第01話【決死の勇姿】

Last-modified: 2009-03-20 (金) 11:35:11

新歴76年 JS事件解決から半年後

ミッドチルダ首都南部・マリンガーデンにある大型デパート火災事件の夜

原因不明の出火であたり一面は炎の海となったデパートと道路。
エントランスの女神像付近で1人の少年が孤立していた。泣きながら父と母の名を呼ぶ。
周囲には瓦礫と火柱で行く手を阻まれていた。

少年の名前はマイト・ランドール、13歳。

マイトは両親の名前を呼ぶが、煉獄の炎の中では空しい…
歩くと小さい爆発に襲われ、幸い無事のようだが、体力が無に等しく、立ち上がることもできない。
「痛いよ、帰りたいよ、助けて、お父さん、お母さん…」
マイトの頭上に高熱に耐えなかっただろうと巨大な女神像の頭が落ちてくる。
もう死ぬしかないんだと目をつぶり、
彼が絶望の時を迎えるその時!

「ディバインバスター!!」
桜色の魔力弾が巨大な女神像の頭に直撃し、バラバラに砕けた。
『GN Field』
一人の男性が一人の女性と少年を包むように粒子状で緑色の障壁を張って、破片を防ぐ。
少年は目を開けると火事の中に1人の男性がいた。
「どうやら、間に合ったようだね。なのは、頼む!」
「了解!」
さらに上空から1人の女性が舞い降りてきた。
「よかった…助けに来たよ」
少年の目の前に舞い降りた女の人は、「よく頑張ったね、偉いよ。」と言いながら肩を叩く。
少年は余程安心したのか、彼女を見ながら頷いた。
「このお姉さんが安全なところへ連れってあげるからな」
「もう大丈夫だからね……安全な場所まで一直線だから!!」
そういうと彼女は天井を見上げた。

「彼はまかせろ」
「お願い、ヤマト。」
そういうと彼女は、天井に持っていたデバイスを構え、
「バリア展開。」
彼は薄い桃色のバリアを張った。
《上方の安全を確認》
彼女のデバイスがそういうと、彼女の足元に魔法陣が現れた。
《ファイアリングロック、解除します》
「一撃で地上まで抜くよ!」
《All Light、Load Cartridge》
そう言い合うと同時に、彼女のデバイスは二回リロード、さらに三つの翼が現れた。
「…………」
そのままデバイスを天井に向ける。
少年はその姿に見とれていた。
《Buster Set》
先端に魔法陣のようなものが現れ、魔力が収束される。
「ディバイン………バスターーッ!!」
収束された魔力は一直線に解放され、天井を貫いた。

「…少し強すぎじゃないのか?」
少年を抱き抱えている彼は彼女にいった。
「にはは……やっぱり?」
「また出力を適当に………まぁいいけどね。」
そういいながら彼は通信をつなげる。
「こちら教導隊2、エントランスホール内の救助者、少年一名を救助しました。」
『……ありがとうございます。さすが航空魔導師のエース・オブ・エースとタクティカルコマンダーですね!』
「はは……そんな通り名は飾りだよ。」
「西側の救護隊に引き渡した後、すぐに救助活動を続行しますね。」
『お願いします!』
そういうと通信が切れた。
「行こう、ヤマト。」
「了解」

そうして彼等は空を飛んでいった。
助けられた少年は飛んでいる2人の姿を見て、尊敬する目になっていた。
やがて完全鎮火し、負傷者は出るものの幸い、死亡者は出なかった。そこに偶然、居合わせた5人の魔導師の活躍で被害は少なかった。5人の魔導師の活躍を知る者は極めて少ない。

翌日の治安維持局・4F・隊長陣専用ハウス
一つのベッドになのは、ヤマト、フェイト、はやて、メイが寝転んでいた。
疲労で制服を脱いだり、下着を露出しながら寝ていたのであった。

「はぁ。こうも立て続けにいっちゃ、こっちの身がもたないよ」
メイは絶句しながら枕を抱きついている。
ヤマトは口を事実にして重要な事を言った。
「俺たちだけじゃまともにはやっては行かれない」
その言葉になのはとフェイトは強く頷く。
「確かに、ヤマトの言う通りだよ」
「具体的に何かあるの?」
フェイトがヤマトを質問で攻めて、回答する。
「自分の部隊を持ちたいんだ。ダメならいい」
「自分の部隊を持つってイイことだよ」
「私もフェイトちゃんと同意見だよ」
「私も反対はしない」
「ヤマト君も私と同じことを言うたね~」
ヤマトは少し涙を流して、4人に礼を言った。
「みんな、ありがとう…なんだか元気がわいてきた」

デパート火災から1年半後… 

なのはとヤマトの結婚、時空管理局所属・独立治安維持部隊「リング・ベル」の仮設立、初任務で2人の少女の救出などもあった。

新歴78年五月某日

ビルの屋上に立つ少年。
赤い髪に黒いハチマキ。
左手に格闘戦用の篭手、右手には剣。
その場で練習をする彼の近くにもう一人。
緑色の髪に魔導師の杖を持つ少女。その名はマリア・ベネット

緑色の髪をした少女の近くに
金髪に槍を持ち、手入れをする少女。その名はクリス・シルヴィアス マリアの友人
また近くには銃を持つ少年。その名はランド・ヴォルス マイトの友人

四人一組・フォーマンセルである。
「調子、いいなマイト。」
「そうか?普通だけど。」

女性組みは
「マリア、今日の試験、絶対にクリアしようね。」
「憧れのなのはさん、ヤマトさん、フェイトさんに力を見せるんだ。」

マイトはなのはとヤマトに助けられたことに意気揚揚をしていた。
「やけに、上機嫌だね。マイトくん?なのはさん達に助けられたとか」
「そうかな。僕もあの方たちを尊敬している」

そんな事をしていると、通信パネルが現れた。
そこには白い髪をした女性が写っていた。
『おはようございます!さて、魔導師試験受験者さん4名!揃ってますかー?』
少し抜けたようなゆるい喋り方で4人を確認する。
「「「「はい!」」」」
それに対して、元気よく返事を返す4人。
『確認しますね?時空管理局、空士168部隊に所属のマイト・ランドール二等空士とランド・ヴォルス二等空士と……』
「「はい!」」
『マリア・ベネット二等空士とクリス・シルヴィアス!』
「「はい!」」
『所有している魔導師ランクは共にCランク。本日受験するのは陸戦魔導師Bランクの昇格試験です!間違いないですねー?』
「はい!」
「間違いありません。」
「そうです。」
「はい!」
『はぁい!本日の試験官を勤めますのは、私、リィンフォースⅡ(ツヴァイ)空曹長です!よろしくですよー!』
そういってリィンフォースⅡは敬礼をした。
それに合わせて、4人は敬礼しながら「よろしくお願いします!」とこたえた。

ほぼ同時刻に一つのヘリがいた。
3人の女性が座っており、モニターから試験の様子を見る。
「おぉ?早速始まってるなぁ?リィンもちゃんと試験官してる。」
時空管理局所属・独立治安維持部隊「ガーディアン」所属の部隊長、八神はやて二等陸佐。リング・ベルとは兄弟に当たる・
「はやて、前に出ると危ないよー!モニターがあるから」
そう言った女性、一条寺メイ二等空尉。
「そうだよ、窓全開だと危ないよ。モニターでも見れるんだから。」
金髪の女性、フェイト・T・ハラオウン執務官の三人だ。
「はーい。」
はやては素直に答え、窓を閉め席についた。
同時にモニターが現れる。
「この二4がはやての見つけて来た子達だね?」
「うん。4人ともなかなか延び白がありそうなええ素材や。あのヤマト君も認める人材や」
「なのはもヤマトもなかなか、やるね」
「そうやろ?」
メイの発言に満面な笑みを浮かべるはやて。
「今日の試験の様子を見て、行けそうなら正式に引き抜き?」
フェイトがそうはやてに聞いた。
「うーん……直接の判断はなのはちゃんやヤマト君にお任せしてるけどな。」
そう笑顔で返すはやて。
「そっか……」
「ヤマト、リング・ベルの部隊長だからね」
三人の談話は続いた。

廃ビル・上空

ピッ、ピッ、
モニターを触る音が誰もいないビルに響く。
《範囲内に生命反応、危険物の反応はありません》
彼女のデバイス、レイジングハートは情報を読み上げる。
《コースチェック完了です》
彼のデバイス、ファーウェルがコース内のチェックを終える。
「ありがとな、レイジングハート、ファーウェル」
そのまま監視用サーチャーと障害物を確認し、レイジングハートに語りかける。
「私たちは全体を見てようか。」
「了解。入隊も兼ねたテストだからな、あの子たちには頑張ってもらいたいものだ」
《Yes My Master》

試験の説明を終えたリィンは、
『…何か質問はあるですかー?』
と聞く。
その問いにマイトは悩むが、三人ががマイトを見て、「ありません。」と答えた。
それを見たマイトも同様に「ありません!」と力強く答えた。
『では、スタートまで後少し!ゴール地点で会いましょう!』
リィンは最後に『ですよ。』といった。
同時にモニターがスタートのカウントダウンに変わった。
身構える4人。
表示されている物が、電子音と共に消え、何も無くなると同時に甲高い電子音とStartの表示に変わった。
試験の始まりである。

「おぉ、始まった始まった。」
「お手並み拝見……と………」
ヘリの中の二人はモニターを見るが、メイだけは違った。
「メイちゃんもモニター見ぃや。」
はやてが誘うも、
「いや、私は現地の上空で見てくる。私もなのはの補佐だよ」
そう告げてデバイスを持った。
ある事件から今まで使い続けてきた彼女のパートナー・ファフニールだ。
「行くよ、ファフニール」
《Yes My Master》
メイは背後の翼を展開させて試験会場の監視をした。

「てやぁぁぁー」
マイトの左の拳が小型のオートスフィアを破壊し、すぐさま右手の剣で一度で二機破壊する。
そしてクリスは槍型デバイスの特徴であるミドルレンジからの攻撃で反撃を受けずにターゲットを破壊。
「クリスもやるな!」
「マイト君もね!」
マリアは小型魔力弾でターゲットを攻撃するが、威力は弱く、破壊までに至らなかったが、
「サポートは任せてくれ!」
ランドが二丁の拳銃を巧みに使い、数機破壊。
オートスフィアの破壊数のノルマを達成し、次の目標へ向かう四人。

上空でなのはとヤマトが彼らの行動を見ていた。
「この歳でなかなか良いセンスだ。」
「うん、そのようだね。」
2人はマイトら四人を追いかける。
『どうやろか?最速記録保持者はん?』
「どうだろうね。確信はないが」
確かにいい腕でいいタイムだとは思う。
「しかし、最大の関門で最大の難関・大型のオートスフィアかな」
「何人もこの試験を受けているけど、大半ここで脱落する。この4人はどうするんだろう。そこが見所だ」
『流石、最高記録保持者』
「リング・ベルの隊長である私が通信、切りますよ?ガーディアン部隊長殿?」
「タンマ!ヤマト君」
ヤマトは冗談のつもりで言った。

上空から見ていると上手い戦い方をしている。

「いい線まで進んでいるな。四人とも」
「どこまで進むだろうね」
なのはが少し美味を浮かべた。
「…ッ!残存機、数機いた!」
「えっ?」
「マリア、来るよ」
クリスがマリアに叫んだ
死角から二機の小型のオートスフィアが出現し、不意にマリアとクリスを攻撃する。
間一髪、回避に成功だが、マリアだけが違った。
「マリア!?」
「大丈夫、ちょっと足をくじっただけよ」
マイトとランドは攻撃を避けつつ、反撃して撃破。

「モニターが消えた…」
「ヤマト君のカンが当たったんや」
「サーチャーに流れ弾が当たった見たい…」
メイはもう一つの監視役のなのはとヤマトに通信する。
「聞こえる?」
『どうしたんだ、メイ?』
『何かトラブルでもあったのかな?』
「ヘリ付近のサーチャーが流れ弾に当たって…モニターがダメになったの。取り合えず来てくれる?」
『了解。直ちにこちらへ向かう』
通信が切れた。

「…最終関門は抜けられない………」
「………」
「私たちが離れた位置からサポートするわ、そしたら……あなたたち2人ならゴールできる………」
「マリア!クリス!」
「俺達、四人でゴールするんだ!」
という、ランドの言葉に立ちあがった三人。
「そうだ、ここを抜けないとリング・ベルの一員にはなれない」
「みんなのために」
「なのはさんのために!」
一致団結をしたかのように行動を始めた。

「四人ともなかなかいい判断だね。時間が過ぎているのにも拘らず」
「友情ってものだよ。窮地の時でも絆で解決する」

残り時間は3分をきった。
「さあ……どう切り抜けるか………」
と言っていると、コース上にマリアが一人走っている。
しかし妙だ。
別に特別早いわけでもなく、まるで狙ってくれと言わんばかりに道のど真ん中を走っている。
と、そこに大型オートスフィアの射撃が着弾した。
『直撃!?』
はやてが声をあげると
「違う!幻影だ」
とヤマトは言う。
さらに確認してみると幻影だと分かった。
「フェイクシルエット…ティアナが使っていた魔法だな」
『本人または対象の幻影を作り上げる。ヤマト君のインスペッサミラージュの残像は限りなく本物に近くて、残像も攻撃するのがいいんや』
マリアとクリスが囮になっている。
ランドは射撃を繰り出しているが、障壁に弾かれる。
「なんで、攻撃が効かない!」
ヤマトは微笑しながら呟いた。
「ただ攻撃してもいいってもんじゃない。相手の特性、行動、弱点を知ることが出来たら一流の戦士になれる」
「ヤマトらしい言い方だ。私もそんなヤマトが好きだよ」

マイトは相手を模索しながら行動に移った。
「バリアを張っているから攻撃が効かない…肉弾戦!」
マイトは拳に地面を叩き、赤色で帯状の道が出てきた。
「ウイングロード…」
「スバルが使っていた魔法か…これで勝機を変えることができたら御の字だけどね」
その道を走る少年は高く跳躍し、ターゲットに近づく。

マイトの剣がターゲットの障壁に突き刺さり、障壁が消え、マイトは一撃必殺の技を繰り出す。
雑誌で火災事件を解決した5人の魔術師の特集のページを切り取り、それをお守り代わりしたことを思い出す。
「見ていてください!ヤマトさん!なのはさん!ディバインバスタァァァー!」

そこには一人の………
いや、一人の人と一人の妖精(?)が二人のゴールを待っていた。
「どうでしたー?ヤマトさん?」
「力量、戦術、行動力………全てが申しぶないな。」
一足先にゴール地点で待っているヤマトは、冷静に成績判断をしていた。
「後は時間だけですね~……」
「そういうこと。」
等と話していると。
「……ん?来たかな」
「あ!来たですねー?」
そこには奥の手を使った4人がいた。

「なるほど、これなら時間内に4人ともゴールできるな。」
等と判断していると、ランドはは最後のターゲットを撃ち壊す。
「はい!ターゲットオールクリアです!」
「だが時間が………限界ですけど…試験官殿」
見ると後10秒前後。
するとマイトとクリスはさらに速度をあげた。
だが、
「……あ、なんかチョイヤバです………」
「……はぁ…ゴールすることしか考えていなく、止まることは考えていなかったのな………」
等と頭を抱える。
「「「「うわあぁぁぁぁぁ!!!!」」」」
もう既に4人の悲鳴が聞こえる距離。
「リィン……下がれ………」
下がると同時に電子音が響く。
ゴールした。
が、
「「「「あぁあぁぁぁぁぁ!!!!」」」」
そのままゴール先の残骸に一直線。

「…ふぅ……アクティブガード、ホールディングネットもかな?」
「だね…被害軽減のために俺も残骸にネットガン、トリモチでもやっておこうかな」
《Active guard at Holding net》
《ネットガン&トリモチランチャー》

激突、
衝撃、
その反動で約一名が宙をまう。
「うわぁぁぁぁ!?!!」
落ちる。
浮遊魔法も使えない彼は落ちることを覚悟した。
が、

「大丈夫か、ランド・ヴォルス君?」
ヤマトが墜ちてくる少年をキャッチする。

トリモチネットに激突しているクリス、瓦礫に激突寸前のマリアとマイト。

「んーもー!危険行為で減点です!」
小さな妖精。
もとい、
リィンフォースⅡ空曹長が声を張り上げた。
「頑張るのはいいですが怪我をしたらもともこもないんですよー!そんなんじゃ魔導師としてはダメダメです!」
小さ……と思ってると、
「そこまでだ。」
「にはは…まあまあ。」
「?」
マイトは体を戻し聞き覚えのある声のした方向に目をやった。
「ちょっとびっくりしたけど、無事でよかった。」
「まあ、何とかだがな。ヒヤヒヤしたけどね」
そこには、当時と同じ姿の二人。
さらには当時抱えられていた自分の場所にティアナが抱えられていた。
「リィン、彼女らに怪我の治療を。」

「はいです!」
「すみません空尉………」
そういってランドとクリスは治療を受け、
「とりあえず、試験は終了ね。お疲れ様。」
というとネットが消え、ゆっくりと地面に下ろされた。
「リィンもお疲れ様。ちゃんと試験官できてたよ。」
「わーい!ありがとうございますなのはさん!」
「よくやってくれたな。リィン。」
「ヤマトさんもありがとうございます!」

やり取りが終わると、二人はバリアジャケットから制服姿にかわった。
なのはは白と青の服。
ヤマトは灰色を基調とした服に。
「……なのはさん…ヤマトさん………」
不意に口から出た言葉。
「うん……?」
「あっいえ!その!ヤマト教導官!あっ…ニ等空尉!」
素早く気を付けをして言い直す。

目の前にいるのは憧れの人。
「ヤマトさんでいいよ?みんなそう呼ぶから。」
そういいながら近づき、
「1~2年ぶりかな……背、延びたな、マイト、マリア、クリス………」
「ホントだね」
といった。
「あのっ…えっと…その………」
なぜか泣きじゃくるマイト。
「また会えてうれしいよ。」
そのマイトを撫でてやるヤマト。
反対にマリアとクリスを撫でてやるなのは
三人にとっては再開の瞬間である。

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