遺産書庫

Last-modified: 2021-08-22 (日) 00:48:57

通常文献

■酒気をもたらすもの

(太古の文献のようだ……。)

酒気とは、太古の自然魔術に由来するエーテル(エーテルって何?と女性っぽいメモ書き)の一種である。
これを生むための手法は、専ら経験則に由来するものだ。
時代や土地を超え、それらは様々な形で方法論を成立させている。

(……以下、様々な酒造方法が記載されている。)

『酒を造るためには、[空き瓶][酒の種][果実]が必要なようだ。』

■冒険者よ、畑に出ろ。

(太古の文献のようだ……。)

今や、王国の食糧問題解決は急務である。
さしたる目ぼしい遺跡は王国内に皆無であり、仕事にあぶれた無法者が世に溢れている。
彼らは皆「冒険者」と異口同音に名乗るが、今や富を生み出さない以上、国にとってのお荷物に他ならない。
さあ、今こそ剣を鍬に、槍を鋤に持ち替えよ!牛に跨り、畑を肥やせ!

(……以下、ロクに知力のない者でも読めるような農法解説が記載されている。)

『畑から作物を取るためには[糞][種]が必要なようだ。』
『糞と種は最適な組み合わせがあり、その状態の収穫量が最も高い。』

■寝るのが楽しみになる本

(太古の文献のようだ……。)

方法は簡単ですよ!これで誰でも、楽しい夢の世界に旅立てます。
お部屋にアロマを焚いて、チェダーチーズをひと齧り!

『楽しい夢の世界に旅立つためには[アロマ][チーズ]が必要なようだ。』

■お手軽ルームフレグランス

(太古の文献のようだ……。)

アロマオイルの精油方法は、いくつかの種類があります。
その方法をご紹介しましょう!

『圧搾法』柑橘類を絞るだけ!
『水蒸気蒸留法』ハーブを水蒸気に晒し、冷却した液体を集めます。

(その他、様々な方法が記載されているが、理解できそうにない……。)

『圧搾法には[果実]が必要なようだ。』
『水蒸気蒸留法には[蒸留釜][ハーブ]が必要なようだ。』

■諦めがちな人の啓発本 [#4u60a67f0]

(太古の文献のようだ……。)

例えば、ゴールを10回と定めたとしましょう。
その10回で身にならなければ諦める、それも選択のひとつです。

しかし、そこでお得なのが「ゴールを10%増しで設定すること。」!
その1割は、重く貴方にのしかかるでしょう。きっと辛いかもしれません。
しかし、10回と11回の差を考えてみてください。
そして、10回を10度繰り返したときと、11回を11度繰り返したときの差を考えてみてください!
1割の差は、積み重なって大きなアドバンテージとなるのです!

(この本に抱く感想は様々だろう……。)

■魔女薬草学写本

(完全に刷り切れており、部分的にしか読み取れない。)

……………ーブを2種類…………酒……煮詰め………

(これ以上読み取ることは不可能だ。)

■雪景色マッピング

(完全に刷り切れており、部分的にしか読み取れない。)

………雪景色は変わ……………コツがある……………

(誰かに解読してもらうと、良いことがあるかもしれない。)

凍てつく雪洞の文献

イルベリ書

(古代文書であり、解読は困難を極める。)

神は人々を雪の箱庭へと閉じ込めた。
これこそが人々の背負う原罪である。

聖人イルベリは、その全てを背負った。
雪堀羊の小屋に生を受けた彼は、人々の苦難を憂い、教え導いた。
そして、蛮族の手によって寒空の下に磔刑されると、吹雪が止み空は晴れ渡った。
原罪の全てを背負い、イルベリの魂は聖別された。

しかし、人々は未だ愚かで矮小である。
聖人イルベリの死を嘲笑い、利を得た人々は増長し、再び天罰を受けた。
長き雪の箱庭の時代は再び始まった。

神は全てを見ている。
教えが遍くとき、世に幸福の国は来たる。

人々よ、聖人イルベリと神を奉じよ。

『凍てつく雪洞内部でのHP・MPロスを2点軽減する。』

■黒喰剣

(古代文書であり、解読は困難を極める。)

それは聖人イルベリの手により、幾本も打たれた。
イルベリが聖別し鍛えた鉄は、穢れを喰らい力を増した。

イルベリの使徒はこれを携え、流浪の信仰の旅を始めた。
白き剣は、穢れを喰らい黒に染まっていく。
限りなくその色が黒に近づけば、聖剣はすさまじい力を発揮するだろう。

しかしながら、イルベリの聖地は穢れを良しとしない。
真に白き黒喰剣を持つ者のみが、洞の秘地へと至ることができるだろう。

『穢れ喰らいの聖剣のHPが最大値のとき、凍てつく雪洞の探索時に出た数字を上下に1だけずらすことができる。』

■黒き王

(古代文書であり、解読は困難を極める。)

イルベリは磔刑の数日後に復活し、奇蹟となった。
原罪と穢れを背負い、イルベリの肌は黒ずみ、使徒たちはそれを憐れんだ。

使徒たちはイルベリを「黒き王」と敬い、その生涯をイルベリのために捧げた。
布教と殉教の旅の果てに、数々の異教を暴いた。
イルベリこそが真なる聖人であり、黒き王こそが真なる王である。

王は木々を愛した。
王は剣を打った。
王は夢に微睡んだ。
王は氷竜を封じた。

その悉くはイルベリの使徒となった。
世に終末の訪れるとき、それらは解き放たれ、黒き王の地を守るであろう。
王の地を巡礼せよ。
さすれば、出逢いは訪れる。

『雪洞で既に訪れた場所に探索で訪れることができる。』

■13人目の手記

((古代文書であり、解読は困難を極める。)

イルベリは私に仰った。
「見よ。ハナズオウが咲いている。」

ひどい侮辱である。
だが、私は素知らぬ振りをして答えた。
「怪しき影が差すはずもありません。貴方こそ神の子であり唯一の聖人です。」

イルベリはそんな私の様子を見ながら微笑んでいた。
そうだ、彼の侮辱は正当なものである。
その花言葉の通りの人間だ、私は。

だが、この花言葉をこそ、そっくりそのまま貴方に返そう。
私は聖人の決して他人に見せぬ右半身を見た。
黒ずみきったその肢体は、死者のものだ。
そして、心臓とは逆位置に灯った炎の魔石が、死した右半身を動かしている。
紛れもない裏切り者の証。貴方は人間とは呼べない存在だ。

かの聖人は、殺さねばならぬ存在だ。
私は決意し、そして密告した。

イルベリは死して、吹雪は晴れ渡った。
原罪を背負って死んだ?馬鹿々々しい。

今まで聖人が奪っていた、晴れ渡るような陽気が戻っただけに過ぎない。
奪った熱を、穢れという形に置き換えて保存していた。
それが解放されれば、吹雪も止む。道理である。

だが、私の考えは甘かった。
イルベリは死んだが、完全な火喰らいと化した。
半分死体だったものが、全て死体となったが故だ。

私の裏切りは、既に使徒たちの知るところとなっている。
ハナズオウの木にでも逆さ吊りにされるのだろう。
私には似合の最後だ。結局、私の行動は裏目に出たのだ。
彼が死んだ後の吹雪は、本当にひどいものだからだ。
最早、ハナズオウすらも咲かなくなった。
恐らくは、あんな身体であろうとも、必死で吹雪を抑えていたに違いない。
人々から微量に熱を奪い続けることで力を保ち、吹雪が人々に及ばぬようにしていたのだ。

ああ、主よ。懺悔致します。赦したまえ。
願わくば、聖人の魂こそ、神の国へと誘われますように。
そのためならば私は、この雪の箱庭よりもひどい地獄の底へと落ちても構いません。
どうか、どうか。

神々の詩

■アエマの詩

嗚呼、いと豊かなる穣の神よ。
あらゆる泉、あらゆる河に揺蕩う神よ。

その命よ、満たし給え。

『これを読んだキャラクターは、インタールード中に《フェイス:アエマ》が適用される。』

■ダグデモアの詩

嗚呼、いと遥かなる空の神よ。
蒼き天、偉大なる父性を備える神よ。

その高みよ、示し給え。

『これを読んだキャラクターは、インタールード中に《フェイス:ダグデモア》が適用される。』

妖精図書館

■「妖精の私が人間界に来たら超最強な魔術師として大金持ちになる話」ヒナ著

ドカーン!
爆発音が響き渡った。
「ギャー」
ゴブリンの集団が吹き飛ばされた。
その様子を見て私(超カッコいい)は後ろを振り向いた。
「大丈夫?お嬢さん。」
「助けてくれてありがとう!お礼に全財産を差し上げますわ!」
私は滅茶苦茶大金持ちになって幸せに暮らした。
~おわり~
(しまったクソ小説だ!)

■「筋肉論」 著者:ロードレイク・アイゼンフィスト

(太古の書籍のようだ)
肉体とは己の魂を内包する器である。
つまり肉体のサイズが大型になれば、その器の容量もより大型になるというわけだ。
器の容量が増加すれば、必然的にその中身、魂も器に合った大きさへと増加していくこととなる。
魂の大きさが巨大になればなるほど、生物としての能力の許容量が増加し、より強力な存在へとなることができる。
これはドラゴンや、高位の巨大な魔獣等を見れば明らかなことである。
あれらは体のサイズ、つまり器の大きさが巨大故に強力な存在なのだ。
しかし、我々は体のサイズをあそこまで巨大にすることは難しい(一部の巨人や妖精を除いてだ)。
ならば、肉体という器の容量を上げるためにはどうすればいいのだろうか?
結論から言うと、筋肉を鍛えることである。
筋肉を鍛えることにより、肉体の密度が上昇する。
つまり、肉体のサイズをそのままに器のサイズを巨大化できるのだ。
これにより、我々は人の身でありながらもドラゴンや魔獣と言った存在へと太刀打ちできるようになるのだ。
~以下、筋肉を鍛える方法について詳細に記されている。~

■「生物繁殖論」 著者:レイネ・ケヴィオン

(太古の書籍のようだ)
生物が繁殖していくにあたり、周囲を取り巻く環境に適応できないものが存在することは繁殖の妨げになる。
故に、環境に適応できない個体を選別、淘汰することで生物の繁殖をより効果的なものとすることが可能となる。
しかし、この世界を取り巻く環境は常に一定ではない。
噴火や津波などの災害、あるいは外敵による脅威、大きなもので言えば粛清など、急激な環境変化がたびたび発生する。
そのような急激な環境変化に耐えうるため、より厳しい環境に生物を置き、環境に適応できない個体ではなく適応できた優れた個体を選別することにより、その種はより優れた、繁殖力の高いものになると推察できる。

■「龍脈を利用した魔術式の研究」ゼーリク・コルドバレー著

(太古の書籍のようだ)
龍脈とは大地の中を流れる魔力流の呼称であり、通常の魔力探知では探知困難である。
これは龍脈と術者との間に大地が存在することで地の魔力に龍脈の存在が覆い隠されているからというのが一般的な説である。
また龍脈は常にその流れを変化させており、それも探知を困難にしている一因となっている。
しかし、竜、あるいはその血を引く種族の中にはその龍脈から魔力を引き出し利用すると言った魔術を行使する存在が確認されている。
彼らは何かしらの手段で大地の下に覆い隠された龍脈を感知しており、一説によれば彼らの血に流れる魔力と龍脈に流れる魔力に近似性があるためだと言われている。
つまり、竜の血液が龍脈を探知する探知機となるのならば。
竜の血液を入手し接種、あるいは加工し魔道具とすることによって別種族が龍脈を検知できる可能性があるのではないだろうか。

「作業記録 F14021125」 記録者:ロフカ・スティムソン

調査隊により発見された箱の解析が完了。
どうやら神の力を抑える魔術式が記述されているらしい。
試しに箱の近くで信仰魔術を使用したところ不発、あるいは効果が著しく減衰した。
これを利用すれば『越冬計画』の目途が立つかもしれない。
より詳細に効果範囲や効果強度を操作できないか解析を続ける。

「作業記録 F14030316」ロフカ・スティムソン著

対信仰魔術式のステータス解析が完了。
実験として実験室113番の壁に記述したところ部屋内での信仰魔術の抑制ができたことを確認した。
この結果をもとに『越冬計画』を始動する。
対信仰魔術式を記載した楔の生産が完了次第、計画第二段階に移行する。

『作業記録 F14080822』 記録者:ロフカ・スティムソン

計画は失敗した。
夏のはずが外には雪が降りしきり大地を染めている。
神の力は人の手で押さえるには強大すぎた。
終わらない冬の時代が来る。
愚行を犯した身で恥を知らぬ言葉ではあるが
どうか人類よ、その歴史を絶やすことなく続けたまえ。

『作業日記』 記録者:ロフカ・スティムソン

近頃活発になっている妖魔、魔族の活動に比例する様に火山活動の活発化、気温の上昇等が発生している。
我々はこれを火の粛清の前兆と捉え、僅かながらでも人類の生存率を上げるべく火の要素に反する水、氷の要素を発する術式を組みあげ都市周辺に配置することにより火の粛清を相殺し粛清を乗り越える計画である。
課題となるのは強大な神の力を抑える手段、粛清を抑える術式の出力確保であったが対信仰魔術式の発見により粛清の神の力を利用し、逆に水、氷の術式に転嫁することでその両者を達成する検討を立てることに成功した。

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実験の結果、粛清を乗り越えた後にエリンの大地に大規模な寒波が発生することが予測された。
我々はその問題解決を次なる課題とし、研究を行う。
課題を解決するための手段として、粛清を乗り越えた後に起動する耐寒用の火の術式を組み込んだ新たな楔を開発した。
起動タイミングに関して、人力で行った場合その知識を持った人物に何らかのトラブルが発生した際のフォローが難しくなる。
また、世界各地に楔を配置するために作業量は移動も含め膨大なものとなる。
そこで我々は龍脈を通じて各地に魔力信号を送り術式を起動する人造知能を利用することを決定した。
これにより粛清後、冬を迎えた世界を元に戻す手段は確保できた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

人造知能のテスト中に問題発生、テストパターンの幾つかにおいて回答を導き出せず動作を停止する事態となった。
人造知能の想定とする動作にテストパターンへの回答動作が存在していなかったことが原因と判明。
また、テストパターンで洗い出せなかった我々の想定外の事象に対しても同様の脆弱性が存在していると考えられるため検討を行う必要がある。
想定しているものとして、現在研究中の学習を行う人造知能の利用を提案する。
様々な情報を断続的に入力し続けることにより、想定されるシチュエーションを増やし続けることが可能になる。
入力情報に関しては楔を通して本体である人造知能へフィードバックを行う形を取ることにした。

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アースランの方で騎士団が妖魔の軍団に敗北したと風のうわさで聞いた。
人類の生存権はこれでまた少し縮まったことになる。
学習型人造知能の動作状況はまだ運用に足るとはとは言えない。
緊急プランとして優先度付けの学習を行う。
優先度として人類の生存を最優先とした。
文明や生活レベルは大きく下がる可能性もあるが幾度の粛清を乗り越えた我々人類ならばきっと、持ち直せるはずだ。

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計画は成功した!
我々は粛清を乗り越えたのだ!
外は吹雪で酷い状況だが、それでも我々の目には希望の光が差し込んでいるように見える。
一部の妖魔は何とか粛清を逃れたらしいが、我々と敵対する力はしばらくは持てないだろう。
その間に人類は冬を越え、新たな発展を遂げる。
春は近い。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

神の力は人の手には余るものだった。
計画は失敗だった。
『越冬計画』により粛清を乗り越えた後、世界にはずっと雪が降り積もっている。
最早妖魔も人類も関係はない、手を取りあわねば皆死ぬ。
最後に何とか覗けた情報から考察するに、あの人造知能は人類の存続を種全体の強化によって行おうとしているらしい。
そのためならば妖魔だろうが妖精だろうが、あるいはエクスマキナでも関係ないのかもしれない。
極寒という極限環境の中、生物として強くなければ生存を許されない種族へと我々は進化を強いられている。

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人の形をした雪の化け物が歩いている。
調査に向かった仲間は奴に触れられた後しばらくもがいてから動かなくなった。
隙を見て死体を回収したが死因は低体温によるショック死だとわかった。
動きを見るに、体温のある存在…さらに言えば動物よりも人類を優先的に襲うらしい。
アレは一体何なのだろうか。

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化け物の一体を数人がかりで仕留めた。
驚くことにその体は全て雪で出来ており、体を動かす核は魔石のようであった。
不可思議なことにその魔石は雪と反発する火の属性を纏っていた。
何故このような魔導生物が湧いて出たのかはまるで分らない。
ただ一つ明白なことはこの研究所の周りは既に奴らに囲まれており、食料等から我々は後一月も生き残れないだろうことだけだ。

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とうとう私一人になってしまった。
研究所は扉を固く閉めても肌を刺すほどの冷気で満ちている。
最早日記を書く意味も見いだせないが、それでも研究者として最後まで記さねばなるまい。
報告事項として、雪の化け物の新種が発見された。
それはまるで犬のような形をしており、人型のものと比べても明らかに運動能力が向上しているように見えた。
データも証拠も足りないが、もしかしたら奴らは進化しているのかもしれない。

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これが私の遺言であり、遺書の代わりになる。
私の最後に残った幸運は、奴らに凍死させられる前に肉を斬り分けるナイフを自分の喉に突き立てることを思いつく程度の知性が残っていたことだろう。
外では種としての弱者である私を選別するために化け物どもが扉を叩き続けている。
唯一心残りだとすれば、火の術式を刻んだ楔が正常に機能し、僅かでも人類が生き残っているか。
それを確かめることなく力尽きることが本当に無念だ。
もし、生き残った人類がいるとして、この遺書を見たのならば。
どうか、生き延びて欲しい。
この長い長い冬が終わるその時まで、生き延びて欲しい。

ヴァン・ビューレンの迷宮図書館

■「エリンディルの神々」ミカエル・ロマニエル神父著

(太古の書籍のようだ)
 ここには可能な限り、エリンディルで優勢な文化集団の神々、および関連のある信仰対象を列挙した。もちろん小神、地方神等を含めればその数は膨大なものとなり、とても網羅できないため、ここに記したのは中でも多くの信仰を集める七大神を中心としている。

〇七大神
・“神々の王”アーケンラーヴ
:アーケンラーヴは七大神の一員であり、神々の王、また太陽を司る神としてエリンディルで最も信仰を集める神格である。ヴァンスター帝国においては建国の経緯から特に信徒が多く、国民の7割以上がアーケンラーヴ信徒である。
伝説によっては神々の王として邪神との戦いを率いた経緯から、荒々しく厳格な姿で描かれることが多い。
ヒューリンを創り出した神であるとともに、先史では最も人と関わった神ともされ、アーケンラーヴにまつわる伝承や武具は各地に残されている。

・“月の神”“預言の女神”ブリガンティア
:ブリガンティアは七大神の一員であり、月を司る女神、また予言をもたらす女神であるとされる。エルダナーンを生み出した神であると共に、魔法の盃により、エリンの生物に魔法の力を与えた神とされ、魔術の盛んな地域では特に強い信仰を集めている。
後述するアエマと共に慈悲深い女神としての伝承が多く、三度の粛清に心を痛めたブリガンティアは、神界で一人竪琴を弾き続けているとされる。
そのため、現代においては竪琴を引く美しい女性の姿で書かれることが多い。

・“天空神”ダグデモア
:ダグデモアは七大神の一員であり、神々の父、また天空を司る最も偉大な神格である。
世界が誕生する前、原初の混沌から最初に生まれ、ついで生まれたダナンと共に世界を形作り、数多の神を生んだとされる。
多くは豊かな髭を蓄えた柔和な老人として描かれる。
ヴァーナの生みの神とされ、キルディアやタルタルハンの一部地域では最も信仰される神格である。

・“地母神”ダナン
:ダナンは七大神の一員であり、神々の母、また大地を司る神格である。
ダクデモアと共に最初に生まれた神格とされ、ダナンとダグデモアの交わりにより世界が生まれたとされることから、女神として描かれることが多いが、エリンにその身を顕現したという伝承が七大神の中では唯一無く、またダナンが生んだ人種族が居ないことから、地域によってはダクデモアと同一視されることもある。

・“豊穣の女神”泉の神”アエマ
:アエマは七大神の一員であり、豊穣や、泉、または河川を司る神格である。
先史においては精霊を通してエリンに最もその恩恵をもたらしたとされる。
農耕の盛んな地域では強い信仰が根付いており、アエマの名を関する祭祀は数多い。

・“鍛冶神”“火の神”ゴヴァノン
:ゴヴァノンは七大神の一員であり、火や山、または鍛冶を司る神格である。
ドワーフの生みの神であり、ドワーフはそのほぼ全員がゴヴァノンの経験な信徒である。
そのため姿もドワーフのような屈強な体と髭を持つ姿で描かれることが多い。
エリンディルに存在する火山は全てゴヴァノンの鍛冶場であったとされ、近くにはドワーフ達の街も多い。
特にエルガル山麓にあるアスタロック等の大きな街では、ゴヴァノンに関連した祭りも行われている。

・“戦の神”“雷神”グランアイン
:グランアインは七大神の一員であり、戦や雷を司る神格である。
ドゥアンの生みの親であり、アルディオン大陸戦乱の活発な地域においては時にアーケンラーヴ以上の信仰を集めている。
百の腕で百の武具を自在に振るったとされるが 雷槍を持った逞しい英雄の姿で描かれることが多い。
この槍はかつての友であり、後に最大の強敵となったエルダの英雄テトラの物であったとされる。

・“海の神”“嵐の神”リアール
:リアールはエリンディル東方においてはアエマに代わり七大神として数えられる神格であり、海や嵐を司る。
西方においても沿岸部において広く信仰されており、船乗り達は必ず自らの船にリアールの紋章や像を祀るとされる。
巨大な魚の牽く船に乗った大柄の男性の姿で描かれることが多いが、この魚は「水泳ぐ魚の王リヴァイアサン」であるとも、サハギンやギルマンの神でもある「大海魚ダゴン」であるともされる。

・“英雄神”ナレシュ
:ナレシュはマジェラニカにおいて強い信仰を受ける英雄神である。
マジェラニカを支配していた魔竜ヴリトラを討伐し、マジェラニカに平穏をもたらした功績により、生きながらにして神の座に召し上げられた人間であり、元はヒューリンであったとされる。
神になった後の伝承は少ないが、一説では次なる粛清を未然に防ぐため、エリンの外の世界から攻めてくる外敵を世界の外にて押し止める戦いに身を投じているとされる。
元は人間であったことから、他の多くの神と異なり、肖像がハッキリとした姿で書かれることが多い。
その殆どは精悍な顔つきをした金髪金眼の青年の姿である。

・“銀車輪の女神”アリアンロッド
:アリアンロッドはエリンディルにおいて広く信仰されている、運命を司る小神である。
この神には謎が多く、姿を表した伝承が存在しないどころか、この神について書かれた伝承自体も数少ない。
にも関わらず教会もこの神の存在を認めており、冒険者からの信仰も厚いため、一部の学説では、理由のつけられない奇跡そのものがやがてアリアンロッドという神の名を得たなどとも言われている。

■「知の選択」-ローレンツ・セプティム著-

(火の時代の啓蒙書のようだ)

我々は有限の存在である。
永き時を生きるエルダナーンとて、その命は永遠ではなく、死して後には積み上げた叡智も泡と消えるのだ。

それ故に人は書物を残す。
人が死して後にまで長きに渡って、声の届かぬ遥か彼方へとその叡智を伝えることこそが書物の本懐であると言えるだろう。

その点において「アイスペーパー」とは正に知識人の理想そのものであった。
ギルギット王国の歴史研究者ファブによって現代に蘇った水の時代の神秘。
燃えず朽ちず、石版などと違い携行性も損なわないこの紙は、恐らく火の粛清の後も我々の知を未来へと伝えてくれるだろう。

さて、ここからが本題だ。
再度言うが、我々は有限の存在である。
取り入れられる知識もまた、有限なのだ。
つまり、無益な知識で頭を埋め尽くす時間など無いと言うことである。

だと言うのに現状、巷には無益なことを書き綴っただけの本が溢れている。
更には件のアイスペーパーもまた、良からぬ方向に拍車をかけているのだ。
「寝るのが楽しみになる本」なる本がアイスペーパーとして加工されているのを見かけたとき、筆者は頭が痛くなる思いだった。

今一度問いたい。
諸君らはこのような本を粛清の後の世にまで残すつもりなのか。
我々は今こそ行うべきなのだ、継承すべき知の選択を。

(この本に抱く感想は様々だろう……。)

■「マジェラニカおよびタルタルハンの伝統的民族に見る小集団の運用」-カルナ・エメリオ・ロッソ著-

(太古の論文のようだ)
つまるところ我々のような人類種が自らの仲間として認識できる個体数の限界は50から多くても200前後と考えられる。

それを超える集団が形成されると、その平和的維持のためには権力や規律、あるいは圧倒的な暴力による統治構造が必要になると考えられる。

古代の狩猟民族において身内同士の闘争が現在より少なかったとされるのは、この形成される集団の規模の制限と認知的限界が大きく関係しているのではないだろうか。

■「クロック・ワーク・ロマンス」-バレルマン翻訳-

(太古の小説のようだ)
テレオノールが無言のままにこちらへとアームを伸ばす。

硬質なそれに指を絡めながらレミリオは彼女の冷たいスピーカーに熱い接吻を交わした。

毛穴の一つすらない磨き上げられたその顔は紅く色づくこともないが、彼女の興奮は明滅するモノアイが雄弁に語っていた。

ドラム缶のように起伏のない滑らかなボディに指を這わす。

横倒しになった彼女は、この手の中にあってさえ、気を抜くと不意に何処かへと転がって行きそうな危うさを秘めていた。

離してなるものか。

レミリオはビクリとジャイロを震わせるテレオノールを強く抱きしめる。

指先には既にボディとは違うを凹凸を感じている。
もう我慢などできそうにない。
H.Vエンジンの様に高鳴る鼓動が胸を突いた。

「給油口、開けるよ?」

■「カールおじさんのおいしいパン」-ユパ・グルーマ著-

(太古の児童書?のようだ)
カールおじさんのパンはすぐさまひょうばんになりました。

お店の前には長い長いれつができ、

「ちょうだいちょうだい!パンをちょうだい」
「あれのない生活はたえられないよ!」
「へへ、パン、へへへ」

とおおさわぎです。

れつの中には、あのいやみなゼブリンはくしゃくもいました。

はくしゃくはカールおじさんのすがたを見たとたんにかけよってきました。
「なあ、あのパンを食べてからずうっとあのパンのことばかりかんがえてしまって、心がおちつかないんだ。あのパンはいったいどうやって作ったんだ!?」

「なあに、ざいりょうを少しこだわってみたんですよ。はくしゃくのアドバイスのおかげです」

カールおじさんはニッコリとわらっていいました。

「さて、つぎのパンをやかないと」

そういってカールおじさんが手にとったのはもちろんあのこむぎこです。

「やっぱりアードモアのこむぎこにしてせいかいだった!なくなる前にたくさん買っておかないとな!」

■「無関神論1」-セオドア・マクスウェル著-

(太古の書籍のようだ)
エリンディル大陸において、広く信仰されている七大神。
世界を造り、生命を造り、人を生んだ神々を讃える歌は数多く存在する。
しかしここでは、神々に依って生きることの危うさを説きたい。

神はこれまで3度の粛清を起こした。
それはどれもこの世界を害する邪神や、魔族、妖魔を滅するためであるが、同時に多くの人の命をも失わせた。
この行いについての是非をここで問う必要はない。

重要なのは神の関心事とは何かということである。
結論から述べると、それは我々の苦しみではないのだ。

■「無関神論2」-セオドア・マクスウェル著-

(太古の書籍のようだ)

歴史的な文献や伝説の多くは、絶望の時代に神、あるいは神々の直接介入があったことを示している。

また、神殿から発行される書物には神を信仰し、良く仕えることで、神からの直接の祝福や援助を求めることができた、という記述がなされており、多くの人には神がまるで俗世のことを気にかけているかのよう思えるだろう。

しかし疫病や飢饉に対する神々のあからさまな無関心ぶりを見よ。
まったく同じ神々が、苦痛や死の瀬戸際にあるものたちを前にしてもその手を差し伸べぬことのなんと多いことか!

まるで、自らが手を下す必要などないと言わんばかりだ。
つまるところ、教会が挙げるような事例は偶々神の関心事が人の利害に一致したに過ぎないということなのである。

神の論理とは常人の理解の及ばぬところにあり、苦境の際にそれを頼るのは余りにも愚かであると言わざるを得ない。

「妖精と竜の旅~アトランティス編1巻~」-フランネル・フォン・ブラン著-

(太古の冒険小説のようだ)
第1章~流されて三日月島~
代わりに私が目にしたのは想像を絶する光景であった。
そこにあったのは祠…いや、正確には祠の跡、だろうか。
独特な意匠で縁取られた門と、そこからまっすぐに伸びる石畳、古びてはいるが内部全てが白亜に彩られたそれは、その先に祀られているものの威光を示すかのようであった。

しかし、その先には何もなかった。
祠や石像などのあってしかるべきものはもちろん、石畳、果ては地面すらも。

「なんだ…これは…」
            
視界の先に見えたのは水平線。
穴から顔を出し、左右を見渡すとこの祠跡を中心として弧を描くように、抉れた崖が続いていた。

そう、「なにか大きな生き物に齧り取られでもしたかのように」この島自体がここで途切れていたのだ…!

「妖精と竜の旅~アトランティス編2巻~」-フランネル・フォン・ブラン著-

(太古の伝記のようだ)
第7章~帰還~

ガープからの歓待はそれはもう過大なものだった。

私自身がギルマンの敵視する人間でないこともあるだろうが、それだけ今回の一件はギルマン達にとって憂慮すべき問題であったらしい。

私の方から断らなければ、あと一月はアトランティスで過ごすことになったと思うと苦笑が漏れる。
そうなっていればジェミニにどれだけの心配をかけただろうか、と。

去る時には山程の真珠や沈没船から引き上げた宝石を押し付けられそうになったが私の小さな身体には有り余るため、これも断って移送泡の中に潜り込む。

行きも大概だったが、これはこれで割れないかどうかが不安になるものだ。

海面へと浮上する直前、遠くでブオーンという鳴き声を聞いた。

それが何故かもはや神殿から離れられない身となった友からの別れの言葉に思えて、私はひどく切なくなった。

ガープは既に老いているし、ギルマンの寿命を考えるとそう遠くない未来に、バゼルを知るものはは一人も居なくなるだろう。

妖精の寿命も龍の寿命も、一人きりで過ごすには余りにも長い。

バゼルも私もどれだけ生きるかは分からないが、許されるのであれば、またいつか会いに行きたいものだ。

■「空への逃亡」-ドーラン・バニス著-

(太古の書籍のようだ)
火の時代より遥かな昔、人は空に住んでいた。

空中庭園テニアがその最も有名なところであるが、それに類似した空中都市の目撃例は少なくないこともこの説を裏づけている。

しかし、それは人類の栄華を表している訳ではないというのが筆者の見解である。

何故ならそれらの空中都市は、雷雲に包まれている、姿を隠す魔術の層に覆われているなど、兎に角外部からの発見を避けるかのように作られているのである。

空に都市を浮かすほどの力がありながら、何を恐れていたというのか。

現在判明している事実からの推論として…

(以下には難解な文章が書き綴られている)

■「ヴァン・ビューレン~栄光の一族~」

(太古の文献のようだ)
ヴァン・ビューレン一族の存在は今ではほとんど忘れられているが、当時、その名はエリンディル中に知れ渡っていた。
彼らの栄華は「剣の王女アストレート」の襲来により瓦解し、更には僅かに残された彼らの秘宝もバラムの乱の混乱の中で世界中に散逸したが、彼らの逸話はおとぎ話として残されている。

ここでは、その中でも特に有名な四人と彼らが有した秘宝について記した。

「剣鬼ヴァネッサ」
ヴァネッサ・ヴァン・ビューレンの逸話は各地に残されている。
その剣技は彼女とのかかわりを持ったいくつかの国では奥義として受け継がれているようだが、攻撃を決して避けず、その身で受けた剣の勢いを利用する彼女の戦い方は決して真似できるものではなかったらしい。
一説では彼女の纏った鎧が迫りくる剣の気配を鋭敏に感じ取り、紙一重で彼女の身を守っていたからだとされている。

「魔竜狩りヴィクトール」
ヴィクトール・ヴァン・ビューレンは「魔竜クラドメッサの両断」というたった一つの偉業によってその名を知らしめた。
しかし真に有名なのは彼の死後、ほかの冒険者の手を渡り歩いたその大剣であろう。
彼の大剣はその純白の刀身から「ネーヴェ・スパーダ(雪の剣)」と呼ばれ、魔の者に対して絶大な威力を誇ったが、あまりにも多くの魔獣、妖魔、魔族を屠ったが、最後は瘴気を吸い込みすぎたあまりその刀身を黒く染め、遂には持ち主の命を蝕んで殺してしまったとされる。

「ロアスランの守護者ヴェルナルド」
ヴェルナルド・ヴァン・ビューレンの伝説は、冒険者としてのものというよりは騎士としての者の方が多い。
彼の秘術により作り出された鏡はどのような魔術も自動的にはじき返し、己に迫りくる刃にだけ気を払えばよかった。
その鉄壁さにより、あらゆる外敵から小国ロアスランを守り抜いたが、彼の死因もその秘術にあった。
小国ロアスランに黒魔術教会の毒牙が迫ったとき、彼はいつも通り秘術を展開したが、黒魔術教会司教の放つ特別な魔術に彼の鏡は反応せず、彼は深手を負ってしまったのだ。
結果として彼はその命を賭して黒魔術教会を打倒したが、その傷がもとで彼は命を落としてしまった。

「千里眼ヴォーダン」
ヴォーダン・ヴァン・ビューレン以上にエリンディルの遺跡を踏破した人間はいないだろう。
彼の右目に填まった義眼の前では遺跡の暗闇や隠蔽されたあらゆる罠や外敵の存在は意味をなさなかったとされる。
雨のように降り注ぐ矢からも悠々と無傷で生還したとされた彼だが、しかしその”見えすぎる眼”故か、人の近くに寄ることを病的に嫌がったようだ。
彼の他人とのやり取りは遺跡についての報告のみであったが、その功績ゆえに彼を尊敬する者は多かった。
しかし、ある遺跡に一人で探索に出かけた後、彼が帰ってくることはなかったという。

■「我々と神々の関係について」-マーテル・オーブ著-

(太古の文献のようだ)
オルテニア学派の論文によると、賞賛や犠牲や奉仕による崇拝などから神々は実際に力を得ているという。
神々の社会における総合的な地位は、その崇拝者の数によって決まるという論理すら成り立つかもしれない。
これはあくまでも私的な推論でしかないが、小規模な宗教施設と比較して、大神殿では神の祝福や支援がさしたる苦労もなくあっさりと手に入るという明白な事実がその根拠となっている。

また別の論文によるとこの世には、人間から受ける信仰や感情をみずからの力に変えられる能力を持つ存在が報告されている。その多くは精霊や霊魂、魔族の類であるが、人間の中にもこうした力を持つ者は存在するようだ。
最も有名な例が英雄神ナレシュである。
多くの偉大な功績により彼は多大な尊敬と信仰を集め、遂にその魂は神へと至った。

そしてナレシュの存在は、また逆の仮説を立てる手がかりともなる。
信仰の力により、その存在を神や女神の領域まで高められるのであれば、反対に時の流れとともに信者のほとんどすべてを失った神や女神は、神格の本源ともいえる最古の姿に退行するのではないかということだ。
ひょっとすると強い力を持たない精霊や霊魂はかつて神であったものの残滓なのかもしれない。

メモ

「殴り書きのメモ」

殴り書きのメモ
(古いメモだ)

島の消失(ダイワのシュリ、エリンディル南部の無人島、アルディオン西海岸←ほかにも?)

・シュリ、リアールの大神殿⇒神の不在に関係??

・エリンディル南部⇒おそらく大氷原のこのあたり(矢印が地図まで引かれている)
→どうやって見つけるか

・他の神殿も同様?

・アエマはおそらく近い

(下には簡易的な地図が書かれている。)

■「神の火についての考察1」

(この街で書かれたもののようである)

神の火とは全く神秘の存在だ。

人の集まる場所には必ず存在するが、ヴァン・ビューレンの書庫を紐解いてもそのような記録は存在しない。

供物を捧げることで周囲の温度を引き上げる火。

世界が氷に包まれる以前には必要のないものだろうから、恐らく世界がこうなった後に作られたものだと考えられる。

しかし、こんなものを一体、いつ、誰が、どのようにして作り、どうやってこの世界にばら撒いたというのか。

■「神の火についての考察2」

(この街で書かれたもののようである)

円筒の中で揺らめくあの火が通常の火と同様に熱を持っていることは間違いない。

しかしその熱で周囲を直接暖めているわけでは無さそうだ。

この村全体を温めるほどの熱量を放っているならば、その近くに人が近づけるはずがないのだから。

では神の火を中心として、人が集まって暮らすに十分な範囲の温度をどうやって上げているのか。

■「???の日記」

氷降月17日目
新しい遺跡が見つかったと聞いて喜び勇んで探索に行ってみたが、拍子抜けだった。
ただの少し深い穴っぽこだ。
古い死体がいくつか転がっていたが、大方大昔の蛮族か何かの隠れ家だったんだろう。
目ぼしいものは宝石が数個と、見たことのない石の嵌った首飾りくらいだ。

氷降月22日目
ここ最近、夢で妙な景色を見ることが増えたきた。
雪のない道、緑の葉が茂る木々、見たこともない美味そうな料理や、石造りの大きな建物。
そしてそれら全てが炎で包まれてゆく。
この不可解な現象はあの首飾りを拾ってからだと思い、試しにテムジンやナナメに持たせてみたのだが何も変わったことは起こらない。
俺だけに影響するものなのか。
テムジン達は気味が悪いから捨てろというが、俺はこの現象の謎が気になって仕方がない。

氷降月30日目
そうか、そういうことだったのか。
俺が生まれてきた意味とは正にこれだったのだ。
この時代、仮に氷の時代とするならば、粛清は未だに続いている。
封じられた神、神の火、それらの謎を解き明かすこそ、ヴィルヘルム・ヴァン・ビューレンの使命なのだ。
誇り高き祖先がそうしたように。
そうと決まれば迷宮書庫にゆかねば。
まずは封印の謎を突き止めるのだ。