この作品はフィクションです

Last-modified: 2009-08-04 (火) 00:01:38

何ヶ月ぶりにこのコーナーが更新されたのか…
全然ダメだと思いつつ、私ではこの程度が限界です…orz 

↓ではここから本編です↓

 
「もぅ…ダメ……」
もう何度目になるだろうか。
そんな情けない声が頭の上から聞こえる。
「あ~、ハイハイ。分かったわよ。分かったから、もうちょっと我慢なしなさい」
吐息混じりに答えるのは少女の声。
「そんなこと言ったって、ダメな物はダメなのぉ…」
モゾモゾと髪の中で何かが身をくねらせる様に動く。
「こら、ちょっと! そんなに暴れるんじゃないわよ。髪が乱れるじゃない」
髪に手を突っ込むと、声の主を捕まえ
「あ、ちょっと。やめ、きゃー」
襟を摘まれて出てきたのは、掌にのるぐらい小さな女の子。
背についた透きとおった羽を力なく寝かせている。
「シャルロット、あんた荷物も持ってないし、私の頭に乗ってるだけじゃない。何が疲れたよ、まったく」
「まぁまぁ、かりんさん。そんなに怒らなくても」
後ろから伸びた手が、ひょいっとこちらの手の中からシャルロットを摘んでいく。
「別に怒ってないわよ…。それより加奈子」
「はい、何でしょう」
加奈子と呼ばれた女性は、シャルロットを自らの頭に乗せながら答える。
「この道であってるんでしょうね。結構歩いたけど、村なんて見えないわよ?」
「おかしいですねぇ、この森を抜ければ村があると地図には書いてあるのですが…」
といって裾から地図を取り出す。
「どこかで道を間違えたんでしょうか…」
地図を見ながら考え込む加奈子とかりんの前に、
「いや、間違いでは御座らんだろう」
頭に純白の耳をつけ、尻尾を生やした男が進み出る。
数回鼻を鳴らし、顔を顰め
「前方より魔物の匂いがするで御座る。それに、血のにおいも…」
「何ですって!?」
にわかに一行に緊張が走る。
「みなさ~ん」
その時、頭上から焦ったような声とともに影が舞い降りる。
「アンジェラ、何か見えたの?」
背に純白の羽を生やした天使に、かりんが問いただす。
「どうやら、前方にある村が魔物に襲われているみたいです」
それを聞き、一行は一斉に動き出す。
「サールス、シャルロットは先に行って! アンジェラも怪我してる人がいたら手当てを!」
「承知!」「はいっ!」
「これ済んだらゴハンだかんね! 絶対だよ!」
「分かったから、早く行きなさい」
「やった~!」
返事とともに、一人は地を二人は空を駆ける。
「あ、こら! 荷物置いてかないでよ!」
気づいたときには三人の姿は木々の向こうに消えている。
「ほら、私たちも急ぎますよ」
「あ~、もう! 仕方ないわね」
加奈子に促され、置き去りにされた荷物を手に取ると、かりんも駆け出す。
 
 
「お嬢!ちょっといいかい?」
魔物を追い払い一息ついてる所へ、バンダナを巻いた男がやってきた。
「いいけど。クリフ、いい加減、その『お嬢』って言うのやめなさいよね…」
「まぁ、そんなに気にするな」
適当に流された…。
「なんかよ、こっちの人たちが、話があるんだとよ」
そういってクリフが指差す方向には、鎧に身を固め槍を小脇に挟んだ女性がいる。
首の辺りでバッサリと切られた青の髪に、青の瞳。
歳はかりんと同じか少し上ぐらいか。
「この国で将軍職を務めている、レイラという」
「わたしは、かりんよ。こちらこそよろしく」
お互いに差し出した手を握り合う。
「で、私たちに話って何なの?」
降ろしていた腰を上げ、かりんが尋ねる。
「村の者に聞いたんだが、お前達が魔物を追い払ったと言うのは本当か?」
険しい眼つきで睨みながら、レイラが尋ねる。
「まぁ、そういう事になるのかしらね」
「そうか、それを聞いて安心した」
ふぅっと肩の力を抜き
「わが国の国民を救ってくれた事に感謝する。ありがとう」
深々と頭を下げる。
「べ、別に大した事じゃないわよ。ほ、ほら。いいから頭上げなさいよね」
「ああ、本当にありがとう」
顔を上げてまで礼を述べられ、かりんはそっぽを向く。
「くしし、かりんのやつ照れてやがる」
「ホントだ。耳まで真っ赤~」
「う、うるさいわね! 余計なこと言わなくて良いのよ!」
ひゃーと外野が逃げていく。
「あんたも笑ってるんじゃないわよ。で、は、話ってなんなのよ。まさか頭下げるためだけに来たわけじゃないでしょ」
「あぁ、そうだ」
レイラは背筋を伸ばし、
「我々に力を貸し……」
途中で固まった。
「……何で途中で止まるのよ」
怪訝に思ったかりんが尋ねるも歯切れがよくない
「あ、いや…何と言うか…」
視線を彷徨わせ、レイラは言いよどむ。
「? どうしたのよ、キョロキョロして。何か珍しいものでもある?」
「いや、珍しいものというか……」
「何よ、はっきり言ってみなさいよ」
「あ、あぁ…」
恐る恐るレイラはかりんの後ろを指差す。
「その…さっきから気になっていたんだが、後ろにいるのはお前の仲間でいいのか?」
「?」
何を言っているのかと、振り向いたかりんは、
「……なるほど」
納得した。
羽やら尻尾やらを生やしたのが何人もいたら普通驚くだろう。
「あぁ、慣れって怖いわね…」
「で、どうなんだ?」
「そうね…」
少し考えた後、
「気にしないで、個人の趣味よ」
「「「おい!!!」」」
即座に入ったツッコミに僅かに身を引く。
「まぁ、今のは冗談として」
当たり前だ、などと後ろから聞こえてくるが気にしない。
「詳しく話すと長くなるけど、いい?」
「あ、あぁ…」
レイラが話を聞こうと身を固めたとき、
「将軍、捜索の結果、付近に魔物の姿は見当たらりませんでした」
ちょうどレイラの部下と思わしき騎士姿の男が声をかけてきた。
「そ、そうか。わかった」
「それと、あまりお時間が…。今回の出動に余り時間をかけているわけには」
「分かっている」
はぁ、と溜め息をつきレイラがこちらに向き直る。
「かりん、先ほどの話は道中で聞かせてもらってもいいか?」
「いいけど、どこに連れてくってのよ」
「今我々が滞在している街だ。何そう遠くはない」
そういって、立ち上がると騎士の男を連れ、こちらに背を向け行ってしまう。
取り残される形となったかりんに、
「で、どうするんだ? お嬢」
そうクリフが声をかける。
「どうするって、そんなこと言われても」
そう言いかけたところへ
「何をしている、早く行くぞ。こちらに馬が用意してある」
既に離れた所にいるレイラから声がかかる。
「行くしかないんじゃない?」
吐息まじりにそう答える。
「ま、別に俺に異論はねぇよ。お嬢について行くだけさ」
「はぁ、みんなもそれでいいわね?」
誰からも反対がないのはいつものことだ。
それにしても、
「だから、お嬢はやめてって言ってるじゃない…」
 
 
続く…

こ、今回はきっと…続きます、ハイ…