アナザー【かまってください】

Last-modified: 2009-05-19 (火) 14:11:17

午前。
「エリオく~ん!」
とパタパタ廊下を走ってくるのは同じライトニング分隊のキャロ・ル・ルシエだ。
「あっ、キャロ…。どうしたの?」
「今から、用事とかある?」
キャロは肩で息をしながらエリオに聞いてくる。
「ごめんキャロ、今ちょっとフェイトさんに呼ばれてていつここに戻れるか…また今度…。」
ごめんねっと言ってエリオはその場を去ってしまった。
クキュ~
と寂しそうな表情をし、エリオを見送るキャロを見て傍らを飛んでいるフリードが鳴いた。

「メイさ~ん!」
パタパタ廊下を走ってくるのはキャロ。
「うぁ、どうしたのキャロ?」
びっくりした表情でメイが歩を止める。
「メイさん、これからお暇ですか?」
「え~っと、ごめんね、これからスバルとティアナと出かけることになってるの…。」
「そうですか…わかりました…。」
元気無さそうにうつ向くキャロ。
「ごめんね、また次の機会に…。」
申し訳なさそうにメイはその場を去っていった。
またしても寂しそうにメイの背中を見送るキャロ。
その傍らでクーとフリードが鳴いた。

「ったく、シグナムさんも…酷いよ~…。
何も休日に暇だからって模擬戦に付き合えだなんて…。
いい運動になったり、いい技術を身に着いたけど…。」
ボロボロになった訓練着、ボロボロになった木刀をそのままに、重い体を引きずる様に歩くヤマト。
そこへ
「ヤマトさ~ん!」
かまって、かまって~とパタパタ廊下を走ってやって来るキャロ。
「あっ、キャロ…。」
「ヤマトさん、これから予定とかありますか?」
考えるヤマト。
さっきのシグナムの模擬戦以外の予定はなかったりする。。
ただシャワーを浴びて、昼食をとってからなのはとフェイトとはやてと談話しようと思っていた。
「あぁ、キャロちゃん…」
ヤマトを見上げる目。
ほどよくうるんでいる瞳。
(やられた…つぶらな瞳にやられた)
「俺…朝から…、その…。」
元気よく上がっていた眉が少しずつ八の字へと変わる。
「シグナムさんの…訓練に…付き合わされて……。」
瞳の潤いが増した。
(うぉぉぉ、これは卑怯だ)
「疲れてないから、シャワー浴びて、それから要件聞くから…。」
パッとキャロの表情が早変わりした。
「あっ、それなら…。私も入ります。」
(キャロちゃんには負けたよ)

シャァァアアア…。
「髪流すよ。」
「はい!」
キャロのピンク色の髪を流すヤマト。
綺麗に泡おとしてやり、それからシャワー室からでると体を拭き、キャロの髪を乾かしてやる。

昼食をとって、外を散歩する。
歩幅が違い、キャロの歩くスピードが遅れがちなので、ヤマトがてを差し出すと、少しだけ頬を赤らめてキャロは差し出されたヤマトの手を取った。

一方、メイ、女性服売り場試着室前。
試着室は二つあり、右にスバル、左にティアナが入っている。
シュッとか、パサッとか絹ずれする音が聞こえるところをみると、今二人は着替えているところなのだろう。
そんな二つの試着室の前で待っているのはメイ。ファッションコメンテーターでもやるのだろうか。
左右のカーテンが同時に開かれ、スバルとティアナがそれぞれポーズをとって感想を求めてくる。
「「どう?」」
「うん、いいんじゃないかな?」
一旦カーテンがひかれ、再び開く。
「これは?」
「うん、いいね。」
もう一度。
「似合ってるよ…。」
仏の顔も三度まで、スバルに首を羽交い締めにされ、ティアナに
「何かどーでもいいみたいに聞こえるんだけど…。」
と言われる。
「いや、そんなつもりじゃ…。コメントするの苦手だし…」

サァァア…。
「雨…降ってきちゃいましたね…。」
ポツポツ降ってきていた雨に気付き、ヤマトとキャロは散歩を切り上げていた。
「まぁ、ニュースでやってたもんね。」
今はヤマトとエリオの自室だ。ヤマトは二段ベッドの一段目に寝転がって雑誌を開いている。
ベッドの縁に足をかけてぶらぶらさせているのはキャロだ。
そうしながら、しばらく二人は会話をしていたが、次第に話題がなくなり、沈黙が続いた。
シヤマトがあくびを噛み殺しながら雑誌を眺めていると、もそもそとベッドが揺れ始め、ヤマトの頭のすぐ横にキャロがひょこっと頭をだした。
「ヤマトさん、それ、なんの雑誌なんですか?」

「あぁ、ホビー雑誌をね…。つっても買うかは分からないけど…。」
次のページを捲るヤマト。
「これなんか大きくてカッコいいじゃないですか?それにピカピカしてますし」
ヤマトが指を差していう。
パーフェクトグレード 1/60スケール ウイングガンダムゼロ(EW) パールミラーコーティングVer
「うわ、これ高すぎるよ!パールミラーと付いているだけに。」
「カッコいいと思いますよ?」
「どっちかって言うと、大きくてカッコいいより小さくてカッコいいがいいなぁ~。これなら同じスケールで値段が格段に違うよ」
何て会話をするのであった。

サァァア……。
「雨かぁ…。」
スバルはテーブルの上に頬杖をつきながらアイスを食べている。
「それを覚悟で来たんだしね…、仕方ないじゃない。」
サクッとコーンをかじりながらティアナが言った。
「ねぇ、スバル…これ食べない?」
メイが五段積みになったアイスをスバルに差し出す。ちなみに最初は八段だった。スバルが買ってくると言ったので同じやつでいいといったらこうなった。
「エッ!?いいの?」
「…うん、ちょっと私には多かったよ。」
メイの手からアイスを受けとるスバル。ワーイっと喜びながら頬張っていく。
「よくそんなに入るわね~…。」
ティアナはあきれたような顔をした。
「いや、でも逆にこれだけ食べてくれると気持いいね…。」
「そうね、まぁ見てる分にはね…。」
違いないと笑うメイだった。

雑誌を閉じるヤマト。
いつのまに集中していたのか、キャロは隣で寝息を立てていた。
「キャロ~…、寝るなら部屋に戻ってから寝ろ~…。」
と耳元で声を出すと、グズって寝返りをうつだけだ。
「お~い…。」
頬をぷにぷにつつく。反応は…ない。しばらくメイは考えるようにしていたが、
「ま…いいか。ふぁぁ~ん、見ているとこっちまで眠たくなってきたなぁ」
そういって自分とキャロに布団をかけて眠りに着いた。

午後四時。
「あれ、エリオも今帰り?」
「メイさんもですか?」
それぞれ自分たちの部屋へ向かう途中でエリオを送る途中の通路で遭遇するメイとエリオ。
今日あった事を話ながら自室へと向かい、メイがドアを開け、室内電気をつけるが、すぐに消し、ドアをそっと閉めようとする。
「入らないんですか?」
エリオが言うと部屋の中を指差し、そのさし示す方向を覗くと、ヤマトの胸の中で蹲るようにして寝ているキャロと、そのキャロを包み込むように寝ているヤマト。
声をあげそうになるエリオの口を塞ぎ、メイは口許に人指し指をたて、静かにというジェスチャーをする。そのままそっとドアを閉め鍵をかけるメイ。
「寝かせてあげよう、夕食まではまだ時間あるんだし…ね?」
「…そうですね…。」
二人は自室から立ち去り、部屋にはヤマトとキャロの寝息だけが響いていた。