No8 ネルソン/元ネタ解説

Last-modified: 2021-07-21 (水) 19:16:12
所属Royal Navy
艦種・艦型ネルソン級戦艦
正式名称HMS Nelson (28)
名前の由来Horatio Nelson, 1st Viscount Nelson(1758-1805)イギリス海軍白の副提督 ナイルの海戦で仏艦隊を破り、トラファルガー海戦で仏・西連合艦隊に圧勝しナポレオンの制海権獲得・イギリス本土侵攻を食い止めた。しかし自身は重傷を負い戦死した。イギリス亡国を救った最大の英雄とされている。
愛称Nelsol, Nellie
モットーPalmam qui meruit ferat(Let him bear the palm who has deserved it)
起工日1922.12.28
進水日1925.9.3
就役日(竣工日)1927.8.17
退役日(除籍後)1947.10.20 1948.2.18除籍(1949.3.15解体)
全長(身長)216.4m
基準排水量(体重)33950英t(34495t)→36000英t(36578t)(1945)
出力Admiralty式重油専焼缶8基Brown Curtis式蒸気タービン2基2軸 45000shp(45624.1PS)
最高速度23.0kt(42.60km/h)
航続距離12.0kt(22.22km/h)/16500海里(30558km)
乗員1361名
装備(1945)16inch45口径Mk.I三連装砲3基9門
6inch50口径Mk.XXII連装砲6基12門
4.7inch40口径Mk.VIII単装高角砲6門
ヴィッカース2ポンド機関砲x48(6x8)
ボフォース40mm機関砲x16(4x4)
20mmエリコン機関砲x61
装甲舷側:13~14inch 甲板:4.25~6.25inch 砲塔:7.2~16inch(主) 1~1.5inch(副) バーベット:12~15inch 艦橋:6.5~14inch 隔壁:4~12inch
建造所Vickers-Armstrongs Limited,Elswick,Newcastle upon Tyne
(ヴィッカース・アームストロング社ニューキャッスル造船所 イングランド国北東イングランド地域タイン・アンド・ウィア州ニューカッスル・アポン・タイン市エルツィック)

ワシントン海軍軍縮条約締結直前、日本の戦艦「陸奥」をめぐってある騒動が発生。
軍縮条約開催時までに完成していない戦艦はすべて破棄することになっていたのだが、日本は「陸奥」を完成していると主張。
一方、米英は未完成として対立。日本のなりふり構わないごり押しの結果、米英は「陸奥」の所有を認めることにした。
この代償として、米英に追加で認められた二隻の16inch砲搭載戦艦所有枠の一つを使って生み出されたのが、この英国海軍奇代の迷戦艦「ネルソン級」である。

条約締結後、すでに建造中だった「コロラド」、「ウェストバージニア」の工事再開でこれに対応したアメリカに対し、イギリスには即時に建造できる戦艦が存在しないという問題に直面。
というのも、条約で新造戦艦の排水量は35000tに制限されており以前設計していたG3型巡洋戦艦は48000tで建造不可能になってしまったのである。
そこでG3型をベースに35000t級までに小型軽量化することを決定した。
1916年のユトランド沖海戦を教訓に垂直防御力と速度を重視。艦内各所を軽量化し、主砲三連装三基すべて前方集中配置させることでバイタルパートを集中、短縮し防御重量を削減。
残りを防御と攻撃に回し速力も「コロラド」以上にするという設計案を思いつく。
その甲斐あってか、主砲は日米より多い9門。垂直装甲は最も厚く、速力も「コロラド」以上でそれでいて排水量も条約以内に収まっている。
と、ここまではいいのだが・・・・・・その実態は問題の塊であった。

まず主砲。試験初回で一斉射すると自らの構造物と甲板を破壊しかねないことが判明。
三番砲塔に至っては、後方に撃とうとすると艦橋内の精密機器を片っ端から破壊してしまったため、90度より後方に向けて使用することができなくなってしまった。
主砲自身も高初速軽量弾を使用しているため10kmほどの近距離では威力を発揮するものの、20kmほどでは威力不足に散布界の悪化、さらに砲身の寿命も縮むという代物であった。
また、長距離射撃時の照準安定性を補うため、発射時の初速を制限した結果さらに性能が悪化。
QE級の主砲と変わらないとまで言われた。
砲塔は無理な軽量化により故障が頻発、装填速度が低下。カタログスペックの半分にまで落ち込んだ。
さらに艦首方向への水平射撃のために艦首の反りをなくしたところ凌波性が悪化し一番砲塔は頻繁に波をかぶるようになり寒冷地では凍結して使えなくなってしまった
艦尾に6基搭載されている15.2cm砲は対空性能に難があり、さらに艦橋が邪魔で艦首方向には方舷三基中二基しか使えなかった。
これを補うために高角砲6門とポンポン砲通称ポンポン壊れる砲が搭載されたが、それでも対空能力は不足していた。

防御に関しては主砲塔、司令塔は硬く最大406mmの装甲に守られていた。
また、垂直防御は356mmの装甲で守られ、装甲自体も傾斜して配置されていたため数値以上の防御力を発揮した。
・・・・・・のだが、装備範囲が非常に狭くほぼ喫水線ぎりぎりの部位のみ。水面下に至っては装甲と呼べるものもほとんどなく防水区画も少なかった。

機関も、軽量化のため重量を抑えなければならず新技術を投入。しかし信頼性がガタ落ちし、全力発揮すると高確率でタービンに亀裂が発生故障する代物だった。
そのためめったに最高出力は出せず、前級より4kt遅い21ktがやっとだった。
煙突の配置・構造も悪く、追い風になると高温の排煙が艦橋へ逆流。
この間は測距・見張り作業ができなくなってしまった。
運動性も旋回性能こそ良いものの、主砲三基を前部に集中させた結果重心が偏り操舵特性が悪化。
あまりにも悪いので艦隊入港時は最後に回され、逆に出航するときは事故を防ぐため周りの動く予定のない船まで避難しなければならなかった。

結果としては35000tでは攻撃・防御・速力のすべてを兼ね備えた戦艦をつくることは難しいということを身をもって示すこととなってしまった。

しかし、二次大戦中は積極運用され北大西洋から地中海まで幅広く活動し二隻とも生き抜いた。
と、欠陥だらけの戦艦ではあったが同じ条約で誕生した16inch搭載艦で最も働き、また戦果を挙げたのも彼女らであるのも事実。
あふれ出る英国面に少しでも感じるものがあればぜひ育ててみてほしい。