小学校教員雪にぼだよ~

Last-modified: 2017-08-17 (木) 13:38:09

「せんせー!」
昼休み、夏凜と偶然にも廊下で会ったので談笑していると結城っちが声をかけてきた。
相変わらずいい笑顔。
「んー?どしたー?」
「せんせーとかりんちゃんって付き合ってるのー?」
わお。突然何を言い出すかと思えば。
周りに人が居なくて助かった。このタイミングを狙ってたのかしら。
「ぶふっ!」
噴き出す夏凜。それ答え言ってるようなもんだからね。
「おー最近の小学生はませてるねぇ。なんでそう思ったのかな?」
「昨日二人で買い物してるところ見た!」
む、まさか見られているとは。どの店だったかにもよるけど……
「ほうほう。何買ってた?」
「ソファー!」
「友奈、あんたあの店に居たの!?」
夏凜がまたオーバーにリアクションする。
ほんとに人居なくてよかった……結城っちに感謝だね。
「なんかね、二人だとせまいーとか言ってた!」
「ちょちょちょ!」
ありゃりゃ、そんなところまで聞かれちゃってたか。
なんで気づかなかったんだろう……
夏凜しか目に入りませんでしたー、とか?あとソファ。
「あれ一人用だしね。まぁ私が夏凜膝の上に抱えるからいいやってあれ買ったんだけど」
「おおーラブラブだ!」
「でしょ?いっつも学校だとつんけんしてるけど二人きりだとかわいいんだこれが」
目を輝かせる結城っちに得意げに話していると、不意に肩を組まれて後ろを向かされる。
にぼしの香りは実はしない。
こそこそ。
「あんたも何言っちゃってんのよ!」
「いいじゃん見られちゃったんだし」
「それに、結城っちはお願いしてもそれを反故にする子じゃないでしょ?」
教員からも生徒からも親御さん方からもあの子はとてもいい子だと定評のある結城っち。
もちろん私もそう思っている。
彼女の笑顔は人に元気を与えるパワーが人一倍ある気がする。
あんな邪気のない笑顔をする子が悪い子なわけはないでしょ!
「いや、うーん……」
うんうん唸っている。あれ、べらべら喋る子じゃないよね?先生信じてるからね?
「……てな訳で、私と夏凜が付き合ってるのは、結城っちと私だけの秘密ね?」
ぶつぶつ言ってる夏凜は放置して、振り向いて目線を合わせウィンクする。
これでも美人で通ってるから痛くないいたくない。
「うん、秘密!」
笑顔で元気よく小指を絡ませる。
頼むよ、針二千本も飲みたくないからね。
きんこーんかんこーん
と、ここでチャイムが鳴る。
ありゃ、そんなに話してたっけ。
「ほら友奈、予鈴鳴ったわよ。次体育じゃなかった?」
横に立つ夏凜が言う。
何時の間に回復していたのか。
「あ、そうだった!じゃあねせんせー!今度お話聞かせてねー!」
ぶんぶん手を振りながら走っていく。こらこら、廊下は走っちゃいけませんー。
「いいよー」
私の返事聞こえたかな。あっという間に行っちゃった。
「……雪花ぁ、どうすんのよ」
あ、これは怒ってるって言うより呆れてるって声色だ。
眉間に皺寄せないの。
「まぁ、あそこ見られて聞かれてちゃ誤魔化すのは無理でしょ」
「そうかしら……いくらでもやりようがあった気がするんだけど」
「いいじゃない。嘘はつきたくないし」
「……はぁ。いいわ、友奈を信じましょう」
額に手を当てながらやれやれとため息を吐く夏凜。
このポーズ取らせたら右に出る人居ないんじゃないかな。
「ほら、私たちも行かないと」
「ヤバ、そうだった!」
ハッ!と顔を上げると急ぎ足で去っていった。
走らない辺りがなんとも夏凜らしい。
「さて、と」

夏凜はあれでちゃんと女らしく柔らかいからなぁ。
今日も堪能するとしよう。