再会の時
やっと手紙に書いてあった荘園に到着した。
広い荘園の中で、比較的損傷の少ない屋敷に
とりあえず腰を落ち着ける事ができた。
最初は、全てが私の予想以上に上手く行っていた。
あの欠落した日記は、狂気的なゲームを記録していた……
第六幕「行き止まり」
- 01:密室
日記に対する解析を進めると、オルフェウスは日記の記録が連続的ではないことに気づいた。
つまり可能性は2つ、全ての事柄が記録されていないか、ここに保管されている日記が一部だけかだ。
オルフェウスは他に日記はないか探すため、リビングを更に調べることにした。
すると、古びた絨毯の下に何かあることに気づいたーー床下が空洞になっているようだ。
彼は絨毯をめくり、コンコンと床を叩いてみると、石板が移動する音と共に入口が彼の前に現れた。
閉ざされた地下室が隠された秘密と共に、今開かれた。
オルフェウスはランプを持って地下室のはしごを降りていった。
真っ暗な地下室は長年密室だったせいか、生臭い匂いが鼻をついた。
暗がりから鼠がそんな押しかけ客を観察していた。
真っ暗だったため、オルフェウスはうっかり瓶を踏み割ってしまった。
割れた瓶には不思議な三角形のラベルが貼ってあった。
暗い地下室には薬剤棚が置かれ、様々な実験器具、緊急手術台、手術道具があった。
手術台の傍には色褪せた背もたれ付きの肘掛け椅子があり、拘束ベルトが椅子に置かれている。
端の方にカビが生えており、使用されたのはかなり前だと思われる。
そして、乾いた血の跡が消えない印となって残っていた。
ここでは何らかの実験が行われていたようだ。
疑問を抱いたまま、オルフェウスは薬剤棚から調査を始めることにした。
彼が薬剤棚を開けようとした時、背後を白い人影が横切った気がした。
「誰だ!誰がそこにいる!?」旧ストーリー
全ての物語は、1通の招待状から始まる。
心から望むものを与えると約束することで、参加者が集められた。
彼らを待ち受けているのがどんな「ゲーム」かも知らず。
「ゲーム」の勝者は全ての願いを叶える聖杯のような「秘宝」を手に入れることができる。
しかし、失敗した者の末路については誰も考えない。
人間の欲深さを予見していたのか、開催者は秩序の維持という名目でルール違反者を罰する「ハンター」たちを派遣した。
「ゲーム」が始まる前に「事前に終わる」ことを防ぐんだ。
このハンターたちは強く、残酷だ。人々は彼らの容姿を見ただけで震えあがる。
「ゲーム」の参加者たちは最終的に自分たちが最初から籠の鳥であったことに気付いた。
所謂「ゲーム」も、開催者1人にとってのもの。そこには狂気しかなかった。
異様な狂気に満ちた記録は、嘘と妄言だらけだった。
だがそれはともかく、その背後に隠された真相は不安を募らせるものだ。
文字が全て真実でないなら、嘘の中から真相を察することこそが探偵のすべきこと。
例えばあの少女だ。
彼女もこのゲームに参加したのだろうか?
しかしただの少女に、こんな「狂宴」に参加する理由が本当にあったのか?
そしてこの日記だ。
彼らの記録は連続したものではない。
全ての物事に記録する必要がないからなのか?
それとも、ここに保管されている日記も一部でしかないのか?探偵:もっとこの部屋を詳しく調べる必要がある。
探偵:待て、この床の音が少し変だ。
探偵:もっと早くこうするべきだった。
探偵:ここは密室のようだ。
探偵:え?う……
探偵:これらの器具は……
探偵:そして緊急手術台……
探偵:ここでは何かの実験が行われているようだ。
探偵:拘束ベルトは長い間使用されたようだ。血の跡もあるが、もう乾いている。
探偵:薬剤棚のようだ。
探偵:誰だ?誰がそこにいる!?
探偵:彼女か!?
- 02:少女
白い人影はリビングに向かって駆けていった。
それを追い、オルフェウスがはしごまでたどり着くと、ようやくそれがおぼろげな小さい後ろ姿であることに気付いた。
まさか……彼女!?ライヘンバッハ夫婦の娘か?
オルフェウスがリビングに戻った時、その人影はすでに消えていた。
彼女を探そうとしたが、扉には外から鍵がかけられていた。
全力で体当たりしてもその扉は開かなかった。
この状況に、彼は少女が彼を避けており、何者かがあの少女に手を貸しているのではと考えた。
しかしすぐに、彼女にそうする理由はないはずだと考え直したーー
「まさか私のことを別の誰かと間違えたのか?あるいは、あの密室が彼女に恐怖を与えたのか?」
「それとも……彼女は家族と会いたくないのか?」
「彼女に手を貸しているのは誰だ?」
そんな疑問がオルフェウスの頭の中で渦巻いた。
だがそんな時に限って、長年睡眠不足に悩まされていたはずの彼が、なぜか突然眠気を覚えた。
疲労感を覚えた彼は椅子に座り直し、休憩を取ることにした。
悪夢は雨の音と共に、ゆっくりと訪れた。
夢の中で、記憶の欠片は再び彼を襲った。
果てのない暗闇の中で懸命に走る少女、全てを呑み込む炎、炎の中で抱き合う少女と成人女性。
その全てを目撃したオルフェウスの心は、なぜか恐怖と悲しみでいっぱいになった。
オルフェウスははっと意識を取り戻した。
あの少女が夢に出てくるのは初めてではない。
眠れない夜の悪夢の中で、彼は何度も彼女の姿を見て居た。
だが今日に至るまで、彼は自身を苦しめる夢境の欠片を全て集められてはいない。
オルフェウスは上着を脱ぎ、長く息を吐いた。
「私は一体何を忘れているのだろう?
彼はライヘンバッハさんの娘の写真を取り出した。
写真に写るポニーテールの少女が、少しずつ悪夢の中の少女と重なっていくーー
「君も、私の新しい悪夢になるのか?」旧ストーリー
探偵:待て!彼女はどうして逃げるんだ
探偵:君の父親からの依頼がある!
探偵:内側から鍵をかけられた!
探偵:私は君の父親の友人で、君を探しに来た!扉を開けろ!ああ!
探偵:きっと他の誰かが手を貸している。
探偵:おかしい……
探偵:彼女はきっと私のことを別の誰かだと思ったのだろう。あの密室が彼女に恐怖を与えたのか?
探偵:それとも……彼女は家族と会いたくないのか?
探偵:そして、彼女に手を貸しているのは誰だ?
探偵:(長年睡眠不足に悩まされていたはずの私が、突然眠気を覚えた)
探偵:これはあまりにもおかしい。
探偵:だが今は……少し疲れた……休憩が必要かもしれない……
探偵:私が忘れているものは、一体なんだ?
探偵:君も、私の新しい悪夢になるのか? - 03:悪夢
呆然としたオルフェウスの指先から写真が滑り落ち、彼が腰をかがめてそれを拾おうとした時、外の雨が止んでいることに気づいた。
歯車が動く小さな音と共にリビングの扉が開かれ、オルフェウスは部屋から飛び出し、明るい廊下に足を踏み入れた。
廊下の先で、あの悪夢の中の少女が遠くから彼を見つめていた。
オルフェウスは走りだしたが、どうしても少女に追いつけない。
彼の耳元では誰かの話し声が響いていた。
「彼らはまた林に遊びに行ったのかもしれない……」
「あれはプレゼントかな?あれは……」
「あれは鍵だ!」
「面白い……」
「町から来た人?」
「……それはまるで……」
「ナイチンゲールの鳴き声……」
「ベインとバルクに知らせるべきかもしれない……」
その馴染み深くも全く知らない声と、記憶の奥底に散らばる名前に、オルフェウスは更に混乱した。
疲れ果てたオルフェウスは、息を切らしながら足を止めた。
振り返ってみると、すでに廊下の入口は見えない。前を向いても、少女との距離は縮まらない。
呆然とする中、恐怖と絶望が真っ黒い獣のように彼を襲い、全てを呑み込み始めた。
切羽詰まったオルフェウスの右手が勝手に痙攣を始め、強烈な痛みが彼を襲ったーー
右腕に見覚えのある筆跡が浮かび上がった。
今回書かれたのは血肉に刻まれた真っ赤な文字ーー「目を覚ませ!」旧ストーリー
探偵:待て、雨が止んだのか?
探偵:私はどれくらい寝ていた?
探偵:扉が開いている!?
「彼を見なかった?」
「彼らはまた林に遊びに行ったのかもしれない。」
「あれはプレゼントかな?あの笛。」
「あれは鍵だ。」
「面白い。」
「それはまるで…まるで?」
「ナイチンゲールの鳴き声に似ている。」
「彼の母親はまた体調を崩したようだ。」
「彼らに手を貸してあげられるかも。」
「可哀想な子……」
「彼らは林の中で見知らぬ人物(途切れている)」
「街から来た人だろうか?」
「いや……そうは見えない。」
「あの流民たち……少し心配だ。」
「もしかすると……ベインとバルクに知らせるべきかもしれない。」
第七幕「恐ろしい真相」
- 01:真実
暗闇の後、オルフェウスは再び目を覚ました。
うっすらと聞こえる雨音、閉ざされた部屋の扉。
これまでの全ては夢の中の夢、全て偽りで、腕に刻まれた 「彼」からの忠告だけが本物だった。
だが夢境の中で見た記憶の欠片と、それによって生まれた恐怖を通して、オルフェウスはあることに気付いた。
オルフェウスの推理は、日記が全て真実であるという前提の上に成り立っていた。
記録者は確かに自分が見た真実を「偽りなく」記録したのかもしれない。
だがこの前提が成立しても、1つ見逃していた可能性がある。
真相を記したと思い込んでいた記録者たちは、とうに歪められた現実を見ていたかもしれないというものだ。
この仮説が成立するなら、ゲーム主催者は何らかの媒介を通して記録者に十分真実味がある幻覚を見せ、記録者の観察や判断に干渉する必要がある。
そんな幻覚を作り出すのに最も適しているのは、何らかの薬物だろう。
あの薄暗い地下室に丁度薬物を保管して置ける薬剤棚があった。旧ストーリー
探偵:はっ……(飛び起きる)
探偵:また夢か。
探偵:もしかすると、これがあの謎の答えかもしれない。
wake up(目を覚ませ)
ずっと、すべての推理には前提があったーー
日記は偽造されたものではないと。
筆跡、言葉、汚れまでもが全てそれらの信頼性を示していた。
だが、ハンターたちの奇特な身分、そして彼らの不思議な能力は私の「真実」に対する理解を試している。
調査を進めるために、私はやむを得ず「受け入れる」前提で解読を進めることにした。
しかし、これらの矛盾は変わらず無意識のうちに私の胸につっかえていた。
だが今、この矛盾は最も肝心な手掛かりとなるかもしれない。
あの悪夢は私が見落としていた真相を示してくれたーー
「人は悪夢のせいで恐怖を感じるのではなく、その逆。恐怖が恐ろしい夢を生むのだ。」
そして理解できない物事に対しては、自分なりに理解できる原因を与えること。
これは人類が自らを守るための仕組みであり、すべての神話の根源でもある。
あの悪夢が示したのは、私が無意識のうちに少女に抱いていた困惑と、真相に対する恐怖だった。
そして日記はーー
記録は誇張も曲解もされておらず、彼らは確かに「事実通り」自分が見たすべてを記録したのだ。
しかし、真相を記したと思っていた記録者たちが見たのは、歪められた現実だったのだ。
正確には、何かによって幻覚が作られ、彼らの観察と判断を狂わせた。
例えば……探偵:あの薬剤棚をもう1度見てみよう。
- 02:薬剤リスト
オルフェウスは地下室に戻った。
今回の目的は明確だ。あの薬剤棚に彼が求めている答えがある。
彼はランプを床に置き、棚の上にある蝋燭に火をともした。
そして棚の扉を開けると、予想通り、そこにはたくさんの薬剤瓶が保管されており、一部欠けた薬剤リストが棚の扉に貼られていた。
薬剤リストには薬剤棚に保管されている薬物について記録されていた。
水銀、ベラドンナなどの麻酔や幻覚作用のある薬物が多い。
だが自身の薬物学の知識から、普通の薬剤で日記に記録されているような理想的な幻覚を見せるには不十分であるとオルフェウスは理解していた。
幻覚の製造媒介は、薬剤リストで名前が記録されていない最後の4種類の薬物が鍵となるはずだ。
そして薬剤棚には、その内3種類のストックがあった。 - 03:試薬
薬剤リストの4種類の薬物記録の内、最初の3種類に関する説明は曖昧で、最後の1種類は炎に燃やされてしまっていて判別できない。
その薬効を確かめるための試験者が必要だ。
地下室の「チュウ」という鳴き声を聞き、オルフェウスは閃いた。
オルフェウスは密室にいた鼠を使って実験を行うことにした。
最初の瓶は強力な眠り薬のようで、ごく僅かな量だけで昏睡状態に陥る。
セイレーンの歌と記された2本目の瓶はその名の通り、摂取した鼠がまるでセイレーンの恐怖の夢に陥った船乗りのように見えた。
「これが幻覚の原因に見える」オルフェウスはそう推測した。
しかし鼠の実験は、3本目で問題に遭遇した。
「調整の必要あり」と記されたその薬剤を摂取した鼠は何事もなかったようにしており、オルフェウスが薬の匂いを嗅いでみても、特に異常は感じられなかった。
調査は停滞してしまった。
だがしばらくすると、彼は薬剤棚の蝋燭が燃える速度がおかしいことに気付いた。
気付けば薬剤を飲んだ鼠は何度も同じ場所を行き来しており、左腕には「何が起こったのか忘れたなら、お前はもう答えにたどり着いている」というメッセージが記されていた。
それは「彼」の筆跡ではなく、オルフェウス自身のものだった。
こんなものを書いた覚えはなかったが、彼はすぐにその意味を理解した:3本目の薬剤の作用はーー記憶の消去だ。旧ストーリー
探偵:「過料負荷、昏睡」……
探偵:記録の符号はまるで七弦琴のようだ。
探偵:どうやら、少量だけで人を動けなくさせることができるらしい。
探偵:記録では、これをセイレーンの歌と呼んでいる。
探偵:幻覚の要因のように聞こえるな。
探偵:まるで海の妖怪に恐怖の夢を見せられた船乗りだ。
探偵:何も起こらない。
探偵:この瓶にはどんな意味がある?探偵:(3回目の使用)何も起こらない。
if you forget this you got it(何が起こったのか忘れたなら、お前はもう答えにたどり着いている)
探偵:記憶だ。
探偵:ここの主人は記憶を消すことができたんだ。
探偵:これは意外な収穫だ。
第八幕「記憶の真相」
- 01:質問
薬剤棚にあった3本の薬剤は、謎に包まれた狂宴ゲームの全貌を少し露にした。
昏睡、恐怖と幻視、記憶消去。
正に、このゲームを長期的に行うための保証となるものではないか?
ここで何があったか覚えている者はいない。
どんな陰謀もなかったことになるーーあの日記を除いて。
オルフェウスは、あれらの日記が正にこの完璧な論理の中で最も矛盾する部分であることに気づいた。
参加者の記憶を消去する以上、なぜ彼らに日記を書かせたのか?
もしかしたら、日記を書かせた目的はゲームのためではないのかもしれない。
参加者も日記も、ゲームそのものすらも、全てこれらの薬剤の実験のために存在していたのかもしれない。
だから実験対象へ与えた薬剤の作用を記録する必要があった。
そこまで考え、オルフェウスは疑いを抱き始めた。
記憶喪失に陥った自分もこの薬剤の実験対象の1人だったのではないか?
「彼」のメッセージを見る限り、 「彼」は間違いなくオルフェウス以上にこの全てを把握している。
初めて、オルフェウスは自分から「彼」に質問することにした。
これまでの経験上、「彼」はオルフェウスが意識を失ったときに目覚めることが分かっていた。
オルフェウスはリビングの全身鏡に「お前は何を知っている?」というメッセージを残し、リビングの椅子に座って地下室から持ち出した七弦琴を飲んだ。旧ストーリー
長年たくさんの人間を巻き込んできた事件が全く外部に漏れなかったことの説明がつく。
ここで全てが終わった瞬間、当事者の記憶から消えてしまうのだ。
完璧な犯罪となるーー
誰の記憶にも存在しない犯罪だ。
いや、それでは説明がつかない。
本当にその理由で薬剤が作られたなら、あの大量の日記が存在するはずがない。
どこかが間違っているはずだ。
もしかすると、全てが逆だったのか。
私は日記を事件の核心として認識していた。
これほど特殊な、そして不安を煽る内容だったからだ。
……そしてあの手紙も相まって、彼らが失踪した「狂宴」こそが事件の鍵だと考えてしまった。
だが、視点を変えると。
あれらが……日記ではなく、何かの記録だったら?
何かの実験記録だったら。
こここそが全ての起因だったなら。
もしかすると、私の記憶喪失にも関係があるかもしれない。
そして明らかに、「あの人物」は何かを知っている。
記憶を喪失したのは「私」だけの可能性が高い。
探偵:彼に聞いてみるべきかもしれない。
(3本目の薬瓶を持ち去る)探偵:まだこれを使うべきではない。
(2本目の薬瓶を持ち去る)探偵:もう悪夢に囚われたくない。
(1本目の薬瓶を持ち去る)
- 02:答え
オルフェウスが再び目を覚ました時、やはり腕には 「彼」からのメッセージが残されていた:
「記憶より」
意味の分からないメッセージにオルフェウスは怒りを覚えたが、少し冷静になるとふと気付いた。
「記憶」という言葉はオルフェウスの穴だらけの記憶ではなく、記憶に関する何らかのものや場所を示しているのではないか、と。
リビングにあるものと言えば、暖炉の上にかかっているヴィーナスの鏡の油絵、女神たちが見つめている記憶の泉ーー
あのムネーモシュネーが守っている場所にこそ、全ての謎の答えがあるはずだ。旧ストーリー
wake up from the memory(記憶の場所を起こせ)
探偵:「君」、何が言いたい!
探偵:私はいつまで弄ばれなければならない!?
探偵:待て……そうか!
探偵:「彼」が何も言いたくないなら、最初から答える必要はない。
探偵:からかいたいなら、もっと直接的な方法があるはず……
探偵:彼は確かに答えを知っているが、【直接】教えることはできないのだ。
探偵:「彼」は誰かを警戒し、その答えを暗号のように伝えている。
探偵:彼が警戒している相手は分からないが、この言葉は解読に値する:記憶の場所ーー
探偵:記憶そのものを暗示しているようには聞こえない。
探偵:それより……実際に存在する場所のような。
探偵:ここまで遠回りな言い方をしたということは、私がこの場所を知っていると彼が思ったからーー
探偵:つまり私が行ったことがあり、今も覚えている場所だ。
探偵:私は、まだ何かを見落としているようだ。
探偵:そうだ、あの絵。
探偵:記憶、記憶の場所、記憶を保管する場所……
探偵:ギリシャ神話で、それらは全て1つの場所に関係する……
探偵:ムネーモシュネーが守る記憶の泉だ。
探偵:そして日記そのものも記憶の記録であり、具象化された記憶の一種だ。
探偵:つまり日記そのものが記憶。
探偵:だから、ムネーモシュネーが守る場所こそが……
探偵:全ての謎がある場所だ。
第九幕「記憶の哀れみ」
- 01:1本の薬剤
メッセージに対する推理を通して、オルフェウスは本棚の裏板で仕掛けを起動させるスイッチを見つけた。
本棚が再び回転し、本棚と壁の間の隙間を通って、オルフフェウスはその真っ暗な空間に足を踏み入れた。
すると、彼はさらに多くの日記が保管されている秘密の書斎にたどり着いた。
物が乱れたリビングや本館の他の荒れた部屋とは異なり、この秘密の書斎は古びてはいるものの、昔は丁寧に整理されていたのが分かる。
中には大量の日記のほかにも子供用の白いワンピースと、ギリシャ神話でオルフェウスが冥界へエウリュディケを救いに行くシーンが描かれた油絵が1枚あった。
そして書斎のテーブルには、破損のない薬剤リストと最後の薬剤が置かれていたーー記憶再築のヒュドラー。 - 02:一部の記憶
迷った末、記憶の欠片の中でもがくことに痺れを切らしたオルフェウスは、最終的にそのヒュドラーを飲むことにした。
新しい記憶の欠片が溢れ出した。
同時にヒュドラーの作用のもと、今までの記憶の欠片と合わさり、完全な記憶を再構築した。
その記憶の中では、幼い頃の一家虐殺事件や親を亡くした後の漂泊生活が、地位や名声を手に入れた後でもオルフェウスの拭えない悪夢となっていた。
狂宴ゲームの参加者はそれを利用し、手掛かりを餌にオルフェウスを荘園ゲームに誘い出したのだ。
その後に経験したのは他の参加者が日記に記したのと同じ、一層恐ろしい悪夢だったーー
この終わりがない悪夢の中で彼は何度も記憶を消され、何度もゲームに投じられた。
ただ他の参加者とは違い、何度も繰り返される苦痛の中でオルフェウスは苦痛から逃れるために新しい人格を生んでいた。
絶えず生まれ続ける新しい人格は、それぞれが彼らだけのゲームに関する記憶の欠片を持ち、その欠片は3本目の薬剤による記憶消去の効果が効かなかったのだ。
最終的にオルフェウスは死を偽装することでゲームから逃れたが、人格が分裂する前の過去ーー荘園へ来る前の全てを、彼は綺麗さっぱり忘れてしまっていた。
そしてゲームの真相を調べ、失った記憶を取り戻そうとしたオルフェウスは、主催者の支配を逃れた後も荘園を離れず、潜伏して調査を行った。
そして、あの全ての秘密が隠された書斎を見つけたのだ。
しかし主催者はずっとその部屋におり、ゲームの時だけ部屋を離れる。
彼は潜入できる機会を待つ必要があった。
その機会は予想よりも早く訪れた。
ある母娘が新しいゲームに参加した。
彼は彼女たちに奇妙な既視感を覚えていたが、欠けた記憶の中にこの母娘の記憶はなく、最終的にその母親が悲惨な死を遂げた様子を目にし、その娘のゲームが始まる日付をメモしておいた。旧ストーリー
それは全ての始まりであり、全ての終わりでもある。
私はそこで迷い、「彼」はそこに生まれた。
私があの狂ったゲームに参加した時から。
成功したかに関わらず記憶は消され、再びゲームに放り込まれる。
繰り返される記憶喪失によって私の元々の記憶は薄れ、私が誰なのか、どうしてここへ来たのか、
なぜ「彼」がーーあるいは、「彼ら」が生まれたのかを忘れてしまった。
彼らは私の魂を引き裂き、食らい尽くすが
彼らがそれぞれ持つ記憶の欠片のおかげで私はこの荘園と、ゲームの真相に近づけた。
私は薬の言いなりになったふりをしながら、ここの秘密を探った。
ついに、私は七弦琴を見つけた。
そして死を偽装して監視を逃れ、荘園に身を隠すことに成功した。
その後、新しい被害者たちが荘園へやって来た。
私はこの目で罪のない者たちが殺されていく様子を見た。
だが私に彼女たちを救うことはできなかった。
私は耐えるよう努めた。
チャンスは1回限りなのだ。
第十幕「最後のゲーム」
- 01:「彼女」
あの少女のゲームが始まる日、オルフェウスはようやくあの秘密の書斎に潜入する機会を得た。
薄暗い書斎には、壁一面の日記と切り裂かれた写真が1枚あった。
オルフェウスは時間をかけて本棚から自分の日記を見つけた。
日記の記録は、記憶の欠片の中で欠けた部分をーーこの悪魔が始まる前の過去を補ってくれた。
そしてこの日記の最後に、1枚の少女の写真が挟まっていたーーあの母娘の娘だ。
「彼女は一体誰だ?」
オルフェウスは心に疑念が生じた。この日記に現れた以上、きっと彼に深く関わる人物だ。
だが彼は思い出せる限りの情報を探ってもその答えは見つからなかった。
最終的に彼はこの母娘の部屋をもう一度調査することにした。旧ストーリー
探偵(10年前):1枚の写真。豪華な服を着た夫婦、2人の森林保護員、そして1人の顔が良く見えない子供。
探偵(10年前):早く真相を見つけ出さなければ。
かつて、この呪われた荘園は私の楽園だった。
あの年の誕生日、私の幸せが全て途絶えるまでは。
理由もなく両親が死に、私は現実の全てから逃げたくなった。
だが気が付けば、自分は親戚によって孤児院に送り込まれていた。
孤児院の生活で、私は誰も信頼できないことを学んだ。
私は全ての思いを文字に託すことしかできなかった。
あれから長い月日が経ち、当時の事件ファイルの記録は霞み、荘園も何人もの手を渡った……
その後、私が物書きで十分な財と地位を得た時、両親の死因を探すという思いが再び脳裏に浮かんだ。
荘園も何人もの手を渡った後、ある招待状が私宛に届いた。
荘園の主人は手掛かりの提供を条件に、私を荘園のゲームに招待した。
再び呪われた地に足を踏み入れたが、私は自分が何を失うのか知らなかったーー
自由、魂、記憶ーーそしてーー
探偵(10年前):彼女は一体誰だ?
探偵(10年前):彼女と彼女の母親が住んでいたあの部屋に行って調べ直すべきかもしれない。 - 02:もう1冊の日記
オルフェウスはあの母娘の部屋に戻った。
周囲を見回すと、ここに泊まった客が部屋を出る前、荷物を片付けて部屋を開ける準備をしていたようだ。
スーツケースには20代ほどの女性の白いワンピースがあり、机にはあの少女の写真が置いてあった。
写真の少女は彫刻が施された鉄の扉の前に立っていた。
その門は少し見覚えがあり、机にあるカレンダーには少女のゲームが始まる日ーー7月15日ーーつまり今日の日付に丸がついていた。
机には、他にももう1冊の日記と薬剤が1本置かれていた。
その日記では、少女が「オルフィー」を探して荘園に来たことが書かれていた。
何度も何度もゲームを繰り返し、苦しみを乗り越えながらも、彼女は一心に「オルフィー」が帰ってくることを願っていた。
そして日記の最後のページには、破損のない完全な薬剤リストが挟まっており、オルフェウスに対するゲーム主催者の嘲笑の言葉が記されていた。
「その愚かな勇気に褒賞を」。記憶再築のヒュドラーが、丸で囲われていた。
オルフェウスの計画は最初から主催者の手のひらの上だったのだ。
そして今、その全てを操るその人物はオルフェウスに残酷な真相を見せようとしていた。
感情が高まったオルフェウスは、机の上にあったヒュドラーと記された薬剤を思いっき呷った。
今回、オルフェウスはついに「オルフィー」が誰なのか、そしてあの母娘が誰なのかを知ったーー
ずっと、気付かないうちに、彼はその目で家族が地獄へ足を踏み入れる様を見てきたのだ。旧ストーリー
探偵(10年前):あの少女の写真。写真の子供は楽しそうに笑っており、背景はどこか見覚えのある場所だ。
探偵(10年前):カレンダーの今日の日付(7月15日)に丸が描かれている。彼女のゲームが行われる日だ。
探偵(10年前):ベッドには開かれたスーツケースが置かれている。服は綺麗にスーツケースの中に仕舞われており、服の様式から20代前後の育ちの良い女性であることが分かる。
私はここで何に出会うのか考えたことがあったけど、
いざこの全てに対峙した時、その恐怖は私の想像を遥かに超えていた。
でも、まだ逃げるわけにはいかない。
探偵(10年前):君の愚かな勇気への褒美となる。
探偵(10年前):記憶再生。
探偵(10年前):それは君が私に残すもの次第だ。
- 03:最後のゲーム
危険が渦巻く罪の森で、オルフェウスは危険など構わずにただあの少女を救おうとした。
しかし彼が少女に追いつきそうになると、ハンターの恐ろしい姿が彼の背後に現れた。
追い詰められたオルフェウスは、忘却の薬剤と同じ記号が記されたバルブを開けた。
その途端、噴出した気体がハンターの影を呑み込み、そのまま全てを呑み込んだ。 - 04:目覚めた者
ついに全てを思い出したオルフェウスは、ぐったりとあのリビングに腰掛けていた。
10年前、彼が失敗したのは明らかだ。
あの少女を救えず、挙句の果てに記憶も失って、今日1人でここへ舞い戻ってきた。
腕に残されたメッセージを見やると、2回にわたるメッセージが1つの文章になっていることに気づいた。
「記憶より目を覚ませ。」
彼は目を覚ました。しかしその後は?悪夢よりも悪夢らしい現実に立ち向かえと言うのか?
オルフェウスは秘密の書斎に戻り、日記を探してあの写真を取り戻そうとした。
しかし日記で元々写真があった位置には、10年前全てを滅ぼした火事について報道されている新聞の切り抜きが挟まっており、一言のメッセージが添えられていた。
「See you Orphy」
どうやら、彼のほかにも何者かがここへ戻ってきたようだ。
コメント
- 再会の時実装時の4gamerのインタビュー記事2021/12/04も面白いのでぜひ -- 2022-12-21 (水) 23:39:09
- ありがとうございます! 後なぜオルフェウスはあの仮面を握ってたんでしょうね?あのマスク小説家ってキャラでも被ってませんでしたし何処から? -- 慶太? 2022-12-22 (木) 16:45:27
- 最近このゲームを始めてストーリー重視なのですが、昆虫学者が探偵を邪魔したのは探偵をハンターと認識してしていたってことなんでしょうか? -- 慶太? 2022-12-21 (水) 05:48:21
- 自分は、小説家・少女に話しかけてきただけの昆虫学者を小説家たちがハンターと誤認した可能性と、昆虫学者も小説家もお互いをハンターだと思い込んでおり、昆虫学者目線で小説家に捕まっているように見えた少女を助けようとした可能性があるとおもっている。 -- 2022-12-21 (水) 13:18:17