ふゥん
犠牲とは、明日を切り開く鍵穴である。
「じゃあ君が"食糧"になりたまえ、ウイルスへの抗体の如く世界を守らんとする番人にも、休息は必要だ」
あの男の下卑た笑みの理由を、過去の自分は取り違えていた。
禁足地への侵入を足止めするための交渉は、失敗に終わった。その尻拭いに率先して手を挙げたイエロー……例え運命が決まっていようとも、彼女の未来へ捧ぐ純真だけは、奪わせはしない。このインディゴが、代わりになればそれで済むのなら──
そう誓った、筈だった。
「ぁ……やだ……やだあっ!」
運命の過程は、より残酷だった。確かに、文字通り"喰われる"ことはない。しかし、局部を隠さず端々を飾り立てるだけの下着に手袋、靴下と、腹に盛られた"食事"──博物館を参照するまでもなく、これは生贄と称した性処理に過ぎなかった。
「んっ、ひあっ、なんなのっ、これえっ──……」
何時もの聡明たる頭の切れ味は、予想外により早々に砕け散った。ただあるのは、壊れたレッドのように、目の前の現実も見えず駄々をこねる稚児で──壊される前に、壊れていた。
「はうぁ、いや、そこ、なんでえっ!」
星屑の化け物、蟷螂のようなものたち──舌を絡められたペニスに、絡み合う唇の口膣──自分に男性器があることで興味を失ってくれるという一縷の望みは、見た事もない双房をたたえる女型をその目で捉えた刹那、早々に砕け散った。ぬめりで覆われた星屑の残渣は、彼女らにとって、くらくらする程の上質な香水なのだろう。
「たすけ……たすけ……て……」
すすり泣きが響く中、女型のルビーより綺麗な膣内が開かれた時、身を棄てた自分に新たな感情の萌芽を読み取った。どうせ、死ぬのなら──その快楽に、身を投げ入れればいい。
「もっと、もっと、して……?ちんちん、もっと……もっと、おね、がいします……──」
芽生えた性は、止まることなく、動き始めた。
ということか