著作権法まとめ/著作隣接権について

Last-modified: 2023-07-02 (日) 21:11:38

著作隣接権とは

著作物により文化が発展するためには、その著作物が多くの人に知られて、利用される必要があります。
そこで著作権法では、歌手や俳優などの「実演家」、レコード会社、有線などの放送事業者といった、
著作物を広く世間に伝える人々にも、著作者と同等の権利を認めて保護しています。

分かり易い例として、音楽で考えてみましょう。
音楽は、作曲家や作詞者作った曲を歌手が歌ったり、演奏したりすることで社会に広まっていきます。
逆にいえば、音楽のような再現芸術は、作曲家が作った楽譜、作詞家が書いた歌詞を誰かが実際に演奏しないと聴くことが出来ず、従って社会に広めることも出来ないのです。
音楽を作ったのは作曲家や作詞者ですが、それを実演する歌手や演奏家も、曲を披露する際には楽曲の解釈をし、相応しいと思う表現をします。
それを創造的な行為と見なし、権利を与え、保護をするのが著作隣接権です。

著作隣接権をもつ人を著作隣接権者といいます。
著作隣接権者は、著作者と同じ権利を持つ場合と、報酬請求権という別の権利を持つ場合があります。
報酬請求権は、自分が著作隣接権を持っているものを誰かが利用した場合に、その人物に報酬を請求することができる権利です。
著作権とは違って、著作物の利用を禁止することは出来ません。

著作隣接権は、著作隣接者に応じて持っている権利が異なります。

実演家の著作隣接権

実演とは
著作物を、演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演ずること(これらに類する行為で、著作物を演じないが芸能的な性質を有するものを含む。)をいう。(同法第2条第1項第3号)
実演家の定義
俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他実演を行う者及び実演を指揮し、又は演出する者をいう。(著作権法第2条第1項第4号)

つまり、歌手、俳優、演奏家、指揮者、舞踏家、演出家、曲芸師、手品師、ものまねど、実演したり、実演を指揮・演出したりする人が実演家に分類されます。
実演家がもつ著作隣接権は以下の通りです。

著作隣接権説明
実演家人格権*1氏名表示権自分の実演に名前を表示するのかしないのか、
表示する場合はどんな名前(本名かペンネームなのか)を決められる権利
同一性保持権実演家の名誉を傷つけたり、評判を落としたりする変更をされない権利
著作隣接権録音権・録画権自分の実演を録音・録画する権利*2
放送権実演をテレビやラジオなどで放送する権利
有線放送権実演を有線方法で放送する権利(CDなどの録音物は除く)
送信可能化権実演を送信可能化する権利。
例えばインターネットにアップロードする権利
譲渡権実演の録音物又は録画物を多くの人に譲渡する権利。
ただし、購入したCDを転売するという場合には及ばない*3
貸与権商業用レコード(市販用のCDなど)を貸与する権利(発売から1年間)
報酬請求権CDなどの録音物(市販限定)が放送・有線放送で使われた場合に報酬を得る権利*4
CDなどの録音物(市販限定)が貸与された場合に報酬を請求できる権利
(発売から2年目以降)

レコード製作者の著作隣接権

レコードの定義
蓄音機用音盤、録音テープその他の物に音を固定したもの(音を専ら影像とともに再生することを目的とするものを除く。)をいう。(著作権法2条1項5号)
レコード製作者の定義
レコードに固定されている音を最初に固定した者をいう(著作権法2条1項6号)

注意点
レコード製作者=レコード会社ではない場合がありますが、大抵レコード会社に許可を取ることになります。
以下、みんなのための著作権教室より引用します。

たとえばだれかがどこかで非常に珍しい鳥の鳴き声を録音し、その録音をレコード会社に提供しCDとして発売された場合には、最初に鳴き声を録音した人がレコード製作者としての著作隣接権をもつことになります。

しかし、この例のような場合でも、レコード会社が最初に録音した人に代わって著作隣接権を行使するのが一般的ですので、そのレコードをコピーしたいというときには、レコード会社に許可をもらえばよいのです。

レコード製作者がもっている著作隣接権は、いくつかありますが、全部をひっくるめて原盤権といいます。
詳細は以下のとおりです。

原盤権説明
複製権レコードを複製する権利
送信可能化権レコードを送信可能化する権利。
例えばインターネットにアップロードしたり、インターネットラジオで放送する権利
譲渡権レコードの複製物を多くの人に譲渡する(つまりレコードを販売する)権利。
ただし、購入したCDを転売するという場合には及ばない*5
貸与権商業用レコード(市販用のCDなど)を貸与する権利(発売から1年間)
報酬請求権CDなどの録音物(市販用に限る)が放送・有線放送で使われた場合に報酬を得る権利*6
CDなどの録音物(市販用に限る)が貸与された場合に報酬を請求できる権利(発売から2年目以降)

放送事業者・有線放送事業者の著作隣接権

放送事業者と有線放送事業者がもっている著作隣接権は、以下の通りです。

著作隣接権説明
複製権放送及び有線放送を録音・録画及び写真などの手段で複製する権利
再放送権・有線放送権放送及び有線放送を送受信して再放送する権利
送信可能化権放送及び有線放送又はその再放送を、送信可能化する権利。
例えばインターネットにアップロードしたり、インターネットラジオで放送する権利
テレビジョン放送の伝達権超大型テレビやビル壁面のディスプレイ装置などで放送する権利

著作隣接権の保護期間

著作権に保護期間があるのと同じく、著作隣接権にも保護期間があります。
保護期間は、実演、レコード発売、放送または有線放送を行った年の翌年の1月1日から計算します。

著作隣接権説明
実演家人格権実演家の生存中。ただし、実演家の死後も人格権の侵害行為は禁止されている
実演実演後70年
レコードレコードの発行(CD発売等)後70年*7
放送・有線放送放送・有線放送後50年

参考サイト
著作権のネタ帳
著作権のひろば
公益社団法人著作権情報センター
みんなのための著作権教室
※公益社団法人著作権情報センターサイト内の子ども向けコンテンツです。


*1 著作人格権に該当します。著作隣接権の中では実演家のみが人格権を持っています。
*2 CDをコピーする場合にも及びます
*3 一度適法に譲渡された場合(利用者が正当に購入した場合)は権利が消滅するため
*4 非営利目的で無料で放送した場合は除きます。
*5 一度適法に譲渡された場合(利用者が正当に購入した場合)は権利が消滅するため
*6 非営利目的で無料で放送した場合は除きます。
*7 最初に録音(固定)してから70年間発行されなかった場合は、その録音後から70年