スマブラ個人小説/ラモソの小説/亜空の旅人

Last-modified: 2014-08-10 (日) 20:24:43

はじめに

このシリーズは主に長編です。

 

元々この話は、友人の運営する“第二部平面クラヴ”というサイトで書いていたものです(現在も書き続けていますが)。
オリジナル版との相違点は、“第1部第一章”を削除して代わりに“導入部”を挿入、ナンバリングをずらしたことと、全体的に文面を整えたところです。
あと、文字が小さくて読みづらい場合は、ctrlキーと“プラス”キー同時押しで拡大できるかもしれません。

 

一番下の“その他”内にある“一話完結・短編”コーナーには名前の通りストーリーには直接関係の無い作品が集められています。“第1部 第零章”では今回削除した旧第1部第一章を参考として収録しました。

本文

導入部

 イントロダクション

 

マリオたちスマブラ参加者達が実在し、ゲームの裏で演技をしているという設定のお話。
彼らは“スマブラ館”と呼ばれる建物に住み、また活動をしている。そこでの試合の様子を録画・中継し、多くの人々に観戦してもらうことによりスマブラ館は運営される。周辺区域では最大手で、自前の警察まで持ち、その管轄は広大である。今のところこの団体の代表者は“ユング”ことドンキー・コング氏だ。同氏は温和で、多くの者から尊敬されている。

 

物語は、マリオ・リンク・カービィの3人が大乱闘をしていたとき、突然謎の挑戦者が現れたところから始まる。
彼の名前はキャプテン・ファルコン。(いちおう)本作の主人公だ。“F-ZERO”シリーズからの出身で、なんとレースの最中に頭上でスマブラの試合が行われていたのを目ざとく見つけ、思わず乱入してしまったという脳筋野郎である。
当初はマリオら3人と意見が噛み合わず、あげく変態あつかいまでされて一度はスマブラを去るが、のちにこの件が誤解によるものだと判明。3人は謝罪をし、それを受け入れたファルコンと意気投合、以降の行動を共にすることとなった。

 

彼らの行く末や、いかに・・・。

第1部

 第一章

第1部第一章に行く

 第二章

ここまでのあらすじ

F-ZERO区域で先日行われたレースについて、審判であるジュゲムが記者会見を開いた。しかし、彼の口からは「不正は無かった」の一点張りしか聞くことができない。
そのことを怪しんだキャプテン・ファルコンは、友人であるマリオ・リンク・カービィを引き連れ、事件を解決するためスマブラ館を出る。しかし外出が厳しく制限されている中でのその行為は脱走とみなされ、4人は当局に追われる身となってしまった。
それでもジュゲム逮捕に燃えるファルコンたち。だが彼らが最初にしなければならないのは、地下深くにフォックスが保管していたアーウィンを駆り亜空間に突入、追手を振り切ることであった・・・。

第1部第二章に行く

 第三章

ここまでのあらすじ

当局からの追っ手を振り切り亜空間へ突入したキャプテン・ファルコンら四人。だがアーウィンの自動航行システムはエラーを感知、その内容は“目的地が消失した”という驚くべきものだった。
同席するリンクのサポートの下でカービィが問題解決に取り組む間、マリオは一連の奇妙な事件についてなんらかの“つながり”の存在を予想する。ちなみにファルコンは昼寝の最中であった。
そうこうするうちにアーウィンは目的地を変更、到着した場所は宇宙空間、それもスターウルフらが大暴れしている戦場のただ中だった。逃げることもかなわず、四人の乗る三機のアーウィンはそれぞれの結末を迎えることとなった・・・。

第1部第三章に行く

 第四章

ここまでのあらすじ

スマブラ館の新しい姿“X”のオープニング画面で目覚めたファルコとカービィ。そこで彼らは“討伐隊”の三機のアーウィンの影を見る。おそらくアーウィンにはファルコンたち四人が乗っている・・・?
一方ドンキーら執務側は行方不明の四人を執拗に捜し求め、ついにそのうち二名、マリオとキャプテン・ファルコンの遺体を得た。それでも残るカービィ、リンクの消息を探り続け、運営に支障をきたし始めていたが、警戒をやめることは無かった。この戒厳令に疑問を感じたプリンが、新たな相棒のアイクを連れ立って情報収集を開始。またカービィはファルコ、リンクと共に死者の“影”を呼び出すことに成功、ファルコン、カービィ、リンク、マリオの四人は再びこの世に生を受けることとなった・・・。

第1部第四章に行く

 第五章(new)

ここまでのあらすじ

オープニング画面に集結した新旧スマブラの7人の戦士。彼らは全ての謎を解き明かすため、そして自分達の活路を見出すためにランドマスターで編隊を組み出発し、すぐさまジュゲム軍団に取り囲まれた。スマッシュボールの期限が切れた直後に降り注ぐパイポの雨、対抗するは新しいランドマスター編隊を操るDXカービィらや激しい殺陣を繰り広げるXリンクたちだ。その間、DXマリオとファルコはジュゲム軍団の本拠地に潜入、件のジュゲムに迫るが、DXマリオの目の前で彼は自らを口封じに処するのであった・・・。

第1部第五章に行く

その他

 第1部 第零章

『気分はビッグブルー、場所はミュートシティ、そして今日はF-ZEROグランプリの決勝レース!! さあ皆さん盛り上がっておりますアリーナ・スタートポイント! まもなくここまで勝ち上がってきたつわものたちが入場、いえ、今まさに入場しているところであります! メカニックは入念に最終チェックを行っています! ご存知のとおりF-ZEROは時速2000kmまで加速することがざらに・・・おっと、会場にどよめきが起こっております!! 何でしょう! あ!! あれです!! 見えますか、マシンが並んでいるちょうど中央あたり、やたらと目立つ青いマシンの横です!! あれは・・・』
「ファルコンさん、あなたの事を言われてますよ」メカニックが言う。
 愛機ブルーファルコンの横でキャプテン・ファルコンは頭を掻いた。
「よし、決めた」
「え?」
「ご来場の皆さん! 今日は私のために来場ありがとう! その期待にこたえて、今日のレースは私が必ず優勝して見せよう!!」
 ファルコンがキザに頭を下げるとブーイングが沸き起こった。
「ようし、みんなオレにメロメロのようだ」
 メカニックが面食らっているのを尻目にファルコンは上機嫌でどこかへ歩いていってしまった。

 

 しばらくして。アリーナのサービスカウンター。迷子が何人も集まっている。
 ファルコンのメカニックは帽子を取って受付嬢のほうへ近づく。
「あのう・・・」
「はい、お子様をお探しに来られたのですね。 でしたらそちらに・・・」
「いえ、その、今日出場するドライバーなんですけど・・・」
「は?」

 

『・・・えー、キャプテン・ファルコン様、キャプテン・ファルコン様、レースがまもなく始まります。 おられましたら急ぎ一階のサービスカウンターまで・・・』『ちがうちがう、スタート位置まで、だよ』『失礼しました、スタート位置までお越しください。 繰り返します・・・』

 

 スタートポイント。ほかのドライバーはマシンに乗り込んでイライラしている。
 アリーナの観客席の方からキャプテン・ファルコンが出てきた。
「いようみんな、待ったかい?」
「クソ野郎、さっさと乗れ!!」「お前なんかでなくていいぞー」「そうだそうだ!」
「ほう、みんなナーバスになっているようだな。 落ち着きたまえ」
 ―――それからしばらく他のドライバーたちと口喧嘩(?)のやり取りをしたのち、ようやくファルコンは自分のマシンに収まった。
「どこへ行っていたんですか?」メカニックがキーを渡しながら言う。
「ふ、ヒーローはいつでも忙しいものさ・・・」
 メカニックは呆れてものも言えず向こうへ行ってしまった。
「ふふふ、私はこのミュートシティのコースを知り尽くしている。 負けるはずがないさ。 なぜなら、私はヒーロー」
 ランプが秒読みを始めた。ファルコンは横から顔を出して手を振る。
『スタート十秒前、おっと、キャプテンファルコンが手を振っています! 気持ち悪い! 良い子の皆さんは見ないほうがいいです!』
 ブザーが鳴る。
『三・二・一、スタート!! 加速トップは誰だ!』
 ・・・つづく。

『おーっと、早くも上位五人が先頭に並んでいます!! 危ない! ・・・一方、最下位はやはりキャプテン・ファルコン。 遅いぞ自称ヒーローっ!』
 実況で散々に言われても彼のマシン、ブルーファルコンは相変わらずの安全運転だ。

 

 さあ、ここからが本番だ。エンジンもだいぶ温まってきたぞ。 キャプテンファルコンはシートに座りなおして前方を睨んだ。
 俺は馬鹿じゃない。はじめからトップ争いをするのは無意味だ。突然のアクシデントでも起こらない限りこの理論的走行で着実に一位の座を・・・。
「ん?」
 上から何かがコースに落ちてきた。
 キノコだ!!
 ギリギリでよけ、軽くガードレールに接触。
 減速して上を見るとちょっとしたフィールドが浮かんでいるのが見えた。その上で数人が戦っている。
 よく見るとマリオとカービィとリンクである。スマブラだ!!
「ようし、俺も」
 ファルコンは脇にマシンを止め、フィールドめがけて大ジャンプをした。

 

「さあヒゲ、今日も元気に大乱闘だ」
「いいだろう、さあ来い剣士!」
「ぺぽ~」
「むむ・・・その声を聞くとなんか気が抜けちまうんだよなぁカービィ・・・」
「ぺぽ~」
「ま、仕方ないか・・・よしよし、今日もいつもどおりだぞ」
「ヒゲ、そんな奴にかまってないで戦わないか?」
「いやいや、こいつはオレとタッグなんだ」
「何だと!」
「ふう・・・毎日劇画タッチな口調は疲れるな」
「たまにはフランクでいいんじゃないか」
「そうだな。 ところでリンク、何か音がしていないか?」
「下のF-ZEROだろ。 ここはミュートシティ」
「いや、上、上・・・」
 ヒューン。
「な、なんだよあれ!」
 ドスン!!
 しばらく煙が漂って見えない。
 人影。
 異様な服装をした男が立膝で着地していた。
「な・・・」
「キャプテン・ファルコン、ここに見参!」男は叫ぶ。
「は?」
「キャプテン・ファルコン・・・あの伝説の挑戦者の?」リンクが言う。
「いかにも。ずっとお呼びがなくて待ちくたびれたぜ」
「いや、お呼びでないから・・・」マリオがつぶやく。「はあ・・・で、何の用?」
「見て分からないか? 俺も戦いたいんだ、乱入だよ乱入!」
「・・・乱入ね」
「いざ、勝負!!」「うわっ何すんだよキモチ悪いなッ!」「近寄るな、タイツ男! 変態!!」「ぺぽ~」
 ・・・つづく。

「ヤヴァいぞコイツ・・・」
 リンクとマリオが睨む先は青いタイツ、いやコスチューム、の異様な男だ。そしてそいつは今四股を踏んでいる。
 ごめん、狂ってますよ。
「おいおい、作戦会議か? 来ないんだったらこっちから行っちゃうぞう」
 ヤヴァい!!
「―――とにかく、逃げよう」リンクが額をこすって言う。「まず私が行く。 お前は奴の向こうに回れ」
「たのむぞ剣士」
 リンクはマスターソードを怪物へ向けた。
「そおぉりゃあー!!」リンクは大きく構えてファルコンを斬りつける。
 ガシィン!
「え?」
 ファルコンが白刃取りをしている。
 いや、ソードはちゃんとヘルメットまで届いている。金属で止まったところを手で挟んだのだ。
 なんなんだ、こいつは・・・。
 しかしファルコンはそのことに気付いていない。
「ふっふっふ、俺は真剣白刃取りを極めているのさ。 剣のあるなしはもはや関係ない!!」
 馬鹿かこいつ・・・。
 膠着状態が続く。
「さて、そろそろ俺のターンか? フフフ」
 え? な・・・ヤヴァい、殺される!!
「うわぁーあーあ!!」
 リンクは気が変になってソードをそのままに逃げていった。
「ぺぽぎゅっ!!」
 カービィにぶつかって踏み、それでも逃げ、落ちた。
「ヴぁあっ!」
「・・・」ステージの反対側ではマリオは呆然としてそれを眺めている。
「ぺぽぅ~」
「・・・ふふふふわはははは!! 俺が本気を出すまでもないな! さて、次はキサマだマリオ!」
 ファルコンは頭にソードが刺さったままマリオの方を向き指差す。
 絶っ対狂ってますよ。
 ファルコンが一歩踏み出す。
「・・・も、もういやぁー!!」
 マリオは帽子を押さえてフィールドから飛び降りた。
「ドぉうんっ」
「・・・フフフ、俺はそんなに強そうに見えるか。 しかし“Oh Yeah”なんて、さすがマリオ、叫ぶことが違うな」ファルコンは一人で勝手に納得して一人でうなずく。
 剣が落ちた。
「お? 剣士復活か?」
 しかし上からはそれ以上何も落ちてこない。
「・・・気のせいだな。 最後はピンクのベイビーか。 ・・・あれ?」
 カービィは必死に空中へ逃亡を試みている。しかし、やがて力尽きて落ちた。
「ぺぽっ!」
「あ・・・俺ってそんなに強そう? 怖かった?」
 ゲームセット!
 ・・・つづく。

 このゲームの勝者は・・・キャプテン・ファルコン!
「ありがとう! みんなありがとう!!」
 ファルコンが一人で喜ぶ後ろで三人がすっかり疲れ果てている。
「もうだめぇ・・・」
「だいたいなんなんだよあのキモさは・・・」
「ぺっぽぅ」
「どうする?」マリオが訊く。リンクが答えた。
「来てしまったものは仕方ない。 しばらく様子を見よう」
「いやいやいやいやいや」
「ぺぷー」
 2人に嫌がられ、リンクは撤回した。
「そうか・・・。 そもそも彼は挑戦者だ。 挑戦者側は勝った場合帰らなければならないのではないだろうか」
「おお冴えてるなリンク。 よし、それをネタに奴にお帰り願おう」マリオが言った。
「ぺぽ」カービィも了承したようだ。

 

 そんな話があって、リンクとマリオは問題の男をにらんだ。
 さすがに喜び続けるのも疲れたと見える。キャプテン・ファルコンは選択画面のほうへ入ろうとしていた。
「あゝちよつと、待ちたまへそこのタイツ」 マリオが呼び止める。
「タイツじゃない、これは特殊戦闘服だ」
「じゃあ特殊戦闘服」
「私はキャプテン・ファルコンだ。 お間違えのなきよう」 ファルコンは人差し指を立てて振りちっちっと舌打ちをする。
 ヤヴァ・・・落ち着けオレ。 オレはどんな苦境にも打ち勝ってきた国民的ヒーローだ、安心しろ。
「何でもいい。 あんたはそこには入れないんだ」
 マリオが言うと、案の定ファルコンが訊き返してきた。
「何だって?」
「あんた、確か挑戦者だったよな」
「そのとおり」
「挑戦者が勝ったってことは、そのまま帰らなくてはならないんじゃあないか?」
「え、あ、いやちょっと待ってくれ」
「何を待つんだ? さあさっさと帰ってくれないか」
「それはあんまりだ。 もうここまで来てしまったんだ、一休みにお茶の一杯でもしてそれから考えようじゃないか」
「何が茶だ! お前みたいな奴は1人でスナックで飲んでりゃ良い」
「マリオさん、落ち着いて・・・」
「黙れこの八頭身何とか。 貴様を見ていると吐き気がするんだ」
「なるほど、次のファイトは俺と君なのか。 ボクシングか何かの真似だな? 雰囲気たっぷりで血が沸くぜ!!」そう言いながらファルコンはドアノブをつかむ。
「待て」
 リンクは剣を真っ直ぐファルコンの額に向けた。
「ごまかしが効くと思うなよ・・・」
「おお、なんと二対一! 俺は逆境が大好きでねえ」「動くな!」「わおっ! しびれるぅ」
 ファルコンは結局ドアを開け、憮然とするマリオたちを置いて1人で入っていってしまった。
 ・・・つづく。

「・・・どうする?」
「とりあえず、行くか」
「ぺぽ~」
 キャプテン・ファルコンが開きっ放しにして行ったドアの中にリンク・マリオ・カービィの順で三人は入った。
 視界が一瞬真っ暗になり、身体の感覚がなくなっていく。
「・・・」
「大丈夫か? リンク」
「いや・・・こればっかりは慣れないな」
「ぺぽ!」
「相変わらずぺぽ丸はこれが好きみたいだが・・・。 まあ、あれだ。 ロムからディスクに代わってからだな、ロードの負荷が増えたのは。 さぁロードもそろそろ終わるぞ」
 マリオの視界が開け、目の前に顔が描かれてあるアイコンが並び始めた。
「いよう、お疲れ」 フォックスが言う。トークモードなのでアイコンと声だけで本人は見えない。
「なあ狐、今変な奴入ってこなかったか?」
「いんや? 変な奴? ユングのことか?」
「ユングなら向こうで本を読んでるぜ」ファルコもトークに参加した。「相変わらず哲学してるみたいだが、学問があの頭に入るのかどうか疑問だな」
「いや、あいつじゃなくて、青タイツの赤ヘルメットの・・・」
「お前みたいなカラーリングだな」
「んだと?」
「まあまあ、よせよ2人とも」フォックスが2人をたしなめる。マリオはため息をついた。
「・・・わかった。 剣士、ぺぽ丸、行くぞ」
「ああ・・・」「ぺぽー」
「まだ酔ってんのか。 しっかりしろよ」
「ぺぽぉ」
 マリオは軽く指を鳴らすイメージをする。
 再び身体の感覚が戻り、マリオは“マリオ化”した。
「なあ、“オレ化”以外でいいネーミングはないのか?」マリオは隣でロード中のリンクに話しかける。
「・・・う゛っ」
「おいおいおいおいやめてくれよあっち向けあっち!!」
 リンクが口を押さえて向いた先はロード中のカービィであった。
 ロードが完了、不思議そうな表情でカービィはリンクを見上げる。
「ぺぽっ☆」
 カービィはにっこりと笑ってポーズをとった。
「・・・」
「・・・」
「ぺぽ?」
「・・・か、かわいい・・・」
「よせよリンク。 発情する前にまづキャプテン・ファルコンだ」
「う゛」
「悪かった。 カービィを見ろ!」
「・・・」
「先に行ってるぞ」
 マリオは短いくせにやたら豪華で薄暗い廊下を歩いて突き当たりの“談話室”の大きな扉を開いた。
 ・・・つづく。

「うぇるかーむ、ひっひっひ」マリオに笑いかけたのはギャルソン姿のクッパである。
「おぉおぉ、これはこれは、ヒゲのダンナではありませんか」カウンターからはガノンドロフがこちらを向いてニヤニヤしている。
「相変わらず手前半分はダークだな」マリオはそう言って帽子を取った。
「なあに、あっしらも心変わりを致しましてね・・・」ガノンドロフは手に持って拭いていたグラスを置いた。
「どうぞ、ごゆっくり・・・」
 マリオは店内を見渡す。
 ノコブロス、メトロイド、白リーデッドと悪役がそろって一杯やっている。
「いよう、ダンナ!」
「こないだはよくも踏みつけてくれたな!」
「こらぁ、店内でのケンカは禁止だぁ!」向こうでガノンドロフが叫ぶ。
「ケンカじゃないでーす!」
「・・・」
 こっちの方にはファルコンはいない。すると・・・。
「あっちか」
 いつの間にか隣にリンクが立っていた。後ろにはカービィ。
「大丈夫か」
「ああ」
 雑魚キャラや机で見通しが悪いが、奥の壁は一面真っ白だ。ドアも白で、半開きになった先にユングらしき人影がある。
「行こう」
 クリボーと“ファイアーエムブレム”の悪役たちの一団をかき分け、マリオたちは“白い部屋”に入った。

 

 雰囲気は一変、白を基調としたきれいな部屋だ。
 天井では大きな木のファンがゆっくりと回っている。
 ドンキーコングはその真下の白いソファに座って英字新聞を読んでいた。
「高潔なるドンキーコング、お久しぶりです」リンクは片ひざをついて剣を床に立て、挨拶をした。
「お、ああ・・・君たちか・・・。 今日の天気は晴れかね?」
「晴れですとも」 マリオが答えた。
「そうか・・・。晴れはすべての生物に分け隔てのない恩恵をもたらす・・・。 君たちはこの新聞にどれだけの晴れがあると思う?」
「百八つ」
「よく覚えたね、赤い帽子の勇者君・・・」ドンキーコングはようやくマリオのほうを向いた。
「百八つはあらゆる分野で重要な基本数だ」
「ところで、質問があるのですが・・・」
「私に答えられることなら答えましょう。 どうしたのだい」
「今日の第一試合で我々はミュートシティで戦っていたのですが・・・」
 ドンキーは少々いやな顔をする。「うん、そんな予定があったね。 それで?」
「一人、バトルに乱入してきまして・・・」
「ふ・・・いいじゃないか。 大乱闘なのだから」
「それが・・・今、どうやらこちらの方に紛れ込んでしまったようで」
「迷っているかもしれないな。 探して帰り道を案内してやりなさい」
「は・・・それでですね、こちらにはその男は来ませんでしたか?」
「ふん、男か・・・なるほど、性格がよく分かる。 サンプル質の男だな・・・そのような男は見ていないな」
「わかりました。 愚問に正しいお答えを頂き、誠にありがたく存じます」
「いいよ、そんなに無理にかしこまらなくて・・・。 行きなさい。 どこかで彼が待っている」

 

 とりあえず、三人はドンキーに別れを告げ、その部屋を後にした。
「・・・丸いのいるか?」
 マリオはカービィの所在を訊いた。
「ああ」リンクがロケット団の一人がこぼしたビールをよけて答える。「―――ちょっとトイレに行ってくる」
「OK。 ガノン、トイレはどこだ?」
 マリオが尋ねると、カウンターのガノンドロフはこちらから見て右を指差した。
 ちょうど店と白い部屋の境界がトイレになっていて、テーブルがないせいかそのあたりだけ人が少ない。
「すまん」
 リンクは剣を壁に立てかけてトイレに入っていった。
 マリオとカービィは壁に寄りかかってあたりを見渡す。
 店は換気が悪く、タバコの煙が漂っている。
「ぺぽ丸。 大きくなってもこういうところには行くんじゃないぞ」
「ぽよ?」
「・・・」
 ・・・つづく。

「ぎゃぁぁああああ!!」
 マリオはとっさに剣をつかんでトイレの方に身構えた。
 リンクが出て来る。顔色が悪い。マリオの前で膝をつき、その足にしがみついた。
「おい、どうした!」
「・・・」
「なんだって?」
「チ・・・チカン」
「何!? もう一回言うんだ!」
「・・・チカンが出た・・・!」
「バカ、そんな声じゃ誰も助けに来てくれないぞ! 叫べ!」
「チカンだぁー!!」
「ようし、よくやった」「って何やらせてんだよぉ~!?」
 しばらく2人はトイレ前でケンカをした。
「・・・わ、わかったわかった。 冗談だ。 許してくれ」「二度とやるなぁー!! こっちはマジメなんだぞ!!」
「ぺぽ!」
「ん?」
「いやぁー待たせたな、スマンスマン」
 トイレから出てきたのは相変わらずタイツのような服装のキャプテン・ファルコンである。
「おまわりさん、コイツです! コイツがチカンです!!」リンクは剣を鞘に収めたまま持ってファルコンに向ける。
「リンク、お前なんかトラウマがあるな・・・」
「ぺぽ~」
「おいおい、一体何の話だい?」
「こっちが訊きたいね、この変態!!」
「なんだって?」
「おいそこ! さっきも言っただろ! ケンカは外でしろ外で!!」ガノンドロフがカウンターから出てきて叫び、扉を指差す。
 いつの間にか店内は静まり返っていた。

 

 というわけで四人はトレーニングステージに集結した。
 リンクはさっきから小さくなってカービィの後ろに隠れてすがり付いている。
「ぺぽ?」
「あ~あ。 リンクの奴いつの間にソード刺してきたんだ? まったく・・・」
「おじさん、こいつ倒してよ!」
「こいつとは何だ、私はキャプテン・ファルコンだといっているだろう。 私も忙しいんだ。 用があるなら早く・・・」
「あ!!」
「ぺぽ?」
 マリオはリンクの背中の剣の鞘をつかむ。
 剣が抜けない。
「わかった。 リンクは精神的なショックがあっても時の神殿同様の効果が出るんだな。 しかもこの場合、周囲ではなくリンク自身が逆行している」
「ぺぽ・・・?」
「一体何なんだ君たちは。 暇つぶしなら帰るぞ」
「待てタイツ」
 ファルコンは立ち止まって振り返る。
「何だと?」
「これは児童に対するわいせつ行為だ。 警察を呼ぶ」
「わっ、ち、ちょっと待ってくれないか。 私は・・・」
「何を待つんだ。 さあ、どうせなら自首したらどうだ」
「前にも聞いたようなセリフだな。 とにかく、私の話を聞いてくれ」
「・・・ふん、いいだろう。 話は選択画面で、皆の前で聞こう。 いいな? リンク」
「ううん、ぼく・・・」
「おい、先行ってろ」
「失礼なやつだな」
 ファルコンは肩をすくめて画面を移った。
「・・・で、何があったんだ?」
 マリオがしゃがんで訊くと、リンクは泣き出した。
「おいおい、よせよ。 よしよし、ほら、あいつはいなくなったから・・・」
「・・・?」リンクは不思議そうな顔をした。
「?って・・・泣き出した後でそれはないだろ」
「なんだって? 私は泣いてなど、あれ?」リンクは顔に手をやっておどろき、立ち上がった。
 元の背に戻っている。
「ファルコンの奴がなんかしたんだろ? 思い出せよ」
「・・・あー、なんか思い出さなくても悪い予感がするな」
「は?」
「たしか、トイレを出ようとしたら、いきなり後ろから声をかけられただけ、だったような・・・」
 ・・・つづく。

 ミュートシティのトレーニングステージ。時は夕暮れ、あたりはオレンジと黒の二色ばかりだ。
 キャプテン・ファルコンはステージの端に腰を下ろして夕日を眺めている。
 その後ろから近づく足音が聞こえる。
 マリオだ。
 マリオはファルコンから3メートルほどのところで足を止めた。
 しばらく、2人とも何もしゃべらない。
 エフゼロマシンの走る音が遠くから聞こえた。
「・・・何故私は誤解されるんだ?」
「・・・」
「私はただ、理想のヒーロー像を追い求め、そうなろうと努めているだけだと言うのに、だ」
「・・・」
「私は・・・」
「すまなかった」
 ファルコンはようやく振り返り、立ち上がってマリオに向き合った。
「君は本気ですまないと思っているのか?」
「ああ」
「あのあと、私が選択画面で受けた仕打ちを知っているか」
「・・・俺が悪かった。 取り返しのつかないことをしてしまった」
「・・・」
「償いのためなら、なんでもする。 頼む・・・」
 マリオはそこで言葉を切った。
 雲の合間から夕日が現れ、2人の視界を同じ色に染めた。
「マリオ」
 ファルコンはマリオに背を向け、つぶやく。
「私を・・・“スマブラ”の正式メンバーにしてくれないか」
 その横顔は逆光で表情がよく見えない。
 マリオはうなずいた。
「もちろんだ。 俺たち3人はもちろん、事実上リーダーのユングもそれを認めている。 ・・・ほかの連中に関しては・・・しっかり言い聞かせる」
「いずれ、時が解決してくれるだろう」
「そうだな」
「・・・それからもうひとつ」
「なんだ」
 マリオが訊くと、ファルコンは照れたように鼻を鳴らした。
「私を・・・俺を、お前らの仲間にしてくれないか」
「・・・俺とリンクとカービィか」
「ああ。 ・・・なんだか、こうして一人でいるうちにさびしくなっちまってな」
「いいぜ。 歓迎する」
 会話はそこでいったん終わり、2人はしばらく夕日を眺め、おもむろに握手をした。
「・・・さ、帰ろうぜ。 俺たちの居場所へ、スマブラへ」
 マリオが言い、ファルコンは頷いた。
 ・・・つづく。

「・・・ところで、帰る前にお前の車を見せてほしいんだが」マリオは思いつきでそう言った。
「車じゃない。 エフゼロマシンだ」
「なげぇじゃんか」
「じゃあマシンだ」
「・・・マシンを」
「そうだな。 今頃メカニックのやつが整備点検をやってる頃だ」ファルコンはうなずき、先を示して歩き出した。

 

 2人はコース横の段になっている上を順に歩く。そろそろ足元が暗くなってきていた。
 どこからか調子はずれの音楽が聞こえる。
「・・・あれは?」マリオが訊いた。ファルコンは答える。
「引退したレーサーの暇つぶしさ。 俺はあんな連中のようには絶対になりたくない」
「・・・」
「俺は何があってもヒーローなのさ・・・あんなふうに志をあきらめたりは絶対にしない」
 そう言うファルコンの表情は非常に厳しく、またつらそうでもあった。
 マリオはおどろいた。・・・まるで、下手なプレーヤーに操作されているときのオレじゃないか!
「そうか・・・」
 こいつ、苦労してるんだな・・・。まだ背中にコントローラーがつながっている身か。
 黙って2人で歩いているうちに前方に明かりが見えてきた。ガレージだ。
 そこに青っぽい大きななにかがあって、そのそばで青年が飲み物を飲んでいた。
 あれがファルコンの言う愛機とメカニックとか言うやつだろうか。
「よぉ」
 ファルコンが声をかけると彼はびっくりしてむせこんでしまった。
「ファルコンさん! どこ行ってたんですか!」
「す、すまねぇ・・・ちょっと野暮用でな・・・。 で、レースはどうだった?」
「どうだったもなにも・・・審判の不正疑惑でレースは取りやめですよ」
「なんだって!?」

 

 ・・・しばらく2人がにぎやかに話していたのでマリオはちょっとコースの方に出てみた。
 見上げると満天の星空である。
 きっとあのどこかにオレ達のメニュー画面があるのだろう、とマリオは思った。
 ・・・つづく。

 一話完結・短編

サウンドテスト

 いつものごとく、プリンとアイクが番組用のBGMをあさりにサウンドテスト室にやってきたところ、今日は珍しく先客がいた。
「あれ、レッドさん? どうしたんですか?」
 ヘッドホンをつけていた“ポケモントレーナー”ことレッドは、プリンの声に振り向いた。
「あ、ごめんなさい。 おじゃましてます」
「へえ、珍しいじゃないか」とアイクが言う。
 レッドは照れくさそうにして、ヘッドホンを頭から外した。「・・・うん、ちょっとね」
「音楽が好きなのですね?」
「ええ、まあ・・・」
「そうなんですか、意外ですね。 どうです、ちょっとお話しをしませんか?」
 プリンは、特に急ぐ用でもなかったので彼の話を聞いてみることにした。レッドはうれしそうな、照れたような表情でうなずく。
 それを見て、入り口前で立ち止まっていた2人は部屋に入り、手ごろな機器の上に腰かけた。実質ここは倉庫なので、椅子などというしゃれたものはないのだ。レッドは直に床に座り込んでいたが、立ち上がってCD棚に寄りかかった。
「あ、そこは・・・」プリンが止めようとする前に、不吉な音が背後から聞こえて、レッドは慌ててそこから離れた。
「びっくりした・・・けっこうちゃちなんだね」
「いえ、その棚だけですよ。 実はそれ、初代スマブラから使い続けてるものでしてね・・・」
「へえ、じゃあずいぶん年代物なんじゃない?」レッドは笑った。「それにしても、よくそんな事知ってるね」
「えへへ・・・」
 実はアイクも、そんな話は聞いていなかったので内心おどろいている。そういえば、この人は初代からのメンバーなんだっけ・・・とアイクは思い出した。
 見た目によらず、プリンはレッドよりずっと年上なのである。

 

「・・・じゃあ、ずいぶん気に入っているみたいですね」どこから持ってきたのやら、紅茶を手にプリンは微笑む。レッドも照れ笑いをした。
「うん、実は・・・前作のことを調べているとき、初めて聴いた曲がこれだったんだ。 そしたら妙に気に入っちゃって。 今回も収録されてるかな、って思って、探してたんだ」
「あって良かったですねぇ」プリンは言う。「そうだ、今、ここでかけてみましょうよ!!」
「あれ? じゃあヘッドホンだけじゃないんだ」
「そりゃもう・・・アイクさん、スピーカー起動お願いします」
「・・・はい」
 やっぱり俺はパシリか、とこみ上げる疲労感を押さえ、立ち上がるアイクであった。
 ―――サウンドテスト室は倉庫だが、見た目のわりに音響もしっかりしている。中に入って真っ先に目に付くのが、横に広い巨大ミキサーなのである。
 ミキサーといっても、料理やお菓子作りに使うものではない。いわゆる“コンソール”“卓”といったタイプに属するものだが、そのほかの大量の機器と“融合”するかのように接続されているため万能の音響装置と化している。
 調節ツマミ(とプリンは呼んでいる)がずらりと並び、下手に触ると壊してしまいそうな外見だが、第一印象とは裏腹に、直感的に音を操れる素直な道具である。その分繊細なのは言うまでもない。
 調節するための音源そのものも大量にある。CDはもちろん、LPやEP等の各種レコード、MD、カセットテープ、MP3データ、DAT、オープンリールなどなど、あらゆる形で保存された音楽が、これまた巨大な棚の中に分類してしまわれている。古今東西のあらゆる名曲がそろい、中にはアフリカ奥地の民族音楽なんかもある。当然ながらスマブラ館内のBGMは全てここから取り出され、使われるのだ。
 音楽の制作から鑑賞まで、音について何でも出来る部屋だ。扱い方さえ分かれば、気に入った曲を皆で楽しむのも、簡単なことである。アイクは、さっきまでレッドが使っていたポータブルプレイヤーからCDを取り出し、より高級なものへそれを移し変えて、そっと再生ボタンを押した。
 イントロはドラムから始まる。そこからストリングス音色が立ちのぼり、勇ましいテーマを奏でた。それは部分としては感傷的に、全体では力強い、聴く者を引き込むメロディ・・・その下で活躍するベースとギターの2人組は新しく追加されたパートだ。
 表現豊かに音楽を歌い上げているのは、3人を包み込むように配置されたスピーカー・システムである。奏でる音は全て、心地よく爽やかだ。
「かっこいい!」レッドは思わず叫んだ。
 タイトルは“新メニュー”あるいは“メニュー2”。スマブラ起動時にLR同時押しをしている人がいたら、大抵これが聴きたくてやっているのである。
 沢山の願い、希望が込められた一曲だ。
 これからも、がんばらなければ・・・プリンは誓い、紅茶を啜った。

スーパーファルコン64

「なあマリオ」
「あ?」
 何の断りも無く私室に上がりこんできたキャプテン・ファルコンに、マリオは一瞥もくれてやらなかった。
「暇なんだが―――」
「あっそ」
「何か面白いモンねぇか?」
 知るか、という言葉を呑み込み、マリオは凝った肩をほぐすよう両腕を横に伸ばした。
「・・・ちょうど良い。 あんたで試してみようか」
「何を?」
 こいつだ、とマリオはそれを見せた。
 スーパーマリオシリーズでおなじみの、緑色の土管だ。金属製で、床から生えているように見えるが、実際は固定されておらず、底が平らなプレートでふさがれているだけだった。つまり“どこでも土管”だということである。
「?」
「まあちょっと入ってみろよ」マリオは足元の工具類をどかし、そこへファルコンを引っ張り込む。
「入るって、これにか? ちょっと・・・せますぎじゃねえのか、これ」
「いいから入れや」
 まごつくファルコンを土管に詰め込み、つっかえたら頭を叩き、彼の姿が完全に見えなくなると、マリオは「ああ、せーせーしたぜぇ」と笑った。

 

「おお!?」
 暗く狭い空間を通り抜け、ファルコンが出た先は、のどかな庭園の一角だった。
 前方、なだらかな芝の斜面の向こうには西洋風の城が見えている。
「・・・あれが噂に聞くピーチ城か」ファルコンは言い、真っ直ぐ橋へ向かって正面扉を目指した。

 

 城に入ってすぐ、目の前には階段が鎮座していた。壁にはいくつか小さなドアも見える。ファルコンは、妙に明るい、と不思議がり、天井を仰いだ。
 なにか、きらきらと光っている―――暖かく、心地よい陽光―――。

 

 全身に力強い風を感じる。あおられてファルコンは体勢を崩した。まるで地に足が着いていないような感覚。完全に翻弄されてしまっている。強烈な加速度は真下に向けて落下していることを示していたが、彼はそれに気がつくまでかなりの時間を要した。
「うぁああああああああああああああああああああああ!?」
 パニックを起こしたファルコンは頭に一対のファンシーなミニ翼が生えていることも知らず見渡す限り空という壮大な景色に見とれる暇もなく奈落へ墜ちた。
 ストール。

 

「・・・ぁ・・・ああーーああああいてぇ!? っうぁあぁうーぐぐぐ・・・」
 ゴッ、と狭い土管の内側に勢い良くヘルメットを打ち付け、ファルコンはもだえる。そして痛みが和らぐと今度は窮屈な環境から心理的恐慌に陥った。「―――ななな何だここは!? 誰かここから出してくれぇ~!!」
「落ち着け。 そこは土管の中だ」
「ドカン!? ・・・あぁ、ど、土管か」
 マリオの声に、ファルコンは平静をとりもどし、土管から頭を出した。
 マリオはにやりと笑う。「どうだった? やけに早いじゃねえか」
「どうだったも何も・・・ありゃなんだったんだよ!」ファルコンの表情はまだパニックの名残を引き摺ったままだった。
「何って?」
「なんつーか、こう、墜ちまくってたぞ」
「はぁ?」
「こう、ヒューンって、ま、真っ逆さまに・・・」
 手まねを加えて説明するファルコンを、マリオは笑い飛ばした。
「なんだそりゃ。 バグか?」
「お前が作ったんだろう? これ。 ちゃんと修正しろよな」
 これ、とファルコンは指差し、もう片方の手で土管のふちを叩いた。わかったよ、とマリオは返す。
 ひとまず会話は終了した。いやあ、ビビったぜぇ・・・と口走りつつファルコンが土管から脱け出すのを横目に、マリオは、ざまみろ! と内心勝ち誇った。

コメント

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  • 第二章ここまでのあらすじのアーウィンを「駆り」は「借り」です -- Shaill? 2012-10-07 (日) 23:38:28
  • こんにちは、Shaillさん。えっと、Shillさんの方がいいんでしたっけ?先月新しく入られた方ですね。はじめまして。誤字が見つかるくらいしっかり読んでもらえたのは初めてのようです。どうもありがとう。
    さて、問題の表現ですが、それを書いた当初は“駆り”、すなわち乗り物を(馬にたとえて)操るという意味合いを込めて記述した覚えがあります。しかし今回読み直してみると、確かに違和感を覚えるタイミングと字面でした。
    (うーんどうしたものか・・・今日は忙しいのでまた後日、ということにとりあえずしようと思います。ひとまず失敬。) -- ラモソ? 2012-10-08 (月) 22:47:11
  • あ、話の続きしますね。辞書で駆ると調べてみたところ 一、追い払う 二、走らせる 三、(「かられる」の形で)強く気持ちがうごく、とありました。うーん、多分二番に当てはまるかと………。ちなみにShillはshillです。 -- Shaill? 2012-10-12 (金) 22:44:16
  • そのとおり、“アーウィンを走らせる”という意味です。語感から、勢いよく逃げ去ってゆくイメージを作りたかったからこの語を使ったのですが、誤字に見えるという指摘から、ことばをかえた方がよいだろうかと悩んでいました。
    で、考えた結果ですが、このままにしておこうかと思います。というのも、自分はイメージを先行して文章を書く傾向にあり、文章のモトたるイメージをそこなってはならないという理想をぶったてているからで、(それから、この手の誤植スレスレが本文にも山ほどあると予想されるため多忙な今は手を出したくないからというのはちょっと恥ずかしい理由ですが)―――それと、まあ、言葉遊びとして“駆り/借り”としても面白いかな、などと思案したから、であります。
    ・・・やっぱり駄目かなぁ。いや、読みやすい文章にしたいとは思うんです。ただ本気でそれに取り組むと、本文をイチから書き直す、と言うことにつながってしまいそうだというおそれが指先をこわばらせてしまって・・・どうでしょう? あるいは“駆り(借り)”のようにすると冗談臭さが増してグッドかもしれませんね。自分はもうしばらく思い悩んでみようと思います。 -- ラモソ? 2012-11-01 (木) 20:52:04