公共機関などの対応:自衛隊編

Last-modified: 2026-01-04 (日) 20:46:53

このページでは自衛隊のゾンビ災害発生後の対応の解説をしています。

概説

ここではゾンビ災害が発生した時、自衛隊がどのように対処するかを考えていく。

自衛隊は陸海空の3つの組織で構成され、隊員数は最大24万人。その中でもゾンビ対応の矢面に立たされるであろう陸上自衛隊だけでも最大15万人程度の隊員から構成されており、日本国内で最も戦力を有する組織である。彼らはゾンビ災害にどう対応するのだろうか。
 

自衛隊はゾンビに勝てるのか?

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陸上自衛隊の主力銃 89式5.56mm小銃 *1
 
まず、自衛隊はゾンビ災害に対応可能かどうかを考える。
自衛隊には全隊員の手に渡せるだけの数の89式5.56mm小銃といった高火力の銃器があり、他にも10式戦車を筆頭とする戦闘車両や、戦闘機を含む900機以上の航空機、50隻近い護衛艦が配備されている。これほどの武装があればゾンビなど赤子の手をひねるが如く鎮圧できそうなものだが、実はゾンビ災害に対処するに際し、いくつか不安要素がある。それをひとつずつ説明する。
 

問題点1.弾薬不足

問題点1.弾薬不足
 
陸上自衛隊の各駐屯地には小さな弾薬庫があり、ここに銃弾などの弾薬が保管されているが、その弾薬量は極めて少ないと言われる。普段は補給処・弾薬支処と呼ばれる施設に大量の弾薬を備蓄しておき、有事(戦争)が近づいたら搬出して駐屯地に運ぶ、という想定だからである。だがもし全国規模のゾンビ災害が発すれば、自衛隊は弾薬の搬出が間に合わず、各地の駐屯地に備蓄された少ない弾薬だけで戦わされることになる。そうなると弾薬不足弾切れに陥る可能性が考えられるだろう。弾薬不足の自衛官らは、弾切れを恐れて銃の使用を控えるか、銃剣手斧などの近接武器だけでゾンビに対処せざるを得ない。
 
また、自衛隊そのものも「弾に撃つ、弾がないのが、玉に瑕」なんて言われるくらいには、元からの弾薬備蓄量がそこまで多くないことが度々指摘されている。ただし、近年は国際情勢悪化によって弾薬整備の予算が倍増され、弾薬確保と弾薬庫の増設を急速に進めており、そこまで問題とならない可能性もある。
 
ついでに、旭川駐屯地のように補給処が近くにある駐屯地や、富士駐屯地や三軒屋駐屯地のように補給処・弾薬支処が併設されている駐屯地であれば、弾薬不足になる可能性は低い。他の駐屯地でも、ゾンビ災害が数カ月以上の長期にならなければ、弾薬枯渇まではいかないだろう。
 

問題点2.食料不足

問題点2.食料不足
 
軍隊などの大規模かつ自己完結式の組織は、食料や燃料などの補給品を自活することが出来る。これは自衛隊でも同じである。だが、ゾンビ災害が長期化すれば、補給品が不足する可能性がある。
 
食料に関しては、自衛隊では約400万食を各施設に備蓄しているとされ、このうち2から3分の1(約130~200万食)が各駐屯地に備蓄されていると考えられる。しかし自衛官の総数は24万人。24万人に1日3食を提供し続ければ130~200万食の備蓄食料など2、3日で底を尽く。大人数の組織は、莫大な食い扶持を抱えているも同然なのである。普段は民間から食料を購入できるのだが、全国規模のゾンビ災害が起きればそれも途絶えるので、備蓄品をやりくりするしかない。言い方は悪いが、殉職する自衛官も出て食い扶持も減るはずだが、それでも1週間程度が限度だろう。備蓄が底をつけば、ゾンビに制圧された市街地の店舗や食品倉庫から調達せねばならない。
 
(自衛隊の名誉のために補足するが、これは自衛隊だけの問題ではなく、世界中のあらゆる軍隊がゾンビ災害で同じ問題に悩まされる筈である。また食料備蓄量については少なく見積もりすぎている可能性があるため、正しい情報をお持ちの方は訂正願います)
 

問題点3.燃料不足

問題点3.燃料不足
 
燃料不足も問題である。
自衛隊の戦車も、トラックも、ヘリコプターも、動かすには多数の燃料が必要である。しかし大規模なゾンビ災害が起きた場合、自衛隊の燃料備蓄は枯渇する恐れがある。
 
2011年の東日本大震災では、この問題が表面化したエピソードがある。自衛隊は前例のない10万人規模という救援部隊を出動させ、多数の車両と航空機を東北へ派遣したが、震災発生から数日後、なんと燃料備蓄が枯渇しかけてしまった。いつもなら燃料は元売り企業から自衛隊に直接納入されるので、燃料不足になることは無い。しかしこの震災では政府が燃料の供給統制を行っており、誤って自衛隊に供給される燃料までも統制され、燃料枯渇の危機に陥ったのだ(幸いにしてすぐに統制対象から解除されたため、問題が表に出ることは無かった)*2
 
通常の災害や戦争なら、燃料が不足しても企業から買い取れるだろう。しかしゾンビ災害では、燃料の元売り企業も製油所もゾンビに襲われており、自衛隊が燃料を受け取ることは困難である。自衛隊施設にも燃料は備蓄されているが、ゾンビ災害対処のために大規模に出動すれば、備蓄した燃料は数日で枯渇する。ゾンビ災害が長期化すれば電力供給も途絶えるため、自家発電のためにも燃料を使用する必要が出てくる。備蓄が尽きる前に市街地のガソリンスタンド等から調達する必要が出るだろう。
 
もしも自衛隊が籠城に徹すればすぐ枯渇することはないが、ゾンビが発生するような異常事態に自衛隊が出動しないとは考えづらく、燃料備蓄が枯渇する可能性はかなり高い。
 

問題点4.戦力不足

問題点4.戦力不足
 
日本の人口は1億2000万人。人口密度の高いこの国では、かなりの割合がゾンビ化する恐れがある。仮に1割しかゾンビ化せずとも1200万体のゾンビが発生することになる。これに対し、自衛官の総数は24万人、うち陸上自衛官は15万人。単純計算になるが、陸自だけなら隊員1人当たり80体、自衛隊全体でも1人50体のゾンビと当たることになる。強引に「マルス理論」を適応するとしても正直、戦力不足ではなかろうか。
 
また、陸上自衛官15万人も、その中には会計科や整備士などの非戦闘職種の隊員、配属される前の新米隊員などが含まれ、さらにゾンビ災害で殉職する隊員も出てくる筈だ。世界の終末を前に脱柵(脱走)する隊員も出るだろう。このため実際にゾンビ対応のために動員できる人数はもっと少なく、それこそ1人当たり100体のゾンビと当たる可能性もあるだろう(ただし、自衛隊側が戦車や戦闘機などを投入すれば、ある程度は差を縮められはするが)。
 

問題点5.集団生活

問題点5.集団生活
 
最大の問題である。自衛隊員のほとんどは「隊舎」と呼ばれる寮で寝泊まりし、集団生活をしている。しかしそこにゾンビに噛まれた隊員が一人紛れ込むだけで、就寝中の隊員が寝込みを襲われるなどして集団でゾンビ化する恐れがある
 
この問題はゾンビモノ漫画として有名な『アイアムアヒーロー』でも、自衛隊がZQN(同作におけるゾンビ)に壊滅させられた理由のひとつとして示唆されているほどであり、可能性の高い問題である。集団生活をしている組織は感染率が高く、かのスペイン風邪(インフルエンザ)も交戦中の軍隊から発生したことで知られる。自衛隊も隊舎にて集団感染を起こす可能性が非常に高く、自衛隊は出動せず壊滅する恐れがある(既婚者など一部の自衛官は寮ではなく官舎に住むことも出来るが)。
 
仮に隊舎で自衛官がゾンビ化した場合、銃と実弾が必要になるが、平時でこれらを装備している自衛官は警務隊(自衛隊内部の警察組織)と、弾薬庫の警衛隊員と少数である。しかも前者は対ゾンビには不向きな9mm拳銃で、後者は自動小銃だが5発しか実弾を交付されない。施設出入り口を警備する警衛隊員にも銃は交付されるが、実弾は詰所の金庫に保管されているため、すぐに取り出せないだろう。隊舎でのゾンビ発生への対応が遅れれば、自衛隊施設はゾンビ化した自衛官で溢れ返ることとなる。
 
一方警察の場合、官舎や独身寮に住んでいる警官は警察学校、若手の独身、機動隊員などの一部である。地方の県警に至っては機動隊以外の独身寮が少ないことも多く、大半が民間の賃貸住宅や持ち家に住んでいるので、この問題を回避できる可能性がある。
 

問題点6.妨害行為

問題点6.妨害行為
 
自衛隊が実際にゾンビの駆除を行うとなった場合、活動家などの妨害の可能性もある。例を挙げれば「ゾンビにも人権はある」など言ってゾンビ駆除の妨げとなり、結果的に最悪の事態を招く可能性もある。人間の命がかかってる場面でそんなこと言うか?と考える方もいるかもしれないが、実際に人間に危害を加えるクマの駆除に対しても難癖をつける輩はいるため、実際にゾンビが発生した場合も同様に難癖をつける輩が当然出ると考えられる。
 
難癖だけならまだいいが、デモ隊で道路を塞いで自衛隊車両の移動を妨害するとか、自衛官を直接攻撃したり、暴徒化して自衛隊施設に押し入ったりするようなことになれば面倒だろう。一番恐ろしい事態としては、自衛隊に命令を出すべき政府や政治家が、活動家に扇動された世論の声に屈してゾンビの殺害を許可しない、あるいはゾンビも人間だから殺害した自衛官は刑事罰に処す……などというような目茶苦茶な指示を出すことである。活動家自体は何てことはないが、活動家がもたらす影響には注意が居る。
 

問題点7.法的問題

問題点7.法的問題
 
ゾンビを射殺しても法的に問題ないのかは懸念が残る。先に言っておくが、創作によくある「発砲許可」なんてものは自衛隊に存在しない(武器使用許可とか似たものはある)。平時でも正当防衛や緊急避難に該当すれば発砲は可能である。
 
しかし法律的に厳しい部分がある。例えばゾンビを死体として扱ったとしても、死体に発砲すれば死体損壊罪に問われる。当然だがゾンビを死体として扱わない=生きた人間として扱う場合、ゾンビを射殺した自衛官は殺人罪に問われてしまう。法的にゾンビを射殺することが厳しいのである。
 
またゾンビを死体として扱うには、当たり前の話だがゾンビが死亡している必要がある。しかし法的には、人が死んだかどうかを判定できるのは医師のみと定められており、医師が「呼吸の停止」「脈拍の停止」「瞳孔拡大」の3つの判定基準を確認して初めて死亡したと認められる。当然、ゾンビ相手にそんな悠長なこと出来るはずもなく、医師が噛まれてしまう。さらにゾンビは作品によっては呻き声を出すことがあるが、声を出すということは呼吸をしているということ……つまり、上記の判定基準の一つ「呼吸の停止」が当てはまらなくなることを意味する。ゾンビを死体と判定することは難しい。
 
流石に死者が蘇って人を襲う異常事態にここまで悠長なこと議論している場合でもない……と信じたいが、絶対ありえないと一蹴できる問題でもない。ただし自衛隊は過去、谷川岳宙吊り遺体収容にてザイルで宙づりとなり回収困難な遺体を、ザイルへの銃撃で遺体を落下させて回収している。宙づりの遺体は医師が死亡判定などできる訳がない上に、遺体を落下させれば当然損壊するが、銃撃は実行されて遺体も(損壊した状態で)回収されている。なのでゾンビを死体と判定すること、死体損壊罪に問われる可能性があること、といった問題は無視できる可能性がある。
 

 

自衛隊は出動できるのか?

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災害派遣で出動する自衛隊トラック*3
 
そもそも自衛隊はゾンビ災害で出動できるのだろうか。
ご存知の通り自衛隊は、憲法で軍事力を放棄した筈の国に存在する軍事力(彼らが言うところの防衛力)という矛盾した存在である。だからこそ出動するには複雑な手順が設けられており、防衛のための出動でも複雑な手続きを必要とする。ではゾンビが発生したとき出動できるのか? 結論から言えば、出動できる。自衛隊にはいくつかの出動形態があるが、その中で考えられるゾンビ災害への出動形態は次の通り。出動できたとして、ゾンビに対処できるのかも考える。
 

出動形態1.治安出動

出動形態1.治安出動
 
まず考えられるのは、治安出動
暴動鎮圧やテロ対処を目的とした出動である。命令は総理大臣が行うが、国会か都道府県の議会で承認が必要である(事後承認も可能)。
 
しかしゾンビ災害には対処できない。
治安出動した自衛官には警察官職務執行法第7条が適用されるが、これは「公共機関などの対応:警察編」で述べた警察比例の原則も適用されることを意味する。この原則は犯人と同レベル程度の武器や装備で対処するという考えで、治安出動した自衛官は素手でゾンビに対処しないといけない
 
全く撃ってはならないという訳ではなく、「緊急避難」を拡大解釈すれば辛うじて許されるかもしれないし、ゾンビが自衛官の目の前で生存者を喰い殺したのであれば、ゾンビを「凶悪犯」の現行犯として発砲することは出来るだろう。しかし、これらもさまざまな要件を満たさなければ認められないし、正当防衛、緊急避難、あるいは凶悪犯の現行犯への発砲を除き、相手に危害を与えるように武器を使用することは認められない=射殺が認められない。さらに発砲時には、警職法の規定で口頭での警告後に行う必要がある(「緊急避難」を拡大解釈しまくれば対応できなくもないとは思うが……)。
 
銃を使えない可能性がある、使えても意図的な射殺は禁止、しかも発砲時には警告が必要、さらにゾンビの殲滅作戦では緊急避難も正当防衛も全て認められない。ゾンビを制圧することは困難だろう。
 
ただ別の方法として、治安出動した自衛官には警察官職務執行法第4条も適用されるのだが、4条には「人の生命・身体・財産に危険や重大な損害を及ぼす天災、事変、狂犬、奔馬」類に対して必要と認められる措置を取ることが出来ると明記されている。このためゾンビをヒトや犯罪者ではなく、死体や害獣といった「モノ」として認定すれば射殺できる……かもしれない(当然、ゾンビを犯罪者や生きた人間と扱えば射殺できなくなる)*4
 

出動形態2.警護出動

出動形態2.警護出動
 
次に考えられるのは、警護出動
自衛隊施設や在日米軍施設へのテロ攻撃の対処を目的とした出動である。こちらも命令は総理大臣が行うが、国会や議会の承認を必要とせず、攻撃が行われる前でも発動可能で、治安出動よりも発動しやすい(治安出動は攻撃が行われている最中でなければ発動できない)。
 
しかし警護出動もゾンビ災害に対処できない。
警護出動で自衛隊が警護できるのは自衛隊施設と在日米軍施設だけであり、市街地はおろか政府施設やインフラ施設の警護すらできない。しかも警護出動した自衛官は、治安出動と同じく警職法第7条……つまり警察比例の原則も適用されてしまい、ゾンビ射殺も難しい*5。治安出動以上にゾンビに対処できないと言わざるを得ない。
 
ただ、国会の承認が必要ないため、現実的には発動される可能性が高い。
 

出動形態3.災害派遣

出動形態3.災害派遣
 
次に考えられるのは、災害派遣
自然災害への対応を目的とした出動である。治安出動や警護出動は1度も前例がないのに対し、災害大国日本ゆえ既に何万回も出動実績がある。しかも緊急時では「自主派遣」という形で、国会どころか総理大臣の許可すら取らず出動できる
 
ゾンビ発生を何らかの特殊な「災害」として捉えれば出動できるので、一番現実的な出動方法だろう。しかし武器の使用は基本的に認められていないので、自衛官は非武装で出動する可能性がある。この場合、ヘリコプターで孤立した家々から生存者を救助するとか、生存者らの避難所を開設するといった、自然災害への対応の延長線的な活動しかできない。
 
しかし災害派遣ではゾンビ災害に対処できる可能性がある。
先ほど武器の使用は「基本的に」認められないと述べたが、災害に対処するための「救助道具」として武器を使用することは認められている。自衛隊の災害派遣に関する訓令第18条にて、例えば崩落したトンネルを切り開くため爆薬や砲弾を使うことは認められており、現実でも福島第一原発事故で放射能汚染された瓦礫を撤去するための重機として74式戦車が派遣されたり、1974年には東京湾でタンカーが炎上した際、安全を確保するためにロケット弾や魚雷でタンカーを撃沈した事例もある(第十雄洋丸事件)。また、旧防衛庁時代の机上研究や過去の防衛大臣の発言では、仮にゴジラなどの大怪獣が襲来すれば、災害派遣で戦車や戦闘機を出動させるだろうとの見解も示されている。
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火山の噴石対策に災害派遣された自衛隊装甲車。この場合、装甲車は武器ではなく「救助道具」扱いとなる*6
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福島第一原発事故時に災害派遣された自衛隊の74式戦車。「災害派遣」と書かれた垂れ幕が付けられている*7
この場合も武器ではなく瓦礫撤去用の「重機」、つまり「救助道具」扱いとなる。

 
また、「救助道具(武器)を使用した死体(ゾンビ)処理任務」を名目とすれば、自衛隊はゾンビを射殺できる可能性がある。死体回収のためのやむを得ない火器使用であれば恐らく認められるだろう。ただし、生きてるのか死んでるのか分からないゾンビを死体として扱うことに、人権団体などが猛反発しそうだが……それでも災害派遣は、一番容易かつ現実的に自衛隊が出動できる方法といえる。
 

出動形態4.防衛出動

出動形態4.防衛出動
 
最後に考えられるのが、防衛出動
国の防衛を目的とした出動で、有事(戦争)に発動される。これは唯一自衛隊に交戦権が認められ、他の出動よりも一段上の活動をできるようになる。ただし総理大臣の命令が必要であり、国会の承認も必要である(事後承認も可能)。さらに他国からの明確な武力攻撃があった時(=戦争になったとき)しか発動できないため、映画『シン・ゴジラ』のように超法規的な措置を必要とする。
 
防衛出動ならば、ゾンビ災害に最も効果的に対処できる。
自衛隊に交戦権が認められるので、ゾンビを「敵兵」「敵戦力」として扱えば、ゾンビの射殺も許可される。しかも戦車を動かしたり、やろうと思えばゾンビに占領された都市を爆撃することも理論上可能だ。ゾンビに対処する手段としては一番効果が高いと考えられるだろう。ただし上述したように、国会の承認と超法規的措置が必要になるため、命令が出される可能性が一番低い。よってあまり現実的ではない。しいて言えば、ゾンビ発生を「第三国から未知の生物兵器・化学兵器による攻撃を受けた」と拡大解釈して捉えれば、一応できるかもしれない(一応なので可能性は限りなく低い)。
 

出動形態のまとめ

出動形態のまとめ
 
現実でゾンビ災害が発生した場合、現実味があるのは、災害派遣、次いで警護出動、治安出動、最後に超法規的措置が必要な防衛出動だろう。その中でもゾンビ災害に対処できると考えられるのは次のとおりであり、これらであれば出動後に武器を使用し、ゾンビに対処することが出来る。

  • 人に危害を与える死体または害獣(ゾンビ)の無力化のための治安出動
  • 死体(ゾンビ)処理を名目とした災害派遣
  • ゾンビ災害を特殊災害と捉えた災害派遣
  • 超法規的措置による防衛出動
     
余談:クマに対する自衛隊出動

余談:クマに対する自衛隊出動
 
2025年末、日本各地でヒグマやツキノワグマなどの熊が多数出現し、多数の人々が負傷したり殺害され、秋田県にて自衛隊がクマ対策に出動することがあった。これはゾンビではないが、「人を襲い、時に食い殺す存在に対して自衛隊が出動した」と捉えることもでき、このページのような考察の参考になるだろう。
 
もっともこの出動で自衛隊は、銃火器を使用することなく箱罠の設置といった後方支援だけに留まっている。 
「上の方で災害派遣なら武器を『救助道具』の名目で使用できるとか長々とのたまったのに、なぜクマを撃ち殺して駆除しないのか?」
と思った方もいるかもしれないが、これには理由がある。
 
この時のクマ対策における自衛隊の出動名目は、治安出動でも災害派遣でもない。
自衛隊法第100条に規定の「土木工事等の受託」。
つまりは土建工事が名目である。
この名目では治安出動や災害派遣と違って武器使用に関する規定が一切ないため、どのように法解釈しても銃器や武器を持ち出せないのだ。
なんでそんな事を……と思うかもしれないが、やはり自衛隊による武器使用は依然として世論に受け入れられ難いという事情もあるので仕方ない。
 
また、自衛官は狩猟免許を持っていない人がほとんどで、鳥獣保護法によりクマを直接駆除することができないという事情もあった*8
仮に治安出動や災害派遣が行われていたとしても、緊急避難や正当防衛以外でクマに発砲するのは難しかっただろう。
 
……現実でゾンビ災害が起きた際、この時のように土建工事名目で自衛隊が出動したり、「死体損壊罪になるので自衛隊はゾンビを攻撃できない」みたいな話にならなければ良いのだが。
 

 

自衛隊のゾンビ災害への対応は?

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ガスマスクを装着した自衛官ら。ゾンビ災害では空気感染が起きる可能性もあり、自衛隊もガスマスク装備で出動するかもしれない*9
 
自衛隊はゾンビ災害でどう対応するだろうか。
おそらくだが現実では、出動までに手間取ったり法的な問題から初動対応に失敗するか、隊舎での集団感染により出動前から組織崩壊してしまう可能性も高い。
なのでひとまずここでは、

  • 自衛隊が出動に成功
  • ゾンビを射殺しても法的な問題がない
  • 隊舎での集団感染も起きていない

これらの前提のもとで考える。
 

1.初動対応、隠密作戦

1.初動対応、隠密作戦
 
自衛隊の中で一番最初にゾンビへの対処に出動するのは、自衛隊の特殊部隊と思われる。自衛隊には陸自の特殊作戦群、海自の特別警備隊といった特殊部隊が存在しているが、彼らの行動の一切は非公開で何をしているのか分かっていない。もしもゾンビが各地で少数発生し始めた際、政府がゾンビの存在を認知して極秘で処理することを決定すれば、彼らが出動し、世間に知れ渡ることなく隠密裏にゾンビを処理すると思われる。政府とてゾンビ発生による世論の混乱は避けたいはずだ。ただし特殊部隊は精鋭故に数が少なく、特殊作戦群は300名、特別警備隊は90名程度とされ、ゾンビの発生数が増えすぎれば彼らにも対処できなくなるだろう。
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特殊作戦群。ゾンビ発生最初期に政府が秘密で対応を図れば、彼らが出動するだろう*10
 
 
もしも政府がゾンビの存在を把握できないうちにゾンビの発生数が増えてしまい、やがて世間にもゾンビの存在が認知され始めていれば、対化学戦部隊である化学科部隊が出動すると思われる。化学科は日本全国に配置されており、化学剤・生物剤・放射線を用いた攻撃からの防護を担当している。恐らくゾンビ発生が化学剤などによるテロや攻撃と判断され、派遣される可能性がある。しかし化学科部隊も技術的な職種のため隊員数は少なく、彼らだけでは対処できないかもしれない。
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訓練展示中の化学科部隊。ゾンビ発生を生物兵器テロと判断して出動するかもしれない*11
 

2.本格的出動

2.本格的出動
 
特殊部隊や化学科による初動対応が失敗すれば、自衛隊も本格的に出動すると思われる。本格的出動は、都市部にゾンビが溢れ返り、警察が鎮圧のために機動隊を投入し始める程の事態になった後からだろう。このとき警察の対処能力はすでに限界を迎えているはずだ。
 
ただし、最初のうち自衛隊には使用できる装備に制限(いわゆる武器使用基準部隊行動基準)がかけられる筈である。戦車やミサイルなどの重火器は流れ弾が出れば民間人に甚大な被害を生じさせてしまうため最初は投入せず、小銃や機関銃などの銃器、最大でも携行対戦車火器、迫撃砲、装甲車などの比較的小規模な戦力だけが投入されるだろう。しかし、これだけでも警察の銃器対策部隊を上回る重武装であるため、ゾンビの発生数がまだそこまで深刻でなければ、ここでゾンビ災害を抑え込める可能性はある。
 
また、余裕があれば生存者の救出活動、ライフラインなどの重要施設の防護、避難所の開設といったことも行われる筈だ。特に生存者の救助に関しては、全自衛隊で合計440機以上が配備されているヘリコプターで上空から救助したり、装甲車でゾンビの群れの中を強行突破するなどして、建物の中で籠城している生存者らを救い出していくことが可能と考えられる。海上自衛隊の護衛艦や輸送艦に生存者を避難させることもできるはずだ。
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パトカーに先導されて移動する自衛隊車列。本格的な出動が始まれば、このような光景が各地で見られると思われる*12
 

3.総力戦

3.総力戦
 
しかし仮にここでゾンビ災害を鎮圧できなかったとする。
自衛隊が本格的に出動して鎮圧できなかった時点で、もはやゾンビ災害を抑え込むとか言っている時期はとうに過ぎているだろう。自衛隊すら対応できなくなれば、ゾンビの発生数は甚大なものとなっていると考えられ、この時点で日本は国家として崩壊寸前の状態に追い込まれている筈だ。
 
ここからゾンビ災害を沈静化するためには、自衛隊のあらゆる戦力を投入するしかない。全国に400両超が配備されている戦車を出動させたり、武装ヘリで上空からゾンビの群れを機銃掃射したり、生存者がいないと判断されれば、ゾンビに制圧された市街地への砲撃や爆撃を行うなどして、ゾンビの殲滅戦を図るしかないだろう。ただし国が崩壊寸前になるほどゾンビが大発生している段階では、その程度でゾンビ災害を抑え込める可能性は低いと思われる。
 

4.退却

4.退却
 
ゾンビの殲滅が不可能と判断されれば、自衛隊は全国各地の基地や駐屯地に撤退する。救助した生存者らとともに籠城戦を始める可能性もある。人口密度の高い都市部の自衛隊施設は放棄される可能性が高いが、それでも自衛隊には田舎の分屯地や離島のレーダーサイトなど人里離れた施設を複数有しており、撤退できる場所は無数に存在する。とりわけ日本本土から1200kmも離れた硫黄島にも基地があるので、撤退する場所には困らない。あるいはゾンビ小説『World War Z』で描かれた「レデカー・プラン」のように、どこか防衛に適した地域(北海道、東北、九州南部あたりが候補だろうか?)に集結して再編成を図るかもしれない。
 
だが、上で述べた通り、ここから自衛隊の補給がどこまで保つかは分からない。補給が途絶えて活動停止に至る可能性や、それに伴う隊員の士気崩壊も十分に考えられ、その場合は日本からゾンビを一掃する戦力は完全に失われることとなる。
 

 

以下、参考になる?

自衛隊法 - e-Gov
自衛隊の災害派遣に関する訓令 - Wikisource
国民保護法 - e-Gov
事態対処法 - e-Gov
陸上総隊司令部、方面総監部、師団司令部及び旅団司令部組織規則 - e-Gov
警察官職務執行法 - e-Gov
警察官等特殊銃使用及び取扱い規範 - e-Gov
自衛隊にクマ襲来 その対応の法的根拠は何になる? 武器使用が認められるにも条件アリ - 乗りものニュース
「戦車が2両。部隊は完全武装し…」ベテラン猟師を殺した“凶悪ヒグマ”の駆除に自衛隊が立てた作戦とは - 文春オンライン
自衛隊もし戦わば - いんちきやかた 研究分館 - FC2
 治安出動1~出動! ちょっとその前に - いんちきやかた 研究分館 - FC2
 治安出動2~投石、火炎瓶、催涙弾、銃剣 - いんちきやかた 研究分館 - FC2
 治安出動3~デモ隊からゲリコマへ - いんちきやかた 研究分館 - FC2
 治安出動4~そして今、自衛隊は - いんちきやかた 研究分館 - FC2
 駐屯地警衛~入るな、きけん~ - いんちきやかた 研究分館 - FC2
 
 

コメント

  • 前回編集した人へ、問題点5は一度削除されたようですが、普通にあり得そうな問題なので復活させときました。 -- 2023-10-21 (土) 22:53:19
  • 演習場で熊に襲われた自衛官(第6普連らしい)が小銃で反撃して射殺した、って噂話を聞いたんだがソースが見つからん。もし熊に反撃して正当防衛が認められたなら、ゾンビを射殺しても問題ないってことに出来そうなんだが……それと、ゾンビが発生したらどうするかは自衛隊でも考えていたらしい。といっても、現場の幹部とか陸曹が頭の体操程度に話し合っただけで、「害獣駆除でどうにかできないか」「ゾンビを害獣と認定できれば対処できる」って話だったそうだけど。 -- 2024-01-31 (水) 19:05:39
  • 一番の敵は無能な上官 -- 2024-02-13 (火) 11:44:13
    • たいていの場合、暴走する現場の末端のほうがよっぽど敵なんだよなあ -- 2024-02-13 (火) 20:31:34
  • 昔の話になるけど、北海道で自衛隊が熊駆除に出動したことはある。最終的に毒餌で弱らせて小銃と散弾銃で仕留めたらしい。今は自衛隊の軍事力と役割も大きくなったしできることは多いと思うな。ただ問題は兵力の展開。沖縄と北海道に人員多いから本土でパンデミック発生した時どれだけ早く移動できるかが鍵だと思う -- 2025-07-02 (水) 18:31:07

*1 出典:陸上自衛隊 公式facebook (https://www.facebook.com/jgsdf.fp
*2 新潮文庫『前へ!―東日本大震災と戦った無名戦士たちの記録』より
*3 陸上自衛隊西部方面隊 公式X / 旧Twitter (https://twitter.com/JGSDF_WA_pr/status/1697211016525058328
*4 警察官職務執行法第7条でも、警察官等拳銃使用及び取扱い規範第7条第4項の規定と併せれば「狂犬等の動物その他の物に向けて拳銃を撃つことができる」と明記されており、ゾンビを射殺できる。
*5 治安出動と同じく、ゾンビを人ではなく「モノ」として扱う場合は別。
*6 陸上自衛隊 公式X / 旧Twitter (https://twitter.com/JGSDF_pr/status/1268098282250633216
*7 東日本大震災原子力災害派遣|福島第1原発での活動の様子 - 防衛省公式ホームページ (https://www.mod.go.jp/js/Activity/Gallery/touhoku_earthquake_g03.htm
*8 その他にも、自衛官には狩猟の経験や技術が無い、クマの駆除に向く装備を自衛隊が持っていない、といった技術的・物理的な問題もある。
*9 陸上自衛隊中央特殊武器防護隊 公式X / 旧Twitter (https://twitter.com/jsdf_gcc_cnbc/status/1483932842086178819
*10 陸上自衛隊陸上総隊 公式X / 旧Twitter (https://x.com/jgsdf_gcc_pao/status/1901489457662173676
*11 陸上自衛隊大宮駐屯地 公式X / 旧Twitter (https://x.com/JGSDF_OOMIYA/status/1547441781696262144
*12 陸上自衛隊第6師団 公式X / 旧Twitter (https://x.com/Jgsdf_nea_6dpr/status/1865939425298927848