雪にぼその2だよ~

Last-modified: 2017-07-21 (金) 00:10:45

そりゃあ他人の部屋に勝手に上がり込んでる身分でこんな事言うのはおかしいし
そもそもあたしとしては一応束の間の静かさを求める為に来たりしてる訳だけど
静かすぎると言うのも善し悪しで、必要な物以外がまるでない部屋の有様と相まってどうにもこうにも一人で居ると間が持たない
幸い夏凛の部屋にもテレビの一つはあるんだけれど、どのチャンネルを回しても大体大赦仮面が何かをやっている番組ばかり
四国の笑いはどうにも私にはレベルが高すぎた。そう言う訳でテレビの電源は早々に切ってしまって、手持無沙汰にしていたリモコンは今では机の上
その隣に眼鏡も外しておいてしまって、そうして残った暇を持て余したあたしは床に寝転がって文字通りにごろごろとしている
好きにしていいと言われたけれど、まさかここまで好きにするとは鍵を手渡した時の夏凛は想像もしていなかっただろう
勿論あたしだって最初は行儀よくしていたのだけれど、気付いた頃には飽きてしまってて。
前向きな言い方で言うならばそういう装いが必要ない程度にはお互いに心を許すようになったのだろう
服がしわになっちゃうかもなんて事を考えながら退屈まぎれに足をバタバタさせて、何度目かの寝返りのついでに壁に掛けてある時計に目をやった

時刻はもう夕刻で、そろそろ家主は帰ってきてもいい時間なのに、今日はまだ帰ってこない。あるいは訓練が忙しいのかもしれない。
「何かやる事無かったかなー」
無いと言う事が分かったままにする独り言は酷く空しく響く。
やる事と言ったって、必要な物だって買い足してあるし、夕飯は作り終えてしまったし、部屋の掃除も風呂場の掃除も一通りはやり終えている。
こんな事ならもう少し時間を掛けておけばよかったと思ったが
もう何度も繰り返してきてどこに何があると知ってしまっている今では逆に手間取る事の方が難しい訳で
「早く帰ってくればいいのにねー」

寂しいじゃんさ。ふと浮かんだ自分の言葉に苦笑した。
なら勇者部の面子に構って貰いなさいと夏凛は言うだろう。
元々賑やか過ぎる程に社交的で、好人物揃いの面子に混ざっていれば、確かに寂しさなんて感じないんだろうけど
でもさ、寂しいは寂しいんだけど、この寂しいって言うのはそういう寂しいって言うんじゃなくてさ。
ごろり、ごろり、頬に触れるフローリングの冷たさが心地いい。どこまでだって転がっていけそうだ。
全く、びっくりする程物が無い。中学生の女の子がさ、生活感なさすぎない?
本当に、残り香一つ残して行きやしないから、雪花ちゃんは寂しいにゃー