No309 ノヴゴロド/元ネタ解説

Last-modified: 2023-06-12 (月) 00:30:29
所属Российский императорский флот
艦種・艦型モニター艦ノヴゴロド→装甲海防艦(1892)
正式名称Поповка
名前の由来Великий Новгород ロシア連邦北西連邦管区ノヴゴロド州大ノヴゴロド市 ロシア最古の都市で1992年「ノヴゴロドと周辺の文化財」として世界遺産に登録された。
起工日1871.4.13
進水日1873.6.2
就役日(竣工日)(1874)
除籍日(除籍後)1903.5.1(1911.12解体)
全長(身長)30.8m
基準排水量(体重)2491英t(2531t)
出力メーカー不詳石炭専焼缶8基Baird Works式複式蒸気レシプロ機関6基6軸 3360shp(3406.6PS)→メーカー不詳石炭専焼缶8基Baird Works式複式蒸気レシプロ機関4基4軸 2240shp(2271.1PS)
最高速度6.5kt(12.04km/h)→6kt(11.11km/h)
航続距離6.5kt(12.04km/h)/480海里(888.96km)
乗員151名
装備(竣工時)280mm前装式単装砲2門
装備(1875)280mm前装式単装砲2門
86mm砲2門
装備(1892)280mm前装式単装砲2門
37mm5連装ガトリング砲2門
装甲舷側:178~229mm 甲板:70mm バーベット:178~229mm
建造所Адмиралтейские верфи, Петербург/Санкт Петербург
(アドミラリティ造船社(現 統一造船会社アドミラリティ造船所) ロシア帝国ペテルブルク 現ロシア連邦北西連邦管区サンクトペテルブルク連邦市サンクトペテルブルク)
  • ロシアが開発したモニター艦。
    1868年にスコットランドのジョン・エルダーが発表したレンズ状船体案、イギリス海軍の造船局長だったエドワード・ジェームス・リードが称賛した概念を発展させたのが本艦である。案の定英国面だったよ
    ロシアのアンドレイ・ポポフ提督によって提案された。艦名はロシアのノヴゴロド市にちなむ。
  • 「パンケーキに大砲をくっ付けた」「浮かぶ円盤」「未確認航行物体」と巷で評されるほど独特のシルエットを持つユニークな艦船。
    あまりに滅茶苦茶で奇抜なデザインが目を引くが、これは「河川での座礁・転覆を防ぐため」という立派な目的があってのデザインである。
    • 実際には船体が船体なので砲撃をしようものならクルクルと回ってしまい、さらに航行すら難しい代物だった。
      しかし、底の浅い河川での使用で座礁の危険が常にあり、さらに排水量や船体故に砲撃の反動による転覆の危険を河川砲艦は孕んでおり、
      ノヴゴロドの設計思想は河川砲艦としては悪くない考えであった事は擁護として付け加えておこう。
  • 分類は河川砲艦、つまり一般的な川での活動を目的とした艦である。
    日本では河川と聞くと流れが急で川幅が狭いというイメージが先行しがちだが、ヨーロッパなど欧州・東欧の河川は流れが緩やかで川幅も広い川も多く、こうした艦船の運用は一般的である。
  • サンクトペテルブルグの新アドミラリティ造船所にて1871年12月29日起工、1873年6月2日に進水。建造価格は当時の価格で283万ルーブル。
  • 完成した船体を一旦解体しサンクトペテルブルグから1692km離れたムィコラーイウで再組立て後艤装し就役した。
    ゲーム内実装の艦としては最古。
  • また、この奇抜な船の後継艦として、ヴァイス・アドミラル・ポポフ(ヴィツェ・アドミラール・ポポーフ)が存在する。何故もう1隻作った。
    • 日本では姉妹艦として扱われる事があるが、直径2割増し、排水量4割増しと設計は別物
  • ロシア・トルコ戦争時に就役し、オデッサ防衛戦力として姉妹共にドナウ川へ配備された。この時に水雷艇防御用に86mmの4ポンド砲を2門追加した。また、全6基ある機関(スクリュー)のうち、外側の2基がほとんど速力に寄与していないことが判明した。機関の数に対して蒸気容量も不足していたため、1877年に外側の機関を撤去し、4軸推進となった。
    この結果速度は6ノットに低下した。
  • 1883年にボイラーを換装した。1892年には沿岸の防衛戦力に回された。このときに86mm砲をホチキス製の37mm5連装ガトリング砲に換装した。
    その後、操作性や機動性の悪さから日露戦争・第一次世界大戦前の1903年に予備艦へ降格され倉庫艦として使われた。
    実は退役後、ブルガリアに対してこの艦を売り込む計画があったが、後に頓挫している。
    その後は1911年にスクラップとして売却と、大多数の艦が建造されるよりも先に引退している。
    また、彼女は実装されているロシア艦唯一のソビエト連邦建国前に建造され退役した、すなわち帝政ロシア時代の艦船なのである。全ての艦船の先輩でもある。
  • 対空値が異様に低いがそれもそのはず、ノヴゴロドが退役した1903年はライト兄弟によって人類初の動力飛行が行われた年である。
    気球を用いた偵察や着弾観測はナポレオン戦争から行われていたが、船舶攻撃など遙か未来の出来事であった。
     
  • 武装は砲艦としても重装備であり、前装式28cm連装線条砲と86mm砲を装備しており火力自体は中々の物であった。
    もっとも、前述の設計故に砲撃しても反動でクルクル回ってしまうという欠点があった。
    さらに回転後、元の向きに戻るには数分ほどの時間を必要とするなど実用性も非常に乏しかった。
    また、速力はたったの最大6.5ノットと非常に鈍足であった。
    戦艦少女では波浪の影響があるゆえか脆い部類に入るが。
    • 資料や文献によってはこうした欠陥は誇張されているという説もある。
      円形で回りやすい事から、固定されている大砲の照準自体も容易であった事や、
      制動関係の改良が施された結果、欠点であった回りやすいという問題もある程度の解決を見たとする意見もある。
      以上の点を含み、実際の運用などから沿岸防衛船としては一定の性能があったのではないか、とも言われている。
    • また、防御は錬鉄製の帯装甲が上部プレートで229mm、間に229mm厚のチーク材を挟み、下部プレートは178mmと重厚なものになっている。
      円盤型故に船体と砲台基部は全周傾斜となりうるため対砲撃・衝角に対し化け物じみた装甲となっている。
      こうした理由から、防御力に関しては当時として良好な性能を備えていたとする評価もある。
    • 確実に言える事は、このタイプは流行らなかったという事である。
       
  • 上述した通り後継艦とはサイズからすでに大きく異なるため、英語版Wikipediaなどでは1隻のみのクラスと扱われている。
    本ゲームでもそれに倣っているため、このページでもノヴゴロド級と記載する。
  • 一方日本の文献では「ポポーフキ(ポポフキ)級1番艦」、ロシア語版WikipediaではPopovka Typeとして後継艦と併記されている。
    キーロフのようにロシア艦ではTypeは開発計画、Classは艦型と両立することもあり、翻訳される際にごっちゃになってポポーフキ級となった可能性もある。
    • 艦型自体ではなく開発計画・コンセプト・運用に応じて分類する例は珍しくない。*1
  • 歴史上かなり奇抜な軍艦ではあるが、例によってこいつをモデル化した模型メーカーが存在している。
    しかも1/350と1/700と艦船模型のスタンダードスケール2つで出ている。
    もっともインジェクションキット(金型を利用したプラ模型)ではなく、レジン製のキットであり現在絶版。入手・組み立て共に難易度が高い。
    運よく入手できたモデラー提督諸氏は是非ともチャレンジしてみてはいかかだろうか。

小ネタ

  • 歴史上類を見ない円形船体の艦船であったが、時は流れノヴゴロドの解体から1世紀後の2016年、あろうことか日本で円形船体の船が作られた。
    本瓦造船株式会社にて製作された19トンのタグボート「梅丸」がそれである。
    こちらは現代技術をふんだんに取り入れており、全旋廻式推進装置を備えた舵を持たない船となっている。
    興味がある人は造船元みるといいだろう。

*1 一例としてWW2の日本では、瑞鳳龍鳳、千歳、千代田の4艦を瑞鳳型航空母艦と分類していた