作品1

Last-modified: 2009-06-03 (水) 20:20:12

「ここは、何処…?」
目が覚めると私は見知らぬ場所にいた。辺りは草原の広がる山のようだった。
「とにかく帰らなきゃ。まずここが何処か調べないと。」
辺りを見回すと遠くの方に小屋が見えた。とにかくそこへ行ってみることにした。

 

「橋がないわね。これじゃ通れないわ…」
途中に谷があった。近くに橋はなく底は深い。
「どうしよう…とにかく橋を探してみよう。」
私は谷に沿って歩き始めた。

 

「あれ?何かしら?」
遠くに丸い泡のようなものが見えた。近づいてよく見るとそれは私の身長ほどはあるシャボン玉だった。
「うわー、大きい。」
それはいくつもあり、どうやら谷から吹き出ているようだ。谷の間にはいくつもの大きなシャボン玉が浮かび幻想的な光景であった。
「わー、綺麗!」
私がそれに見とれていたそのとき

 

ふよん

 

そのとき私の背中に何かやわらかい弾力のあるようなものがぶつかった。
しかし、振り返ってもなにもなかった。いや、正確には先程と同じ大きなシャボン玉が浮かんでいる光景だった。
「まさか、」
あり得ないとは思いつつ目の前のシャボン玉をつついてみる。

 

ふよん

 

私は驚いた。指先に感じたのは先ほど背中に感じたのと同じ感触だった。それだけでなく触ったシャボン玉自体も割れなかった。
「すごーい!割れない!」
私は手頃なサイズのシャボン玉を捕まえていろいろと試してみた。触るだけでなく両手で押し潰してみたり、引っ張って伸ばしてみたり。
だがシャボン玉はその弾力でふわふわと形を変えるだけだった。なおかつ爪を立ててみても割れず強度はなかなかのものだ。

 

「これはもしかして…?」
私はある考えが思い付いた。これだけ強いシャボン玉なら乗ることができるのではないかと。私は自分の身長の半分ぐらいのシャボン玉を捕まえ、ゆっくりと上に乗ってみた。

 

ふよん

 

シャボン玉は割れることなく私の体重を支えた。
「やったー!乗れた乗れたー!」
私の重みでシャボン玉はふわりとなっているが思っていたよりも安定感があり、乗り心地はとても気持ちよかった。
「すごい丈夫ね、ちょっとぐらい力かけても大丈夫かな?」

 

ふよん、ぽよん

 

少々上で跳ねてみても全く大丈夫で、むしろ弾力のおかげでトランポリンのようで楽しかった。
「きゃはは、ぽよんぽよんで楽しい!」
それに浮力も強いらしく私が乗ってもシャボン玉は数cm宙に浮いていた。
「わ、浮いてる。すごーい!」
まるで夢のようだった。子供の頃に夢見ていたことが今ここでできている。不思議な感じだった。思いもよらぬ形でこんなことができるなんて。

 

そういろいろ思っているうちにふと急に気づいたことがあった。
「…これってもしかして?」
谷を渡る橋はこのシャボン玉ではないだろうかと思った。いくら割れないからといっても所詮はシャボン玉。割れそうな気がしなくもない。それに谷も深い。落ちたらひとたまりもないだろう。
「ちょっと、怖いな…」
だがまだ近くに橋がある気配もない。
「大丈夫、かな…?」
念には念をおし、今乗っていたシャボン玉から降りてまた別のシャボン玉を捕まえた。
「これでいけるはず。」
谷に向かって勢いをつけシャボン玉に飛び乗った。
「よし、行けた!」
と思ったその瞬間。

 

ふよん

 

「きゃっ、いやっきゃぁぁぁああ!」
別のシャボン玉に激突し私はそれに跳ね返され乗っていたシャボン玉から滑り落ちてしまった。そして私の体は奈落の底へと沈んでいったのである。

 
 

「きゃぁぁぁああ!」
私は谷底へと吸い込まれていた。とてつもなく長い間落ちていく。
長い沈黙が私を包む。が、突如としてそれが打ち切られる。
「きゃぁっ!」
ふよん、ぽよん、ふにゅん、ぽよんよんよん…

 

幸いにも大量のシャボン玉が浮いていたためそれのいくつかにぶつかり弾かれてそして大きなシャボン玉の上に落ちたのである。
「…うぅ。」
痛くはなかったが弾かれた反動で頭がくらくらしていた。

 

気がつくと谷の底にあったシャボン玉の上に寝ていた。谷の底にはシャボン玉が溜まっておりシャボン玉を敷き詰めた床のようになっていた。
シャボン玉の下には川があった。溜まったシャボン玉は少しずつ溶けていってるようだ。
「ふう、助かった。でもこのシャボン玉はどこから出ているのかしら?」
その答えはすぐに見つかった。

 

ぽわん

 

「あれ、何かしら?」
そこには花があった。崖の壁から結構大きい花がでていたが、その花びらは閉じていた。

 

ぷくーっ。

 

「わ、シャボン玉だ。なるほど、この花が出してたのね。」
花の吹くシャボン玉はどんどん膨らみ私の身長の半分ぐらいの大きさになると宙に浮かんだ。
私はこれに乗ろうとそのシャボン玉に腰かけた。

 

ふにゅっ

 

「わぁ、あれ?」
私はシャボン玉の膜を突き抜け、その場にこけてしまった。
が、下がシャボン玉のため、痛くはなく私の体が軽く弾んだけだった。
よく見ると私の胸辺りからシャボン玉を貫通し、膝辺りまでがシャボン玉の中にあった。
「あれ?…もしかして?」
私は体を体育座りをするように丸めた。
「やったー!入った!」
が人が入るにはこのシャボン玉は少し窮屈すぎた。
「ちょっと狭いわね、出られないのかしら?」
すでにシャボン玉の膜は固まってきており触れてもさっきのように通り抜けることはできず伸びるだけである。
「あれ、どうしよう?」
私はシャボン玉の中に閉じ込められてしまった。

 

むにゅ、むぎゅーっ。

 

目一杯体を広げたときであった。

 

ポン

 

私を包んでいたシャボン玉は割れ私は脱出することができた。
すでに私を包んでいたシャボン玉は少し浮いていたのでまた私はシャボン玉の床で軽く弾むことになった。
「なるほど、出られないわけでもないのね。」
私は何故かここで目覚めたときに持っていた水筒を持つと川へと向かった。
このシャボン玉は水に溶ける性質がある。それにシャボン玉に入ることができたときは水分が多かった。
だからこのシャボン玉に包まれてまた出るときには水をかけてやればいいと思った。
「これでよし、と。」

 

私はこの谷を登るため少し大きめのシャボン玉ができるのを待った。
「よし、これに乗ろう。」
私は他のシャボン玉を踏み台に自分の身長ほどのできたてのシャボン玉に飛び乗った。

 

ふにゅっ

 

体はそのシャボン玉に包まれた。足の辺りがまだ固まってなくすり抜けたが、シャボン玉は浮き始めている。
慌てて片足を入れて少し待つと、膜は固まり始め固まったところにその足を下ろすともう片方の足もシャボン玉の中に入れた。
私を包んでいるシャボン玉はゆっくりと浮き上がっていく。
そして陽射しが当たるぐらいにまで上ったとき。
「わー、綺麗!」
回りを見るとシャボン玉越しに虹色の世界が広がっていた。
陽射しによってシャボン玉は輝き虹色に輝いていた。
それは自分のものだけでなく回りに浮いているシャボン玉のすべてがそうだった。

 

谷を上りきったとき私は少し眠くなっていた。暖かい陽射しにシャボン玉の柔らかい感触。
それにそよ風によってシャボン玉はゆらゆらと揺れてまるでゆりかごのようだった。
「ふわぁ…」
うまく風によって小屋のある側に流れ着きひと安心したのか私は眠ってしまった。

 
 

私が眠りから覚めると辺りは虹色の夕焼けに包まれていた。
私を包んでいたシャボン玉も浮力を無くし、地面にたたずんでいた。
「あ、いつの間にか寝ていたのか。急がなきゃ。」
私は水筒を取りだしシャボン玉に水をかけた。水をかけた部分は柔らかくなりすり抜けることができた。
「んーっ、よく寝た!」
私は背伸びをし小屋の方へと向かった。
小屋はずっと見えていたが意外と距離があり、着いた頃にはすでに辺りは暗くなってきていた。
小屋は遠くから見るとそこまで大きくは見えなかったが近くにくると意外と大きく、普通の一戸建てぐらいはあった。
とりあえずは中に人がいるか聞いてみることにした。
「すいませーん。」
するとドアが開いた。
「あれ?どなたでしょうか?」
出てきたのは黒髪で白衣を着た女性であった。
「あの、ここはどこですか?」
「ここはどこって、アルの山だけど。あなたもしかして遭難者?」
「まぁ、そんな感じです。」
私はここまでのいきさつを話した。
気が付いたらここにいたこと、シャボン玉で谷をわたってこの小屋まで来たこと。
「うーん、気が付いたらこの辺に居たってのは信じられないけど、あなた無茶するわね。」
「え?」
「私の家の裏の方に橋があったのにわざわざシャボン玉に乗って渡るなんて。」
「うそぉん!」
「でも怪我もないなんて幸運ね。」
「はい、本当によかったです。」
「でも、もう辺りも暗いし今晩泊まっていく?」
「本当ですか!ありがとうございます。」
「まぁ、むしろこんなところじゃお客さんも少ないしね。じゃ上がってって。」
「本当にありがとうございます。」
私はその女性の家に上がった。
「それと、まだ私の自己紹介済んでなかったわね。私はリミ。シャボン花の研究をしてるわ。」
「あの、谷からシャボン玉を出していた花ですか?」
「そう。あのシャボン玉面白かったでしょ。」
「はい、割れないのははじめてだったので。」
「うんうん、それにふわふわで、上に乗るとふよんふよんぽよんぽよんで、包まれるとふわふわゆらゆらで、あぁ最高…ってごめんなさい。」
「いえいえ、私も包まれてたらあまりの心地よさで寝てしまいましたし。」
「うんうん。ついつい気持ちいいからって入ってるといつの間にか寝ちゃうのよねー。」
「でも一回閉じ込められそうになってびっくりしました。」
「あら、あなたこのシャボン玉について全く知らなかったの?」
「はい、聞いたこともなかったです。」
「うーん、割と有名だと思うんだけどねぇ…もしかしてあなた、魔法も知らない?」
「魔法?魔法って物語とかそういうのでしか…」
「あちゃー面倒くさいことになったわね。他の世界から来ちゃう人がいるとは噂には聞いたけどまさか私のところに来るなんてね。」
「他の世界?!私、住んでた世界と違う世界に来ちゃったんですか?!」
「そういうことになるわね。まぁ良いわ、帰れない訳じゃないわ。どこの世界か特定できるまで私と暮らすことになるわね。」
「よかった。それってどれくらい掛かります?」
「私はわからないわ。明日にいろいろ調べに来てくれるからその時に聞いてみて。」
「うん…」
どれくらい掛かるかわからない。けれど今は考えても仕方がなかった。

 

その後私はリミさんに食事をいただき、シャワーも終えあとは寝るだけとなったとき、
「あ、そうだ、ベッド用意するからね。とりあえずこっちきて。」
リミにつれてこられたのはほとんど何もない部屋だった。
「まぁ、こんな部屋だけど寝室には十分でしょ?ちょっと待っててね。」
そう言うとリミは手を広げ呪文のようなものを唱えた。
すると光に包まれながら丸いがベッドのようなものが現れた。
「ふふ、私特製のシャボン玉ベッドよ。」
確かにベッドの表面は透明な虹色の膜だった。
「丸いままだと寝返りうったときに落ちちゃうからちょっと潰してるけど寝心地は最高よ。」
「あの、今使ったのが…?」
「魔法よ。まあしまってあったのをここに持ってきただけだけど。」
「へぇ、ありがとうございます。」
「それとベッドにはいるときは注意してね。勢いつけて飛び込んだりするとすっごい跳ねちゃうから。」
「はい。」
「じゃあ私はそろそろ寝るわ。おやすみ。」
「おやすみです。」
私はベッドにもぐり込んだ。柔らかく体に合わせて形を変えるため寝心地は最高だった。
それに適度に弾力もありシャボン玉の膜の上で体が弾みそうな感じだった。
私はうつ伏せに寝返り、体を押し付けた。柔らかく包み込むような、だけど跳ね返されるような感触が心地よかった。
「ふぁぁ…」
私は眠くなってきた。よく考えれば今もまだ夢の中のようだ。
そうこう考えたりしているうちに私は柔らかい虹色の膜の上で眠りについていた。

 
 

「ふわぁ…」
私が目を覚ますと外は明るい陽射しに包まれていた。
私はベッドから起き上がろうとするが普段と違う感触に手が滑り、体がまたベッドに沈んでしまう。

 

ふよん

 

柔らかな膜の上で体が弾んだ。昨日の出来事が夢でないことを実感した。
「やっぱり本当だったんだ…」
とはいえまだこんなことも悪くはないかなと思える余裕はあった。
改めてベッドから起き上がると弾力に押されるようにベッドから降りた。
部屋のドアを開けるともうリミは朝食の支度を終えていた。
「あらおはよう。」
「おはようございます。」
「昨日は良く寝れた?」
「はい、おかげでとっても気持ち良く寝れました。」
「ふふ、でしょうね。もう支度は出来てるから着替えておいで。」
「あの、着替え持ってきて無いんです…」
「もうあなたの服洗って乾かしてあるわ。なんなら私の白衣借りても良いわよ。」
「あ、ありがとうございます。」
私は着替えて朝食へと向かった。
「どう?お口に合うかしら。」
「はい。美味しいです。」
「よかった。そういえばあなたの世界の朝御飯ってどんなの?」
「えーと、こういうパンもあるし、ご飯とかもあります。」
「ご飯?」
「ええと、米ってものを炊いたものです。卵と醤油ってゆう調味料をかけたのが美味しいですよ。」
「米ねぇ。今度探してみるわ。」
そんなこんなで朝食を終えてしばらくしたとき。
「そうだ、どうせしばらく居ることになるんだし私の研究の手伝いをしてもらおうかしら。」
「え?手伝いって、私何もわからないし…」
「大丈夫。私の言う仕事をしてくれれば良いわ。まずここの地下にある研究室に案内するわ。」
リミについていった先には地下への階段があった。その先にはシャボン花の鉢植えやフラスコ、試験管などが並んでおりいかにもって感じの部屋だった。
「多分実際に触ってもらうものは少ないと思うけどまあ、ざっとこんな部屋ね。」
「へぇー。こっちの部屋は何ですか?」
「えっと、その部屋は…うん、まぁ良いけど笑わないでね。」
「はい。」
ドアを開けると床がなかった。
「きゃっ、危なかった。…すごーい。」
部屋は少し深くなっており、床はゆるいすり鉢状でその大きな部屋には大量の大きなシャボン玉が敷き詰められたり浮かんでいたりした。
「すごいでしょ。」
「で、この部屋何なんですか?」
「何ていうか、はっきり言っちゃえば遊び場みたいな感じよ。みんなはいい年して幼稚だとか言ってくるし、子供達を誘おうとしても今度は変な人扱いだし…」
「私は素敵だと思いますよ。」
「ありがとう。なら、早速やっちゃいますか。」
「研究の手伝いですか?…!」
と言った瞬間妙な寒気が走った。リミの方を向くと
「えーい!」
私はシャボン玉部屋へ突き落とされた。2回目と言えど落ちる瞬間は長いものだ。そして長い落下がおわり、

 

ふわーん、ぽよん、ふにょん、ふよんふよんよん…

 

私の体は無数のシャボン玉の上を跳ね回った。そして体が弾むのが落ち着いてきたときシャボン玉にまたがったリミが私に向かって飛び降りてきた。
「とりゃー!」

 

ぼにゅん!

 

私は柔らかい弾力に押し潰された。だが全く痛くなくむしろ不思議な心地良さに全身が押し潰された。
「もぅ、何するんですかー!」
「ふふ、今の気持ち良さそうね。私にもやってみて。」
「思いっきりいっちゃいますよ。」
私は近くにあった私の身長ぐらいの大きさのシャボン玉を手に高く跳んだ。
そして空中でシャボン玉にまたがり、リミにのしかかった。

 

ふにょん

 

「わはー、気持ちいいわね。そのまま飛び跳ねてみて。」
ぽよん、ふよん、ふにゅん、ぷよん、ほわん…

 

私はトランポリンで遊ぶようにシャボン玉の上で飛び跳ねた。
「はぁん、もっともっと。」
ふわーん、ぽよーん、ふよーん、ぽわーん…
「あぁ…最高…」
(リミさんもしかして…) 「変態的なまでにシャボン玉フェチよ。」
「ぎくっ!」
「でないとこれの研究やってないわ。そーれ!」

 

ふにゅ、ぽわーーん

 

「わぁーー!」
リミは私の跳ねていたシャボン玉を絶妙なタイミングで押し返した。
私は思いもよらぬ弾力に高く跳ね飛ばされてしまった。
「やぁぁん!」
ふよっ、ぽよーーん、ふにょーん
2度、3度、リミはシャボン玉で私を空高く跳ね飛ばした。
しかし跳ね飛ばされるのに慣れてくると高く飛ぶことも爽快になってきた。
「きゃはーー!」
「ふふ、面白いでしょ。」
「はい、次私もシャボン玉で押し潰してくれます?」
「いいわ。ほい!」
ぽよっ
リミはまた絶妙な力加減で私を受け止め全く跳ねさせることなくシャボン玉に着地させた。
「じゃぁいくよー!」
「きゃっ!」
私が乗っていたシャボン玉をひったくると上にまたがり私に向かって飛んできた。

 

ぶにゅん

 

「あうっ。」
心地良い弾力に私は押し潰された。
「じゃぁ、いわくよ。」
今度はリミがシャボン玉の上で跳ね始めた。
ぽにゅん、ぶにゅん、むにょん、ほにょん
私は何度も柔らかい弾力に押し潰される。なんとも言えない気持ち良さだった。
「はうっ、あうっ、やぁん」
心地よさに押し潰されては解放される。ちょっと苦しいけどそれの繰り返しはリミがシャボン玉フェチと言うのもわかる気持ち良さだった。
「やーねぇ、変な声出しちゃって。」
「だって、気持ちいいんですもん。」
「ふふ、あなたも気持ち良さに気づいちゃったかな?」
そんなこんなで私たちはシャボン玉部屋でふわふわぽよぽよと遊んでいた。
「ふぅ、楽しいけどちょっと疲れてきちゃった。」
「わたしもこんなにはしゃいだのは久しぶりだったからね。」
私はシャボン玉の上に寝転んだ。柔らかい弾力に体が支えられる。
「ふわぁ…」
「あらまた眠くなってきたの?」
「うん、ちょっと。」
「あはは、早いわね。でももうそろそろお昼の準備しなきゃ。」
リミはシャボン玉の上を跳ねて入り口に飛び乗った。
「そうそう、入り口のところに梯子あるから飛び移るの無理だったら使ってね。」
「はーい。」
わたしは入り口のところにかけてあるはしごで上っていった。

 

わたしはシャボン玉部屋からあがるとキッチンへ向かった。
リミはもうエプロンに着替えており、お昼ご飯の支度を始めていた。
「あの、私手伝います。」
「いいのいいの。私が全部やるから。」
「なんか、お世話になりっぱなしで…」
「まぁ、そうねぇ、食器出しといて。」
「はい。」
わたしはリミに言われた通りに食器を準備し、出来上がるまで待った。
「そういえば、私の住んでいた世界を調べるのはいつになりますか?」
「そういえばまだねぇ。午後からになるんじゃないかしら?」
そんなこんなで食事の支度も出来上がり、私たちは昼食をとった。
そして昼食を終えてしばらくしたとき。

 

ピンポーン

 

「はーい。」
リミが出ていった。
しばらくするとツナギを着た作業員のような人が入ってきた。
「初めまして、世界間移動管理局の担当者のユージと申します。」
「初めまして。」
「あなたがこの世界に来たときの状況を詳しく話してください。」
私はこの世界に来たときの状況を事細かに話した。話した内容は事細かにメモを取っていた。
「ではあなたが気がついたときにいた場所を覚えていますか?」
「多分、行ったら大体でわかると思います。」
「ではそこへ案内していただけますか?」
「はい、でもちょっと遠いです。」
「それなら私にお任せあれ。」
リミが口をわってきた。
「みんなでシャボン玉に乗って私がそれを操作するわ。それのほうが速いし、何より谷の橋を渡ると遠回りになるしね。」
「ではよろしくお願いします。」
「じゃあ屋上に上がって。」
「じゃあちょっとまっててね。」
そういうとリミは呪文のようなものを唱えた。すると私たちは光に包まれた。光が収まるとシャボン玉に包まれいた。
「リミさん魔法でシャボン玉作れたんですか?」
「いや、元々あったのをここに持ってきただけよ。それでどっちの方向?」
「あっちのシャボン玉が湧き出ている方です。」
「じゃ行くわよ。」

 

ふわっ

 

私の体が浮いた。柔らかい虹色の膜は私たちの体重をしっかりと支えている。

 

ぼよん

 

あまりの急発進に私はシャボン玉の膜に跳ね返された。
「リミさん急すぎますよー。」
「そうかしら?」
辺りを見回すと下には草原の広がる山が広がっていた。それらはシャボン玉の膜を通して虹色に輝いていた。
それに前より高く飛んでいるため見晴らしも良かった。
「で、次はどっち?」
「あ、はい?」
「あなた見とれてたんじゃないでしょうね?」
「そんなことないですよ、ちょっと下がってみてくれます?」
「はいよ。」

 

ぼよん

 

またもや急制動によりシャボン玉に跳ね返された。
私は体勢を立て直しリミの小屋の位置を確認した。
「こっちの方です。」
私は行く方向を指差しリミに伝えた。
すると今度はゆっくりとシャボン玉が動き始めた。
私はシャボン玉の中でリミの小屋との距離を確認していた。
「ここぐらいです。」

 

ぼよん

 

予想はしていたが、やっぱりシャボン玉の膜にぶつかった。
「じゃあ着地する準備して。」

 

パン

 

「きゃっ!」
シャボン玉が割れた。
「あぁびっくりした。」
「この辺ですね。」
「あ、はい。」
するとユージさんは何か受信機のようなものを取りだし辺りを調べ始めた。
「この辺、なんだろう。不思議な風景が見える気がするわ。」
ふとリミが口を開いた。
「すいません、そこを調べさしてもらいます。」
ユージさんがそこへ向かう。
「…ここですね。別世界の力が流れ込んできています。」
「それって私の世界なんですか?」
「それを確かめさしてもらいます。ちょっと失礼します。これをつけていただけますか?」
ケーブルの繋がった腕輪のようなものを渡された。私はそれをつけた。
「…一致しました。あなたのすんでいる世界はわかりました。」
「え、本当ですか?」
「良かったじゃない。」
「ですが、転送する地区を解析するためもう暫く待っていただけるでしょうか?」
「それはどれくらいですか?」
「早ければ二日から、遅くても一週間ほどでできますのでご心配なく。」
「良かった…あ!」
「どうしたの?」
「あの、向こうの世界で家族や友達が私を探してるんじゃないかと…」
「心配ありません。こういう意図とせずに世界を渡ってしまった場合元の時間に
転送いたします。」
「良かった。」
「では私はこれで失礼します。」
「あの、私の家の前まで送りますよ。」
「いいえ、迎えが来ますので大丈夫です。お気遣いありがとうございます。」
するとユージさんはどこかへ電話を掛け始めた。
「へぇー、あれが機械式の通話機ね。」
「この世界、電話ないんですか?」
「一応電話ってのは聞いたことあるけど魔法式のが一般的ね。」
そう話していたらユージさんの前に光の線が現れた。その線はまるで空間に割れ
目のように開きユージさんは入っていった。
ユージさんが光の中に消えると割れ目は閉じて光は消えた。

 
 

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