ターボチャージャー

Last-modified: 2023-08-17 (木) 21:57:55

排気の流れを利用してコンプレッサ(圧縮機)を駆動し、内燃機関が吸入する空気の密度を高くする過給機の事。

湾岸マキシではNA(自然吸気)車やスーパーチャージャー装着車は最初のチューニングで必ずターボ化される。

 

ターボチャージャーは主に、排気ガスの流れを受けて回転するタービンと、タービンの回転を伝達するシャフト、タービンのトルクを利用して空気を取り込んで圧縮するコンプレッサー、そして、タービンやコンプレッサーの周辺の流れを制御するハウジングで構成される。コンプレッサーには遠心式圧縮機が利用され、タービンとコンプレッサーは1本のシャフトの両端に固定されていて、タービンとコンプレッサーは同じ回転速度で回転する。

エンジンが吸入する空気の密度を高めて、より多くの酸素を燃焼室に送り、より高い燃焼エネルギーを得るのが過給機であるが、コンプレッサーの動力をエンジンの出力軸から得る機械式過給機に比べ、通常は廃棄される排気ガスの運動エネルギーを回収して駆動されるため効率が高い。

タービンの回転速度は自動車用など小型のものの場合、20万rpmを超えるものもあり、高温の排気ガス800 - 900℃)を直接受ける。軸受はエンジンオイルで潤滑される場合が多く、エンジンには高温環境に耐える性能が求められる。また、エンジンを停止するとオイルポンプによる循環が止まるため、高負荷運転によって高温になった状態でエンジンを停止すると軸受の焼きつきや、滞留したオイルがスラッジを発生する原因となる。これを防ぐために自動車の取扱説明書などではエンジンを停止する前に、アイドリングを続けて熱を冷ますことが推奨されている。
また、軸受けにボールベアリングを使用することもあるが、かなり珍しい。

 

ターボチャージャーはスイスの蒸気タービン技術者であるアルフレッド・ビュッヒによって発明され*1、1905年に特許が取得された。1912年にドイツのルドルフ・ディーゼルがディーゼル機関車の低回転域のトルクを向上させるために、ビュッヒの在籍していたスルザー社と提携し、ターボチャージャーを導入しようと試みた。ビュッヒのターボディーゼルエンジンは1925年には完成し、船舶を中心に広く普及した。

 

自動車などではディーゼルエンジンを搭載したトラックのほか、モータースポーツ用車両やスポーツカーなどでも一般的に用いられる。路線バス用の車種は2005年後半からダウンサイジングによって燃費や排出ガスを低減するためにターボチャージャーを搭載する例が増えてきている。

 

F1では、かつてターボエンジンが全盛だったが、ホンダがウィリアムズに供給していたエンジン(RA166E)でも1,500cc V型6気筒ツインターボの構成によりレース中で776kW(1055馬力)を発生したと言われ、安全性を理由に1987年からレギュレーションにより過給圧制限が加えられ(1987年は最大4bar、1988年は最大2.5bar)、1988年シーズンを最後に過給機の使用が禁止された。そして、2014年からは1,600cc V型6気筒エンジンにシングルターボとMGU-KとMGU-HとERSを組み合わせたハイブリッド・パワーユニットとして、ターボエンジンが復活することとなった。現代のF1ターボはフェラーリのパワーユニットは1000馬力を上回るものも。このパワーユニットは、世界最高峰であり、将来の自動車開発における存在である。1988年は、マクラーレン・ホンダが16戦中15勝で、勝率は今も破られていない93%超を誇った。2014年にF1でターボエンジンが復活して以来、メルセデスが6年連続のダブルタイトルを獲得している。

 

2010年代以降、欧州メーカーの乗用車では小排気量のガソリン直噴エンジンを採用してエンジンを小型軽量化しながらターボチャージャーにより出力を補うダウンサイジングコンセプトを採用する車種が増え、ターボチャージャーの搭載車種が増えつつある。ロープレッシャーターボやツインスクロールターボ*2を採用し、低回転から中・高回転までフラットな特性で大きなトルクを発生させている。日本の乗用車では軽自動車にターボチャージャーが採用されるケースが多い。また、かつては自動車税の税額が3ナンバーと5ナンバーで大きく異なっていたため、5ナンバーボディには排気量2,000cc以下のエンジンにターボチャージャーが利用されるケースが多かった。
車両の高性能化が進むとターボチャージャーのラグを軽減するために様々な手法が考案された。アンチラグシステムのように外部から過給遅れを低減したり、タービンの軽量化などが行われた。
現在では一部の市販車にもチタンアルミ合金製のタービンが使われるなどしておりレスポンスの向上が図られている。しかし、軽量で高温域での耐久性に優れてはいるが価格が高価になったり、異物を吸い込んだ際の耐久性等が低かったりと弱点も多い。

 

因みに最初に市販車に搭載されたのは湾岸マキシにも登場するBMW・2002 turbo (E20)である。

 
  • 主なメーカー(自動車)
    • ギャレット・システムズ*3
    • IHIターボサービス*4
    • IHIターボ*5
    • 三菱重工エンジン&ターボチャージャ*6
    • GCG TURBO*7
    • ボルグワーナー*8
    • HKS*9
       
  • 自社では製造しないが、チューニングパーツとして販売しているメーカー
  • かつて存在したメーカー
    • 日立製作所自動車機器グループ*12

*1 これは今日で言うターボコンパウンドエンジンでもあった。
*2 SAVANNA RX-7 GT-X (FC3S)はこの方式
*3 米ハネウェル社のトランスポーテーション&パワーシステム(TPS)部門のひとつ。自動車チューナーの間では三菱重工業やIHIなどと並んでターボチャージャーのメーカーとして有名。
*4 IHI(旧:石川島播磨重工業)の完全子会社で旧社名:クローバーターボ。モータースポーツ用やアフターマーケット向けのIHI製ターボはここ
*5 旧社名:石川島汎用機サービス IHIグループの子会社で船舶から自動車用純正タービンの製造を行っている。
*6 三菱重工の子会社で神奈川県相模原市に拠点を置く
*7 オーストラリアのメーカー
*8 旧 独KKK社(Kühnle Kopp und Kausch)+ 米Schwitzer社
*9 静岡県富士宮市に本社と工場を置く、大手自動車部品製造販売会社である。読み方はエッチ・ケー・エス。マフラー、電子制御部品、サスペンションなどのチューニング部品を製造・販売している。また、一部の車種の特別仕様車にも純正部品として製品を卸している。過去にエアロパーツを製造及びその販売をしていた。社名のHKSは “H”は長谷川(元社長・創業者の長谷川浩之)、“K”は北川(現専務)、“S”はシグマ・オートモーティブ(創業時に出資等協力。サード・BLITZなどの母体)に由来。なお、創業者であり社長の長谷川浩之は、2016年11月9日に病気に因り静岡県伊豆の国市の病院で死去した。享年70歳) 元は三菱系のタービンを使用していたが、培ったノウハウを活かして自社での開発製造に漕ぎ着けた。
*10 1981年設立。BLITZはドイツ語で稲妻と言う意味。本社は東京にある。かつてはD1グランプリに野村謙と共にワークス参戦していた。「電脳集団」とたびたび称され、その通り電子系統パーツ(特に既存の電子系統をさらなる調整が可能になるコントローラーが多い)などの最新の電子機器を満載した新型車への対応もいち早く行っている。
*11 本社は千葉県にある。海外ではGReddyの名前で販売。2008年9月10日に倒産(民事再生手続開始申立て)し一時ブランドが消滅するが2016年12月に兵庫県を拠点とする、中古車・新車・日本車・輸入車の総合メガディーラーのジーライオングループが資本参加し、再びブランドが復活。ジーライオン系列の自動車部品ブランドとして再スタートした。
*12 日立製作所の自動車機器開発部門 ターボチャージャーについてはボルグワーナーと技術提携を行い、合弁会社を設立するもその後提携は解消され現在はボルグワーナージャパンとなっている。