誕生!魔泡少女!!

Last-modified: 2011-03-16 (水) 03:12:41

それは、たったひとつの思いがけない出会いから始まった。
その時、運命が動き始める。

 

魔泡少女フワリンとーか 第1話 ―誕生!魔泡少女!!―

 

俺の名前は風来 透架(ふき とうか)。
女っぽい名前だが、列記とした男。
お母さんもお父さんも女の子が欲しかったらしく、女の子らしい名前にしたって話らしい。
見た目もどっちかと言えば可愛らしいみたいで、女性にも可愛いと人気があるのだが、正直俺はこの名前が気に入ってはいない。
一人称が俺なのも女性っぽいと思われたくないからだし、そのために色んな運動をやってきたからスポーツは万能に出来る。
そんな俺にも唯一、女性というか少女っぽい趣味がある。
それがシャボン玉なわけで、これは小さい頃にお母さんが見せてくれた中々割れないシャボン玉に見入って、好きになってしまったことが原因だったりする。
女の子っぽい趣味だって分かってるし、これをやめないと真の男になれないんじゃないかとは思うものの、そのふわふわした感じがどうしてもやめさせてくれなくて、日に日にどツボにはまってしまい、結果フェチとも言える位に好きになってしまった。
まぁ、これは皆には内緒にしてるんだけど...
バレたらそれこそ女の子って思われちゃうしな。

 

そんな俺は、今高校2年生。
特に何もない平凡な日常を送ってたわけだが、ある日変な生物と出逢ってしまう。
おかげで平凡だった日常は一変してしまう。

 

4月某日、俺はいつものように学校で授業を受けていた。
窓際に座ってる俺は授業が退屈になると窓から空を見ては妄想に浸る癖がある。
今日も50ほどのおっさんの国語の話に飽きて、空を覗いてはシャボン玉の妄想をしていた。

“シャボン玉...ふわふわしててほわほわしてて綺麗だよなぁ...”

かる~く涎を垂らしながら、妄想してると後ろの奴に注意される。
慌てて涎を拭き、前を向き直そうとしたその時だった。
一瞬だけ窓の先に青い光が見えた。
気のせいかと思ったが、確認のため窓を見直した。
間違いない、青い光が見える。
後ろの奴にも聞いてみたが、後ろの奴には見えていないらしい。
目をこすった、それでも青い光はまだ見える。
「こら、風来!何で窓を見てるんじゃ。今は授業中じゃろうが。」
流石に、気づかれたのかおっさんこと教師に注意された。
「いや、なんか窓の向こうに青い光が見えるので」
「青い光?」
そう言って、教師は窓を覗く。
「何もないじゃないか。」
どうやら、窓に映る青い光は俺にしか見えていないらしい
「寝ぼけたこといっとらんと授業に集中せい。」
「はい...」
未だに見える青い光を尻目に俺は前を向いた

 

キーンコーンカーンコーン

 

「じゃ、授業終わり。」
授業が終わり、伸びをする。
再び、窓を見てみるとまだ青い光は見えている。
しかも、それだけじゃなかった。
“助けて。”
声が聞こえるのだ。
声の主は、そう、この青い光。
流石に怖くなり、思わずトイレに逃げ込んだ。
が、しかし...
“助けて。”
声は止まない。
さらに、謎の声は続けて言う。
“屋上に来て...ほしいの。”
ここで、行かないという選択肢もあっただろう。
屋上に何が待ってるかさえも分からないのに、行くなんて怖いとも思った。
けれど、きっとここで行かなかったらこの声の正体は分からないし、きっとずっとこの声は止まないだろう。
決心して、屋上へと向かう。
屋上は普段は立ち入り禁止で、特別な許可がない限り行くことは許されないが、そんなこと言ってる場合ではない。
幸い、テスト期間で今日は午前中で授業が終わる日で、教師以外は皆家に帰っていたため、知り合いとすれ違うなんてことはなく、止められることもなかった。
屋上に着くと、先ほどの青い光が宙に浮いていた。
さらに、目の前には黒くて丸いものが同じように宙に浮いていた。
“君が透架だね?”
「なんで、俺の名前を...」
“そんなことはいいから、早くこれを持って。”
(いやいや、よくないだろう...)
そう思いながらも言われるがままに渡された白い光沢をまとったペンダントを右手で握った。
“今から僕が言う言葉を後に続いて復唱して。”
「お、おう。」
“我は精霊に選ばれし者”
「わ、我は精霊に選ばれし者」
“そなたと契りを交わし”
「そなたと契りを交わし...って、契り~!?」
“いいから続けて、黒の意思を持つ者を封じん”
「黒の意思を持つ者を封じん」
そう言った瞬間、ペンダントの光が大きくなっていった。
やがて、その光は俺の全身を包みそのままふわっと宙に浮き始めた。
光は俺を包んだままシャボン玉のようにどんどん空へと向かっていく。
3メートルほど浮いたところでそれは止まった。
止まったと思った瞬間だった、身体にズシンという感じの重みを感じた。
その重みは少しずつ増していった。
が、痛みは感じることはなく、それどころか何か気持ちいい感じがした。
俺はその気持ちいい感じに頭が蕩けていく。
するとまた、身体に反応が起きた。
今度は、ビクンとなる感じで何かが少しふっくらしているように思えた。
よく見ると、胸の辺りがほんの少しだけ膨らんでいた。
また、ビクンってなる。
今度は、何かがしぼんでいく感じに襲われる。
そう、男の大事な部分がしぼんでいってるのだ。
気づいた時にはもうしぼみきって睾丸もなくなっていた。
その後は、頭の気持ちよさに負けてしまい何があったのか覚えていない。
気がついたときには、光が少しずつ沈んでいっていた。
やがて、光は少しずつ落下し地上に着陸するとぱちんと割れた。
「よし、上手くいったね。」
と、青く丸い玉に目と口が書かれたような何かが話しかけてきた。
「だ、誰だアンタ!?って、あれなんか声が変だ...」
それだけじゃない。
舌もあまりちゃんと回らないし、それどころかなんか自分がちっちゃくなったように感じる。
「これで、今日から君は魔泡少女フワリンと~かだね。さぁ、目の前にいる悪玉を封印するんだ。」
「“魔泡少女だね。”じゃねぇよ。なんだよこれ? てか俺男なんだけど。」
「君はもう列記とした魔泡少女だよ。なんなら確かめてみるといい。」
そういうと、手鏡を渡してきた。
手鏡を覗くと、そこには小学1年生くらいの少女がいた。
服はかわいらしいワンピースにフリフリのスカート、ともにピンクをベースにしたものだ。
そして、先ほどのペンダントが首にぶら下げられていた。
「なに、これ...」
「可愛いでしょ?」
「“可愛いでしょ?”じゃねぇって!元に戻せよ。」
「無理だよ。君はもう契約しちゃったんだ。あの悪玉を倒さない限り元の姿には戻れないよ。」
「契約って...勝手に言わせたくせに...」
「ほらほら、細かいことは後にして今は悪玉を封印することが先でしょ。」
「封印っつったって、どうすりゃいいんだよ?」
「今ぶら下げてるペンダントに“スタートアップ”って話しかけてみて。」
「スタートアップ?」
“All right,master.”
ペンダントはそう反応すると、俺の目の前に杖みたいなものが現れた。
それは杖のようだが、真ん中にはわっかがあり、さらに先はラッパのように口が広がったような形をしている。
「なに?えっ、何なのこれ??」
「それが君の武器だよ。それを持って振り回してみて。」
「えっっっと...こうか?」
そう言って、俺は目の前に現れた杖を持ち振り回してみた。
すると、わっかの部分が光りだし、さらにそこから大きなシャボン玉が出てきた。
「えっ、何これすげぇ...」
「このシャボン玉で悪玉を包んで封印してほしいんだけど...」
「ちょっ、えっ、何これつっついても割れないじゃん。すごすぎるって。」
「話、聞いてる~?(怒)」
「あっ、ああ、封印ね、封印。」
「(遊びたかったらいつでも遊べるよ、どうせまだまだ悪玉は...)」
「何か言った?」
「いや、何でもないよ。それより封印を早く。」
「OK~」
そう言って目の前の悪玉を...
「って、いなくなってる~(汗)」
「と~か、ドアの方だ。」
指示されたとおりドアの方を見てみると、悪玉が開いていたドアを通って校舎の中に入っていった。
それを追いかけるように俺たちは校舎に入る
「誰かに見つからねぇうちに早く封印して元に戻らねぇと...」
「大丈夫、誰も君だって分かんないよ。こんなカッコしてるんだし。」
「言うな!しかも、なんかスカートがスースーして動きにくいし...てかこれ離されてない?」
「だね^^;」
「あぁ、もう仕方ない。こうなったら先回りしてやる。」
俺は悪玉の進んでいる方向からどこに行くかを想定し、先回りすることにした。
先回りは無事成功し、ちょうど悪玉が来る目の前に出てこれた。
「もう、逃がさねぇぞ。」
その時だった。
「誰だね、テスト期間だというのに校内で騒いでるのは...」
(やべっ、おっさんじゃねぇか)
思わず、近くにあった隅を利用し身を隠す。
「おっさんって誰?」
「うちの担任だよ。ったく、なんでこんな時に...」
「あっ、危ない!」
青玉(命名俺)がそう言った瞬間、悪玉がおっさんの中に入った。
すると、おっさんの周りに黒いもやもやが現れた。
「なんだ、これ?」
「気をつけて、悪玉は人に乗り移り攻撃をして来るんだ。」
「マジかよ...やっかいだなぁ...で、どうすりゃいいんだ?」
「簡単さ、乗り移った人ごとシャボン玉に包むのさ。」
「ふ~ん...って待てよ。そんなこと出来るのか?」
「さっき、君だってシャボン玉触ってたけど割れなかったじゃないか。それに、出来ないことなんか言わないよ。」
「確かに、弾力があってぷにぷに~ってしててぇ、気持ちよかったけどぉ...」
「と~か、涎、涎。」
「あっ、あぁ...まぁ、とにかく出来るってことだな。だったら楽勝だ。」
俺は隠れてたところから身を乗り出しおっさん(悪玉)に向かっていく。
「むやみやたらに近づいちゃダメだ。」
青玉がそう言った時にはもう遅く、俺は黒いものに包まれ宙に浮かされていた。
「な...んだ...これ...ち...からが...はい...らな...」
「遅かったか...悪玉は人に乗り移ることでその人が持つ怒りや悲しみの念を使って黒い邪悪なシャボン玉を作り出すんだ。そのシャボン玉に入ったら、力を奪われてしまうんだよ。」
「く...そっ...ちか...らが全然...はいら...ない...」
「透架!杖の細い方の先を口にくわえるんだ!」
意識さえ保つのが難しくなってきた状態で、俺は青玉の言うとおりに杖を口にくわえた。
「今残ってる力を一気にためて杖に息を吹き込むんだ。」
言われるがままに息をため、ふ~~~~~~っと吐いた。
すると、反対側のラッパ型をした方の先からシャボン玉がたくさん出てきた。
そのシャボン玉は黒いシャボン玉をどんどん浄化していき、次第にシャボン玉は綺麗な虹色になった。
そして、少しずつ落下し着地するとともに割れた。
「と~か、次の攻撃が来る前に封印だ。」
「よし、今度こそ封印してやるからな。おりゃぁ~~。」
全力で杖を振り回し、大きなシャボン玉を作る。
杖から作り出された大きなシャボン玉はおっさんを包み込み宙に浮いた。
すると、さっきと同じように黒いものが浄化され虹色となっていく。
黒い部分が全てなくなるとシャボン玉は少しずつ落下して着地と同時に割れた。
「う~ん...」
おっさんが気がつき俺に話しかけてくる。
「風来、何やってるんだ?早く家に帰れよ。」
「あっ、はい。」
(あれ?俺、少女になってたのになんでばれてんだ?)
と思ったが、ガラス窓を見てすぐに納得した。
元に戻っていたからだ。
「何だったんだ、結局。まぁ、夢か何かだったのかな。」
「夢じゃないよ。」
目の前には、青玉がいた。
「えっ?」
「夢じゃないよ。君は契約して魔泡少女になったんだよ。これからもよろしくね。」
「いや、悪玉はもう封印したから終わりじゃないの?」
「誰が1匹って言ったの?悪玉はまだまだいっぱいいるよ。」
「はぁ~~~~~?」
「というわけで、よろしくね。そういや、名前言ってなかったね。僕の名前はバァブ。泡の精霊さ。」
「あっ、あぁ、よろしく。って、そうじゃなくて。もしかして、悪玉は全員封印しないとだめ。」
「うん。」
「でも、俺元に戻ってるけど?」
「あぁ、それなら大丈夫。悪玉が現れたら、そのペンダントが反応して強制的に変身するようになってるから。」
「はぁ?だったらこんなもの...う~ん...う~ん...」
「無駄だよ。一度契約したら全ての悪玉を封印するまでは絶対に外れないから。」
「そんなぁ~~~~~。」

 
 

こうして、俺はひょんなことから魔泡少女として悪玉とかいうくろい物体を封印することになってしまった。

 
 

続く...のか?