東郷せんせいその3だよ~

Last-modified: 2017-08-03 (木) 18:42:43

園子は激怒した。
必ず、かのじゃちぼーぎゃくのせんせーを除なければならぬ。
「ねえねえそのちゃん!みてみて、とーごーせんせーとしゃしんとっちゃった!」
「とーごーせんせーのぼたもちおいしいねそのちゃん!」
「このあいだとーごーせんせーといっしょにおひるねしちゃった!せんせーもふもふであったかくてきもちいいんだよー!!」
わっしー布団はわたしのなのに!
…間違えた。
とにかく園子は怒っていた。最近のゆーゆは口を開けば東郷先生のことばかり。このままでは居られない。
「というわけでとうごうせんせー!けっとうなんよ!!」
「あら園子ちゃん、今日も元気そうで先生嬉しいわ。けれど決闘はダメよ、決闘罪で罪に問われてしまうわ。」
「えっ…つかまっちゃうの?たいほされる?」
みるみる園子の顔が青ざめていく。し、知らなかったとはいえこんなことになるなんて…
泣きそうになりながら先生の顔を見やると、悪戯な微笑みが返ってきた。
「大丈夫よ園子ちゃん、決闘とは別の方法で勝負しましょう?そうすれば罪に問われたりしないから。それじゃあ何をして遊ぶ?」
「よ…よかったぁ…。えーっと…それじゃあゆーゆをどっちがたくさんおどろかせられるかでしょうぶしよ!」
何とか難を逃れ安堵した園子は、本来の目的を果たす為こう提案した。
大丈夫、自分には風先生に授けてもらった秘策がある。少し予定とは違うが勝機は十分にあった。
東郷先生もこれに応じ、いよいよ勝負の時。
何が起こるのかワクワク顔の友奈ちゃんに向き合うと、園子は手に持ったみかんをサッと目の前に掲げてみせた。
「いくよゆーゆ…このみかんから…てをはなすと…はい!」
「うわああああああ!!みかんがういてる!!!すごいよそのちゃん!!そのちゃんはまほうつかいさんなの!?」
袖に仕込んだ割り箸にみかんを刺し、浮いてるように見せる高等テク。風先生直伝のこの技は友奈ちゃんの反応を見るに大成功なようだ。
園子は満足げに頷くと、東郷先生へと向き直った。
「すごいわ園子ちゃん、あんな技を持っていただなんて…先生もいっぱい驚いちゃった。このままでは負けてしまうかも…」
「ふふっ!しょうぶのせかいはひじょうなんよせんせー!じゃあつぎはせんせーのばんね!」
わかったわと先生が頷くと、おもむろに車椅子の背からシルクハットを取り出しそれを被る。い、一体何をするつもりなんだろう…
友奈も園子も先生の次の挙動を食い入るように見つめた。
「二人とも用意はいい…?それじゃ…いち、にの、さん!!」
先生が合図をして帽子を脱ぐと、何も入っていないはずの帽子の中から鳩が飛び出す。あまりの衝撃にしばらく言葉を無くしていた二人は、先生のはいおしまい♪という言葉を機に堰を切ったように声を上げた。
「すごおおおおおおおおい!!!なにそれなにそれ!!どうやったのせんせー!!?」
「うひょおおおおおおお!!!!せんせーかっけぇえええええ!!!」
何だ今のは。一体なにが。どうやったのか。
たくさんのはてなマークを浮かべながら園子は矢継ぎ早に質問をぶつけた。
「ふふっ…気に入ってもらえたみたいでなにより。それじゃあ種明かしはゆっくりオヤツでも食べながらにしましょうか。今日のおやつは抹茶に白餡のアレンジぼたもちよ」
おやつ!そういえばたくさん動いてお腹が空いてきたところだ。東郷先生の提案に私とゆーゆは頷き、先生の膝の上によじ登る。
「それじゃあみんなの所まで…出撃!」
二人を乗せた先生は器用に車椅子を操りながらみんなの元へ進み始める。
その後、おやつを堪能した園子は今日も楽しかったねと友奈と語らいながら満足げに帰路についた。
何か忘れている気もするが些細なことだろう。
「ねえねえそのちゃん、きょうのとーごーせんせーのぼたもちもとってもおいしかったね!」
あっ!!