『謎のゲーム ―忘れられた記憶―』は、マリオに降りかかる数々の試練と、その試練を乗り越えるマリオを描いた、中編小説です。
この小説はテレビドラマ『ザ・クイズショウ』を参考にして、執筆しています。
主な登場人物
- マリオ
- 謎のファイター
小説の設定・説明
『謎のゲーム ―忘れられた記憶―』でのマリオの一人称は「俺」になっています。ご注意下さい。
視点
基本的にキャラクター視点で描きます。
本編
0
『空中スタジアムで待っている。』
手紙には、それしか書いていなかった。
とにかく、空中スタジアムへ行けばいい。それで真相がわかる。それだけだ。
1
―空中スタジアム―
着いた。
俺はゆっくりと入り口をくぐる・・・
見慣れた光景が広がっている。
誰かいるぞ。
マントで身を隠していて、正体はわからない。宙に浮かぶ床の上に立って、俺を見ている。
俺はゆっくりと歩いて、そいつに近づいていく・・・
ある程度近づくと、少し距離が開いた状態で、そいつはしゃべりだした。同時に俺は歩みを止める。
「・・・よく来たな。マリオ・・・」
俺はじっとそいつを見る・・・。だが何もわからない。真相はつかめない・・・。
「お前、誰だ?」
俺はきいた。
「・・・」
答えは返ってこなかった。
しばらく、沈黙が続く。俺には正体不明のやつは俺を見て、かすかに笑っているように見えた。
何をたくらんでいるんだ?
沈黙を破ったのは、やつの方だった。
「来てくれると思っていたよ。絶対来ると思ってた。」
「あれだけの内容の手紙を送っただけで、そう確信してたのか?」
「何言っているんだ。実際、来てるじゃないか。」
「・・・まぁ、そうだが・・・。」
「君の性格上、あの内容だけでも『きっと何かあるぞ。行かないと。』と思うと思っていたんだ。あれだけで十分。いや、むしろあれだけの内容だったからこそ、ここに来る気を起こしたのかもな。」
これで一つわかったことがある。やつは俺のことをある程度知っている。
「あぁ、その通りだ。確かに俺は『これは何かあるぞ・・・』とすぐに思った。・・・だが、その『何か』が何なのか、全く知らないが・・・。」
しばらく、俺は考えていた。
こいつは誰だ?何のために俺をここまで来させた?
俺は単刀直入、正体不明のやつにきいてやった。
「もう一度きく。おまえは誰だ?何のために俺をここまで来させた?何が目的だ?」
「・・・君がゲームをクリアしていったら、わかるさ・・・」
「何の話だ!?」
「・・・」
「なぁ、マリオ。お前、何か忘れていないか?」
やつの口調が変わった。
「忘れている・・・?何の話かさっぱりわからない。・・・さっきからいったい何なんだ?」
「まぁまぁ・・・。」
俺は何のことやらさっぱりわからないままだった。
だが、これから『何か』が起きることは間違いないだろう。
「・・・そろそろゲームスタートするか・・・。」
「な、何なんだ!?その『ゲーム』っていうのは?」
俺は一瞬、パニックになったが、その『ゲーム』とやらがこれから起きる『何か』なのだと確信し、少し冷静になった。
慌てた様子を見せず、俺は冷静にやつにきいた。
「その『ゲーム』ってのは、どこで何を行うものなんだ?」
「・・・規模は大きい。たくさんのファイターを巻き込むことになるだろう・・・。」
そう言われても、自分でも驚くほど、俺は冷静だった。
「ほぉ・・・」
「今からお前にたくさんの試練を与える。とにかく、お前はその試練を乗り越えればいい。それだけ。」
「ほぉ・・・。何が目的なのかは知らないが、とにかく、与えられた試練を乗り越えればいいのか。」
「あぁ。」
「なぁ。何かを失ったりはしないのか?」
「試練を乗り越えれば、何も失わないだろう・・・」
少し冷静さが欠けた。何かを『失う』可能性がある・・・
「ここまで来たからには、ゲームへの参加を断ってもらうわけにはいかない。もう後戻りはできないぞ。参加は強制する。」
もう後戻りできないのか・・・。でも、俺は後戻りする気なんて全くない。なぜだ?俺は事の重大さをわかっていないのだろうか?仲間を巻き込むかも知れないのに、何かを失うかも知れないのに・・・
「もうなんでもいい!よくわからんが、さっさと俺はそのゲームに挑戦し、クリアする!」
俺はただ「試練を乗り越える」ということだけを考え言った。
「一応きいておくが、コンディションは大丈夫か?闘いが待っているぞ。そして仲間は放って置いていいのか?」
「あぁ!大丈夫だ。問題はない!後戻りできなくなる可能性もあるだろうと思って、やっておけることはやっておいて、ここに来た!」
「もうやり残したことはないな?」
「あぁ!」
「ではいくぞ!ゲーム・・・スタート!」
いったいどうなっているんだ?なんで俺はこんなにこころよく受け止めた?自分でも驚いている。これから後悔するだろう・・・。・・・だが、もう仕方ない。試練を乗り越えるしかないのだ!
「さぁ、最初の『試練』は何だ?」
「・・・ドンキーコング達がいる、ジャングルを襲撃する。」
「!?」
「お前はその襲撃を止めるのだ!そして、ジャングルを、ドンキーコング達を助けるのだ!」
「!?」
驚きを隠せなかった。だが、『試練』とは最初からこういうものだと思っていた。
「何グズグズしている!早く行かないと間に合わないぞ!」
「あ、あぁ!」
俺は走り出した。
さすがに俺はさっきの冷静さがなくなり、急にパニックになったが、走っているうちに、だんだんと冷静さを取り戻した。
やつは俺の敵なのか?やつは何が目的なのか?これから俺たちはどうなるのか?
そんなこと考えている暇はないのに、つい走りながら考えてしまった。
でも、今は何よりジャングルに行かないと!
しかし、一つだけ気掛かりなことがある。
やつの「なぁ、マリオ。お前、何か忘れていないか?」、あれはどういう意味だったんだ?