階差宇宙・千の面を持つ英雄/運行記録

Last-modified: 2026-02-26 (木) 04:08:12

生存手引書:疑似花萼(金) | 疑似花萼(赤) | 凝結虚影 | 侵蝕トンネル | 歴戦余韻
星々の戦い:模擬宇宙 | 階差宇宙 | マネーウォーズ
光を追い、黄金を掴む:忘却の庭 | 虚構叙事 | 末日の幻影 | 異相の仲裁


人間喜劇イベント | 運行記録 | 可能性ギャラリー)
千の面を持つ英雄イベント | 運行記録 | 可能性ギャラリー)


概要

方程式のフレーバーテキストを閲覧することができる。
可能性ギャラリーと異なり、記録を埋めても報酬はない。

運行記録

階差宇宙での攻略で方程式を獲得することでフレーバーテキストを読むことができ、運行記録に記録される。
Ver.3.8時点で112種。

記憶

「歳月」の司祭

歳月の呟きを祈りで紡ぐ、神秘に包まれた司祭たちの話をしよう。
オロニクスの奇跡を持っていれば、崩れた記憶を再構築するのには十分である。
川水は呼び声と共に引いていき、廃墟に風化の刻印が現れる。
凍った滝は流れが止まり、壊れた橋は自由に通れるようになった。
私はそこで巡礼する司祭たちに運よく会えたことがある。
彼らは夢を通して未来の厄運を洞察し、助言を授けてくれた。
「ここで引き返すのだ。岩の都市ローナには行くな。
あそこはすでに陥落し、死と殺戮の地となっている」と。
臆病な私は、もちろん言われるがままに引き返したが、
彼らは私に背を向け。崩れた崖を呼び起こし、運命に向かって進んでいった。

命を吹き込む彫刻家

あんたなのか、ヘリオティカス。そのガラガラ声でわかる。
年老いたこのヒィアスに会いに来るのも、いつぶりだろうか。
戦争で負った古傷のせいで、もうあんたの顔もはっきり見えなくなったよ。
だが、工房にあるあんたの彫像は、本物よりもよくできていると信じていい。
子供たちは機械が入っている彫像が怖くて、私を避けているんだ。
試しに色を塗って歩かせてみたら、
表情もしぐさも海で死んだやつらとそっくりになった。
私はもう、あの機械工や彫刻家たちを超えたんじゃないか?
最近はジョーリアに祝福さえあれば、
生命を創造する偉業も再び成し遂げられるんじゃないかと思うんだ。それができたら彼らを全員連れ戻す……
なんてこった、肘に歯車が触れている。

夜の帳の裁断官

ちょうど日も暮れたことだ、日常の出来事を話そう。真相が不滅であり続けることを願う。
偉大なる祝福を与える者たちは、オロニクスの啓示で未来を予測する。
嫌われ者たちは、永夜の帳をめくり、過去を覗き込む。
決められた過去は運命のベールに織り込まれ、追憶の残像を剥がす。
どんな罪も裁きの目を誤魔化すことはできない。
殺しの罪は隠しきれない、神の神跡は真理を示すからだ。
盗みの罪は隠しきれない、歳月の絹は痕跡を明かすからだ。
しかし人々の恐怖心は尊敬心よりも強く、我々の目から逃れられる秘密などない。
弱さと殺意、愛と野望が入れ混ざる。招待されて来た私たちは、また、追放される。

吟遊詩人

まだ物語を集めていたのか、独眼のヘリオティカス?
ここは一旦休んで、あんた自身の過去を語ってみないか?
あんたの喉はモネータの鱗粉にキスされたと聞く。
最後の遠征で海水に蝕まれ、あんたも片目をあの戦争に持っていかれた。
これもある種の幸運だと言えたかもしれない。帰れない火追いの旅から降りることができたのだから。
しかし、それでもあんたは大地を歩き続け、黄金の英雄から血に飢えた悪党を記録し、
取るに足らない凡人まで謳歌し続けた。
蝶の囁き、記録が刻まれた石板とステュクスの潮騒ぎから、
彼らの足跡を辿った。
あんたはこの方法で彼らを残そうとしているのか?それともあの日、
時代と共に去ることを願っているのか?

歴史調査官

そこに止まれ、タイタンの民よ。我々の訊問を受けてもらう。
神々の顕現、あるいは詐欺師のトリックを見届けたことはあるか?
戦争の勝利、あるいは都市国家の崩壊を経験したことはあるか?
英雄の死、ありは臆病者の救済を目にしたことはあるか?
経験、見聞、記録。あるもの全て告白したまえ。
隠ぺい、捏造、大いに結構だ。だが我々オロニクスの眷属は、影の如くいつまでも民の傍にいる。
覚えておくといい。オンパロスを創るのは、山でも川でもない、我々の記録であると。
争いが絶えない乱世と荒れ狂う暗黒の潮の中でも、歴史が残される限り文明の火種は永遠に消えない。
君がこれから口にする言葉は、その火種の燃料となるのだ。

囲炉の一族

哀れな老父の忠告を聞いてくれるか。
たとえ一文無しになり、窮地に陥ったとしても、囲炉の一族に助けを求めるでないぞ。
かつては高貴なヤヌサポリスの一族だったが、
ある不祥事を起こしたせいで除名と追放を受けた。
ヤーヌスとオロニクスの二重の神託を受けたと嘘をつき、
すべての者を同化すると公言したからだ。
炉を囲んで行うごく普通のお茶会が、邪悪な思想を広める法壇となり、
参加者たちは経験と感情をその場で共有する。
卑怯な私欲だろうと、高尚な美徳だろうと、全て隠さずにだ。
さらに卑劣なのは、奴らは何も知らない無邪気な人をも誘い込む。
ああ、愚かな息子よ、なぜ家出などした?なぜ彼らの言葉を信じてしまった?

苦き記憶の醸造士

旅人よ、足元がふらついているぞ。甘いメーレを一杯どうだ。
これはファジェイナの秘蔵に匹敵すると保証する。ザグレウスでさえ一瞬騙しをやめかねないほどの絶品だ。
代価は、あなたの過去の話だけでいい。
旅の道中に何か悲しい出来事はあったか?
ああ、誤解しないでほしい。私は特に悲劇の愛好家というわけではない。
私はミティステイの酒場から来た。そこの人たちは朝から晩まで歌って過ごしている。
私の酒が旨い理由をあなたに教えよう。
この世にある百の苦しみと辛さから、やっと一滴のメーレを醸造できるんだ。
なにせ原料がなかなか手に入らないもんだから、こんな辺鄙な田舎まで来てしまったよ。
この世の冷たさと温もり、人々の嘆きを探し求めながら。
さあ座って、飲みながら話をしようじゃないか。
ただでさえ悲しみに満ちた人生なので、なおさら夜明けまで飲むべきだろう。

哀歌祈祷

※wikiwikiの仕様上表示できないが、正式名称は「哀歌祈禱」


通りすがりの君、聞いてくれるか?
私はついさっき、数千年分の死をこの目で見たんだ。
挽歌を歌う旅人たちは星を洋服から取り外し、
歳月を種を蒔くかのように土に埋めた。
そして私は、ステュクスがスティコシアの遺跡に口付けするのを見た。
ルキアが炎の海で燃え尽き、
大火が視界にあるすべてのものに火をつけたのも見た。
これらは実際に起きた出来事で、旅人たちはそれをかき集め、
私たちの目の前で再現して見せたんだ。
彼らにここへ来た理由を聞いてみると、
宣告を届け、破滅の記憶を採るためだと言う。
「この城はとっくに滅びた。
私たちに至っては、オロニクスの神跡の魂が、
別れのために残した最後の哀歌なのだよ。」

誓いの守護者

しーっ、彼らが来る、タレンタムから来た誓いの守護者たちだ。
あなたが清廉潔白で、一度も誓いを裏切ったことがないことを願う。
工房との取引、隣国との盟約、
タイタンとの約束、神殿での祈り。
タレンタムの信者はいかなる時でも傍にいる。彼らは風であり、
影であり、砕かれた石板でもあるのだ。
そしてタイタンの代わりに、この世の全ての誓いを守ってきた。
盟友を裏切った国王をナイフで殺め、
タイタンを欺いたギャンブラーを鷹の嘴で罰し、
「詭術」のザグレウスをバラの棘で傷つけたことまである。
誓いの守護者は司祭が捏造した存在だと言われるが、
彼らは実在する。死ぬ間際まで彼らを見ることはできないからだ。
そしていくら逃げようとも、彼らが待つ終点からは永遠に逃れられない。

「歳月」の神跡

石板に刻まれた古の記憶、「永夜の帳」オロニクスの神跡。
黄金戦争よりも前に生きていた大英雄コリントスは、
王位のために、偉大なる旅に出た。
彼は海で神と盃を交わし、その創造物たちと格闘を繰り広げた。
そして司祭たちの導きのもと、神山に登り、
大地の悪夢より生まれた、黒い牙を持つ魔物を切る。
一人の英雄が得られる全ての栄誉を手に入れ、
帰郷した彼は廃墟となった故郷を見下ろす。
なんて悲しいことだ。もし命が山を越える前の瞬間に止まっていたなら、
もし自分が最も華麗な瞬間に死ぬことができたら……英雄は神に祈りを捧げた。
星夜の歌声が山頂を通り抜けて時を動かす、
彼の歩みは最後の一時に留まり、空に浮かぶ星へと変わる。

歓喜の湧泉

甘い泉の水を飲むがいい。これは黄金紀の遺産だ。
遠い昔の美しい記憶が唇を濡らし、心の中に染みわたる。
あの時代、喜びが大地獣のたてがみのようにあふれ、
人々は余った幸せを地下の泉に貯め込むほどだった。
暗黒の潮が世界を襲うなどと、誰が予想しただろうか。
泉の水だけは、静かに流れ続けながら歳月を重ねていった。
封印された歴史が偶然掘り起こされたとき、黄金の甘露が噴き出し、
周囲のあらゆるものが幸福に浸った。
しかし、欲張ってはいけない。少量にとどめておくのだ。
これからも続く苦しい日々は、その泉の水に頼って生きていかなければならないのだから。

記憶の繭

なぜ私がこれほど多くの物語を知っているのか、その秘密を教えよう。
真相を知れば、少し不思議に思うかもしれないが、嘘はついていないと信じてもらいたい。
かつて、私ははるか遠くの密林を探検し、黄金の巨大な繭を持ち帰った。
その繭は太陽の光の下で七色に輝き、見る者を夢中にさせた。
それ以上に不思議なのは、3日ごとに巨大な繭から色鮮やかな蝶が1匹飛び出してくるのだ。
その蝶が私の周りを飛ぶと、目の前に誰かの一生の物語が現われた。
オロニクスの司祭に尋ねたが、彼女は長く黙り込んだ後、
黄金紀が残した奇跡だとだけ言った。
そのような表情をするだろうと思っていた。
信じられないなら、ただの作り話だと思ってもらって構わない。

黄金の血の記憶の精霊

「記憶すべきでないものは、すべて壊滅させよう」
そのような信念を胸に、私は琥珀色の池から昇った。
何千万もの人々の囁きが頭の中で響き、
この世界の生と死を全て見届けた。
翼は角の鷹から、牙は大蛇から取られたもの。
人々の天敵への記憶をすべて背負い、記憶を裁く旅に身を投じた。
「行きなさい、もっと喰らい尽くして」
少女は傘を広げ、背中だけを見せた。
だから私は歓喜の中で、次の犠牲者の首筋を噛みちぎった。

海辺のセイレーン

聞いて、波が新たな記憶を運んできた。
貝殻、砂、かつて都市国家だった廃墟の欠片。
それらの表面には物語が年輪のように、一つまた一つと刻まれている。
セイレーンという創造物がそれらを拾い上げ、爪でマークを付けた。
これはザグレウスから贈られたサプライズ、
あれはオロニクスが残した記述。
巣の中に雑多なものが十分溜まると、セイレーンはそれらを海に撒き戻す。
背後にあった秘密を記す、空虚な時だけを残す。
嗚呼、人々はセイレーンを人を喰らう海の化物だと言う。
だが誰が気づいただろうか、セイレーンもまた優れた詩人であることに。
だから、通りすがりの旅人よ、もし岸辺で人の顔をした鳥に出会ったなら。
どうか慌てて逃げ出さず、まずは座ってその歌を聞いてみるといい。
それはあなたに、人間には読み解けない記憶を語ってくれるだろう。

虚無

暗澹たる巡礼者

あの狂った信者たちには気を付けろ。私がハットゥシリの小道で目撃した怪物たちのことだ。
彼らが持つ短剣は汚臭を放つ血がこびりつき、揺れる瞳は空っぽの空洞だった。
彼らはきっと黄金の血と黒の霧の隠し子で、生まれた時から理性を失っていたんだ。
でなければ、あんな風に生き物を死へ追い立てるはずがない。
彼らは暴言を吐く。「この世はすでに地獄と化し、人は生まれにして不幸である」
「西風の果て、花が咲き乱れる地だけが、我々の帰る場所である」
「この世の命が消え去る時、すべての魂は死の神国へとん流れ着き、
不朽の黄金紀を再び迎えるのだ」と。
今彼らがどこにいるかは分からないが、
既に冥界への旅に出たのかもしれない。

ステュクスの船客

冥界に迷い込んだ生き物たちが見た、恐ろしい悪夢の話をしよう。
荒野には死の気配が満ち、人間界はステュクスに呑まれた。
ニつの世界を分かつ川から、船客の呼びかけが聞こえてくる。
死者が対面から微笑みかけ、あなたは骨の髄までしみる冷たさを感じた。
永夜が空を覆い尽くし、故人たちはとある都市国家の夢へと足を踏み入れる。
我々と共に、西風の果てへ向かおう。
我々と共に、あの船に乗ろう。
そして川水は音もなく大地を占領する。
果たして死者は生者を死へと誘おうとするのだろうか?それとも死に際に見たただの美しき夢だろうか?
迷える詩人よ、ここから去るがいい。
あの声を信じるな、そして決して振り返ってはならない。

失意結社

私は結社の最後のメンバーであり、唯一の生き残りだ。
私たちは十二種類の祭典と礼儀を心に学んだ、
オンパロスでタイタンを最もよく知る者でもある。
しかし黄金の時代は当の昔に崩壊した。
もし世界を創ったのが本当に彼らであれば、
なぜ天地を創造したヤーヌスが最初に火種を失ったのだ?
崇拝する神が消えたのなら、礼贊になんの意味がある?
今まで学んできたことは、とどのつまりは虚妄に過きない。
かつては火追いこそ理性の救いだと信じていた。
数ある神殺しの策の中には、私たちの声も入っていた。
しかし、命を呑み込む大地の傷口は、まさにジョーリアの殞落を証明したのだ。
私たちは自分の間違いを否定しない、それよりも絶望的なのは――
この世に正しい道なんてないかもしれないことだ。

骨を植える者

エネウーヌスのパスティオンを知っているか?あの哀れな戦士を。
あの遠征で彼の魂は燃え尽き、彼は涙を流すことさえできなくなった。
かつては誇り高き戦士だったのだ。
彼はモネータが下した神託を心に秘め、金の鎧を身に纏い、父の復讐を成し遂げた。
そして無敗の少女とも結ばれた。
しかし故郷に帰る道中、彼のリュックからは遺骨の音がした。
男は帰ってきてから一睡もせずに、ただ無言で畑に砕骨を撒き散らし、
朝から晩まで畑を見守り続け、収穫を待った。
彼は「美しい」景色を説明してくれたが、私は慌ててその場から逃げた。
知種学派の錬金術のように、土と霊が骨に憑依すれば、
彼の畑から本当に「何か」が生えてくる日がくるかもしれない……

処刑人

聞け!金属と大地の摩擦音を。
ハイエナどもを怯えさせる鈍い音は、まるで天樂のように私の身体の中でこだました。
否、正確に言うと、私の死体の中で。
あの激戦からもう半ヶ月が過き、
肌はとっくに爛れ、血も乾いていた。
私は戦場で待った、
死という名の本当の故郷に帰るのを。
死体の山で待った、
工イジリアの処刑人がやってくるのを。
ステュクスの前で待った、
自分の魂が無事であることを祈りながら。
そしてとうとう、待ちに待ったあの声が耳元に届く。
帰着点を象徴する大鎌と、
少女の憐れむ眼差しが私の虚ろな目に飛び込んだ。
タナトス、我が偉大なる主よ、やっとあなたの優しい手のひらに触れることができた。

海に葬られた者

どうか私の遺体を焼き払い、その灰を瓶に入れて、
戯言を瓶に刻んでから海に投げてくれ。
私の葬式では涙を流さないでくれ、ファジェイナに笑われてしまう。
私が早々に去ったことを恨まないでくれ、ただ、一刻も早く目的地に辿りつきたかっただけなのだ。
心残りはもう無い、海と共に生きた私は、
死後も波と一緒に流されていたい。
ただ一つだけ心配なのは、ファジェイナに謁見する時にどうすればいいかだ。
手ぶらだと、きっと彼女に嫌がられるだろう。
しかし生まれた時から手ぶらだった私に、いまさら持っていけるモノなどない。
幸い、一ついい笑い話を思いついた。
かなりの自信作だ、ファジェイナへの手土産にするとしよう。
もし海が荒れ狂うのを見たら、彼女も満足してくれてるということだ。

焚書官

どこへでもいい、この孤本を持って逃げて欲しい。
唐突なお願いですまないが、時間がないのだ。
文化を踏みにじる者たちの二輪馬車が、今にもここに着いてしまう。
奴らは、いつも赤い服を纏っている。
サーシスの使者と名乗るのに、文明の種を断ち切ろうする。
知識の価値は認めるのに、知識を求めることを否定する。
挙句の果てに図書館を襲い、古書を略奪した。
子供の勉強本までもだ。
そうだ、できるなら、私の代わりに神悟の樹庭へ行ってくれるだろうか?
そこには真理を守る賢人がいる。
なぜ自分で行かないかって?
あの狂人たちと弁論することに何の意味もないと私はもう悟ったからだ。
そこの剣を渡してくれ、進歩の力を守るために最後まで戦ってやる。

年輪の彫刻師

彫刻家のやり方が嫌いなのは分かるが、どうか彼らを許してやってくれ。
意気揚々と遠征に出た英雄たちは、虚ろな目をして帰還してきた。
戦友が津波に呑まれるのを、親族の胸が化け物の牙に突き破られるのを見て、
無力感と絶望に襲われたのだ。
樹木の歴史は年輪によって記されるが、彫刻家は美化という欺瞞を用いて過去を刻む。
彼らが描いた物語の中では、晩年の英雄たちは遠征に出ていないことになっている。
そして失った友たちは帰ってきたか、遠出してきたことになっている。
崩れ去ったはすの都市国家は依然として聳え立ち、驚いてる老人の隣には、
子供たちが故郷の言葉で話している。
彼らは過去に囚われる英雄たちのために、一時の美しい夢を創り出した。
馬鹿馬鹿しいかもしれないが、この時代には必要不可欠な職種なのだ。

教示の森

ヴィトス最後の学者である、私たちの物語を聞いてくれるだろうか。
どうか私たちの軟弱さを笑わないでほしい。逃げる前に、一度は武器を構えてみたのだ。
しかし先生はたった一巻の文献のために血だまりの中に倒れ、
兄弟たちは城門を守ろうとして惨い死に方をした。
そんな顔をしないでほしい。今の話は、暗黒の潮が来る前に起きたことだ。
死をもたらし、死に飲まれるタイタンと人間も、暗黒の潮と何が違う?
黄金紀に存在した幾多の都市国家が滅び、死んだ文明が物語に終わりを告げても、知識だけは不朽なのだ。
私たちはサーシスの教えを呑み込み、己の骨が木と化し、肉が新葉へと変わるのを待つ。
やがてヴェイトスが創造した知恵の果実も眉尻に実るだろう。
そしてその種が、遠く離れた地で芽吹かせるのを願うのだ。
千年後、私たちの書き記した成果を発展させてくれる学者に期待して。

「死」の神跡

石板に刻まれた虚無の過去、「暗澹たる手」タナトスの影跡。
誰もタナトスを実際に見たことはない。
彼女に関する描写は、どれも捏造か、夢から来ている。
詩人たちは、魂は万物の基盤だと言う。
魂は西風の終点まで導かれ、雨となって来世へと降り注ぐ。
「生」があれば「死」はあり、不変の魂は転生を繰り返す。
しかし暗黒の潮が大地に蔓延し始めてから、「死」は「生」を遥かに超えしまった。
ステュクスの両岸で彷徨う亡霊は帰る場所を失い、
現世に戻った魂は、日に日に枯れていく。
空無は妄言を生み、死は恐怖を生む。
タナトスも狂気に侵され、亡霊を導くこともできずに暗黒の潮に侵食されてしまったのだろうか?
それとも最も悲観な痴人たちの臆測通り、
死を司る神は、既に静かな死を遂げていたのだろうか?

暗黒の潮の弓

私はあの忌まわしい暗黒の潮を命からがら生き延びたが、命の半分を失った。
あなたがあの朽ちた弓に一生出会わないことを願い、この経験を伝えよう。
それはかつて誇り高き紛争の眷属だったが、その黄金の血は汚れてしまった。
呪われた弓矢を手に、目に入った生物を片っ端から殺していく。
朽ちた弓は鋭い叫びをあげ、回避不可能な矢を放つ。
仲間はその場で絶命し、私も矢傷を負った。
私は運よく生き延びたものの、傷口からは黒い血が流れ出た。
この傷は決して癒えることがなく、私の命をむしばんでいく。
あとどれだけ生きられるかは分からず、天の定めに身を委ねるほかはない。
あの矢が放たれた瞬間、結末はすでに定められていたのかもしれない。

冥府の長船

疲れた旅人よ、私たちの船に乗ってみないか?
この船は見た目こそさえないが、どのような人でも故郷へ送り届けられる。
船体にはエイジリアの枯れ木を使い、何万年も朽ちることはない。
帆もまた非常に丈夫で、あるタイタンの祝福を受けている。
私たちはかつてクレムノスの征服ルートをたどって航海し、
途中で故郷を失った難民を救った。
また暗黒の潮の大波の中を突き進み、
数え切れないほどの無辜の命を救ったこともある。
さあ、つかまるのだ。船はまもなく出航する。
タナトスに冥界の風を吹いてもらい、彼に会いにいこう。

かご学派

これは神悟の樹庭に認められた学派ではない。
最初はただの気まぐれで、聖都の誰かが最初の定式を提唱した――
「動きたくない」
そうして彼は何の変哲もない一日を過ごした。
続いて2日目、3日目、
毎日彼は道端に横たわり、食事の時も眠る時もそこにいた。
人々が彼にそうする理由を尋ねると、彼は2つ目の定式を提唱した――
「人間はかごのようであるべきで、あまり多くのものを詰め込んではならない」
そう言った彼は、空のかごを蹴り倒し、一部の人は彼の知恵を称えた。
やがて、道端に横たわる人は一群となり、
毎日おしゃべりをしたり、日向ぼっこをしたり、それ以外何もしなかった。
ある日、この人々は何の前触れもなく散り散りになり、それぞれの道を歩んだ。
彼らに横たわることをやめた理由を尋ねると――
「かごは結局、何かを入れなければならなかった」
学派の創始者は笑いながらそう答えた。

東の海のレヴィアタン

巨大な海の怪物の伝説を聞いたことがない船乗りはいない。
その怪物は東の深海に潜み、体は大きく、多くの爪を持ち、愚かで、残酷だった。
それは触手で行き交う船を叩き壊し、空を飛ぶ鳥さえも逃れることはできなかった。
ファジェイナの悪意だと主張する者もいれば、セイレーンの同族だと推測する者もいた。
唯一確かなのは、その生物には頭脳がないということだった。
魚よりも短い記憶が、目の前のすべてを破壊するよう駆り立てていた。
ある日、海の宝石の城主が船団を組織した。
ハンターたちは招待を受け、東へと航海し、その化け物に血の代償を払わせると誓った。
しかし、船団が到着した時、東の海面は鏡のように静かだった。
人々が見つけたのは、残骸や魚の骨と共に深淵へと沈んでいた巨大な怪物の死体だけだった。
それは狩猟によって死んだのではなく、自滅の果てに死んだのだった。

波を追う魚

スティコシアの母親たちは皆言う、波を追う魚のようになってはいけないと。
その頭の中は空っぽで、流れに身を任せて、どこへ向かうべきかもわかっていないからだ。
漁師たちは言う、波を追う魚の方が好きだと。
その動きはいつも鈍く、海獣に体の半分を食いちぎられても変わることはないからだ。
かつて、セイレーンが歌声でそれを導こうとしたが、
それでも、その目の空洞を埋めることはできなかった。
幸い、その数は星のように多く、海が空っぽになることはなかった。
こうした物語が語られるたび、学者はいつも首を振って嘆息する――
生まれつきの天性さえなければ、あの魚たちはとても大きく育てられる。
そう、海全体に収まりきらないほど大きく。

巡狩

巨獣ハンター

そこの坊や、あなたが詠む長編詩に、この墓石の主である英雄の名は載っているだろうか?
名前はカルティテスと言う。彼女は戦士たちが火を追う旅に出る前から名を馳せていた。
溶岩でできた黄金谷を守る石巨人がいた。その身体には、
ジョーリアの滅多にない怒りが込められている。
ポリスの上空を飛び回る銀色の巨鷹がいた。鳥の化け物は甲高い鳴き声を上げて心臟を揺さぶる。
これらの魔物たちはあのエーグルでさえ討伐するのに億劫だった。
彼女は機転を利かせた。ますは水流を谷へと導き、巨人の身体を冷やして砕けささせた。
そして風車に登って巨鷹を挑発し、突進してきた鷹を風車に巻き込んで倒した。
今の人たちは、彼女がエイジリアとの戦争で命を落としたことしか覚えていないが、
百年前の英雄たちはかって、海の妖怪を狩る時には彼女の名前を叫び、己を鼓舞したものだ。

粛清者

ある隠れた存在に関する、恐ろしい伝説を話そう。
あのザグレウスでさえ捕まえるのが難しい、神出鬼没の刺客たちがいる。
彼らは英雄が疲れを見せる一瞬を狙い、
神像の陰から飛び出し短剣を喉に突き刺す。
ある者はこう言った。彼らはタイタンの眷属だ。
神々は英雄に神殺しの罰を下したのだと。
ある者はこう言った。彼らは公正の秤の代価だ。
英雄が神の火種を持ち去ったから、神は英雄の血を代わりにしたのだと。
ある者はこう言った。英雄の命をったのは単なるナイフだ。
黄金の血の異邦人が先に国を乗っ取ったから、人々は刀と毒薬を持って、彼らから平和を取り返したのだと。

クレムノスの旅人

ある冬の日、私は一人で行動する戦士に出会った。彼女はまるで豪雪の中でも消えない炎のようだった。
疲れ果てた女は私を死から救ってくれた。火を追う者の中でも珍しいクレムノスの血を引き継ぐ戦士だった。
彼女は勝利の父・ニカドリーの栄誉のために戦った、
鋭い矛と、他の神々の命を借りて。
また、根っからのクレムノス人だった。彼女は死者の凍りついた血を拭い、瞼を閉じさせてあげた。
「戦士たちの魂がニカドリーの元に回帰するように。」
彼女は私の誘いを半ば嘲るように断り、一人で神殺しの苦難の旅に出た。
「人類がタイタンを倒せると本当に思っているのか?ヤーヌスの半神がもう預言を告げたというのに。」
「もちろんだ。私が死んだとしても、神の首を切り落とすクレムノス人は必す現れる。」

律法の裁断官

これは、判決の基準に関わる真面目な話だ、あなたの詠歌とはわけが違う。
律法は揺るがなきオンパロスの根本だ。
均衡が万物の鉄則であり、その権威に挑戦してはならない。
我々は二本の剣で天秤の皿に代わり、すべての不正を罰する。
同盟を結んだ各都市国家の判決を根拠に、殞落した神の代わりに責務を果たす。
人は、判決を受ける時点では無実だが、
なんの代価も払う必要がないわけではない。
情をもって訴え、理性をもって議論にかけるのはいい。しかし裁決は民会のような茶番事ではない。
星や月が詩に書かれた内容で軌道を変えることはないように、律法も死のために涙を流すことはない。
さあ、もういきたまえ。情けを乞いに来た人は、あなたが最初ではないし、最後でもないのだ。

巡遊楽団

友よ、我々と一緒に巡遊楽団の演奏を聞きに行こうじゃないか。
最高のメーレと燻製肉も持っていき、耳と舌を同時に喜ばせよう。
彼らの音楽は、心を動かす力を持つんだ。
頑固な紳士が楽しく踊り出し、
百戦錬磨の兵士も感動で涙を流す。
音律とは無縁の難聴者でも、パフォーマンスを楽しんでいる。
用事があるから行けないって?
まあいい。彼らは年中オンパロス各地で巡回しているからな。
楽団を乗せた四輪車は大地獣が引っ張っているんだ、遠くからでもあの美しい歌声は聞こえるさ。
楽団は喜びの使者であり、憂いの天敵でもある。
眉をひそめている人を見つけると、飛んでくるよ。
あっ!開演の音が聞こえたので、私はこれで。

王冠狩りの金爪

幼い頃に、猛き鷹を見上げたことがある。
鋼鉄の冀は広げると、空を覆うほど大きく、
大地を見つめる両目は、怒りで燃えていた。
黄金でできた巨大な爪は、まるで空に浮かぶ第二の太陽のように輝いていた。
あれがコロナフェニックスの天敵だったとは、後で知ることになる。
そして老人になったある日、またあの鷹と出会った。
かつて空を支配していた猛き鷹は、今や息も絶え絶えで地に伏せていた。
翼は穴だらけで、目からは光明を失い、
黄金の爪も年月の錆びが染みついていた。
数百年も続いた狩りは終わりを迎えたようだった。
神鷹はついぞ生まれ変わり続ける悪鳥たちに勝てなかったのか。
感嘆に浸っていたその時、鷹の体は突如炎に包まれた。
そして燃え盛る金色の炎から、新たな身体が現れ、翼を広げて見せた。

追憶の弓使い

大地を灌漑する黄金の血の一縷は、パンタロイスのものだ。
彼は百発百中の弓使いで、百万歩先にいる敵の首をも射貫くことが出来た。
その手で弓を引くと、古き記憶の絆は彼の矢となった。
いったいどんな重い人生を経験すれば、あのような矢の風を生み出せるのだろうか。
彼はラードーン城外の高山に登り、一人で数千の兵を有する大軍を防いだという。
目撃者曰く、あの光景は、ただの矢の攻撃と呼ぶにはあまりにも壮大すきた。まるで空を覆う嵐のようだったらしい。
そんな彼にも仲間には、弓の弦を琴として、
英雄に相応しい葬歌を奏でた。
しかし、彼は自分が背負う記憶から教訓を得ることができなかった。
その矢を空の上にいるエーグルに向けた時に、結末はすでに決まっていた。
天地をも貫いた最後の矢は、折れる運命から逃れられなかった。

百獣の血族

クリュダーマスの子孫が彼の仇を取る姿を、あなたはきっと見たことはないだろう。
あの日、天父の加護を受けた勇士は故郷に帰ったとたん、兄弟に絞め殺された。
ナイチンゲールはタナトスの吐息にいち早く気づき、
10本の角を持つ奇獣は犯人の匂いを嗅き分け、大地獣は飼い主のために悲しんだ。
山の上で鷹を肩にのせた少年の姿を、皆懐かしんだ。
彼は荒野で獅子の群れを呼び寄せ、英雄たちを目的地まで乗せた。
峰狼たちの舌に残る血の味は、
罠に落ちた後、彼自身から分け与えられたものだ。
あなたは獲物を殺さない狩人の話を聞いたことはあるだろか。
彼は弓矢を世を乱す敵にしか向けない。
少年が飼い育てた獣の群れは、今も尚、遠くから故郷を守っている。
そして森には、仁義なき者の死体が埋まっているのだ。

暗澹たる河の代理人

一杯どうだ?独眼の旦那さんよ。
そういえば、お前の顔は前回の「取引相手」になかなか似ているな。
あいつは隣村を襲ったクソ野郎だった。
村人たちは全財産をかき集めて、あいつの首を買い取った。
あと、赤毛のクソ貴族もいたな。
あいつはとある青年をドプネズミ以下だと侮辱した、
暗澹たる手の船には、すでにあいつの席が用意されているだろうよ。
代価さえ払ってくれれば、
俺が代わりに許されさる悪人を、ロープでゆっくりと絞め殺してやるぞ。
もちろん、短剣を使って偉大な英雄を殺してもいい。
俺の先輩曰く、この仕事は、
暗澹たる手の川で泳ぐのと似たようなもんらしい。
恐ろしいだろ?まあ、この暗澹たる時代に生まれてなけりゃ、
誰もこんなクソったれな仕事はやらないだろうけどよ。

「紛争」の神跡

石板に刻まれた巡狩の時、「天罰の矛」ニカドリーの神跡。
無数の人々はこの目で見た、征服者が天空を追猟する姿を。
雷が肩を掠め、両翼の眷属に噛れた腕は痛むが、
吹き出す黄金の血を拭く余裕などなかった。
畏れを知らない「紛争」の神は、雲をも貫く百本の矛で応戦する。
百眼の巨鳥は悲鳴を上げながら天穹から逃げ出すが、
勝利の父――ニカドリーは山河を越えて、
天空を占拠した傲慢な宿敵を追猟し続けた。
オンパロスの起点から終点まで、
まるで空に落ちる矛のように、逆流する雨粒は夜を照らし、
大地に刺さった雷槍は延々と轟音を響かせた。
天空の司祭とクレムノスの戦士たちは神たちを真似て互いに刃を向ける。
どちらかが息絶えるまで、この狩りは決して止まることはない。

孤児の刃

この世には極めて不幸な子供たちがいる。彼らは復讐の道具として生まれてきているのだ。
そうした子供たちは「孤児の刃」とも呼ばれている。実に恐ろしい名前だ。
毒薬と短剣、それが彼らの子供時代のすべてだ。
オンパロス屈指の殺し屋が彼らに技を教え込む。
やがて彼らは金で買われ、汚くて危険な任務をやらされる。
考えてもらいたい。無邪気な子供を恐れる人などいるだろうか?
まさにこの油断を利用し、短剣が羽のように首筋を切り、
護衛が気づいたときには2つの死体が横たわっているだけなのだ。
その1つは子供自身だ。そのために瓶に入った毒薬が用意されている。
標的が死ねば、彼らも存在意義がなくなるからだ。

ウイングタイガー

若き狩人よ、止まるのだ。この先は私たちの狩猟場ではない。
この骸骨の森では、狩人こそが獲物となる。
あの片腕のトラは、かつて人間に一族を皆殺しにされた。
しかし、生き残ったトラは、思いがけずサーシスの祝福を授かり、知恵の双翼を手に入れた。
黄金の鎧をまといしクレムノスの軍人は、征服の戦歌を高らかに歌い、
矢に毒を塗ったラードーンのレンジャーは、百獣を震え上がらせる。
しかし軍人を深淵に誘い込めば、冷たい水が黄金の鎧を呑み込む。
さらにトラは濃霧に紛れて矢をよけ、レンジャーの首をかみ砕く。
シーッ!足音がする。空気中には憎しみの匂いも漂っている。
逃げろ!全力で走るのだ。森の主が狩りを始めた。

奇術の騎士

クレムノスの戦士たちは昔から栄光を重んじてきた。
奇襲や策略は、恥ずべき卑劣な行為とされていた。
だが、1人の兵士がいた。彼は決して敵と正面から戦おうとはしなかった。
罠を仕掛けておくか、暗がりから襲いかかるかのどちらかだった。
ドロスで修行を積んだという噂もあれば、ザグレウスのスパイだという噂もあった。
しかし、彼が率いる部隊は、必ず勝利の報せをもたらしていた。
耐え切れなくなった戦友が彼に決闘を申し込んだ時、
彼は決闘の内容を射的の腕比べに変えた。
――さらに、照準は自身に向けなればならないというルールを付け加えた。
大胆な提案に恐れをなした同僚は、まず見本を見せるよう彼に頼んだ。
彼は平然と引き金を引いた。
矢は彼の頬をかすめ、壁に突き刺さった。
「悪い、外してしまった」

壊滅

赤の月の使者

卑劣な奴らたちの悪行を石板にを書き記してやる。そうすれば、あなたにも分かるだろう、
パステムが一夜にして崩壊した理由を。
災厄の使者は賊星見て、こう占った。終末が来る、と。
一生できなかったことを思う存分体験してもいいだろう。気が済むまで快楽に浸り、遊興するのだ!
憎しみを抱く者は仇敵の胸を刺し、
悩みのない者は、生涯の蓄えを街にばら撒くがいい。
ギャンプラーは自分の命を賭けに乗せ、盗賊はドアを蹴り破って金貨を奪え!
――結局のところ、赤い月は一度も昇っていないのに、誠実だった者は嘘をつき始め、徳望が高かったはすの人は友人を絞め殺した。
昨日まで無邪気に笑っていた子供は、ザグレウスの使者となり果ててしまう。
なぜ私はまだ生きているのかって?ここで生き残る理由は、たった一つだけしかない。

黄金の血を受け継ぐ愚者

私はあの愚か者どもを憎む、そして人の子が殺し合った恥ずべき悲劇をも憎む。
神から授かった黄金の血は、黄金の時代を蘇らせることができなかった。
人ならさる力がそのまま美徳になるわけではない、貪欲な者はいつか血脈の力に溺れる。
私は鎧を纏う者が城壁を引き裂き、ローブを羽織る者が時を止めるのをこの目で見た。
沈黙する者は溶岩を蘇らせ、顔のない者は王に変身する。
災厄に向けるべき矛は人を刺し、
黄金よりも貴重な祝福は、名誉、富、権力に交換された。
隣国の将軍を殺めて己の強さを証明し、
繁栄する都市国家を潰して己の威名を固めた。
黄金の血の争いに、黄金の戦争……
万象の座の神託よ、あなたの名を借りた争いは数えきれないほどある!

残陽の牙

蛮神さえも軽蔑する、頭のない獣たちの話をしよう。
ブリーサの皇族たちは、
クレムノス人に国を踏みにじられ、土地をも占領された。
生き残った戦士たちは尊厳を捨て、略奪を繰り返した。
生きるための殺戮だったはすが、徐々に熱をおびた行為へと変わっていった。
エーグルの祝福を受けた武器は光を失い、錆びた鉄塊となり替わる。
彼らは次々と都市国家を燃やしていった。
こんな卑劣な方法で、先祖の栄光を取り戻せるかとでも思ったのだろうか。
私は燃える野原で行われる虐殺を、どうしても許すことができず、
中にいる悪党を殺した。なのに、殺された奴の仲間たちは高らかに笑うだけだった。
その時私は思った、本当のブリーサ人はとっくに死んでいて、
今残っているのは、彼らの皮を被った化け物なのかもしれない、と。

天罰の鋒の軍団

刃の紛争の中心にいた、強い戦士たちの話をしよう。
ミレッダ人との戦争で、ニカドリーを信仰する戦士たちはそれぞれ兵を集めた。
誰に対しても公平な戦神は、彼を信仰しない勇士にも、
平等に力を与えてくれた。
気迫に満ちたミレッダの重甲歩兵は移動する要塞に進軍した。
戦士たちの咆哮は隊列に波を起こし、密集する矛は空で交差する豪雨のようだった。
彼らの衛隊は力強さと変化を持ち合わせ、
水流のように変化し続ける陣列はクレムノスへタイロイでさえ手こずらせた。
しかし、クレムノスの右に出る都市国家は、やはり存在しなかった。王の矛は相手の心臓を貫き、戦争は終わった。
だが私は決して忘れない。かつて共に勝利の父であるニカドリーの威光を浴びた、あの戦士たちのことを。

コロナフェニックス

忌々しい悪鳥、空を汚す病害め。
エーグルの光を盗み、生物たちを虐げる卑劣者どもが。
お前らには小麦を食い尽くされ、都市国家も襲われた。
刀や矢ではお前らを傷つけることもできない。
熱い黄金の血だけが、お前らを燃やす唯一の武器だとは。
しかし、新たなる種が撒かれたばかりなのに、お前たちはまた戻ってきた。
私はお前たちを呪う。
飢餓に苦しみ、同族の血肉で腹を満たせばいい。
両翼が折れ、土に落ちてしまえ。
一匹残らす狩り尽くされるがいい。
最後は、自分をも呪う。空飛ぶ鷹になってしまえと。
そして黄金の爪でお前たちを磨り潰してやる。
私の子孫も鷹になり、
この狩猟ゲームを代々続けさせてやるのだ。

凶兆の火霊

オドリュサイの城内には、仄暗い炎が赤く揺らめいている。
この火霊がどこから来たのかは誰も知らない。
最初は皆、また新たなザグレウスのトリックだと思っていたが、
困惑しているうちに暗黒の潮が襲ってきてしまう。
オレノス、イカリア、ハンダック……
火霊が現れる場所には、決まって厄運が降りかかる。
この炎がタナトスの呼吸だと推測する者もいれば、
エーグルの羽だと信じる者もいた。
唯一確かなのは、人々に疎まれているという事実だけだった。
城門、バルネア、市場……至る所に炎は存在した。
恐怖、悲鳴、逃亡……壊滅のカウントダウンはすでに始まっていた。
しかし、神悟の樹庭の学者が真相を探ろうと動きだしたとたん、
火霊は跡形もなく消えてしまった。
不可解な謎だけを残して。

クレムノスヘタイロイ

私は滾る熱血を抑え、ランスをきつく握りしめた。
軍隊ラッパの音に耳を傾け、戦馬を優しく撫でる。
クレムノスへタイロイ。無数の戦士が憧れるこの栄誉ある最強軍団で、
私は前衛として戦場に出るのだ。
たとえ立ちふさがる城壁が崖のように高くても、恐れはしない。
私が倒れば、後ろの戦友たちが、屍を乗り越えて突き進むだろう。
退路が断たれ、多勢に無勢であっても、闘志が燃え続ける限り希望は消えない。
王のこの御恩は、犠牲と勝利を持ってしか返せないのだ。
戦友たちよ、高くはためく突撃の旗が見えるか。
恐怖に歪んだ敵の顔が見えるか。
次の瞬間には、やつらの顔面に征服の蹄跡を刷り込んでくれよう。

天空の司祭

私は今でも、彼らを探している。
晨昏の目の許しを得て天空に座する神の民を。
凡人を凌駕する知恵を用いて鋳造された雷霆の剣に、
背中に双翼を持つ奇獣。
そしてエーグルの恩恵を受けて生まれた勇士。
彼はタイタンに全てを捧げ、神々の戦いに投身した。
彼と互角に渡り合えるのは、ニカドリーの加護を受けたクレムノスだけだろう。
しかし、彼らは何故かこの世から消えてしまった、まるで暗黒の潮のようにひっそりと。
あの日、陽雷の化身は確かに空を貫いたはすだ。
彼女の壮挙がなければ、神殺しを敢行する者はいなかっただろう。
それとも、彼らは皆タイタンに呪われているのだろうか?
私たちが神々に歯向かった罰を受けているのと同じように?

紛争劇の作家

私は、アンテパルスのことを将軍というよりかは、劇作家と呼んだ方がしっくりくると思う。
彼はこの戦争を全て自分の演劇として創作しているからだ。
タレンタムの民とジョーリアの兵士は、
両者共にピエロ役だ。
支援に向かうはすのラードーン人は、最後まで辿り着けず、
仕方なしに聖歌隊として雰囲気作りのパフォーマンスを担当することになる。
アンテパルスの軍団に至っては、国王の矛に逆らえるはすもなく、
目的地へ向かえとの号令一つで、その三幕構成の演劇が幕を開ける。
殺し合いの咆哮が壮大な楽曲となり、役者たちの顔に恐怖と怒りを綴る。
戦車と戦車がぶつかり、陣列と陣列が絡み合う。
そしてアンテパルスは自分の手で作り上げたストーリーを楽しみながら、軍営を出る一歩を踏み出すのだ。

「天空」の神跡

石板に刻まれた破滅の瞬間、「晨昏の目」エーグルの神跡。
遥か昔の時代、とある明君は空を渡る船を造った。
傲慢な政治家たちは、「タイタンの権威を揺るがす」と人々に約束し、
滑稽な臣下たちは、「偉大なる王はいつか空を制する」と僭主を謳った。
高く舞い上がる船はオクへイマを超え、雲の中を自在に飛ぶだろう。
やがて天空の司祭がいる都市国家をも飛び超えて、この空と太陽を支配するのだろうと。
人々は希望を胸に僭主を讃え、木材を運び、皮を編んだ。
そしてついに空飛ぶ鉄の機械を造り上げた。
なんという偉業!国中の傲慢を載せて、船は神の領域へと出航する。
なんという皮肉!血肉と鉄塊は、瞬く間に雷霆の中に消えていった。

戦争記録官

武力を尊ぶクレムノスには特殊な知識人たちがいる。
彼らは武器の代わりにペンをとっているが、それでもクレムノス人の尊敬を集めている。彼らは戦争記録官なのだ。
チャリオットが踏みつぶしたあらゆる土地に、彼らの足跡も残されている。
膨大な記録の中で、最もよく出てくる言葉は「勝利」と「大勝利」だ。
これは決して言葉を惜しんでいるわけではなく、
記録官たちにとっては、薄っぺらい勝利など書くに値しないからだ。
彼らが特に好きなのは負け戦であり、そのたびに屈辱を刻みつけ、敗北の経験をまとめる。
そしてついに敵が倒れたとき、軽やかに「大勝利」の三文字を記す。
神悟の樹庭は彼らを学者としては認めていない。なぜならその記録官たちの才能は戦争にしか使われていないからだ。
しかし、当の本人たちはまったく気にしていないどころか、むしろ自分たちを「戦士」と呼ぶことを好む。

失心の瘧

「失心熱」という病気を聞いたことはあるだろうか?
栄華を極めた都市国家ラドロを廃墟に変えてしまった病気だ。
初めは街の住民がぼんやりして、家に帰る道を忘れる程度だった。
医者にも原因は分からず、患者に世話係を派遣することしかできなかった。
しかし、この奇病の感染者数はますます増えていき、症状も悪化していった。
両親は自分の子供が分からなくなり、大臣は仕える王を忘れた。
やがて旅する名医が通りかかり、病気の原因が蚊であることを突き止めた。
その蚊は血ではなく、人間の記憶を吸うのだ。
しかし、何もかも手遅れだった。その地の人々は生けるしかばねとなり、
名医はため息をつき、蚊もろとも街を焼き払うしかなかった。

狂気の戦士

戦士の武器が折れ、不義の戦いが幕を閉じた。
不死身に堕落した彼の肉体も、最後の一滴まで血を流し尽くした。
彼は覚えているだろうか?かつて自分の仲間たちと辺境を駆け、夢を語り合ったことを。
あの頃の彼は本物の戦士であり、クレムノス人の誇りだった。
彼は覚えているだろうか?瀕死の重傷を負いながらも、名誉の死を拒み、
残った強靭な肉体を狂王に捧げる代わりに、征服を続ける力を手に入れたことを。
彼の両目は血に覆われ、無実の同胞の死に気づかず、
彼の両手は残忍さに操られ、その刃で命を奪うのが子供であっても容赦しなかった。
幸いにも彼の仲間がこの過ちを終わらせた。
狂気の戦士が倒れた瞬間、彼の魂は故郷へと帰った。

天罰の哲人

私は藍石から生まれ、炎の息吹を宿している。
溶炉とマグマが私の身体を鍛え上げ、
栄光と硝煙が私に戦衣をまとわせた。
私の腕は喉を締め断ち、
私の石板は頭蓋骨を叩き砕く。
「弱肉強食、力こそが正義、これが世界の根本的な原理である」
私は凡人にこの教えを説き、
鍬を捨てて武器を取るよう呼びかける。
そして私自身も紛争の真理を実践する。
ニカドリーが長槍を掲げるとき、
私は大軍と共に出陣し、彼方へ鉄蹄を響かせ、
哲学という仮の名を持つ狂気を撒き散らそう。

仮面の怪人

パルフォス西側の山脈には近づいてはならない、
死ぬ前に悪い冗談を味わいたいなら別だが。
奇怪な男がそこの小道を占拠していて、
通りかかる人々全員に公平をもたらすと言っていた。
彼は自分のことをタナトスの使者だと名乗っているが、死への畏怖など微塵もなかった。
タレンタムの天秤を手に持ちながら、その判決は気まぐれなものだった。
もし彼に止められたら、自分の大切なものを天秤に乗せなければならない、
それが羽根3枚より軽ければ、生きて離れることができる。
だが時に、彼は1枚のコインを取り出して、もう一勝負しようと言うこともあった。
とにかく彼に出会ったら、生死は天に委ねるしかなかった。
勇者が彼を討伐したことで、人々はようやく彼の仮面を剥ぎ取ることができた。
しかし、その仮面の下にあったのは、また別の固まった仮面だった。

愉悦

水溢琴師

あなたの演奏は私の旧友には遠く及ばない、少女のように美しいディカモルスには。
あの琴師が弦を奏でるのを聞いたことがある人はいなかった、彼はいつもこう言った。
「あなたたちに彼女の楽音を聞く資格はない。」
「彼女を歌わせることが出来る人は、愛する人か、憎き敵しかいない。」
彼は目をつむり、ディスタシア人しからぬ恥じ入りを見せた。
ある日、私は琴師が水の中の「伴侶」を撫でるところを人生で初めて見た。
ファジェイナの賜物である水溢琴は、とめどなく流れる水で神力を発揮した。
その音色は渦を巻き起こし、生者の心を引き裂いた。
曲を聞いた敵は発狂し、海の妖怪は自分の首を噛み砕いた。
ひたすら圧巻だった。彼は、今まで会ったどの水溢琴師をも超えていた。
その音は波を巻き起こし続け、荒れ狂う津波で追手をすべて呑み込んだ。

波を追う海妖

まさか海上でも同業者に出会えるとはな。ひっく。
船上の人間よ、私のいびつな顔を見て驚いただろう。
ファジェイナの酔っ払いが私を創る時に、
間違えて海草と水藻を入れすきたせいだ。顔だけは兄弟に負けてると認めるさ。
しかし音楽に関しては、女皇の傍にいるセイレンスを除けば、
あのモネータでさえ私を師匠と呼ぶくらいの腕前だ。
何をボーっとしている?別に老いぼれが死んだところで誰かに復讐をするつもりなどないさ。
海が暗黒の潮に飲み込まれる前に、朝まで楽しもうではないか!
おい、そこの独眼の吟遊詩人。今から私が歌うから、お前は琴を弾いてくれ。
船客たちが誰のために拍手をしてくれるか、最高のメーレを賭けてみようじゃないか!

神々を噂する詭弁家

真実を捻じ曲げる狂人たち、詭術の弟子たちの話をしよう。
弁論を生業とする泥棒たちは一枚の金貨を賭け、
誰が一番最初に負けを認めるかを勝負した。
エーグルが空の支配者で、ファジェイナが海の統率者ということは、周知の事実だ。
なので彼らは別の論点を作り上げた。「あの満天の雨粒は、蝶々の鱗粉であるか否か」
彼らは妄言を放ち続ける。
「眠りとは死の愛撫か、それとも夜の息吹なのか」「いやどっちでもない、ザグレウスの贈り物だ」
彼らは神を侮辱し、ケファレを大地の父だとでっち上げた。
そして蝶の彫像を砕き、蜘蛛の像を造り上げようと各都市国家を説得して回った。
智者は同じ土俵に立って言い返すわけにもいかす、顔を赤くしてならず者たち罵ることしかできなかった。
彼らの中で神と権力とは、パフォーマンスの道具に過ぎなかった。

陶酔の船

酔いどれ軍艦のホワイトセイレーン号が指揮をとる、荒唐無稽な船隊の話をしよう。
彼らはミディスタシアのメーレを燃料とし、ファジェイナの恵みを受けた、
戦艦でさえ酔っぱらっているふざけた船隊だった。
顔を赤くした船乗りたちは舷を握りしめながらデタラメを言い、
老船長というと、宴気分で船を指揮しては、間抜けな海とビンタの応酬を交わした。
戦艦は狂った鯨のように海に飛び込んでは水面を突き上げ、荒波を巻き起こした。
海の妖怪と敵はちりじりになり、同盟たちも無茶苦茶な動きにたまらず怒鳴り声を上げた。
残されたのは、眠りながら海に漂う船乗りと魚の群れだけだった。
そしてホワイトセイレーン号に乗った私の船長は、琥珀色の炎の海に沈んでいった。
火に炙られた化け物と、彼の大好物であるメーレと共に

陰謀論者

黄金戦争で死傷が耐えないのは、誰のせいだ?
暗黒の潮で都市国家が消えていく様は、盤上遊戯のように見えないか?
冷酷無情であることを責めてくれないでくれ。
私には歴史や伝説も、作り話の類に聞こえる。
タレンタムは公平と正義を振りかざす、でも非道は常に横行しているじゃないか。
気高き天空の父であるエーグルは、信者たちを地に縛り付けているじゃないか。
私に言わせれば、黄金裔の火を追う旅とやらも、ただの茶番に過きない。
オンパロスがもう腐りきっているのなら、いっそ放っておいたほうがいい。
君も私も、ただの民草なんだ。失うものすら持っていない、あるのはこの取るに足らない命だけ。
だから死ぬ前くらい、楽しんだっていいだろ?
生きてて何も信じないかって?
あるさ。私は飛翔する幣を信じる。

酩酊する指導教官

すべての智者はサーシスの身体から伸びている枝で、理性の光を浴びていると言うのなら、
私の先生サラへサは、きっと酒樽の中で酒を浴びていたのだろう。
授業中も、研究中も、実験中でさえ酒を飲んでいた。
彼女に「真理とメーレのどちらが大事か」と尋ねたことがある。
逡巡した後、返ってきたのはゲップだった。
そんな彼女は輝く才能の持ち主で、
一本の薬で小麦の病気を治したり、
数本の論文でオリーブの生産量を上げりもした。
拍子抜けするかもしれないが、名だたる数々の発明の中、彼女が一番誇りに思っていたのはりんご酒の喉ごしを改善したことだった。
私が学部から卒業してもう三十年は経つ。彼女の葬式に参加するために再び戻ることになるとは思っていなかった。
でもあれは葬式というよりも、むしろ飲み会と言った方が正しいだろう。
遺言まで彼女らしかった。「タナトスと酒でも飲みながら世間話をするよ」

笑顔の処刑者

タレンタムを信仰する地、リドントラートという都市国家では、
犯罪者への罰は二種類しかない。無罪になるか、滅亡するか、だ。
酷な律法なのに、執行の仕方はふざけているようにも見える。
生涯規則に沿って生きてきた民が、
死ぬ前でしか存分に笑えないからかもしれない。
処刑人はいつもピエロに変装し、滑稽な姿で登場する。
まるでこれから取りに行くのが命ではなく拍手であるかのように。
しかも彼のジョークはこれから死を迎える者ですら笑わずにはいられないほどの傑作モノ。
しかし、囚人が大笑いする時には、その首はもう地面に落ちている。
硬直した口角は、楽しげな角度を保ったままだ。
処刑人の所業は、善意からか、それとも残忍さ故か?
真相は誰も知らない。大刀から血をふき取った彼は、また次の処刑場へ向かっていく。

耐えられぬ傷

一足遅かったよ。私の心臓はすでに復讐の刃によって抉り取られてしまった。
彼が奏でる海のメロディーは、守衛たちをいとも簡単に酔わせた。
侍女たちは億万長者になる夢を見て、織物の高価さを張り合った。
私は酷く怯えた。剣を握りながら眠りについたとて、心に潜む狂気に抗うことはできなかった。
そうして彼は、宴会を楽しむ人々を後ろに引き連れ、私の前にするりと現れた。
道化師たちは盃を交わし、これから起こる処刑を祝っているかのように見えた。
彼が渡してきたメーレを、私はなんの抵抗もせすに飲んだよ。
あれがどれほど毒酒であってほしかっただろうか。
そうすれば、冷たい刃先が命を奪う感覚を感じずに済んだのだから。
一国の王のために奏でる哀歌はあまりにも退屈で、残念極まりなかったよ。
遠征に出る前に聞いたセイレンスの演奏には遥かに及ばなかった。

ティアレス・ガーデン

そうだ。この花園は私が世話している。
ここは悩みを持たない人のみが住める、誰も涙を流さない理想郷だ。
暗黒の潮と戦争の存在を忘れ、世間から隔絶されている田園でもある。
何故百年後の災いを思い悩む?何故後世の命運に憂い苦しむ?
オンパロスのすべてを忘れ、
朝起きたら畑を耕し、
疲れたら石に座って談笑するだけでよいのだ。
万路の門に残された祝福は、依然と壁を守ってくれている。
人々がこの土地に寄り添い続ける限り、理想郷が崩れることはない。
これは現実逃避とも言えよう、しかし悩んでも事実は変えられないのだ。
若いうちに最後の涙を流し切って、
たき火を囲みながら宴をして余生を過ごしてもよいではないか。

「詭術」の神跡

石板に刻まれた瞬間の愉悦、「飛翔する幣」ザグレウスの神跡。
アフシャは詭計を禁じる誠実の国だった。
そこには盗人もばくち打ちもいなく、美辞麗句さえ存在しない、
人の美しさを体現したような国だった――
ザグレウスの囁きが、亀裂を生みだすまでは。
「私は嘘で真実を創り出すことができるし、真実で嘘を紡ぐこともできる。」
偽装した異邦人は、シルクで包んだボロ布を黄金と交換し、
大勢の前でメーレを泥水に変えた。
しかし誰も彼を裁くことはできない、一度も嘘をつかなかったからだ。
その後、アフシャに最初の詐欺師が現れた。
そして人々は他人に騙されないためにお互いを騙しはじめる。
かつて誠実の国と言われていた都市国家は、神の嘲笑の中で嘘と欺瞞に溺れた。

金の実の儀式

メグナッケン人の追悼会に参加したことがあるだろうか?
西の小さな都市国家で、今では地図からも消えてしまった。
今も覚えているのだが、そこの人々は死者に最も美しい服を着せる。
そして遺体に丁寧な化粧を施し、棺の周りを花と香でいっぱいにするのだ。
サーカス団が舞台で精いっぱいショーを披露して、親族や友人は客席で大笑いする。
その笑い声が大きいほど、故人に対する思いが深いとされている。
このようなお祭り騒ぎが三日三晩続き、盛り上がりが最高潮になると遺体が荼毘に付される。
人々は炎の周りで歌い踊りながら、最後の別れをする。
この風習は独自の信仰から生まれており、
彼らは、タナトスはザグレウスの変装だと信じている。

パフォーマンスアーティスト

あの狂気じみた行動をするパフォーマンスアーティストたちは、オンパロス最大の笑い種も同然だ。
彼らが各都市国家の間を奔走しているのは、愚かな理想を広めるためなのだから。
リーダーのストフェントニーは三流コメディアンで、
戦争の代わりに喜劇を使い、より多くの笑いを取った方を勝者としようと考えた。
彼らはクレムノスで行われた闘技大会に出場し、対戦相手の前で口八丁ぶりを披露したが、
すぐに殴り倒され、惨めに敗退した。
彼らはラードーンでも公演を行い、さまざまな滑稽なポーズをとったが、
晨昏の目に対する冒涜だとされ、ラードーン人に崖から突き落とされそうになった。
しかし、ストフェントニーは、失敗の原因は自分たちのショーが面白くなかったことだと考えている。
ハハハ。彼らのばかげた行いが一番笑えるだろう。

歓楽の神盗

これほど大胆なことをするのは何者なのか?大勢が見ている前で王冠を盗み出し、
さらに国王陛下のはげた頭頂部に、実に笑える冗談まで書き残した。
これぞ我らがウォーシンニスの大怪盗。
宝物を盗み、ジョークを残す。
貴族はきらびやかな衣服をまとい、大手を振って街を歩く。
それはすべて彼に来てもらうため。しかし、集まるのは三流の模倣犯ばかり。
この歴史ある街は今や泥棒と喜劇役者の楽園となったが、
大怪盗の正体を追う者はいなくなった。
もし商人ならば、この街は避けた方がいいだろう。
もし心からの笑いを求めるならば、城門を開いて歓迎しよう。

廃墟の行人

私たちは群れから離れて暮らす者、崩れた壁と瓦礫の間を駆け回る。
廃墟は私たちが戯れる舞台、凝固した記憶が指先をかすめていく――
それはレンガであり、土であり、刃であり、毛皮でもあった……
感覚への刺激は物語となり、都市国家の終焉を語りかけてくる。
そして私たちはこれらの物語を拾い集め、互いに伝えて、記録し、遠くへと送り届ける。
時にはオクヘイマの市場へ、時には生存者の手へ。
私たちを投機主義者だと言う人もいれば、墓荒らしだと言う人もいる。
こうした非難に対して、私たちはただ笑って答える――
物語が人々に記憶され続ける限り、文明が滅びることはない。

石の迷宮

ドロス城外の石陣を見たことはあるだろうか?
それはびっしりと立ち並び、ねじれ絡まり、まるでミノタウロスを閉じ込める牢獄のようだ。
うっかり足を踏み入れたら、一日かけても出られないだろう。
しかし、それは特定の誰かが作った作品ではない。最初は、そこにあったのはただの奇妙な石1つだけだった。
名もない旅人が通りかかり、ふと思い立って、その石を1つから2つに増やした。
その後、冗談半分の者もいれば、好奇心からの者もいて、中には暗号を組んだり、メッセージを記したりする者もいた。
ますます多くの人がそこに手を加え、ついには半神までもがこの戯れに加わった。
だから、迷い込んだ旅人よ、どうか怒らないでおくれ。
あなたの行く手を阻む頑石の一つ一つは、先人たちが残してくれた詭術の痕跡なのだから。

繁殖

金の実の儀式

私は告発したい!あの永遠に苦しむべき悪党どもを!
モネータの子孫と名乗る害悪が、ロマンを冒涜する金の粉末を隠れて錬成したために起こった悲劇をここで暴く。
その粉末は、風が強い分遠くへ飛んでいった。
あの醜い光景を忘れることはできない。狂った少年少女たちが、
目にしたもの全てに恋に落ちた。
地面に跪きながら、リンゴの木に人生を最後まで歩んでほしいと懇願する人。
家族を抱き締めながら、心で不倫を謳歌していた人。
魂を失った抜け殻たちは、働くのも考えるのも止めて、
目に映ったすべてに愛を伝えることしかできなくなった。なんと嘆かわしい!
かつて黄金の繭に恵まれた都市国家が、愛の名義に殺されるとは。

岩に囲まれし集落

私の旅の行き先を知りたいって?目的地は山々に囲まれた故郷だ。
そこの崖には、不格好な花が彫られている。大地獣は身体を屈めて、笑い声に耳を傾けながら眠りにつく。
私たちはオンパロスの各地からここへやって来た。
山の民に引き取られるまで、廃墟の奥で雨の冷たさに泣き続けていた過去がある。
山の民は自分の神を失い、すべてを失った。
製錬を諦め、不器用な手で種を撤き、固い腕で新生を抱きしめた。
生命を育てること。それが堅磐の脊髄が人々に残した最後の天職だった。
大地が滅び、火種を背負う巨獣は行方をくらました。
私たちはそれでも手を合わせて、この世界を創ったジョーリアに祈りを捧げる。願わくば命が強く成長していくようにと。

創生のエンドモ

あの愛の下僕、創造者の眷属たちを見たことはあるだろうか。
危険を恐れず、紛争とエスカトンの間を潜り抜け、
糸を紡ぐ蝶々とスカラベたちのことだ。サーシスのためにバラバラになった神骸を探しだし、
人の言葉と書物から知恵を、愛の囁きと歌からロマンを吸収した。
愛を織る者は、神の知恵をも紡ごうとしている。
そして二人の神が万物を愛する詩編を作り出した。
かつて運命が蝶に授けた囁きが、糸に現れる。
その絹に足を踏み入れると、
一輪の花から広大な都市国家までに広がる一つの世界があった。
私に言わせれば、この古の記憶を織る者たちこそ、
オンパロス最高の吟遊詩人なのだ。

盗賊楽師

手加減しなかったことを責めないでほしい。あの盗人たちの件がなければ、ここまで警戒することはなかった。
災厄が村に影を落とした時、歌い踊る楽師たちがここにやって来た。
彼らは黒い絹を纏い、綺麗な顔に憂いを漂わせていた。
裸足で地面を踏んでリズムを取り、ハープと小鼓を奏で始めると、
少女たちは取り憑かれたように焚き火の前で踊り始めた。
少年たちは農事を放り出し、肩を並べて円を囲んだ。
皆、あの楽師たちに愛の言葉を贈り、彼らの絹を身に纏い、
蜂蜜で顔に同じメイクを施した。
私たちはあの音楽の虜となってしまって。やがて甘い言葉や踊りと共に、
少年少女たちは楽師と遠くへ消えていった。その後、戻ってくることは二度となかった。

本を織り成す神器

見ろ!本を織り成す神器の歯車を掘り出したぞ。
私の先祖は幸運にもその機械を見たことがあるらしい。
かってはピオンリー山脈の峡谷に置かれ、
昼夜を問わず人々のために知識を複製していたそうだ。
青銅の身体は雲の高さまで聳え、
黄金の糸は無数にあったという。
ページが滝のように流れ落ち、
辺境にある都市国家も知恵の水しぶきを浴びることができた。
神器が望めば、その吐き出した本は大地を埋め尽くすことも可能だっただろう。
しかし残念ななことに、
本来都市国家が共有すべきだった財産は、欲によって破壊されてしまった。
どの国王も城主も、一部でもいいから、神器を手に入れたかったのだ。
この小さな歯車は、人々に引き裂かれた神器の一部というわけだ。

憶種の培養士

私の培養室へようこそ、最初の来訪者よ。
見ての通り、ここには土も苗もない。
粗末な仕事は、ジョーリアの信者たちがしてくれている。
私がやるべきことは、記憶の種を順調に育てることだ。
あのピンク色の種を見てくれ。あれは少女が持つダンサーになる夢だ。
彼女は政治家の家に生まれた、舞台とは無縁な人生を歩むしかないだろう。
だが彼女は私のシャーレの中で、思いのままに踊っている。
そしていつか、少女は記憶を取りに来るのだろう。
彼女自身の経験よりも鮮やかな記憶を保証する。
あそこにある青いのは、冒険者の夢だ。
金色のは将軍の夢……
ああ、灰色は気にしないでいい、ただの実験の失敗品だ。

孤児院

私たちは、シンシア院長のご逝去を深く悼みます。
三日前の深夜、彼女は永遠の眠りにつき、
悲報を聞いた子供たちは世界各地から駆けつけくれました。
かつての戦争孤児たちは、
今や立派な職人、学者、芸術家へと成長しています。
皆、孤児院が設立された日を思い出しては懐かしみました。
血と炎が燃え盛るこの世に、
再び愛と美をもたらしてくれたのは院長でした。
ドーリア島に家を建て、
神に捨てられた子供たちを母親のように温かく受け入れてくれました。
パンと羊乳は空腹を満たし、
詩と体育は殺戮に取って代わり、
子供たちは、健康で立派な人間にすくすくと育ちました。
シンシア院長はきっと金の蝶となって空へと舞い上がっていったでしょう。
そして今も私たちの心の中に生きています、
より多くの楽園を建設するよう励ましてくれているのです。

賛歌の家

あなたと同行できないのは残念だ、友よ。
私たちは今、あの忌々しいやつらを倒しにいかなければならない。
狂った信者に引き取られた子たちを地獄から解放しなければ。
あそこに入れられた子供には英雄にまつわる「詩」が贈られる。
そして波乱万丈な「過去」と惨憺たる苦しみを背負わされるのだ。
コリントスの名を受け継いだ子は、三歳の時に毒蛇を絞め殺すよう命じられた。
ディカモルスの名を受け継いだ子は、小指が折れるまで琴を弾かされる。
狂人たちの妄想を満たすためだけに人生を奪われ、
コリントスにもなれす、水に沈んでいった
少年たちは数知れない。
そしてチルコアの山から滑り落ちた
少年たちも無数にいるのだ。
今こうして話している間にも、あの残虐非道な儀式はまだ行われている。
なぞっただけの過去を用いて、再び伝説の英雄を創り上げるために。

蛹殻の職人

蝶の羽を持つラフトラを見たことはあるだろうか?モネータが亡くなってからというものの、
彼らの行方を地上で追うのは難しくなってしまった。
なにも全ての命がケファレをモデルにして生まれた山の民のように、
幸運に恵まれているわけではない。
ファジェイナの海妖、エーグルの奇獣、
新生を望む無数の創造物と眷属たちが、
金衣を纏いし者の助言を受けた。
そして、かつてのモネータのように、
全身を金糸の繭の中に包み、
魂が人の形に成長してゆくのを待った。
動機は常に軽い物だった。「とある人に恋をしたから」、
「とある英雄と剣闘場で勝負をしたいから」……
しかし、戦争はすべてを壊してしまった。己の創造主を裏切ることができない私の恋人も、
日が昇る頃に殻を脱き去り、美しい翼を広げた。

「浪漫」の神跡

石板に刻まれた愛と繁殖、「黄金の繭」モネータの神跡。
美と愛の神は、身体がとてつもなく弱かった。
大地を洗い流す大雨でさえ彼女の翼をたやすく折ることができた。
創造者の姿を受け継いだ眷属たちは、葉っぱの下に隠れ、
泣きながら神に祝福を乞うた。
「生きるのがこんなにも苦しいのなら、せめて翼を広げて飛ぶ理由をください。」
祈りを耳にした「黄金の繭」は、
眷属たちの翼に鱗粉をまき、彼らに数千の子係を与えた。
そして眷属たちは鱗粉の重さに耐えられす寿命が縮んでしまう。
花畑に舞う蜂と蝶は瞬く間に老いて死にゆき、
孵化した子孫たちはまた舞い上がり、終わらない舞踏会を続けた。
「一生は短いのだ、か弱い蝶々たちよ、ならばもう一曲踊ろうではないか。」

光輝のクラゲ

光る海を見たことがあるだろうか?それは光輝のクラゲの祭典だ。
星の数よりも多いクラゲが、水平線のかなたまで広がっている。
彼らは人間をまったく恐れないどころか、人間と一緒に踊ることすらある。
ある人は、彼らをファジェイナの眷属だと言う。
なぜなら夜の大海原はとても暗く、
酔ったファジェイナはクラゲに道を照らしてもらわないと帰れないからだ。
またある人は、彼らをモネータの眷属だと言う。
なぜなら黄金のチョウはそのままでは海の中を飛べず、
海に飛び込んでクラゲとなったからだそうだ。
しかし、このクラゲたちは、そもそもいずれのタイタンの眷属でもないのかもしれない。
彼らはただ繁殖し、狂喜し、遠い過去から遠い未来へと命をつなげているだけなのだ。

北国の狼母

英雄が悪しき獣を倒す物語など聞き飽きているだろうが、今回は少し違う。
北の大地にヴォストロージという名のメスのオオカミがおり、風や雪、氷などを操ることができた。
彼女は捨てられていた人間の子7人を拾い、自らの乳を与えて育て、
自分の知恵や技を惜しみなく受けた。
7人の父である残忍な王は、将来息子に権力を奪われることを恐れ、
彼らを追放したのだった。
7人の息の根を止めようと軍隊が攻めてくると、メスのオオカミは7人を守りながら死ぬまで戦った。
7人は幸運にも生き延び、後に支持者たちを引き連れて自らの父親を倒した。
もう予想がついているかもしれないが、この7人とは歴史上名高い「北方の七賢王」だ。
私はこの話から、人の心は時として野獣よりも恐ろしいと学んだのだ。

俗世の衆生

私は英雄ではない。
数多の凡人の一人だ。
ある人は言う、私は叙事詩の裏の主人公であると。
ある人は言う、私は英雄を支える階段であると。
私にはわからない。私はただ、生きることに努めているだけだ、大地に広がる同胞たちと同じように。
私は生まれ、育ち、子を産み、そして死んでいく。
私はこの流れの無限の繰り返しだ。
先祖の物語は私によって伝承され、文明の絵巻は私によって続いていく。
たまに、よく、あるいは常に、私も人生に何の意味があるのかと疑うことがある。
それでも、私は今を生きることに努めている。
家庭を築き、子孫を残し、
まるで石の隙間に生える苔のように。
生きること自体が答えなのだ。

知恵

ドリアス

これ以上語る必要はない。血族の根からすでに、あなたの目的は知られている。
ケファレが人間を創る前から、ドリアスは世界中に広がっていた。
無知なあなたたちとは違い、我々の理性は大地に根付いている。
知恵は雨露のように流れ、たとえ枯れても新たな種によって受け継がれる。
我々はまだ覚えている。
葉っぱを伸ばし、自我を見極める方法をサーシスが教えてくれたことを。
通りすがりの学者たちが我々からの詰問に黙り込み、
樹庭の最初の賢者が、我々の囁きを聞いて閃いたこともある。
あの神殺しの旅について、我々の答えを知りたいというなら、耳を傾けるがいい。
花びらは土に落ち、死は新らたなる命を生み出す。失敗は、必ずしも終わりを意味するものではない。

砂粒の記録官

私の従兄弟タイタニスは、砂時計を見守る記録官の一人だ。
歳月の指先を一振りすると、川に流れる時は動きだす。
大地は人々に寄り添い、静かに千年の時を背負う。
彼らは川辺から採ってきた砂粒を砂時計に入れた。
砂が落ちる始める時、受け継いできた歴史も解き放たれる。
この一粒はかつてアカトゥスの短剣だった。戦争の渦に吸い込まれ、
ステュクスの侵食を受け、水の中で百年も彷徨っていた。
もう一粒はかつてエプスの石像だった。紛争の最中に深淵に落ち、戯れる奇獣たちによってここまで流れ着いた。
大地と歳月から降り注いだ祝福が、一粒一粒の過去を読み取る。
彼らはオンパロスの物語を読む者が存在する限り、この世界が滅びる日は来ないと強く信じている。

蓮食学派

やあ、吟遊詩人さん。私たちに加わる気はないかい?
かってサーシスは聖樹の姿でこの世に現れ、根と果実の間に知恵を深く隠した。
何が薬で、何が毒か。知恵を持つ者のみが区別できた。
神は甘味で人を誘惑した。必要なものだが、すぎると腐食に繋がる。
故に、神は苦味で人を試した。真理に触れるには、
均衡を保ち、食欲を捨てるしかない。
平淡な三食は退屈で苦痛だが、これで健康な身体を保てる。
欲のまま飲み過きると、一時の快楽が、一生の害をもたらす。それは自然の理に反する。
畑にある植物は太陽光と雨露を浴びることでしか成長しない。
人もまた土から芽生えた幼い芽と同じで、過剰に栄養を摂取してしまうと、その根を腐らせてしまうのだ。

螺旋の子

このオンレ爺の無礼を笑わないでくれ。どうしても仕事から手が離せないんだ。
私たちは空と太陽を基準に鋼鉄の鳥を鋳造した。
螺旋工房がまた燃やされていない頃、サークは一年中春のように暖かかった。
手掛けた創造物は、天空の司祭の都市国家も匹敵するほどの完成度で、
私たちが出したレシピを一目見ようと、
結縄学派も遠くから訪ねてきた。
破滅が訪れ、暗くなっていく空と同じように、オンパロスも活気を失いつつある。
それでも螺旋の末裔は、重い荷物を背負いながらまだこの大地を渡り歩いている。
荒れ果てた都市国家を巡り、壊れた機械を修理し、
失われた技術、知識、思想を復活させるために。
この世はかつて、我が主の光によって照らされていた、
そして私たちは必す、理性と知恵の光を取り戻して見せる。

戦争学者

モルトダラスという学者は、我ら結縄学派の誇りであり、恥でもある。
誇るべきは、彼の身体に黄金の血が流れていることだ。
彼の奇想天外なアイデアは、数百年経った今も、皆にインスピレーションを与え続けている。
彼の手に渡れば、鉄と縄は歩く機械へと変身し、
彼のおかげで、工学教科書の厚さは倍になった。
恥すべきは、彼が発明品を社会のために使おうとせず、
黄金戦争に参加したことだ。
サーシスの知恵はニカドリーの槍となり、
彼の創造によって崩れた都市国家は数知れない。
彼自身もまた、自らの発明と共に灰となった。
今となっては、あの難解な手稿からでしか、
彼の異才と野心を垣間見ることができなくなってしまった。

禁断の知識の殉道者

神悟の樹庭の外には、認められていない学者たちがいることを知っているだろうか?
彼らは既存の知識を伝承することには全く興味を持たず、
未知の領域にしか関心を持たない。
知識を求むことを苦難の旅と見なしている。
いばらに覆われた一本橋を進み続けるような、
絶え間ない苦痛に苛まれ、油断すると落ちて粉々に砕ける旅にだ。
黄金の血の秘密も、タイタンの存在も、
誰もが恐れる暗黒の潮さえも、
彼らが求める知識の範疇に入る。
これらの行動は神に対する冒涜でもあった。
ほとんどの学者は、研究に進展があると遭難したり、
タイタンの信者に狩り殺されるか、妙な事故で命を落とすかの神罰を受けた。
それでも彼らは飛んで火に入る夏の虫さながら、永遠に答えのない問題に向かって進み続けるのだ。

赤陶学派

そういった誤った考えは捨てるのだ、愚かな弟子たちよ。
サーシスは凡人の心に知性の種を蒔いたというのに、
君たちは脳内でその実を収穫しようとしている。
手に持っている実験器具を下ろすのだ、哀れな弟子たちよ。
私たちはすでに神から五感を与えられている、
真相を見極めるのに、なぜそれ以外の物に頼ろうとする?
他の学派は、知識を発見するための理論と方法しか教えてくれない。
だが赤陶学派は違う。すべての知識はすでに君たちの記憶の海に存在しているからだ。
君たちはそこから必要なものを拾うだけでいい。
観察、推論、ロジックを捨てて、
心で感じ、聞き、想像せよ。
物質という名の偽装を世界から剥がし、
万物を真の姿に戻すのだ。

山羊学派

待て!――ヘリオディカスか?丁度いいところに来た。
ボーっとしてないで、あのキメラを捕まえるのを手伝ってくれ。
普段は大人しいのに、蓮食学派が送ってきたお菓子を食べてから、
ずっと騒いでるんだ。
おっと、爪には十分気を付けろ。小さいけど、
鋭さはラードーン人の矛以上だ。
あと言い忘れていたが、キメラのしっぽには微量の毒がある。
足でもやられてみろ、その傷口から痺れが広がって数日間麻痺することになるぞ。
こいつをここまで育て上げるのには骨がおれたよ。
木の傍で見守っている時なんかは、心の中でサーシスの名前をなん千回も唱えた。
一つの命をここまで育成できたんだ。やっぱり俺は戦争なんかより、樹庭にいたほうが向いてるかもしれないな。
って、おい!話を聞きに来たんだろ?どこに行くんだ?

人形使い

君もショーを見に来たのか?残念だが、人形使いはもう行ってしまったよ。
あの不思議な男は、片手が木と鉄でできていた。
しかも残存している上腕は傷跡だらけ。
彼は神から授かった壺を使って泥水を清泉に変えれることができたし、
空に浮かぶ木の鳥に載って飛び回ることもできる。
そして数ある謎の中でも一番凄いのは、彼と共に旅する2人の人形だ。
片方はローブを纏い、もう片方は宝剣を握っていた。
2人の人形は自分のことを宮廷の魔法使いと騎士と称した。
壊れた水車と楽器を一瞬で修理し、老人の病をも治した。
それも硬貨を一枚も受け取らすに。
当の彼はステージの下で私と一緒に座り、自分の人形には目もくれず、
ただ笑う子供たちを見守り続けた。ひとしきり見た後、木の鳥に乗って去っていったよ。

「理性」の神跡

石板に刻まれた知恵の言葉、「分裂する枝」サーシスの神跡。
エドゥリアに常人を超える知恵を持って生まれた少女がいた。
百年もの難題をすべて解決し、
自分を悩ませる問題が一切なくなった少女は、
傲慢にも聖樹にいるサーシスに出題を要求した。
「タイタンが出した難題も解ければ、私はきっと――」
この世の知識をすべて網羅したと自負する少女は、
自分は神より賢い存在だと証明したかった。
サーシスは彼女に質問をした。「オンパロスの外には何がある?」
少女は呆然と立ち尽くし、三日三晩考えても答えられなかった。
果たして答えはなんだったのだろうか?
神は微笑みながら枝を揺らし、自分もその答えは知らないと認めた。
己の愚かさを認めるところが、サーシスの知恵が少女に勝る証となった。

結縄学派

「万物は一本の縄につながれている」というオンパロスの有名なことわざを聞いたことがあるだろう。
しかし、それが結縄学派から生まれた言葉だと知る人は少ない。
計算用紙の海に沈んでいる数学者たちが、理想主義者の集まりだったとは驚きだ。
万物の本質は数字の集まりであると提唱した。
そして、私たちがアリと違っているのは、ただ数字の並び方が異なっているだけだというのだ。
それは縄の結び目の位置や結び方が違っているようなものにすぎないそうだ。
その説にしたがえば、私たちはアリと同じであり、タイタンは私たちと同じということになる。
だが私は納得がいかない。万物が数字でできているとするならば、
あの数学者たちはなぜパンを食べ、蜂蜜水を飲むのだろうか?
自分たちの計算用紙を食べればいいのではないだろうか?

天慧の巨樹

南の「黙考の森」へ行ったことがあるだろうか?そこにはかつて神樹があった。
その木は人類をはるかに超える知性を持ち、無数の信者がいた。
さらにその木は「自分はサーシスよりも多くを知っている」とすら豪語していた。
それが神悟の樹庭の不興を買ったが、弁論に訪れた賢者は誰一人かなわなかった。
神樹は青々とした葉を揺らし、得意満面だった。
自らを地上で最も賢い生物であり、天上の知識すら理解できると考えていた。
太い枝を天空に伸ばし、無限に長い影を大地に落としたのだが、
最も高い黒雲を貫いた瞬間、雷が神樹を真っ二つにした。
その静かな森は、今では炎と灰しか残っていない。
もしわずかばかりでも知恵を得たければ、燃え残った枝を探しにいくといい。

奇妙な呪文

詩人たちの間で、このような噂が広がっていた――
学者が遺跡から1巻の羊皮紙を掘り出した。
そこには1行の古い呪文が記されていた。
その呪文は世の中のどんな人をも殺せるが、
まずは代価を支払わねばならなかったという。
謀反を企む野心家がその呪文を唱え、
皇帝を呪い殺そうとした。
翌日、召使いが扉を開けると、
呪文を唱えた者の亡骸が横たわっていた。
通りで物乞いが呪文を唱え、
奴隷主の罪を罰してほしいと願った。
チリンチリンチリンチリン……
その悪人は一瞬で息絶え、
代価はただの銅貨3枚だった。
「この呪文には善悪を見分ける魔力でもあったのか?」
人々は大きな声で語り合い、ため息をついた。
もしこの呪文が本当に存在するのなら、
どうしてこの世にはこれほどの不義が残っているのだろうか。

抗議泥棒

「教室は学者だけのものではない!」
神悟の樹庭で、一部の学生たちの頭にふと奇想天外なアイデアが浮かんだ。
彼らは講義資料を密かに印刷し、教室の外へと持ち出した。
印刷できないものは手書きで写し、無料で配布した。
貧しい人々やホームレスの子供、字の読めない老婦人たちにまで講義を届けた。
日が暮れると、学生たちは受講者たちと集まり、
その日学んだことを語り合い、知識の枝を伸ばしていった。
大胆な学生たちは、部外者を直接教室へ連れてきた。
奇獣や盆栽、窓際の彫像に化けさせたのだ。
教授が教室で講義する傍らで、多くの人々が教室の外で「受講」していた。
このような茶番に対し、教授たちは暗黙の了解を持っていた。
「蒙昧な愚者を啓蒙するのは、元より賢人の天職である」

無私の亀

伝説によると、遥か昔の黄金紀では、巨大な亀が世界を歩き回っていた。
それもまた大地の創造物であり、大地獣よりもさらに巨大だった。
昼と夜がそれに祝福を与え、太陽の光と月の光がその甲羅に模様を刻んだ。
人々はその傍らに都市国家を築き、その口から出た箴言に耳を傾け、その知恵を分かち合った。
巨大な亀が語る物語は年輪よりも古く、あの大地を揺るがす竜でさえ、深く魅了されていた。
それは人々に土を耕すこと、鉱物を見分けること、太陽と月と星々の軌跡を観察することを教えた……
日々が過ぎ、年月が流れ、ある日、人々はその身体が岩石に変わっているのを発見した。
すべての知識を捧げたその亀は、ただその理念だけを遺したのだ。
やがて、その背中から森が生まれ、
今日まで、青々と茂り続けている。

調和

火を追う使者

足のない鳥たちの話をしよう、射抜かれても死なない戦場の鷹の話だ。
空を引き裂く英雄と、神託を下す半神は情報を伝達してゆく。
止められない災厄が迫りくること、天地を再度切り拓く勇気を。
古の使者は、女皇ケリュドラの名のもと、ヤーヌスの門をくぐり、
ラードーン、ハンタック……すべての都市国家を訪れた。
バラバラになった大地を繋き、火を追う旅を報告するために。
そして、愚かな国王に首を切られるまで。
古の使者はアカトゥス、カディル……すべての戦場に赴いた。
英雄たちに武器をを与え、賢者たちに情報を届けるために。
最後の神が殺されるまで、我々の血が流れ尽きるまで。

黎明劇団

あの輝かしい劇団を、まだ覚えているだろうか?
脚本家アイスキュロスが書いた悲喜を。
劇団の中でも一番戦士に近い彼らは、いつも紛争の炎の中で歌い続けた。
戦士の中でも一番司祭に近い彼らは、オクへイマの頂や世界を照らす黎明を讃えた。
「英雄コリントスは短剣で栄誉を守り、」
「エイクスの戦車は僭主を潰し、勝利を迎える。」
彼らの歌声で、ばらばらだった市民たちは集まり、災厄に向かって武器を掲げた。
ドロスの泥棒まで足を止め、
廃墟へ向かい、勇敢な英雄のように命を救った。
世界一の劇団はとっくに凋落してしまったが、私は今でも彼らの夢を見る。
ケファレの仮面を被り、天地を背負う神を演じる、彼らの姿を。

迷走する隠者

笑い話を一つ聞かせよう。可笑しな愚者、運命を分かつカスターネについてだ。
明眸を持つ祝福を授かりし者は、己の運命の糸を縄により合わせた。
方向を導く糸玉は、紛争の迷宮の中で転がり、
片方は微かな生の光を指し、もう片方は暗黒の潮で彷徨う者に結び付けられた。
それは切れても再び繋ぎなおされる糸だった、まるで死地に置かれても生き返るかのように。
しかしタレンタムはとっくに生と死を天秤にかけていた。
一度決まれば変えることはできない女皇の命令だ。
一本の糸が切れるたびに、一つ道と選択が持って行かれてしまう。
盲目な導きが、迷路への糸だけ紡いでいき、いつしか死と迷いだけが残ることになる。
こんなことに、なんの意味があるかわからない。だが、あなたが、その101人目なのだ。

反響の庭

久しぶり。でもあなたにとっては、初対面になるかな。
私たちは大地を渡り歩き、ホラガイで見聞を記録しているものだ。
時間に余裕がある時は、他の人に代わって反響をレコードしたりしている。
過き去った歳月は、全てオロニクスの寝言に残っているんだ。
誰かのホラガイを受け取るということは、すなわち、その人の過去を受け取ることになる。
時代の幕引きを見届けることはできなかったが、
あの老婆からホラガイ受け取った時、その反響は耳元で鳴り響いていた。
私は私ではなく、ただの物語を運ぶ媒体に過きない。
次の仲間とこの腰にかけたホラガイを交換すると、私は新たな自分になる。
誰もが私になれて、私は誰にでもなれるんだ。
次、私と会うことがあれば、あなたはきっとまた驚くだろう。

博愛会社

万物を愛する博愛の信者たちの話をしよう。
ヤーヌスが開拓した道を一つも取りこぼさすに歩む彼らは、
タイタンの身体から蟻の触角まで、すべてのものに愛情を注いだ。
クレムノスの戦士たちの冷たい顔にさえ熱いキス跡を残した。
「この世に理由のない愛など存在しない」と牽石学派の学者は言うが、
彼ら曰く、人は群れを成す金の蝶で、愛することは本能だと言う。
しかし「博愛」というのは、ごく短い間しか存在し得ないエピソードに過きない。
紛争の炎が燃え上がる時、「征服」が永遠のテーマに成り代わる。
柔らかい唇が冷たい刃に勝てるはずなどないのだ。
それでも彼らは笑みを浮かべていた。
既にこの世のすべてを愛してきたのだから、今度はタナトスの手にでもキスしに行くべきだろうと。

死を共にする者

身を寄せ合って暖を取るしか能のない臆病者たちの話をしよう。私は彼らを心底軽蔑している。
人は人生の中で無数の扉を開く、そしてどの扉の先にも未知なる景色が待っている。
ただ、最後に開ける扉の向こうだけは決まっていて、そこには炎と灰燼が待っている。
腐臭漂う扉に近づくのが怖くても、背後から誰かに押されて嫌でも入ることになる。
必死に冷静を装っても、この恐怖は抑えきれない。
古来より人々を悩ませてきたこの難題を前に、臆病ものどもは集まった
やつらは喪服を身に纏い、街中の人たちを仰々しく説得し続けた。手を取って一緒に進もうと。
どこに進むかって?ふん、盛大な葬儀にだ。
死の扉に向かって、大勢の人が手を繋きながら駆けていく姿は実に滑稽だった。
一人であろうが百万の衆であろうが関係ないのだ、皆、タナトスの手に軽く触れられて終わるというのに。

枯れる病人

あなたが健康でいて本当によかった。そしてこれからも悪病に見舞われることがないように願う。
もし枯れ木が生えた可哀想な人たちを見たら、決して迂闊に近づいてはいけない。
それは、今レアフォースで猛威を振るっている「枯死の呪い」という怪病だ。
サーシスからの啓示だの、
タナトスの神跡だのと億測は飛び交っているが、
病人たちからはマントラを唱える気配も、生気がなくなる様子も見て取れない。
まるで、枯れ木の森でも作ろうとしているかのように互いに身を寄せあうだけだ。
彼らが発する声は林に吹く風の音のように聞こえ、誰一人病人たちの囁きを理解できなかった。
好奇心旺盛なあなたは、枯れてしまった人生に何の意味があると疑問を抱くだろうが、
よく考えてみれば、我々の命だってゆっくりと枯れゆくものだとは思わないか?

火追い同盟

火追いの暴徒たちが「英雄」だと?馬鹿馬鹿しい。
狂った女皇が、幻想のために救世の名目を掲げるのを見た狂人たちが、
神権と栄誉欲しさに押し寄せてきただけだ。結果、現状はさらに悪化した。
黄金の繭の翼を引き裂いて、この醜い世界は美しくなったか?
堅磐の脊髄の火種が奪われたがために、どれほどの命が崩れ去る大地に呑み込まれた?
火追いがもたらした災害は、黄金戦争よりも酷い。
お前たちが犯した罪は、ニカドリーやザグレウスよりもすっと重いのだ!
ヘリオティカス、お前に聞く。その目が見えなくなったのはなぜだ?
俺の娘、そしてこの町全ての父親、母親と子供……
帰らぬ人たちを前にして、お前はまだその賛歌を歌えるか!

怠惰な指

あなたのような博識な人でも、腐りきったカルスコには行ったことがないだろう。
そこの人たちは、四六時中寝床に横になっていて、指だけが器用なんだ。
人差し指を動かすと、果物が窓からベッドに転がり、
右手で叩くと、「賊の手」が外からメーレを運んでくれる。
果物は山の果実園から、
そしてメーレは隣人の酒蔵から盗んできたモノだ。
カルスコにある井戸はザグレウスの恩恵を受けていて、永遠に枯れることはない。
そこからはネクタールと小麦が絶えることなく湧き出している。
この世で一番の大ほら吹き野郎でさえ言うのをためらうような嘘みたいだろう?
盗みを働くだけで、家から一歩も出すに生活が保障されるとは、
なんという幸せ!
カルスコではそんな堕落した空気の中で日々を過ごすんだ。
死ぬ時でさえ、指をチョイと動かすくらいの手間しか掛からないからな。

「門と道」の神跡

石板に刻まれた調和の喜び、「万路の門」ヤーヌスの神跡。
災厄がまだ蔓延していなかった時代、
ヤヌサポリスでは祭典が行われていた。
神は運命の糸を広げ、道行く者に同じ交差点を描く。
かつて人々を迷わせた森から、岩に隔てられた小道まで、
聖地への道は悉く開かれる。
そしてヤーヌスはすべての扉を軽く叩き、祝福を下すことで、
扉に入る全ての巡礼者を、一つの目的地へと導く。
司祭たちの吟唱により宴は開幕し、
俗世を渡り歩いてきた冒険者たちは盃を掲げ、
各都市国家の使者と国王が一堂に集い、新しい一年の始まりを祝い合う。
悩みや争いを捨て、同じ祈言を歌おうではないか!

足のない鉄鳩

エーグルの千の目がまだ閉じられていない頃、
世界には鉄でできた鳥がいた。
それらは天空の民の創造物で、
精鋼で鍛えられた体を持ちながら、足がなく、ただ一日中飛び続けるしかなかった。
――戦争のために生まれた武器だから、当然地上に降りることは許されなかった。
足のない鉄鳩を操り、天空の民は空を征服し、
その後、彼らは互いに矛先を向けるようになった。
鉄鳩たちは輝きの民と雨の民に分かれ、
仇敵のように互いに突撃し、つつき合い、
鉄の雨のように、次々と空から墜落した。
大地に触れた時、足のない鳥たちは初めて休むことができ、
初めて草の香りを嗅ぐことができた。

エイトロの門

門を守る者もいれば、門そのものになる者もいる。
紛争の軍勢がヤーヌスの門を踏み破り、炎で神殿を焼き尽くした時、
アークトゥルスはそこにいなかった。
勇士として、彼は仲間を守れなかった。司祭として、彼は冒涜を止められなかった。
だが敗者として、まだ復讐の機会は残されていた。
聖都の連合軍が紛争討伐に向かった時、彼は自ら軍に志願した。
ヤーヌスの斧の力を借りて、彼は自らの体で百界門を開き、復讐の大軍を通した。
千里の道のりは一瞬で踏破され、兵たちは天から舞い降りた神兵のごとく、敵将を討ち取った。
エイトロの門は最後まで堂々と立ち続け、人々のために道を開き続けていた。
新たな紛争によって壊滅するその時まで。

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