シャボン玉でTSさせる

Last-modified: 2010-02-09 (火) 01:31:16
 
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     「うわぁぁぁっ!!」という叫び声と共に、俺はシャボン玉の揺りかごの上で驚き、ビクっと身体が震え上がってしまった。せっかくの微睡みの時間を……、どこのどいつだ。
     
    「あら、誰か引っかかったわね」
     
     タッチパッド型のコンピュータデバイスのワードアプリで作業をしていた胡桃が呟く。
     
    「引っかかった?」
     
     俺は不機嫌さを拭えないまま聞き返す。
     俺が寝る時は、大体少女の身体でいることが多い。眠る時の心地よさが、男と女の時とは全く違うからだ。男だとリラックスから来る安心感程度しか感じられないけど、女の時は何やら色々混じってくる。例えば身体が融けていくような感覚だったり、広がっていく感じだったり、自分がシャボン玉になってふわふわ浮かんでいくような気持ちになったり、説明するのは難しい。確実に言えるのは、それが本当に気持ち良くて幸せなのだ。
     元々、色々なものに包まれるのが好きな俺だから、(体裁上)紳士的な成人男性の体型よりは、幼い少女の身体の時のほうがハメを外せるのだろう。
     
     俺の質問に胡桃は俺のほうを振り向いて、にこやかな表情で答えるが、その笑みは獲物を得たように妖しげだった。
     
    「まあ、泥棒避けみたいなものよ」
    「こんな所に人なんて来るか?」
    「辺境とはいえど、美味しい餌が引っかかることがあるのよ。"釣り針"は沢山置いてるから」
     
     狙ってやがる。悪趣味な神だ。
     胡桃はデバイスをスリープ状態にして、現場へ向かおうとする。俺もシャボン玉の上からぴょんと飛び降り、胡桃に付いていくことにした。
     
     
     
     俺達は玄関から出て、裏手へと回る。
     胡桃の家は有明の山林の中にあり、平屋になっている。鳥居や神社は置かれることは無い新しい神々が、自由に家を構えることができるのは、伝承されないが故の特権だろう。屋根は全面高効率ソーラーパネルを使い、屋外の巨大な柱みたいなバッテリーに充電してライフラインを得ている。近くにある川から水を引っぱり、水車でまた別のタービンを回して補助発電している。電線を引っ張っていないため、電気はここまで本格的にクリーン電力を使わないといけないのだ。胡桃だって神なんだから、物理法則ぐらい無視しても良いとは思うが、彼女には彼女なりのルールみたいなものがあるんだろう。まあ、既にシャボン玉のS.Fをライフスタイルに盛り込んでいる時点で、無視しているといえば無視しているが。
     よく考えると、俺だって生活自体は物理法則を尊重している。似たようなもんだな。
     
     裏庭へ回ると、彼女のハーブ菜園がある。今は冬なので真っ白だが、その中に一部だけ、大きなシャボン玉に覆われて表土が見えているものがある。彼女なりのビニールハウスだ。
     
    「お、バジルも栽培してるのか」
    「ええ。なんなら売るわよ」
    「売り物かよ」
     
     少し残念だ。俺はイタリア料理が得意だから、マルゲリータやソースを作る時とかに重宝するんだが。
     
    「ほら、釣られた奴がいるわよ」
     
     俺は胡桃の指差した方向へ目を向けると、ふわふわと浮かぶシャボン玉に包まれている男がいた。彼は動揺していて、どうやって抜け出せばいいのかと四苦八苦していた。サングラスとマスクで顔を隠してニット帽を被っていて、黒のダウンジャケットと深い紺色のジーンズを着ている。
     
    「ふーん、男か」
    「格好からして、空き巣でも狙ってたか」
     
     胡桃はそのまま泥棒の目の前まで歩いていき、話しかける。
     
    「よくここまで来たわね、人間」
     
     お、何か神格のありそうな口調になったぞ。
     胡桃の声に応じて、男がまた騒ぎたてる。
     
    「くそっ、何をした!」
    「見て分かるでしょ。"釣り針"よ。その宝石みたいなものはオモチャ……と思わせて本物のアメジストよ」
    「え」
     
     え、本物なのかよ。ってか言わなくて良いだろそれは。
     
    「さ、久々の"魚"が釣れたわ。紅葉、戻るわよ」
    「えっ?…あ、ああ」
     
     急に呼ばれて、また一瞬ビクっとした。少女の身体だと色々と敏感すぎて困るが、男の時とは違う感覚がまた面白い。
     
     
     胡桃は男が入っているシャボン玉をS.Fで誘導して、屋内の茶の間へと運び終えると、胡桃は男をまじまじと見つめていた。
     
    「な……なんだよ」
    「んー……んふふふ」
     
     珍妙な含み笑いを漏らし、男が気味悪がっているのを、俺は先ほどのシャボン玉の上に座り、ノートパソコンでメールの整理をしながら遠目で眺めていた。何かマッドな雰囲気が漂うんだよな、こいつは。
     
    「どう?ふわふわして気持ち良いでしょ」
    「はぁ?何言ってんだ」
     
     俺は初めて、男へ声をかける。
     
    「すまんな。こいつはマッドなシャボン玉フェチなもんでな」
    「少し黙ってほしいですねぇ、大・神・様」
     
     ヤバい気が立っているので、これ以上は喋らないでおこう。
     
    「でも間違いでは無いわ。これから私が、貴方に対して何をするのか分かるかしら」
     
     胡桃が俺の指摘をあっさり認めると、早速本題に入り出した。
     やっぱりこいつ、何かする気だな。適当に警察へ届ければ良いものを。
     
    「し……知るか!」
    「まあそうでしょう。じゃあ、未知の体験(エクスペリエンス)を始めましょうか」
     
     わざわざ英語で体験と言い、胡桃はパン、と両手を合わせて叩く。いつもなら、すぐに胡桃のS.Fが機能するはずなんだが、すぐに変化が来ない。
     男の表情は隠されて見えない……と思ったら、徐々に変化が現れ始めた。
     まずはサングラスからだ。少しずつ透明になっていくと思ったら、勝手に男の顔から離れ、ぷくーっと膨れ上がってシャボン玉に変わっていった。サイズ的には小さめで、男の目を曝け出した後、男を捕らえている大きなシャボン玉と同化した。
     男が小さな悲鳴を上げると、胡桃はニヤリと不気味に笑う。
     
    「はい次」
     
     再び胡桃が手を叩くと、今度はマスクが膨らんでシャボン玉になった。同じように男の顔から離れていき、男の顔が完全に露出した。
     男は恐怖を感じ取り、まともに声を出せないまま胡桃から目を離せなくなっている。
     
    「ふーん。結構可愛い顔してるんじゃん」
     
     そうなのか?男の美形にはあまり興味無いから、俺にはよく分からないけど。
     引き続き、胡桃は男の身につけているものを、どんどんシャボン玉へと変えて、強制的に脱がしていく。
     マスクの次はニット帽。男の頭を覆ったままシャボン玉になって膨らんでいく。男は驚いて頭を下げると、すぽっと簡単に脱げて同じように外側のシャボン玉に同化した。続いて手袋、靴、ジャケット……部位ごとに少しずつ膨らんでいってシャボン玉へと変えていく最中、胡桃の鼻息も荒くなっているように感じた。
     
    「紅葉」
     
     胡桃が俺を呼ぶ。
     
    「なんだ」
    「結奈って言ったっけ、あの子」
    「結奈がどうした?」
    「このテクはあの子から教えてもらったわ。人間なのに、なかなか面白いものを扱えるんじゃないって関心したわよ」
     
     やっぱり結奈のS.Fを参考にしていたみたいだ。
     結奈は通販で届いたダンボール箱を開けるのが、あまり得意じゃない&好きじゃないらしく、箱をシャボン玉に変えてから中身を取り出して割ったりすることが多いらしい。確かに、某有名な通販サイトは梱包箱が特殊だからな。俺もあまり好きじゃない。
     
    「面白いから、色々と付け加えてみたのよ。あの子は身体そのものを変えれるみたいだけど、私のは人体の一部を本格的にシャボン玉に変えて剥がしたり、心の一部を抜き出したり結合させたりする方。こいつは良い実験台よ」
     
     背筋がゾクっとした。ある意味人体改造になるだろうから、目の前でそういうのをされると、ちょっと気分が悪い。
     
    「ま……まあ、グロくならんようにな」
     
     一応、俺は念を押しておく。
     
    「大丈夫よ。血とか贓物とかは、出る前から綺麗なシャボン玉よ」
     
     胡桃はウインクして、俺の注意に言葉を返す。そして、最後の下着をシャボン玉に変えて、男の衣服を全て剥ぎ取った。
     男の体型は、至って普通だ。大体、雅和と同じ30代前半といった所か。雅和と違うところは、ごく一般の人間なのでそこまで鍛えられていないところだろう。普通にお腹も出ているし、ペニスもそこそこ使われている。特徴が無い、と言ったほうが良いんだろうか。
     男は今の自分の状況を把握すると、咄嗟に股間を手で隠す。
     
    「あら、恥ずかしいの?綺麗な女性におチンチン見られて隠すなんて、まるで女の子みたいね」
    「ち、違う!」
     
     いや、ただ紳士的な面があるからじゃないのか?とは思うが。
     
    「へーそう。じゃあ、貴方にふさわしい姿にしてあげるわ。覚悟することね」
     
     
     
     胡桃は両手を合わせ、印を組み上げ男を見つめる。
     
    「まずは、"中"を綺麗にしてあげるわ」
    「な…か……ひっ!」
     
     男が悲鳴を上げると、男の下腹部が、ぽこんという小さな音と共に膨らみ始めた。身体の変化に男は驚き、身体を痙攣させる。どうやら胃腸が膨らんでいるようだ。
     胃腸の膨張は一度に留まらず、更にぽこぽこと音を立てて、どんどん膨らんでいく。
     
    「あ、あぁぁっ!?」
    「どう?お腹の"中身"がシャボン玉になっているのよ。私のシャボン玉は割れないから、どこかで出さないと辛いわよねぇ?」
    「え、い、いぃっ」
     
     男は急に便意を催したのか、尻を両手で押さえ出す。胡桃がS.Fでシャボン玉の行き場を操作しているみたいだ。やっぱり尻から出させるみたいだ。
     男の顔が歪む。漏らしたくないのは当然だろう。
     
    「あら、我慢しなくて良いのよ?」
    「や、やぁっ!」
    「もう、しょうがないわね」
     
     そう言って、胡桃は印を組み替える。すると、男の我慢の壁が急に決壊した。
     
    「あぁぁぁぁぁ……」
     
     尻から次々と、綺麗な色のシャボン玉が出てくる。尻穴が排便のように広がり、ぷくーっと膨らんで抜け出ていく。抜け出た後に、また次のシャボン玉がどんどん膨らんで抜け出ていく。
     男の頬が赤らむのが見えた。確か、肛門の浅い部分に前立腺を刺激しやすい場所がある。アナルというのは、それをメインに責めることが多いらしい。未知の快楽の芽生えに、男は戸惑いと羞恥に晒されているだろう。何しろ成人女性と、性を感じ始めた辺りの少女(俺のことだが)に凝視されているのだから、普通の男ならまあ仕方ない。
     
    「ふふふ、まさかお尻だけだと思ってない?」
     
     胡桃はまた印を組み替えると、今度は男のペニスがビクンと脈動し出した。微細な快楽に呼応して勃起したペニスは、何か柔らかいものが通っていく刺激で快楽を享受しているようだ。男が未知の感覚に悶え出す。
     出るっ!という悶絶の顔を浮かべると、今度はペニスの尿道口からは、液体ではなくシャボン玉が膨らんで抜け出ていく。尻とペニスから、次々とシャボン玉が膨らんでは出て行くのを見て、俺は少し興奮を感じた。
     もし、この立場が今の俺だとしたらどう感じるのだろう。俺はどうしても人間ではない以上、性行為よりも奇怪なアプローチで快楽を模索するのに好奇心を抱いてしまう。外からではなく、排泄物がシャボン玉になって中から責められる……でもちょっと想像し難い。
     
     こんな変態的な思考を巡らせていると、どうやら男の"中"は完全に綺麗にされたようだ。もう男の尻からもペニスからもシャボン玉は出てこなくなった。
     不可思議な感覚と刺激によって、男は新たな快楽を開発されたと言っても良いだろう。
     
    「次はいよいよ身体の改造よ」
     
     そう言った直後、男は休む暇も無く沸き出す快楽に悶え始めた。よく見ると、脚のふくらはぎが先ほどのお腹みたいに、ぽこぽこ膨らみ出している。男の脚を凝視していると、膨らんだ部分から染みだすようにシャボン玉が抜け出ていく。
     
    「っぅ!?」
    「あなたの身体の筋肉や脂肪、骨とかがシャボン玉になっているのが分かるかしら?抜け出ていって、残った部分が新しく身体を形作っていくのよ」
     
     脚が気持ち良いんだろうか。筋肉が痙攣しているような感覚を想像するけど、ちょっと違う気もする。
     脚のシャボン玉化は留まることを知らず、足、股、尻と、次々変化が起きていた。下半身全部がぽこぽこ蠢き、シャボン玉が染み出て行く。俺は想像で相手の感覚を掴もうしていたが、俺でも体験したことの無い感覚だろう。上手く想像するのが難しい。
     
    「何、紅葉もやってみたいの?」
    「うっ」
     
     感づかれた。
     
    「安心なさい。望むならあなたにも決めてあげるわよ」
     
     俺の顔は苦笑に歪むが、内心奇妙な期待もこみ上げていた。複雑な気持ちだ。
     
     男の身体の変化は下半身に続き、上半身も始まった。今の男の姿は、上半身に釣り合わない白く幼い脚に変わり、上半身は未だ相変わらずだ。それが下腹部から胸あたりにかけて、先ほど同様にぽこぽことシャボン玉になって、身体の一部が離れていく。
     不要な脂肪がシャボン玉に、割れ目の見える腹筋がシャボン玉に、内蔵を支える骨格の一部がシャボン玉に……。男は、自分の身体が改造されていくのを抵抗することができず、ただ享受し続けることしかできなかった。身体から染み出て行くシャボン玉と、加える部分が必要な部分には、逆にシャボン玉が染み込んで行く。中で肉体の一部と変化して形を変えていくようだ。
     男の身体は、下半身から上も、徐々に肌が白く染みすらも消えていき、華奢な体型へと変わっていく。見た感じ、俺よりも身長は低い。そして喉仏からシャボン玉が出て行き、喘ぎ声が綺麗な少年とも少女ともつかないものへと変わった。
     
    「髪は……そうね、紅葉と同じぐらいで」
     
     今の俺は、大体腰あたりまで伸びたストレートの黒髪だ。結構長いはずだけど。
     そう思ったが特に何も口出しはせず、男の髪にシャボン玉がまとわり付いて髪の毛に変化しているのを眺めていた。
     
    「うん、私好みになったわね」
     
     まさに少女、いや幼女か?俺は胡桃に質問する。
     
    「TS(Trance Sexual)が好きなのか?」
    「どちらかというと、過程が好きなのよ。興奮しない?」
    「いや俺は特に考えたことが」
    「紅葉も少しずつTSすれば良いのよ。あんな一瞬で変わらないで過程を見せなさいよ、萌えるから」
    「んな事言われてもなぁ……」
     
     まあ出来なくは無いだろうが、色々とちょっと怖い所が多い。
     
     
     
    「でも、山場と仕上げはちゃんと残してるわ」
     
     どうやらそのようだ。ほぼ少女となった男に、未だ黒く大きいペニスが付いている。最後にこれを調理して完成させるのだろう。
     未知の感覚と快楽に悶え疲れ果てた男は、最後に何が来るのか想像が付いているはずだ。
     
    「男としての最期ぐらい、男らしくイカせてあげるわよ」
     
     胡桃はそう言い放ち、男を捕らえるシャボン玉の中に飛散する、男を構成していた身体だった残りのシャボン玉をペニスに集める。
     
    「うぅ……っ」
     
     勃起しっぱなしのペニスに、小さなシャボン玉が次々付着・合体し、最終的にペニスがハンドボール程度のシャボン玉に覆われている状態になった。
     
    「何する気だ?」
    「まあ見てなさい」
     
     俺は胡桃に問いかけるが、俺を静止して黙って見てろと言う。男の時もそうだが、こういうドぎついSMは好きじゃないんだよな、俺。
     男のペニスをまるごと覆うシャボン玉は、特に何の動きも見られないが、当の男は明らかに強制される快楽に苦しんでいる。
     
    「うぅぅぅぁぁぁぁ……!」
    「ほーら、何もしてないのに気持ち良いでしょ?」
     
     シャボン玉がぽよぽよ動いているだけで、特にしごいている感も見えないが、中で何が起きているかは男だけが知っている。正体不明の刺激に、男のペニスも時折ピクンと痙攣する。
     次第に男の呼吸が荒くなり、時期が近づいていることを俺と胡桃に知らせている。
     
    「ほらほら、我慢せずにイッても良いのよ」
     
     これから、胡桃の別名はサド神だな。
     男の興奮はそろそろ限界を迎えるだろう。オーガズムが急激に上昇しているのが、第三者視点の俺から見ても分かる。
     
    「フィニッシュっ」
     
     胡桃のその一言で、ペニスを覆うシャボン玉が一瞬で割れた。
     
    「い、い、いっっぁぁあ!!!」
     
     その刺激が引き金となったのか、男は一気に絶頂へ至った。しかし、男のペニスから噴出したのは、明らかに白濁の液体ではなかった。
     シャボン玉だ。男の精液すらも、胡桃がシャボン玉に変えてしまっているのだ。
     
    「残念ね、あなたの象徴はちょっと前にもうシャボン玉になっちゃってたわ。可哀想に」
     
     哀れむ胡桃の傍で、男なら一瞬で止まるオーガズムが治まらず、シャボン玉の噴出もずっと続いている。
     俺はその様子を眺めていると、男のペニスに変化が訪れているのが分かった。ピクンと脈動する度に、ペニスの大きさが小さくなっている。睾丸のある袋も徐々に萎縮していき、シャボン玉になって出て行く。狂乱のオーガズムに翻弄されている男の叫びは加速していき、変化も相まって加速する。
     男の股間から睾丸が消えた。中身を失った袋は、身体の中に格納されていく。続いてペニスも身体にくっつく程に小さくなった。それでも、そこからシャボン玉を噴出し続け、今度は噴出口が広がり、遂に膣となった。男はペニスを失ったことにより、いよいよ男から女となった。それでもシャボン玉が噴出され続けているのは、内部の女性器を形成している最中だからか。
     
     
     シャボン玉が出なくなった。それと共に"元"男のオーガズムも治まった。
     息を切らし、絶え絶えの声で胡桃に懇願してくる。
     
    「も……もう…ゆるしてください…」
    「ええ?どうして?」
     
     意地悪に胡桃が言い返す。
     
    「なん…でもします…から…!」
    「ん?何でも?」
     
     胡桃はニヤリと笑みを浮かべ、「分かったわ、許してあげる」と"元"男に向かって言い放った。
     が。
     
    「じゃあ、貴方の"男"を頂いていくわ」
     
     そう最後に付け加えて。
     
    「い……やぁぁぁ……」
     
     "元"男が自由の利かないまま抵抗の声を上げるが、胡桃は容赦なく捕らえているシャボン玉に手を突っ込み、"元"男の胸の辺りに手を乗せる。その後すぐに手を離すが、男の胸の中心からシャボン玉が膨らみだしてドーム状に形作った。
     
    「ぁ……」
     
     "元"男の目から光が消えた。そうか、あれはあいつの心か。胡桃は"元"男の心すらもシャボン玉に変化させてしまったのか。
     それに気付いた俺は、胡桃の次に取る行動が大体分かった。胡桃は"元"男を捕らえるシャボン玉を割り、お姫様抱っこで抱きかかえ普通のソファに寝かせる。そして胸に膨らんだシャボン玉から、その一部を抜き出した。あれが、"元"男の"男としての自我"というものだろう。
     
     
     
     胡桃が"元"男の胸に作られたシャボン玉状の心に向かって呟き、新しいシャボン玉を同化させている。恐らく、覚醒後の混乱を避けるためにマインドコントロールをしているのだろう。
     事は済んだのだろうと思い、俺はスリープ状態になってしまったノートパソコンを再び復帰させ、止まっていた作業を再開させる。
     
     それにしても奇怪な光景だった。
     シャボン玉を用いてのあのようなプレイは、ルミや結奈でさえもカバーの範囲外だろう。あの二人はシャボン玉を使って遊んだり利用したりすることが多いし、人間の感情を変化させることはできても、肉体そのもの(の一部)を変化させることは気付きもしないはずだ。俺がルミ達と一緒に遊んでる時でも、身体の中身をシャボン玉にされて排泄させられるようなプレイなんて……。
     
     と、考えていたら、突然パソコンからコール音が鳴る。ビデオチャットの着信のようだ。
     相手は誰だと確認したら、どうやらルミだ。何だ急に。
     
    「はいよ」
     
     俺はリターン(エンター)キーを押し、通話状態にする。モニターのウィンドウにルミと、後ろで自分用のノートパソコン上で、写真編集のソフトウェアを動かしている結奈が表示される。後ろに見える映像からして、アトリエのパソコンから繋いでいるな。
     
    『あ、紅葉さん?今まだ胡桃さんの家ですか?』
    「そうだけど、どうした?」
    『帰る前にお願いがあるんですけど』
     
     頼み事とな。
     
    『先ほど、胡桃さんからメールがあって、"面白いS.Fがある"と書いてあったんですよ』
    「ほうほう」
    『それで、私と結奈さんに教えて頂けるということで、サンプルのビデオを一緒に持ってきて欲しいんです』
    「ビデオ……ってか、どんなS.Fなんだ?」
     
     胡桃が発案するS.Fねぇ。まさか、ああいう身体を改造するようなものじゃないだろうな。
     
    『文面では、ボディコンディションを整える画期的で革新的な技術だとか』
    「大げさだな」
    『最高のデトックス効果を堪能できるとかも書いてましたね。面白い位に排出できるとかなんとか』
     
     あ…れ?何かピンと来る内容が。
     
    『どうやら実演の動画がまだ用意できてないみたいなんですよ』
    「なんだ、そうなのか」
    『というわけで、紅葉さんが先に試してみてくださいっ』
    「ちょっと待て」
    『結奈さんも期待してるので、お願いしますっ』
    「おいっ!」
     
     そう言った後、一方的に通信を切断した。なんつーハイアーセルフだ。でも俺はルミにも似たんだよな……。
     茶の間を見渡すと、液晶テレビの隣にあるのは……三脚の上にセットされているビデオカメラ。
     
    「ふう。まあこんなものね」
     
     そう言って、胡桃は"元"男の胸の上のシャボン玉を、再び身体の中に戻す。
     立ち上がった胡桃は、そのまま俺の方を向いた。
     
    「さ、次は紅葉の番ね。今ルミと話してたでしょ」
     
     俺は座っているシャボン玉からガバっと立ち上がり、ゆっくりと後ずさりする。
     
    「ままま待て、あんな激しいの無理だって!」
    「大丈夫よ、痛くないから安心しなさい。それにさっきのメニューとは違うのよ?」
    「そ、そうじゃなくって!っつーかそいつはどうなったんだよ!」
     
     俺は、"元"男を指差して指摘する。
     
    「ああ、あの子はもう赦したからおしまいよ。後は私が責任もって育てるだけ。ついでにシャボン玉大好きっ子にしたし、色々楽しめるわ」
    「そうかそうか、それでフィニッシュだよな」
    「だから次は紅葉」
    「畜生ッ!」
     
     逃げ場が無くなった俺は、そのまま胡桃に捕まってしまう。
     
    「あなたはルミに『紅葉さん(♀)は人一倍敏感なので、オーバーすぎる位優しくしてあげてください』って念を押されてるから、キツい事はしないわよ」
    「ああいうの見せつけられて信じられるかよ……!」
    「ほら、観念しなさい」
     
     そう言って、胡桃は俺の下腹部に手を当てる。直後、俺の身体の中でぽこんという音を立て、手を当てた部分が少し膨らんだ感じがした。
     
    「いっ」
     
     俺は、その不思議な感覚に驚く。
     どうやら、そろそろ俺も覚悟を決めないといけないみたいだ。
     
     
     

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