友東 お見通しだよ~

Last-modified: 2017-07-25 (火) 01:27:16

「いやぁー、歌野ちゃんの大立ち回り凄かったねぇ。あれだけの人数で、しかも風先輩や若葉ちゃんも相手にしたのに全然負けてなくて!なんだか昔観た映画を思い出しちゃった」

棗さんと水都ちゃんの誕生日パーティ準備の際に起こった一幕について、私は興奮気味に東郷さんと話をする。

側から見てもテンション上がってますという空気が伝わるくらい矢継ぎ早に。

もしかしたらこうして東郷さんとお話しするのがとても久しぶりのように感じたことも関係してるかもしれない。

「その二人がいて乱闘にまで行ってしまった事は別の意味で頭が痛かったけれどね…」

「あはは…普段の二人なら確かに止めてくれそうなのにね」

「けど、確かに友奈ちゃんのいう通り。今日の白鳥さんは凄かったわね…これも藤森さんに対する愛がなせる技なのかしら」

東郷さんの口から溢れた愛という言葉にどきりとする。

今回、歌野さんは水都ちゃんに危害を加えられるかもしれないと思い、数の上で不利な状況でも引かずに、暴徒と化したうどん狂信者達と戦ったのだと言う。

自分はどうだろうか…自分の好きな人達が危険に晒されたとき、戦えるだろうか。

或いは私が危険な目にあった時、だれか水都ちゃんに対する歌野ちゃんのように護ってくれる人は居るだろうか

少し羨ましいな…そんなことを考えていると、突然東郷さんが私の手を取りじっとこちらを見つめてきた。

「友奈ちゃん、友奈ちゃんの事はきっと私が護ってみせるから。だからそんな顔しないで…」

そう言うと、こちらを真っ直ぐに見据えて重ねた手をぎゅっと強く握りしめてくる東郷さん。

そんなに顔に出てしまっていただろうか…声に出したわけじゃないのに、簡単に東郷さんには見透かされてしまう。

この人は本当にズルい…普段は少し鈍いところもあるのに、大切な時はいつも本当の気持ちに辿り着いてしまう。

図星を突かれてしまった私は、顔から火が出そうな気持ちを抑えながらなんとか誤魔化そうと言葉を探して…つい、溢してしまった。

「私そんなに顔に出てたかな!?あははっ心配掛けちゃってごめんね東郷さん!けどほら、東郷さんにはもっとたくさん大切な人が居るから…守るのも一苦労かもっ…なんて…」

最低だ、こんな言い方…みんな大切で、出来るなら皆のことを助けたいと思ってるのはきっと自分も同じなのに…

気まずい沈黙が二人の間を包み、どうやって切りぬけよう…謝らなきゃ、逃げ出したいといった思考で頭の中がごちゃごちゃになって。

そんな沈黙を破ったのは東郷さんからだった。

「…友奈ちゃん、どうやら友奈ちゃんには私がどれだけ友奈ちゃんの事を想っているかを目一杯お話する必要があるみたいね…!」

「えっ……えっ!?」

「そうと決まれば即行動よ!私の部屋へ行きましょう、そこでぼたもちでも食べながら私の友奈ちゃんへの思いをたっぷり言い聞かせて…」

「まっ、待って!待って東郷さん!ごめんなさい、そんなつもりじゃなくて…それに今日はほら!銀ちゃんと約束があるって」

「ええ、そうね…銀には謝っておかなくちゃ。けど今日は友奈ちゃんに時間を全て使うと決めたの…だから、ね?」

この人は…本当にずるい。

その後、私は東郷さんの自室でこれでもかと言わんばかりの、愛の告白紛いの説論を一晩中聞かされる事となった…今でも少し頭がふわふわする…

この人は本当に…。