基本的に他人の著作物を利用する場合は、著作権者(著作隣接権者)に利用の許可を取る必要があります。
しかし、例外的に許可なく自由に著作物を利用できる場合があります。
例えば個人的または家庭内など限られた範囲で使用する場合がそれにあたります。
これは、著作権法第30条で規定されています。
著作権は文化の発展を目的とした権利ですが、あれもこれも縛ってしまうと著作物の利用がしづらくなってしまい、逆効果になってしまいます。
そこで、例外の規定を設けて著作物を利用しやすくしているのです。
この例外を専門用語で「権利の制限」といいます。
著作権が制限されるケースは多岐にわたりますので、ここではいくつか抜粋して記載します。
私的使用のための複製
以下の条件が揃った場合限定で、著作物をコピーしたり、翻訳・編曲したりできます。
- 個人、家庭内、サークル内など限られた範囲内での使用
- 仕事(営利目的)に使わない
- コピーは使用する本人(子供や老人など、コピーがしづらい場合は代行者)がすること。
- コピーガードを解除する、または解除されていることを知っていてコピーするものではないこと
- 使用する著作物がインターネットに違法アップロードされたものではないこと
- FAXやダビング機器など、誰でも簡単に利用出来る複製機を利用しないこと(コピー機は除外)
- 映画の盗撮ではないこと
つまり
- お気に入りの曲をCDからiPodにダビングして聴く
- 好きな番組を録画する
- 好きな絵をコピーして自分の部屋に飾る
こういったいった日常の何気ない行為が、ほぼ該当します。
ただし、自分が複製したもの、例えばテレビ番組を録画したビデオを友人に貸すとなると、
家庭内の範囲を超えるのでアウトです。
友人など親しい相手には気軽にやりがちなので、特に注意が必要です。
さらに、インターネットの自サイトにアップロードする行為もアウトです。
何故なら、インターネットとは「公の場=不特定多数が閲覧可能な場所」だからです。
例え自分のサイトだとしても、どこの誰が見るか分からない場所は私的範囲を超えています。
閲覧にパスワードが必要な場所だとしても、誰かが外部に拡散してしまうかもしれません。
ツイッターに鍵をかけても、フォロワーを通じて知らない誰かに見えてしまうことがあります。
ですのでインターネットでの使用は不可です。
こちらも特に注意が必要なケースでしょう。
判断の要点をまとめると、「自分や家族など親しい人物」のみが、
「家庭内」や「サークル内」のみで使う場合が「私的使用の範囲内」といえます。
写りこみ
例えば、友人の結婚式を動画で撮影していた時に、BGMに使われていた曲も一緒に録画されてしまった。
あるいは、観光地で友人と一緒に写真を撮影して貰ったところ、周囲にいた人の服にキャラクターがプリントされていて、一緒に写ってしまった。
このようなケースを「写りこみ」といいます。
あくまでも、自分が「意図的に写そうとしたわけではない」ため、これらは著作権の規定から外れます。
そして、それらの写真や動画は、ブログや自サイトにアップロードしたり、複製したりすることもできます。
ただし、写りこんだ著作物の作者が「自分の利益・権利が侵害されている」と判断した場合は、揉める場合がありますので、注意してください。
検討の過程で利用する場合
例えば、小説に挿絵を使う場合、「この絵師のイラストは小説の雰囲気に合わないだろうか」と検討すると思います。
その際に、小説家と出版に関わる担当者などが、イラストを共有したりする場合のことを指します。
最終的にはその絵師に許可を取る必要がありますが、検討段階で使用する場合は許可を取る必要がない、ということです。
これも、「必要だと判断された場合に限り」という条件がつき、もしも著作者が不当だと判断した場合は、利用の許可を取る必要があります。
調査研究・教育目的で利用する場合
図書館などでの利用
図書館・美術館・博物館などに保存されている著作物は、多くの人に知識を与えるものであり、また、絶版されて入手が困難な著作物もあります。
そのため、広く世間に情報や知識をもたらし、文化を発展させるために、著作権者から利用の許可を取らずにコピーしたり、インターネットで配信したりすることができます。
引用・転載
引用について
必要があって、自分の著作物の中に他人の著作物の一部を取り入れることが引用です。
そして、以下の基準を満たしていなければ引用とは認められません。
- 既に公表された文章であること
- 報道、批評、研究など、正当な目的があること
- 引用の部分が必要最低限であること
- 引用した文章の出典が明らかであること
- 自分の書いた文章量>引用の文章量であること
- 引用の箇所を明確にすること
- 引用の文章が自分の文章を補完する材料となっていること
転載とは
Wikipediaには次のように記載されています。
>他人の著作物を複製して、もともと公開されていた場所とは別の場所に公開すること
そして、多くのサイトではこの文章を元にしたと思われる記述が見られますが、
「自分の書いた文章量<引用の文章量」
だと考えると分かりやすいでしょう。
例えば、雑誌の内容を丸々コピーして自分のサイトに掲載したり、ある楽曲の歌詞を自分のブログに掲載したりすることが転載に当たります。
そして、引用とは違い転載は「基本的に著作者の許可を取る」必要があります。
ただし、例外として転載禁止でない公的機関の広報資料や調査資料は、出典を明記すれば転載可能です。
また、ブログやホームページをレンタルしている運営元が、著作権の処理を代行している場合は、利用者は著作権を気にせず利用することが出来ます。
例えば、楽曲の歌詞を載せる場合、通常は日本音楽著作権教会(JASRAC)への申請が必要です。
しかし、運営元が契約をしている場合は、申請の必要はありません。
教育機関での利用
公立学校など非営利の教育機関では、著作物を無許可で利用することが出来ます。
例えば、先生が授業のための資料をコピーし、生徒に配ったりすることができます。
その条件を簡単にまとめると、以下の通りです。
- 先生や児童・生徒の個人使用の範囲であること
- あくまでも授業のために利用すること
- オンライン授業の場合、授業を受ける生徒限定の配信であること
- 試験問題として利用すること。*1
- 文化祭や部活などで演奏・演劇の上演などを無料で行うこと
- 著作権者に不利益が生じないようにすること
概ね上記に気をつければいいのですが、例外もあります。
例えば、市販の問題集を先生が生徒にコピーして配布することはできません。
市販の問題集は、営利目的で販売されているものですから、コピーで配布されてしまうと、著作権者の利益が損なわれるためです。
ややこしい例は、学校での演奏を動画撮影したものを、無断でインターネットにアップロードが出来ないケースでしょう。
著作物の上演、演奏、上映、口述(朗読など口で話すこと)は、無料なら許可なしに行えます。(下記参照)
しかし、インターネット配信は無許可の対象外ですので、配信したい場合は著作権者に許可をとらなければなりません。
また、インターネットは「公の場」ですので、私的利用の範囲からも外れます。
こういった事情で、学校のホームページや個人のブログにアップロードはできないのです。
「非営利・無料」での実演や上映
以下の3つの条件をすべて満たした場合のみ、著作物を「演奏」「上演」「上映」「口述」などを行うことができます。
具体的には、公民館や学校での演奏や朗読会、演劇の上映、映画の上映会などです。
参考サイト
著作権のネタ帳
みんなのための著作権教室
※公益社団法人著作権情報センターサイト内の子ども向けコンテンツです。
トップコート国際法律事務所