メインストーリー/風雨来たらんとす

Last-modified: 2025-12-01 (月) 19:40:19

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交差する光と闇

数日が過ぎ、長く続いた静寂がようやく破られた。
瞬光が遂に目を覚ましたのだ…
アキラ:瞬光が起きたみたいだ、
    リン、先に様子を見てあげてくれ。
アキラ:ダイアリンと盤岳先生はもうすぐ到着する。
    瞬光に会ってから、また他のことを話し合おう。

瞬光に話を聞こう
あれから数日が経った。今の瞬光の様子が気になる…
部屋探索

(ベッドを調べる)
適当観の古風な客室のしつらえは、
枕から布団に至るまで、どれも見慣れたもの。

これについて、福福先輩は声を大にして強調していた。
この寝具だけは、彼女自ら太陽の下で干したもので、
誰が使うものよりもふかふかだと。

「福姐さんが用意してくれた布団で寝たら、
すごく長くて素敵な夢を見たのよ」と瞬光はいつも言う。

でも、みんながいくら尋ねても、
素敵な夢については何も話してくれない…
目が覚めた途端に忘れてしまったのかな。

(花を調べる)
部屋には様々な種類の花が飾られている。
この部屋に住んでいる瞬光は、それぞれの植木鉢に
メモ代わりの付箋を丁寧に貼り付けている。

「毎週の剣術試験の後に一度、水やりをすること」
「毎朝、朝食を食べ終えたら一度、水やりをすること」…

それぞれの注意書きの下には、
水やり回数を数えるための「正」の字がびっしりと書かれていた。

…まるで、忘れてしまうことを恐れているかのように。

(青果ボンプを調べる)
インターノットで話題の青果ボンプシリーズは、
瞬光が最近集めているお気に入り。

真に縁のある者、そして最も粘り強い客だけが、
一番希少なパイナップを正確に引き当てられるという。

部屋にある青果ボンプの数を見るに――
瞬光とこの子たちは、よほど縁があるか、
それか瞬光がよっぽど粘り強いかのどっちかだね。

(猫の寝床を調べる)
瞬光が心を込めて用意した猫の寝床。
初めのうちはどの猫も使おうとしなかったけど、
1匹の猫が偶然その部屋に足を踏み入れたことで…状況は一変した。

それから間もなく、
適当観に居候している猫たちは熾烈な内部闘争を繰り広げ、
最終的に茶トラの子がその使用権を勝ち取った。

かくして、この猫の寝床は玉座のごとく畏れ多い存在となった。
主である茶トラを除き、
他の猫も人間も、遠くから眺めることしか許されない。

(茶トラがいるとき)
猫の寝床で休んでいる茶トラは、
威厳のある姿で己の縄張りを見渡している
もちろん、人間の視点から見れば、ここは瞬光の部屋だけど。

自活できる猫の世話は楽なもの。
たとえ3日ほど餌やりを忘れても、自力でなんとかしてくれる。

適当観の誰でも知っていることだけど、茶トラは厨房に忍び込み、
盗み食いを成功させ、そして無事に撤退するための秘密のルートを、
少なくとも3つ以上は把握している。

瞬光は茶トラに伝説のプロキシになる素質を見出していて、
時折「プロキシちゃん」って
呼ぶことさえあるって聞いた。

そう呼んだのを見かけたことはないけど…

(瞬光の日記帳を調べる)
これは、瞬光の日記帳なのかな…?
大事なことが書いてありそう
とりあえず元の場所に戻しとこ。

(葉瞬光と話す)

不安を抑えて

私は瞬光に、彼女が剣を抜いて気を失ったあとに起きたことを説明した。二人の分析では、釈淵さんは雲嶽山を裏切ってはいないものの、急いで去った理由は分からなかった。そして、瞬光の身体と意識の状態について探りを入れてみた結果、大丈夫だったことが判明した。
》瞬光、調子はどう?

リン:瞬光!調子はどう?どっか具合の悪いところはない?
葉瞬光:すごく…長い夢を見てたみたい…
葉瞬光:そうだ!お兄ちゃんはどこ!?
    戻って…きてくれた?

》まあ、落ち着いて…
》話を聞いて…

リン:心配しないで。ちゃんと全部話すから。
リン:瞬光は、あの「始まりの主」…の、原型みたいなものを倒した後、
   気を失ったの…黒い霧みたいな力はその場から逃げちゃったけど、
   釈淵さんも正気に戻ったみたいだった
リン:気を失った瞬光を受け止めて、
   小さい声で何か言ってたみたいだけど…
   私たちにはただ、「瞬光を頼みます」とだけ言って
   どこかに行っちゃった…
リン:盤岳先生もダイアリンも怪我してたから、
   誰も追いかけられなかったの…
   でもあのときの釈淵さん、
   何か確かめなきゃいけないことに気付いたみたいだったな…
葉瞬光:一人でどこかに行っちゃったの?そんな…早く探さなきゃ。
    もし体に始まりの主の影響が残ってたら、万が一…!
葉瞬光:そうだ、師匠は?師匠は帰って来てくれた?

》まだだよ…

リン:師匠は…まだ適当観に戻ってないの。
   釈淵さんの件で、処理に飛び回ってるみたい…
   でも、雲嶽山からもうすぐ、
   始まりの主のことを調査するために誰か来るらしいよ。
葉瞬光:雲嶽山から…

》(瞬光とこれまでの出来事を分析する)

リン:今までのことと、サラの話を踏まえて思ったんだけど…
   「始まりの主」が狙ってたのは、
   最初から最後まで瞬光と青溟剣だったみたいだね?
葉瞬光:うん…アイツはずっと、青溟剣の力を使わせようとしてた。
    ワタシが自分で剣棺の封印を解くように仕向けてきたり…
葉瞬光:アイツがお兄ちゃんを操ってたのも、
    ここぞってときにお兄ちゃんを通して
    ワタシと青溟剣の力を吸収しようとしてたんじゃないかな…

》まだ覚えてる…?
》どうやって「始まりの主」を倒したのを

リン:じゃあ、覚えてる…?始まりの主をどうやって倒したか…
葉瞬光:あのときはギリギリだったから…
    青溟剣の力を本当の意味で開放した時、
    剣とワタシの間に、不思議な共鳴みたいなものを感じた…
葉瞬光:この剣に宿ってるカなら、目の前にいる敵を
    消滅させられる…そう直感的にわかったの。
    だからこそ、最後の一撃でお兄ちゃんを取り戻せるって信じてた。

》(再び探りを入れる)

リン:その…他には?そのとき、なんか感じなかった?
葉瞬光:他に…って?

》例えば、体のこととか…
》例えば、見た目のこととか…

リン:例えば、体のこととか…
   少なくとも見た目には変化があったように見えたんだよね。
   剣を解放したとき、瞬光の髪が真っ白になってさ…
葉瞬光:あっ…ひょっとして、代償のことを心配してくれてるのね?
葉瞬光:安心して、確かにあの姿は剣の影響だったと思うけど…
    ワタシはちゃんと何もかも覚えてるもの!
    剣の光があの怪物を引き裂く光景も、
    お兄ちゃんが託してくれた言葉も…
葉瞬光:もし不安なら、テストしてくれていいわよ。
    術法の暗唱とか…雲嶽山の掟、第何条とか。
    それか、アナタと出会ってからの出来事を
    順番に言っていくってのはどう?

》よかった
》今回は大丈夫だったみたいだね

リン:あはは…本当に大丈夫みたいだね?それならよかった…
葉瞬光:そうね。普段はワタシ、あんまり運には恵まれない方なんだけど…
    たまにはこのくらい、いいことがあってもいいわよね!
葉瞬光:まあ、せっかくお兄ちゃんを見つけたのに、
    またすぐいなくなっちゃったんだけど…

》少なくとも釈淵さんは…
》そそのかされてたわけではなかった…

リン;うん…でも釈淵さんは、
   サラや始まりの主にそそのかされてたわけじゃなかったし…
   それどころか、師匠と連絡を取ろうとしてたんだもんね?
葉瞬光:サラ的には、ワタシと青溟剣の繋がりを断てるって言えば
    お兄ちゃんを引き込めると思ってたのかもしれないけど…
葉瞬光:お兄ちゃんの目的は、協力するふりをして
    始まりの主が完全なものになる前に
    自分で始末をつけることだった。
葉瞬光:逆にワタシは、自分と青溟剣が狙われてたなんて夢にも思わなくて…
    まんまと引っ掛かってあの場に行っちゃったんだよね。はあ…
葉瞬光:でも…もう危機は一旦去って、
    お兄ちゃんだってサラたちと縁を切れたのに、
    どうしてまだ戻ってきてくれないんだろう…?
葉瞬光:確かにあのとき言ってたの。おぼろげだけど…
    また行かないといけない、でも必ず助けるから
    信じて待っててほしい…って。
葉瞬光:でも、剣の代償のことが心配なら、
    きっとそう言った気もするんだよね。
    何か、ワタシに別のことを伝えようとしてたのかな…
葉瞬光:今すぐ一人でなんとかしないといけない、
    絶対にワタシたちを遠ざけておきたい…
    そう思うほど、恐ろしい何かに気付いちゃったとか…?

》今はゆっくり休んで…
》元気にならないと探しにいけないし…

リン:釈淵さんが信じてって言ったなら、私たちも信じようよ。
   とにかく、今の瞬光に必要なのは、
   しっかり休んで、早く元気になることだからね!
リン:本調子に戻ったら、なるはやでまた釈淵さんを探しに行こ!
   今度という今度は、絶対に逃がさないんだから!
不安げだった瞬光の目に、ふと力が戻る。
彼女は不安を一時的に押し込めるように力強く頷き、
その瞳に再び希望の光を灯した…

ダイアリンと話そう
どうやら瞬光は無事みたいだった。ダイアリンと盤岳先生も適当観に来ている、瞬光の無事を知らせに行こう。

(ダイアリンと話す)

束の間の休息

みんなは瞬光に隠れて、Fairyが発見した「始まりの主」と共に現れた4つの共鳴シグナルについて話し合っていた。「始まりの主」はまるで深い秘密を抱え、ホロウの奥からこちらを窺っているみたい…今はただ、嵐の前の静けさかもしれない…

ダイアリン:瞬光ちゃん、どうでした?目を覚ましたばっかりですし、
      みんなで押しかけてあれこれ聞けないですから。

》釈淵さんを心配してはいるけど…
》少しずつ落ち着いてきたよ

リン:まだ釈淵さんのことは引きずってるけど
   あの怪物を倒して、お兄さんもその場から脱出してたって教えたら
   少し安心したみたい。
盤岳:うむ。おぬしには心労をかけるが…
   ここ数日は、瞬光の精神状態に
   より一層留意してもらえるだろうか。

》任せて、盤岳先生
》しっかり様子見とくよ

リン:安心して、盤岳先生。
   あの子が青溟剣を抜いたのは、お兄さんだけじゃなくて
   私たちのためでもあったんだもん。責任を持って付き添うよ。
ダイアリン:ま、あの子はあたしたちが思ってる以上に強いですからね…
      だから余計に心配したくなるところもあるんですが。
ダイアリン:――さて、本題に入りましょうか。
      「共鳴する信号」…でしたっけ?おふたりが言ってたあれは、
      いったいなんなんですか?
アキラ:僕から説明しよう。
    あのときは突然のことで確証が持てず、
    すぐには伝えられなかったのだけれど…
アキラ:始まりの主…というか、瞬光が撃退した謎のカが弾けたとき、
    ラマニアンホロウ内の4か所で同時に、一瞬だけ
    極めて相似したエネルギーの信号が観測されたんだ。
ダイアリン:4か所?それぞれどこなんですか?
アキラ:いま具体的な場所がわかっているのは、4つのうち3か所。
    今回始まりの主が現れた鉱区跡地と、僕たちが
    讃頌会の司教メヴォラクと対峙したところ…そして、
    昔日の丘でミアズマに包まれていた「町」という場所だ。

》どれも…
》私たちの足跡がある場所

リン:どれも…私とお兄ちゃんが行ったことのある場所だね。
盤岳:…それは真か?
ダイアリン:んー…どれもラマニアンで人気の観光スポット、
      ってわけじゃないですもんね?
アキラ:奇妙なのはそれだけに留まらない。
    もっと気になるのは、最後の4つ目なんだ…Fairy?
Fairy;はい。この「共鳴する信号」を構成する最後の4つ目は、
   発信座標が極めて不安定であり、存在が観測されるのみに留まりました。
   強力なエネルギーの干渉によって、正確な位置特定には至っていません。
Fairy;信号のピーク時、瞬間的なミアズマのエネルギーレベルは、
   ラマニアンホロウ内における既知のあらゆる記録を上回るものでした。

》まるで「返事」…
》それもすぐに引っ込んでしまった

リン:他の3つの信号に応えて、遠い場所から返ってきた「返事」
   そんな感じだった。
   すぐ途切れて、そのあとは気配を消しちゃったけどね。
アキラ:その3つに、僕たちが直近で行っていたことはきっと偶然じゃない。
    そのうえFairyでさえ特定できないほどの深度にある座標なんて…
    一体どこなんだろう?
盤岳:共鳴する4つの信号…これは、我輩たちが未だ与り知らぬ
   繋がりを示しているに違いない…
ダイアリン:ふーむ。あの気持ち悪いミアズマのおばけも、
      それに操られてた葉釈淵さんも…ぜんぶ始まりの主からしたら、
      ちょっとした「探り」を入れてただけだったのかもしれませんね。
ダイアリン:あれが何であれ…見えないところからこっちを窺いつつ、
      何かを企んでるに違いありません。
      情報は黒枝で共有して、引き続きホロウの変化は気にかけておきます。
盤岳:うむ。我輩も、さらなる探査を続けるとしよう。

》心強いよ
》私たちもアンテナ張っとくね

リン:黒枝と盤岳先生が揃って動いてくれるなら、すっごく心強いよ。
   瞬光に付き添いつつ、
   私とお兄ちゃんもアンテナ張っとくね。
ダイアリン:さて、いつまでもエピローグの気分でいちゃだめですよ。
      気持ちを切り替えていきましょう!
      今はただ、嵐の前の静けさかもしれないんですから…

お兄ちゃんと話そう
一件落着したし、最後にお兄ちゃんとこの数日間の出来事について話そう。

(ダイアリンと話す)
ダイアリン:ふぅ…瞬光ちゃんが無事でなによりですね…
      そうだ、優しいプロキシさんは「タダ働き」なんてさせないから、
      ちゃーんと報酬をくれるんですよね?
      あ、経費がわからないならリスト作りましょうか?
ダイアリン:まず交通費でしょ、それとメンタルへの攻撃もあったんで
      これも補填してもらって、それから残業中の食事代と、
      あとティーミルク代も…

》コホン…とにかくお疲れ様
》この後はどうするの?

ダイアリン:時間が許す限り報告書を書いて…山積みの行動記録も整理して…
      お偉方のじい様ばあ様のながーい尋問にも付きあってあげて…
      それから…「新人採用枠」もひとつ、作ってもらわなきゃですね。

》新人?

ダイアリン:ええ、黒枝も業務拡大中でして、猫の手も借りたい状況なんですよ。
      打ってよし打たれてよし、力仕事もなんでもござれって人がいたら
      ぜひ採用したいですねぇ…ついでに弱みになる問題でも抱えてたら
      なお良しなんですけど。
ダイアリン:残業はまあ、避けられないでしょうし…
      出張も日常茶飯事って感じですけどね?えへへ。
ダイアリンは何か面白いことでも思いついたのか、
どこか…不敵な笑みを浮かべた…

(盤岳と話す)
盤岳:改めて、おぬしに礼を言わせてもらいたい。
盤岳:この一切を経た後も、過去という名の重荷は、
   今なお消え去っていないようだ。だが
   かつて昼夜を問わず、我輩のコアを刺し貫いていたものは…
   いくぶん抜けたようである。
盤岳:あの痛苦と困惑の重みは…もはや遠くのものだ。

》自分を受け容れるときだね
》新しい始まりだ

盤岳:うむ。黄金の黄昏のごとく、終わりはまた夜明けでもある。
   この身も心も、もはや昨日までの盤石ではなくなった。
   一切は変わってゆく。

》私たちの関りかたも
》変わっちゃうかな?

盤岳:ふむ。おぬしにとり、この身が「盤岳先生」であることは
   不変であろう。あたかも古くからそうであり、
   この先もそうであるように。

》私としては
》「リン殿」はまだ慣れないけど

盤岳:誤解があるようであれば、解いておかねばならぬ。
   「殿」とは疎遠ではなく敬意と尊重のあらわれ。友であるならば、
   なおのこと礼を尽くすべし、とな。…あくまで我輩が
   己にのみ課していることではあるが。
盤岳:ゆえに今後とも、よほどの無礼講な場でもなければ――
   是非「リン殿」と呼ばせてほしい。

》わかった
》光栄だよ

盤岳:うむ。改めて感謝しよう…おぬしと、
   我輩たちを取り巻く一切に。

(アキラと話す)
アキラ:これで一件落着か。
    でも…まだ他にも厄介事がある気がするな。
    「始まりの主」のことや、ホロウに隠れた他の秘密とか…
    まだはっきりと見えてこない。
アキラ:けれど、今回のことや
    これまでのピンチは乗り越えることができた。
    そうだろう?

》この先、何が待ってても
》頼れる仲間がそばにいる

アキラ:ああ、僕たちのそばには
    いつだって仲間がいてくれる。
    さて、大事なことも考えるのは明日にしようか。
    ひとまず温かい風呂に入って、ぐっすり眠ろう。
アキラ:リンも早く休むといい。
    しっかり休んで、次の冒険に備えよう。

ベッドで休もう
そろそろ休憩の時間だね。しっかり休んで、次の冒険に備えよう。

(ベッドを調べる)
ふかふかの枕に深く頭を沈みこませると、
ずっしりとした確かな温もりが、
手足の先から広がっていく。

あの手に汗握った戦いも、未だはっきりしない謎も、
次第に遠く、曖昧なものになるような…

新たな身分

照は任務を終えなかった理由を問うも、ダイアリンは盤岳を黒枝に推薦すると話した。これは彼女の裁決の結果であり、コアを確保したのも同然のため、任務は達成したことになるとダイアリンは主張した。照もやがて、その結論を受け入れた。

一方その頃、まだ行動報告を整理しているダイアリンは、
お馴染みの来客を迎えることに。
ダイアリン:あれあれ、お仕置き担当は照ちゃん先輩ですか?
      てっきりあの氷みたいな「処刑人」が来るのかと思ってましたけど。
      知っての通り、あたし彼女とはウマが合わなくて…
      その点、照ちゃん先輩はウサちゃんですもんね?
照:ウン、ボスはまだ新しい指示を出してないもん。
  彼女も動くわけないよお。まあだからって、
  今さら反省したところで遅いかもだけど…
照:ザオちゃんは、個人的に、説明が欲しいから来たんだよね。
  あれだけ大事な情報をあげたわりに、
  今回の任務はちょっとイマイチな結果だったから。
照:だってそうでしょ?上層部の命令は、
  「パージユニット・ゼロ」のコアを回収して
  不確定要素を取り除くことだったんだから。
照:でもダイアちゃんたら、コアを回収しないどころか
  対象をもっと不確定で危ないものに変えちゃったんだもん。
  これって職務怠慢…?それとも、
  「おこ」にしたい誰かがいるのかなあ?
ダイアリン:ちょっとちょっと、あたしは任務を完了しましたよ?
ダイアリン:あたしは黒枝の裁決官として、きちんと最終的裁定権を行使したんですから。
      裁定は次の通りです。当該コアの意識は初歩的ながら制御が可能であり、
      潜在的価値があると一時的に証明されました。よって当裁決官は、
      これを抹殺する必要はないものと判断します――
ダイアリン:それと、コアはきちんと「回収」しますよ。
      盤岳先生っていうボディに入ったままですけどね…
      照ちゃん先輩、あたし、
      彼を黒枝に推薦しようと思ってるんです。
照:えぇ~…!?黒枝に入れちゃうのお?
ダイアリン:だって、その方が面白いと思いませんか?
      彼の身体的スペックと、掌握してるあらゆる情報は
      きっと黒枝の助けになりますよ。
ダイアリン:長期的に見れば、一回こっきりしかない
      「コアデータの輪切り」より、ずっと価値があります。
ダイアリン:それに、TOPSのお偉方が知ってるかわかりませんけど…
      盤岳先生のコアをいじって、殺戮兵器から機械人らしい外見に改造したのは
      他でもない「あの大物」らしいじゃないですか?
      ボスがこの件に興味津々なのも、それが理由だとか…
照:はぁ…ダイアちゃんって、
  そういう言い訳を見つけるのうまいよねえ…
  でもまぁ…いいんじゃない?
照:キミの裁定は、ザオちゃんも追認しとくね。
  その代わり…上層部の石頭を納得させる報告書にするのは、
  けっこう大変だと思うよお?
照:でも、「制御しやすくて」「役に立つ」新メンバーかあ。
  深堀りしたらもっと色々出てきそうだし、
  ボスが知ったら、きっと喜ぶんじゃないかなあ。
照:結局のところ、スクラップの山にしてリサイクルするよりは
  ずっと費用対効果がいいもん~。よおし、
  手続きは言い出しっぺのダイアちゃんに全部お任せするから、
  ザオちゃんは、いいお知らせを楽しみにしてるね!
ダイアリン:あの、照ちゃん先輩…?
      根回しくらいは手伝ってくれますよね…?
こうして同僚への「説明」は幕を閉じた。
ダイアリンはその場に立ち、小さくため息をつく。
ダイアリン:さーて、盤岳先生。
      この黒枝から、あんたの償いを始めましょうか。
      長い道のりになると思いますけど…
      あたしをガッカリさせないでくださいね。
衛非地区の空はまだ暗雲に覆われていたが、
盤岳の「新生」への道のりから、
致命的な障壁が少なくとも一つ取り除かれた。

いつもどおりであるかのように

深夜、瞬光は一人で部屋で日記を見ながら、細かな出来事を何度も口にしては確認していた。青溟剣の代償による記憶の欠落を、みんなに悟られないように…

夜も更け、何もかもが静寂に包まれている適当観。
朧月のもと、一つの部屋から
淡い光が蛍火のように漏れていた…
葉瞬光:こっそり山を降りて適当観に来たあの日、
    太っちょの猫ちゃんを助けた…
葉瞬光;その次に、適当観に行ったときは…
    「観主代理」なんて名乗ってたら、
    リンに見つかっちゃって…
葉瞬光;飲茶仙に一緒に行った日、
    ワタシはかわいいワンピースを着てった。
    リンは…似合ってるって言ってくれた。
葉瞬光:飲茶仙の講談師は、面白い話をたくさんしてくれる…
    ワタシたちは、金木犀のケーキを一緒に食べた。
    材料は蜂蜜に漬けた新鮮な金木犀、白玉粉、金柑の皮…
葉瞬光:…盤岳先生は、脂っこいのと辛いのが苦手で
    お茶を出すときは、取っ手が右側に来るようにする…
葉瞬光:…ダイアリンはハチミツが好きだから、普段の倍は入れないと…
葉瞬光:潘さんが教えてくれた秘伝の漬けダレ…
    陳皮を細かくして、肉を漬け込む時にちょっとだけ入れる…
葉瞬光:火を囲んでおしゃべりした時、みんなで星を見上げながら、
    最近あった恥ずかしい話をそれぞれ披露した…
    ワタシは…えっと…
葉瞬光:えっと…
葉瞬光:なんで…思い出せないの…!?
    さっきまで覚えてたのに…ちゃんとここに書いてあるのに!
文字が目の前で霞み、歪み、形を変えていく
まるで紙面の束縛から逃れ、どこかへ行ってしまおうとするように。

温かい涙が、何の前触れもなく
日記帳の上に落ちる。

すぐに彼女は手の甲で顔の涙を強く拭った。
涙で滲んだ文字をじっと見つめる。
そうすることで、もう一度
心の奥底に焼き付けようとするかのように。
葉瞬光:ワタシは…そう…
    大してお金を持たないまま、
    雲嶽山を出てきちゃったって話をしたの…
    あやうく質屋のお世話になるところで…
葉瞬光:別に…青溟剣以外だったら、もう何もかも
    質屋に入れちゃってもいっか…なんて、言ったりして…
葉瞬光:この思い出は、絶対に忘れちゃいけない。絶対に…
葉瞬光:師匠…お兄ちゃん…リン、アキラ、それにみんな…
    素敵な思い出、ひとつも忘れちゃいけない、
    絶対に忘れちゃダメ…!
灯りの下で彼女の唇が震える、何度も何度も…
必死に留めようとしながら、
静かに零れ落ちていく記憶の欠片を、
繰り返し口にした。

日記帳を強く握る指の関節が白くなり、微かに震えている。
まるで目に見えない「忘却」という敵と、
勝ち目のない闘いをしているかのように。

世界がいつもどおりであるかのように装うために、
一人の少女が誰も知らない深夜に、
どれほどの力を振り絞っていたのかを、
紙の上に残った乾ききらない涙の跡だけが、静かに物語っていた。

演じるんだ…何もかもちゃんと覚えていて、
青溟剣の代償なんて知らない、葉瞬光を。


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