忍び寄る魔の手

Last-modified: 2011-04-10 (日) 00:33:06

魔泡少女として動き始めた透架
そんな透架に新たな刺客が...

 

魔泡少女フワリンと~か 第2話 ―忍び寄る魔の手―

 

「はぁ、今日は色々あったよなぁ...」
お風呂に入りながら、今日のことを思い出す。

 

授業中に窓の向こうに現れた青い光。
後から聞いた話によれば、その正体は、バァブとかいう泡の妖精らしい。
俺はそいつのことをまったく知らないまま屋上に呼ばれ、悪玉とか言う黒い物体を封印しろと無理矢理戦わされる羽目に。
しかも、何故か少女に変身させられて...
悪玉は俺の担任(通称おっさん)の身体を乗っ取り、俺に攻撃を仕掛けてきた。
そのことを全く知らない俺は敵の攻撃をまんまと食らい、正直かなり危なかったがバァブの助言で何とか悪玉を封印できた。

 

「とまぁ、こんな感じか。しかし、あいつって自分で戦えなかったんだろうか?」
(あいつにはあいつなりの理由があるんだろうし、あの身体じゃ色々出来ないよな。)
などと思いながら1人納得しておく。
風呂を出て、自分の部屋に戻る。
俺の部屋は至ってシンプルで勉強机と椅子、ベッドに本棚があるくらいだ。
勉強机には教科書やノートが散らばっているだけのごく普通な男子高校生のような感じだ。
他もそんな感じで、生活するのにも何不自由ない部屋ではある。
ただ、俺の部屋には1つだけ違和感の感じるものがある。
そう、シャボン玉用の液とストローだ。
見た目が女の子っぽい俺は昔から女性に可愛いと人気だったが、俺はそれが嫌で、とにかく男っぽくなろうとした。
1人称が俺なのもそれが理由だ。
ただ、そんな俺には1つだけどうしてもやめられない女の子っぽい趣味がある。
それがこのシャボン玉。
俺の部屋にはベランダがあるため、シャボン玉で遊べるという利点がある。
が、誰にも見られたくないのでこうやって夜にこっそりと1人遊んでいるのだ。
「ふぅ~~~~~。あぁ~、いいなぁ、シャボン玉。やっぱ、このふわふわ感がたまんないよねぇ...」
「何やってるの?」
真後ろからバァブに声をかけられた。
「ひゃぁう、なっ、何だよ、バァブかよ。ビックリさせやがって(汗)」
「やっぱり好きなんだね、シャボン玉。」
「うぅ~~、わっ、悪いかよ(汗)」
「ううん、寧ろ好きだから助かったんだよ。」
「どうゆう意味だよ?」
「初めて僕を見かけた時、他の人には僕が見えてなかったでしょ?」
「ああ、おかげでおっさんに怒られたんだよ。」
「僕たち泡の妖精は、シャボン玉が好きな人にしか見えないんだ。それも好きであればあるほどより鮮明に見えるようになってる。」
「だから、俺にしか見えなかったってことか。」
「そうゆうこと。魔泡少女になれるのはシャボン玉が好きな人だけなんだ。」
「ちょっと待て。俺は男だぞ。魔泡少女ってなんだよ。」
「別に、男でもなれるよ。そのために変身用ペンダントがあるんだからね。それに...」
「それに?」
「元々女の子であるよりも、変身で男の子から女の子になることで慣れない身体であることからよりいい感じに力が抜けて魔泡がうまく使えるんだ。」
「だから、俺を選んだのか?」
「そうだね。それに、この街には君以上のシャボン玉好きはいなかったよ。」
「だからって、いきなりすぎないか?ちょっとくらい事情説明してくれてもよかったんじゃない?」
「僕もまさか悪玉がこんなに早く現れるとは思ってなかったからね。急だったのは仕方なかったんだ。」
「そうか。」
「こんなことに巻き込んだのは悪いとは思ってる。けど、この街を守れるのは君しかいないんだよ。悪玉に取り付かれた人間はやる気をなくしていくから、一刻も早く退治しないといけなかったんだ。」
「そっか~~~、ならしゃあないか。いつまでもウジウジ言ってたら男らしくないしな。」
「ありがとう。」

 

そんなこんなで、俺はこれからも魔泡少女として悪玉を封印することになった。
「ところで...」
「うん?どしたの?」
「確かさぁ、変身って悪玉に反応して強制的に行われるんだよね?」
「基本的にはそうだね。ペンダントが悪玉の反応をキャッチしたら自動的に変身するシステムになってるから。」
「人前で変身とかしたらどうなるんだよ、俺...」
「そこは大丈夫さ。ちゃんと記憶操作できるから。」
「いや、見られた時の俺の気持ちは?」
「大丈夫!誰も気にしてないよ。それに、変身シーンは読者が大喜びだから問題ないし。」
「読者って何だよ?」
「気にしないで、こっちの話だから。」
「はぁ...」
(やっぱり、魔泡少女としてやっていくのが辛くなった。とはいえ、契約してしまった以上、引き返せない現実。だったらいっそやるしかないか。)
半ば諦めながら、俺はベッドに寝そべった。
「もう寝るのかい?まだ、杖の使い方とか、魔泡のこととか色々話さなきゃいけないことがあるんだけど...」
「今日はもう疲れた。明日聞くから今日はもう寝かせて...スースー」
「寝ちゃった。まぁ、いいか。いきなりのことだったし疲れるのも当然だよね。おやすみ、と~か。」

 

次の日の朝

 

「う~~~~ん...」
「おはよう、とーか。」
「おは...よう...」
「よく寝れた?」
「うん、まぁな。」
「じゃ、早速特訓だね。」
「ちょっと待てよ。学校行かなきゃ...って、今何時だ?」
「8時だけど?」
「やっべ、遅刻じゃねぇか!母さんはなんで起こしてくれなかったんだ?」
「お母さんなら1時間前に起こしにきてたけど。」
「マジか?」
「うん。」
「まぁ、いいや。とにかく急がねぇと。」
俺は急いで着替えて支度をして玄関へと向かった。
「とうか、アンタ今日も起こしたのに起きなかったじゃない!ホントもういい加減早く起きなさいよ!」
「ごめん、母さん。とりあえず、今は急いでるから...」
「あぁもう、とりあえずこれだけでも食べていきなさい。」
と言って、母さんは食パンを俺の口にくわえさせた。
「あひはと。ひゃあ、いっふぇひまふ。」
そう言って、俺は玄関を出た。
「あんなので大丈夫なのかしら?」
「大丈夫だと思うよ。力は相当あった。流石は君の血を引いた子だ。」
「あらっ、バァブ、いたの。」
「いたの、だなんて失礼だなぁ、ミイは...せっかく君の好みの幼女に変身したのに...これでも、元パートナーでしょ?」
「あら、ごめんなさい。これで許して、ふ~~~~。」
「そ、そのシャボン玉は...あぁ~~~~、らめぇ~~~~~。ふわぁ...」
「相変わらずのいいにやけっぷりね。思わずこっちまでにやけちゃうわ。」
「ちょっ、だ...め...だって...そ...こ...は...あ~~~.......」
「あっ、イっちゃった。ま、いっか。」
(よくないよ...まったく...まぁ、気持ちいいからいいけど...)

 

一方、そのころ俺は...
走っていた。
(まだ間に合う、スポーツで鍛えた足をなめるなよ。)
そう思いながら、曲がり角を曲がろうとした瞬間だった。
曲がり角の先から急に女性が現れた。
俺はブレーキをかけれず、思わずぶつかりそうになり目を閉じた。
が...『ぽわん』っという音とともにやわらかい感触に包まれた。
「ぽわん?」
目の前に一瞬、透明な丸いものが見えたが、その直後、ぷちんっという音とともに目の前にあった何かがなくなり、その後ろから女性が現れた。
「大丈夫ですか?」
「あっ、はい...すみません。」
女性は恐らく、20代前半で細くとても綺麗だった。
思わず、少し見惚れてしまった。
「急いでたのかもしれないけど、曲がり角は気をつけないとね☆」
「はい...」
「わかったらいいのよ。次からは気をつけてね♪」
「わかりました。」
「じゃあね。」
そう言って、女性は行ってしまった。
「って、見惚れてる場合じゃねぇよ。早く学校へ行かなきゃ(汗)」

 

「あの子が?」
「ええ、新しい魔泡少女よ。」
「そう、あんまし感じなかったけど?」
「変身前だからじゃない?でも、無類のシャボン玉好きなのは間違いないわ。」
「へぇ~...まぁ、私の相手になるかどうか楽しみね。」
「あら、かなり余裕じゃない。」
「ええ、もちろんよ。私が負ける訳ないじゃない。」
「ウフ、それもそうね。」
「風来透架、対決するその日を楽しみにしてるわ。」