誰よりも高い練度とプライドを持つソ連ツリー所属の中戦車。それがObject 140である。
マリノフカを自由自在に走り回り、ゲリラ戦を仕掛ける。その黒い迷彩の彼を誰も捉えることは出来なかった。
味方が知らぬ間にやられたことに激昂する敵戦車。それを聞くのもまた、彼の趣味の一つだった。
そんな孤高の戦士であるObject 140の心を、完全に掴んだ中戦車がいた。
その中戦車の名前はLeopard 1、ドイツツリー所属の中戦車である。
彼女だけは必ずObject 140をどこまでも追跡し、最終的には履帯を切断する。
しかし、絶対にその弾は彼の車体を貫通することはなく、的確に履帯だけを突くのだ。
その精度の良さと練度の高さに感心した彼は、Leopard 1の背後へと忍び込み、こう告げた。
Object 140「……その精度の良さ、練度の高さ…実に感心した。」
Leopard 1「撃つなら撃ちなさいよ。貴方のHEだと相当のダメージが出るんじゃない?」
Object 140「こんな逸材をいとも簡単に撃ち殺すなど勿体無い。」
Leopard 1「そういうのが好きなんだ?」
Object 140「…朴念仁。逃してやると言っているのだ。」
Leopard 1「あらそう?じゃあ、お言葉に甘えて。」
そう言って気兼ねなく走り去ったLeopard 1の口調は、どこか煽るような、見下すようだった。
プライドの高いObject 140の精神を逆撫でするような言葉は、何故か彼の胸を熱くさせた。
しかしそれ以降、Leopard 1は一切姿を現さないようになり、行方は分からなくてなっていた。
せっかく自分が認められる戦車がいたのに、それを見失ったObject 140は落胆した。
残念な気分で戦闘へと赴いたObject 140だったが、そこでは衝撃的な光景を目にした。
Object 140「……おっ。」
Leopard 1「あら、あの時のソビエト君じゃない。元気してた?」
Object 140「何だその名前。」
Leopard 1「私、貴方の名前知らないから。勝手にこの名前で呼んでる。」
Object 140「俺の名は…」
Leopard 1「いいのいいの、教えなくて大丈夫。私たち、またすぐ離れるんだからね。」
Object 140「そ、そうか…」
Leopard 1「それに私、この呼び方気に入ってるから。」
いつの間にか、Leopard 1はObject 140の心を惹く存在となっていた。
今まで殆ど他人と関わってきたことがない彼は、知らなかった。
「大いなる恐怖」は、すぐ近くにいると。


