所属 | United States Navy |
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艦種・艦型 | カサブランカ級航空機搭載護衛艦→補助航空母艦(1942)→護衛空母(1943)→雑役航空母艦(1955) |
正式名称 | USS Guadalcanal (AVG/ACV/CVE/CVU-60) |
名前の由来 | Guadalcanal ソロモン諸島ガダルカナル島 |
モットー | Can do |
起工日 | 1943.1.5 |
進水日 | 1943.6.5 |
就役日(竣工日) | 1943.9.25 |
退役日(除籍後) | 1946.7.15 1958.5.27除籍(1959.4.30売却後解体) |
全長(身長) | 156.0m |
基準排水量(体重) | 7800英t(7925t) |
出力 | メーカー不詳重油専焼缶4基スキナー式ピストン型5気筒ユニフロー蒸気機関2基2軸 9000shp(9124.8PS) |
最高速度 | 19.25kt(35.65km/h) |
航続距離 | 15.0kt(27.78km/h)/10240海里(18964.5km) |
乗員 | 910~916名 乗組員860名 航空隊員50~56名 |
装備 | 5inch38口径単装両用砲1門 ボフォース40mm機関砲x16 エリコン20mm機関砲x20 艦載機22 |
装甲 | なし |
建造所 | Kaiser Shipyards, Vancouver, Washington (カイザー造船バンクーバー造船所 アメリカ合衆国ワシントン州クラーク郡バンクーバー市) |
勲章 | Presidential Unit Citation American Campaign Medal European-African-Middle Eastern Campaign Medal(3 stars) World War II Victory Medal |
カサブランカ級について
- カサブランカ級は、サンガモン級の後継にあたる護衛空母である。
前級のサンガモン級とボーグ級は共に3C型商船、T2型油槽船と言った船舶をベースにした護衛空母であったが、今級は新規で船体を設計している。そのため、ボーグ級より船体が長くなっている。 - 今級の生産を推し進めたのはアメリカ近代造船の父とも言える実業家ヘンリー・J・カイザー*1。
彼の提出したプランが軍に採用され生産が決定、アメリカ海軍はその数なんと50隻を発注している。 - 膨大な数が建造されたカサブランカ級は素早く、そして大量に作られた。
あまりに建造ペースが早く、1週間に1隻というスピードで就役した事から週刊護衛空母という異名まで持っている。
実際、全50隻のカサブランカ級は約1年で勢ぞろいした。 - もっとも大量生産を重視した艦であり、性能は航空機を運用する上で最小限の程度に絞られた。
機関は蒸気レシプロ機関であり、当時のアメリカ海軍では採用例が少なく、整備泣かせの代物であったが、護衛空母としては初の機関シフト配置*2等も盛り込まれた。推進軸も2軸になり、機関の損傷が即航行不能になる事態を避けやすくなった。
一方で装甲は殆ど犠牲になったも同然であり、それ故にジープ空母等とも呼ばれている。 - 艦載機は主に対空用のF4F(FM-2)を16機、対潜用のTBF(TBM-3)を12機搭載。小型で鈍足な艦だが油圧式のカタパルトを装備していたため、ある程度の航空機は運用出来た。
さらに全艦に対水上レーダーと対空レーダーを標準装備。日本軍では駆逐艦クラスへの配備も覚束なかったレーダーをこの規模の艦艇に標準装備出来たあたりにアメリカの工業力・技術力が伺える。
航行速度も20ノット未満と空母としてはかなりギリギリの数値だが、それよりさらに鈍足な輸送船団の護衛が主目的なので充分ではあった(艦載機の発進についても前述のようにカタパルトがあるので無問題)。 - 対空兵装はボーグ級と同様、5インチ両用砲と40mm機銃を搭載した。ボーグ級は5インチ砲を船体後方の左右に1基ずつ装備していたが、カサブランカ級では艦尾に1基装備した。
- 「航空機を運用する上で最小限」の性能ではあるが、逆に言えば「船団護衛という目的に対して必要十分」な性能を持った艦とも言える。
現にこれらの「最小限の性能」で大量生産された護衛空母たちは、敵対する枢軸国軍からすれば「どの船団を襲おうとしても航空機が護衛についている」という悪夢にも等しい存在であった。
特に通商破壊で猛威を振るった潜水艦にとって、これらの護衛空母とその艦載機はまさに天敵だった。- 「航空機が潜水艦の天敵」と書くと疑問符を浮かべる人もいそうだが、当時の潜水艦は現代のイメージと全く異なる兵器である。
現代の魚雷を大きくしたような形状でずっと潜っている潜水艦と違い、第2次世界大戦の時代の潜水艦は水上艦に近い形状で、必要に応じて潜水する艦船だった*3。 - 当時の潜水艦は水上ではディーゼル機関、潜航時はバッテリー駆動が一般的だったが、バッテリーの容量が小さく、数時間程度しか連続活動出来なかった。
さらに当時の潜水艦は潜航中に速度を出すことも出来なかった。艦級により前後するが、概ね水上では20ノット前後、水中では9ノット程度が限界で、潜航中は輸送船でも振り切れ得る速度しか出せなかったのだ。
このため、普段は水上をディーゼルで航行(+バッテリーに充電)し、必要に応じて潜航するのが基本だった。 - 上記のような事情から、襲撃前に遠距離から浮上中の潜水艦を発見出来る航空機が天敵になったのだ。
浮上中に発見されればそのまま雷撃で沈められかねず、撃沈を逃れても輸送船団への攻撃はもう出来ない。前述のように潜航中は輸送船にすら振り切られる速度しか出せず、水上航行なら追いつけるものの20ノット程度でチンタラ追いかけようものなら護衛部隊に撃沈スコアを献上するのがオチ。
このように、航空機に発見されればその時点でまず攻撃失敗は確定、最悪そのまま返り討ちにされるため、発見された潜水艦は潜って逃げるしか手がなかったのである。
- 「航空機が潜水艦の天敵」と書くと疑問符を浮かべる人もいそうだが、当時の潜水艦は現代のイメージと全く異なる兵器である。
- イギリスへ貸与されたボーグ級とは対照的に、カサブランカ級はアメリカ海軍のみで運用された。
もっとも、大西洋以外にも太平洋で運用された艦も多く、日本軍との激戦により4隻が戦没している。
多くの場合は特攻機による損失であったが、レイテ沖海戦のひとつ、サマール沖海戦で日本軍戦艦の砲撃で沈んだタフィ3所属の「ガンビア・ベイ」も存在する。 - 大戦を生き延びたカサブランカ級は戦後も引き続き使用され、一部の艦は航空機輸送船として1960年代まで使用された。
ガダルカナルの戦歴
- ガダルカナルはカサブランカ級護衛空母の6番艦として建造された。
起工は1943年1月5日、その半年後の6月15日に進水、9月25日に就役。
艦名は太平洋戦争の激戦地であるガダルカナル島に因んでいる。
起工時の名前はアストロレーブ・ベイであり、進水の際に艦名が変更された。 - 就役後、ダニエル・V・ギャラリー艦長の指揮の下、ガダルカナルは大西洋で活動した。
22.3任務群の旗艦となったガダルカナルは、主に対潜哨戒活動に従事している。 - 1944年1月5日、北大西洋で活動中のガダルカナルは補給中のドイツ軍潜水艦3隻を発見。
これを艦載機で攻撃し、U-544を撃沈する戦果を挙げている。 - 1944年6月4日、ブランコ岬西南西で活動中だったガダルカナルは艦載機の哨戒活動でUボートを発見する。
この時発見したUボートこそ、ドイツ海軍の潜水艦U505であった。
旗艦のカサブランカが率いる22.3任務群はさっそく捜索を開始、僚艦の駆逐艦と共同でU505を炙り出した。 - 駆逐艦のヘッジホッグによる攻撃などでU505を追い詰めるも、成果はいまひとつであった。
艦載機がU505のいる位置へ機銃掃射を行い攻撃を指示、駆逐艦の爆雷攻撃でダメージを与え、U505は緊急浮上した。
浮上後、乗員が脱出を開始、機密書類の破棄や自沈の手はずが整えられた。 - ガダルカナルのギャラリー艦長はこの好機を見逃さなかった。
予め、Uボートを捕獲するためのチームを編成されており、まだ航行するU505へ移乗。
機密書類の確保、自沈の阻止作業が行われ、U505は制圧。星条旗が艦橋から掲げられ、作戦は大成功を収めた。
この戦いの死者はU505の乗員1名のみ。米軍はドイツ海軍のUボート1隻まるごと鹵獲、そして貴重な機密書類、捕虜を手に入れた。 - このU505入手の功績により、22.3任務群は殊勲部隊章が授与された。
しかし、Uボート入手の秘密がドイツに漏れる事を防ぐため、緘口令が敷かれ、戦後になってようやくこの事実が世間に知らされた。 - その後もガタルカナルは対潜哨戒や潜水艦掃討作戦に参加している。
また、大戦終盤までの間は訓練活動にも参加、飛行訓練活動などで多くのパイロット育成にも従事した。
そして1945年4月のドイツ降伏、さらに8月の日本降伏に伴いガダルカナルは大戦を無事に生き抜いた。 - 1946年7月15日に退役。その後は予備役として保管状態に入る。
そして1955年7月に分類を雑役空母(CVU)に変更され、1958年5月27日に除籍された。
その後、船体はスクラップとして売却された。- 余談であるが捕獲されたU505の方は戦後、博物館船として保存され、今なお現存している。
また、U505の保管に関しては他ならないガダルカナル艦長であるギャラリー氏とその兄弟も関わっている。
- 余談であるが捕獲されたU505の方は戦後、博物館船として保存され、今なお現存している。