友東撮影会だよ~

Last-modified: 2017-07-21 (金) 00:43:00

「友奈ちゃん、そのまま動かないでね」
静かな部屋にカメラのシャッター音が響く。
現在東郷さんの部屋は、ポーズをとる猫耳メイド姿の私と、真剣な様子でカメラを構える東郷さんの二人きり。
「はい、動いても大丈夫よ。次はどうしようかしら……」
東郷さんがカメラを下ろしたので、私もポーズを崩す。ぺたりと座り込んだ私を尻目に、東郷さんは凛々しい表情を崩さずに思案を続けている。
「ま、まだやるの?」
「当たり前じゃない。そうね、まずスカートの裾を両手でつまんで……」
暗に撮影会の終了を提案したつもりだったのだが、東郷さんには通じなかったらしい。諦めて東郷さんの指示通りにポーズをとる。
(どうしてこうなったんだっけ……)
再び始まった撮影から意識をそらすように、きっかけを回想する。始まりは園ちゃんの部屋に遊びに行った際に、クローゼットを見せてもらったことだった。私服に紛れて掛けられていた高露出のメイド服に目を引かれた私は、思わずそれを手にとってしまった。私のその行動をどう受け取ったのか、園ちゃんは私にそれをプレゼントしてくれた。
「ゆーゆがこれ着てるところ見たら、わっしー喜ぶだろうな~」
という言葉に釣られ、結局私はその衣装を持って帰ることになった。もらってしまった以上、着ないで仕舞うのは園ちゃんに失礼だ。勇気を振り絞った私は、東郷さんが出掛けた隙に部屋でスタンバイすることにしたのだが……その結果、帰ってきた東郷さんによる撮影会が始まってしまったのだった。

「はい。もういいわよ、友奈ちゃん」
東郷さんの声で、私は現実に引き戻された。どうやら私が物思いにふけっている間に、撮影は終了したらしい。思わずほっと息をついてしまう。
「じゃ、じゃあ私はこれで……」
私の想像していた展開ではなかったものの、満足そうにカメラを見つめる東郷さんの様子を見るに、喜んではくれたようだ。東郷さんや私の両親にこの格好を見られてしまう可能性はあるが、この場で着替えるのはなんだか気が進まなかった。
「何言ってるの友奈ちゃん」
「……えっ」
東郷さんは部屋を出ようとする私の腕を掴むと、そのまま自分のベッドまで引っ張っていく。突然のことに、為されるがままベッドに押し倒される私。
「と、東郷さん……急にどうしたの?」
「もう、友奈ちゃんったら。これで終わりなわけないでしょう」
私に跨がる東郷さんの、どこかいつもとは違うその雰囲気に、私は魅入られてしまう。抵抗することもできずに固まったままの私の髪を撫でながら、東郷さんは続ける。
「こんな格好で、私の部屋に来て……そんなふうに誘われちゃったら、もう我慢なんてできるわけないわ」
「わ、私はただ、東郷さんに喜んでもらいたくて」
「ええ、とっても嬉しかったわ。だから……」
東郷さんの白くほっそりとした指が、私の頬に添えられる。
「今度は私が、友奈ちゃんを喜ばせてあげる」
東郷さんの瞳に怪しい光が灯る。私の知る東郷さんとは明らかに違ったその様子に、困惑と……それ以上の大きな期待を抱いてしまう。ここで東郷さんに身を任せたらどうなってしまうのだろう。そんな私の逡巡を肯定と受け取ったのか、東郷さんはさらに顔を近づけると、その手を私の身体に這わせた──。