少女の不思議なシャボン玉

Last-modified: 2011-01-27 (木) 23:43:24

僕の名前は桜乃 甲斐(さくらの かい)。
特にスポーツが出来るわけでもなければ勉強が出来るというわけでもない極々平凡な高校生だ。
そんな僕にも、今時の人にしては珍しいかもしれない趣味がある。
青空を眺めるという事だ。
今は高校生という事もあってか、帰るのが夕方になることが多くてあんまり眺めることは出来ないが、今日みたいにテストがあって昼に学校がある日はよく青空を眺めながら学校近くをうろちょろする。
「あれ、何だろう?」
空を眺めてると綺麗な何かがたくさん漂っていた。
よく見ると、それはシャボン玉だった。
(綺麗だなぁ...どこから飛んできてるんだろう?)
そう思い、シャボン玉が見えている方向に歩いていくが、500メートルほど歩いてもそのシャボン玉は途絶えない。
(よくこんなに割れずに飛んでこれるんだなぁ)
不思議に思いながらもさらに300メートルほど歩いたところに公園があった
(こんなところに公園があったんだ。この辺は初めて来るなぁ...)
初めて来るところというのは期待感と不安感の両方が襲ってくるもので、どちらかが上になることでその後の行動が決まる。
今の僕は、シャボン玉という要素があることもあってか期待感がはるかに上回っていた。
臆するどころか、目をキラキラさせてシャボン玉が飛んでくる方向に行くと、そこにはベンチがあり一人の少女がそこに座ってシャボン玉を吹いていた。
肩には小型の水筒をぶら下げていた。
少女はその中にストローみたいなものをつけて、それを吹いてシャボン玉を飛ばしている。
恐らく、さっき見たシャボン玉はこれだろう。
「綺麗なシャボン玉だね。」
中々割れないシャボン玉に興味があった僕はその少女の横に座り話しかけた。
「ありがとう。」
「実は、結構遠くでこのシャボン玉見つけて、それを追ってここまできたんだけど、このシャボン玉中々割れないみたいだね。どういう秘密があるの?」
「秘密は教えられないけど、このシャボン玉使うとこんなことも出来ちゃうんだ。ちょっと待っててね。」
ニッコリと微笑みながらそう言うと、少女は近くにいた女子高生3人に声をかけた。
「お姉ちゃんたち~、ちょっとこっち来て~。」
近くにいた女子高生たちは可愛い少女に興味津々なのかすぐにベンチの方にとんで来た。
よく見ると、その女子高生たちはうちの生徒だった。というかうちのクラスの人だった。
「あれさ、桜乃じゃね?」
「ホントだ、桜乃だ~。何してんの?」
「てか、何気に少女の横に座っちゃって、もしかしてロリコン?」
口々にものを言う同級生に僕は反論した。
「そ、そういうわけじゃないよ(汗)。ただ、シャボン玉が気になっただけだし...」
『シャボン玉~??』
僕の言葉に3人は声を揃えこう言って頭に疑問符を浮かべた後、爆笑した。
「この歳になって、しゃ、シャボン玉ってwww」
「あんたは幼稚園児並の精神の持ち主なわけ~?www」
「だ、ダメ、ちょ~ウケる~wwwww」
何故、そう早とちりするんだ...僕だって普通のシャボン玉だったらそんなに興味持たないんだけど
まぁ、普通のシャボン玉だったのかもしれないけど...
なんて考えていた。
あの光景を見るまでは
「じゃあさ、そのシャボン玉にお姉ちゃんたちも興味を持たせてあげる。
真ん中のお姉ちゃん、私の前に立ってみて。
後の2人はちょっと横に離れてて。」
「私?ん、わかった。これで大丈夫かな?」
そう言うと、真ん中に立っていた女子高生は少女の目の前に立った。
後の2人は3メートルほど離れたところに移動した。
「うん、大丈夫だよ。じゃあ、いくよ。ちゃんと見ててね。」
少女はそういった後、水筒にさっきよりも多めに液をつけて女子高生に向けてストローを吹いた。
ぷく~
ストローから出たシャボン玉は少女の息によりどんどん大きくなり、そして...
ぽんっ
女子高生を包んでしまった。
「えっ、何これ?すご~い。」
そう言ったのも束の間、シャボン玉に包まれた女子高生ふわふわと漂いながら空高く飛ばされていき、数秒で見えなくなってしまった。
「ちょっ、え~~~~~~?」
僕は驚いた。
いや、恐らくこの光景を見ていたら誰でも驚いてるだろう。
驚かない方が不思議だろう。
シャボン玉が人を包むのは見たことあるけど、球体のシャボン玉ではないし、包まれたまま空に飛ばされていくなんて現実的にありえないからね。
横で見ていた女子高生2人もやっぱり驚いていた。
が、次の瞬間
「すご~い、私もシャボン玉に入って空飛びたい~。」
「私も私も~。」
女ってたくましいな。
てか、友達の心配は?
飛ばされたことに対して疑問とか持たないのか?
まぁ、割れにくいシャボン玉って言ってもその内割れるか...
「いいよ~。じゃあ、1人ずつ私の前にね。」
少女は2人の申し出を快諾し、残っていた2人もシャボン玉に包んで空に飛ばした。
ぷく~、ぽんっ
という効果音とともに
「どう?すごいでしょ?」
「すごいでしょって、まぁすごいけどさ...あの人たちはどうなるの?いくらなんでもシャボン玉だしいずれは割れるよね?空高くで割れて落ちたりなんかしたら...」
そう言いかけた途中で少女は言った。
「落ちないよ。だって私のシャボン玉は絶対に割れないからね。」
少女はにっこりと微笑んだ。
割れないシャボン玉...
この少女はどうやってこの液を手に入れたのだろう?
そもそも液に秘密があるのか?
確か、シャボン玉の中の空気って人の息、つまりは二酸化炭素のはず。
二酸化炭素は空気より重いから浮くはずがない。
じゃあ、ここにいる少女に不思議があるのか?
そんなことを考えると、知らぬ間に少女の前には行列が出来ていた。
「私もシャボン玉に包んで欲しいな。」
「私も~。」
「俺も~。」
「僕も~。」
「ワシも...」
ざっと、100人はいるだろうか。
恐らくこの町の7~8割の人間がそこにはいた。
どうやら、僕とあの女子高生以外にもさっきの光景を見ていた人がいたらしく、その人がこの少女の噂を流したみたいで、野次馬たちが興味津々に集まったらしい。
見れるモンは見たい、体験できるならしてみたいってとこか。
まぁ、僕も興味持った側だから同じな気もするけどさ。
少女は嫌な顔ひとつせず、並んでいた人たちを次々とシャボン玉に包んでいった
その度に、
ぷく~、ぽんっ
という効果音が繰り返される。

 

もう、何回あの効果音を聞いただろう。
並んでいた人たちが皆シャボン玉に包まれて飛ばされた頃には夕方になっていた。
「ふう、やっと終わった~。」
「お疲れ様。ところで、さっき言ってた『シャボン玉が割れない』ってのはホントなの?」
「ホントだよ。何なら確かめに行ってみる?」
少女は僕に問いかける。
僕は悩んでいた。
確かめると言うことは、僕も空に飛ぶという事だからだ。
つまり、割れないシャボン玉の話が嘘なら途中でシャボン玉が割れて落ちてしまうということ。
要は、死ぬという事。
それでも、シャボン玉の秘密には興味がある。
そこで断ることも出来た。
でも...
「大丈夫、ぜっ~たいに割れないよ。」
そう言いながら微笑みかける少女に僕は負けた。
「そっか、そこまで言うんなら確かめさせてほしいな。ホントに大丈夫なんだよね?」
「しつこいよ~?大丈夫って言ったら大丈夫だって。しつこいと嫌われちゃうよ?」
「ごめん...」
「まぁ、いいや。じゃ、私の横に並んで。」
僕は言われたとおり少女の横に並んだ。
「これで、いいかな?」
「OK。じゃいくよ。」
そう言うと、ポケットから小さいビンのようなものを取り出した。
ビンには少量の液が入っている。
どうやら、水筒に入ってる液とはまた違うみたいだ。
その液にストローをつけて、さっきみたいにシャボン玉を作り出した
ぷく~
さっきよりも大きく膨らんでいくシャボン玉は僕と少女を包み込みゆっくりと漂いながらふわふわ~と浮かび上がっていった。
「すごい...」
思わず感嘆の声が漏れる。
一度も体験したことのない感覚、心が安らいでいく感じがする。
「でしょ?まぁ、これは移動用だからそういう感覚は抑え目なんだけど、君結構感じやすい?」
「なっ、べっ、別にそんなことないよ(汗)」
「大丈夫。変な意味で聞いたんじゃないから(笑)それに、感情豊かなのはいいことだよ。」
「それならいいけど...」
「そろそろ着くかな」
2人を包んだシャボン玉は雲よりも高いところへと飛んでいった。
「さっ、着いたよ。」
そう言うと、ポケットから針らしきものを取り出しシャボン玉をつついて割った。
「ちょっ、割ったら落ちちゃうじゃないか(汗)」
「大丈夫。」
ビックリしてもがいていたが、全く落ちる気配がない。
本当に大丈夫だった。
雲の上で僕はただもがいていた。
「雲?僕は雲の上にいるの?」
「そうだよ。ここは雲の上。で、あれがさっきのシャボン玉。」
そう言って、少女は指をさした。
その方向にあったのは、さっきのとは比べ物にならないくらいの大きなシャボン玉。
そして、その中にはさっき地上で少女がシャボン玉に包んで空に飛ばした人たちがいた。
何故か、皆笑っている。
「何、これ?」
「シャボン玉の秘密、聞きたがってたよね?」
「うん、まぁ...」
「実はね、このシャボン玉はこのふわふわの雲を原料にしてるの。雲ってふわふわしてて気持ちいいってイメージない?」
「確かに。」
「その考えは当たってて、雲ってすごくふわふわしてて気持ちいいんだ。それに浮力も凄くてね、人を包んでも軽々と浮いちゃうの。因みに、それがこっちのビンに入ってる液。」
「じゃあ、水筒の方の液は?そっちも割れないシャボン玉だよね?このビンに入ってる液とは何か違うの?それに、シャボン玉の中の人たちがずっと笑ってるのも何か変だし...」
「こっちのは、あとで教えてあげる。それよりもっと面白いものを見せてあげるね。」
少女はそう言うと、大きなシャボン玉のところに行き、ビンの液でシャボン玉を作り、中にいた人を1人その中に移し変えて戻ってきた。
シャボン玉の中にいるのは30代後半らしき男性で極平凡な体つきだった。
「たんとご覧あれ。」
少女はポケットから先ほどとは別のビンを取り出した。
どうやらこれもシャボン液らしいが、一体どういった施しがしてるんだろうか。
少女はそのビンにストローをつけ、男性が入ってるシャボン玉の中にストローを入れて、男性をまた違うシャボン玉で包み込んだ。
さらに、続けざまにストローを液につける。
「ねえねえ、お兄ちゃん。お兄ちゃんはどういう髪型の女性が好き?」
「どうしたんだよ、いきなり...」
「いいから答えて。」
「え~っと、まぁ好きなのはロングかな。肩くらいまである黒のロング。」
「黒のロングだね、分かった。」
そう言って、液のついたストローをさっき作ったシャボン玉の中につっこみ男性の頭に向けてぷう~と吹いた。
シャボン玉が男性の頭を包み込んだかと思うと、変化が始まった。
スポーツがりだった髪の毛はどんどん生えていき、肩にかかるほどの長さになっていた。
「何だと~?」
驚きなんてモンじゃない。
開いた口が塞がらないってこういう時に使うんだな。
この諺作った人もこれくらいの驚きを体験したのだろうか?
「目はどういうのが好み~?」
少女は続けて僕に問いかける。
その言葉ではっとした僕は正気に戻る。
「目?目は~、そうだなぁ、二重が好きかな。」
「二重だね、分かった。」
少女はさっきと同じようにシャボン玉を今度は目を包むように作った。
そして、男性の目は二重になった。
その後も少女は僕に部分ごとの好みを聞いてきた。
「鼻は?」
「ちょっと高め。でも外人ほどじゃなくて、それよりはちょっと低め。」
「口は?」
「唇がぷるんぷるんで小さいのがいい。」
「おっぱいは?」
「おっ、おっぱぃ?(汗)え~と、Dカップくらいかな。」
「足は?」
「ちょっと細め。僕と同じくらいかな。」
答えるごとにシャボン玉でその部位を包み、僕の言ったとおりに変えていく。
そして最後に
「身長は?」
「140センチくらい。」
「お兄ちゃん、もしかしてやっぱりロリコン?」
「ち、ちがうよ(汗)」
「まぁ、いいや。じゃ、フィニッシュといきますか。」
そう言って、最初に作っていたシャボン玉で男性の身体を変化させていく。
変化が終わった。
そこにいたのは紛れもなく、1人の女の子だった。
僕の好みの...
「どう、すごいでしょ?」
「いやまぁ、すごいけど...何、これ?」
「TS(Trance Sexual)って言うんだけど、知らないかな?」
「あっ、いやそういう意味じゃなくて...まぁ、知らなかったけど。」
「所謂、性転換ってやつ。男を女にしたり、その逆も出来ちゃうの。」
「じゃなくて、どうするの、この人?」
「大丈夫、戻そうと思えば戻せるから。」
じゃあ、大丈夫...か?
まぁ、いいか。
それより今はシャボン玉の秘密だ。
「で、結局、なんでシャボン玉の中の人たちはずっと笑ってるのさ?」
「気になる?」
「気になるも何もさっきあとで答えてくれるって言ってたじゃん。」
「聞きたいの?」
「そりゃあ、聞きたいよ。」
「じゃあ、教えてあア・ゲ・ル。」
不意に少女はストローからシャボン玉をぷく~と吹いた。
どうやら、水筒の液で作ったシャボン玉らしい。
僕が気づいた時には、もうその身体はシャボン玉に包まれていた。
その先の記憶はない...

 

「クスクス。教えてあげるよ。水筒のシャボン液にはね、人を快楽にする仕組みを施してるの。君も、そして皆も、その快楽をずっとずっ~と受け続けてね。大丈夫、意識はなくなるけどとっても楽しいから。大丈夫。クスクス。」

 
 

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