね」

「まあ、なっちゃったもんは仕方なくない?」

プロブレムが肩をすくめながら微笑む。

「それに、逆に考えてみて。これで私たち3人がそれぞれの運命くんを独占できるってことじゃない?」

「なにそれズルい」

既に運命Aの膝の上でゴロゴロしているシオンが即座に反応する。
既に独占中である。

「運命くんはみんなの運命くんです!独占はよくないです!」

「じゃあ、どうするの?」

カノンの反論にプロブレムは小首をかしげる。

「このまま放っておいたら、誰かに見つかっちゃうよ?」

皇帝が3人になったともなれば大事件になる。
ママたちによるさらなる実験の日々か、あるいは3人同時の超多忙激務生活か、いずれにせよ、運命の健康的な未来は想像できない。

3人は一瞬黙り込み、視線を交わした。そして──

「わかりました。それぞれ連れて帰りましょう!」

カノンが勢いよく提案する。ぎゅっと運命Bの手を握る。

「えっ、ももも、持ち帰り!?でも、それしかないかも……」

プロブレムは戸惑いながらも頷いて、運命Cの上着の裾をちょんとつまむ。

「採用、ナイスアイデア。健康によい」

シオンは軽やかに身を翻すと、猫に化け、運命Aの肩の上にひょいと乗っかる。

「いいですか、これは私たち3人の秘密です…!」

「わかった、私たちだけの内緒!」

「まかせて、悪いことは、得意」

「だって、私たちは、【魔王】だから!」

こうして、3人の自称・魔王(ヒロイン)たちはそれぞれ分裂した運命を自室にこっそり連れ帰るのだった──


──『魔王ですが、なにか?』より抜粋