(ここは……デスティニーのコックピット……?)
シン・アスカは自分の愛機の中で目を覚ます。
(何で……俺……宇宙にいたはずなのに……)
シンは宇宙でアスランに撃墜されたはずだった。それなのにそこは地球の海上…。
(どうなってるんだ……それにデスティニー……撃墜されたはずじゃ……)
撃墜されたはずのデスティニーは何故か完全に整備された後のように、
最高のコンディションを保っていた。 次第に自分の身に何があったかを思い出すシン。
「そうだ、ミネルバは!?みんなはどうなったんだ……!?」
シンは慌てて友軍に通信を入れようとする。だが-
「こちらシン・アスカ、誰か応答してくれ!」
どのチャンネルで呼びかけても誰も応答しない。
(くそっ……何でこんなことに……どうすりゃいいんだよ……)
苛立ちながらも今後のことを考えていた、その時だった
「……!?」
突然の砲撃。シンは何事かと砲撃のあった方向を向いた。
(何だアレ……?MS?……にしては動きがおかしい……)
そこにいたのは傀儡兵の集団だった。
傀儡兵はシンに攻撃を仕掛けようとしている。
「くそ……何なんだアンタ達はァーーーーーーッッ!!」
仕掛けてくるなら倒す。それだけだった。
デスティニーは肩部の「フラッシュエッジ・ビームブーメラン」を傀儡兵に飛ばす。
フラッシュエッジが命中した傀儡兵は腰から真っ二つに割れ、爆発する。
だが傀儡兵は怯むこと無くデスティニーに向かって攻撃をしかけてくる。
「……ここはどこなんだ?」
シーブックは目を覚ました。
(僕は妖花を倒して、セシリーを探していたはずだ…)
シーブックが今いる場所は地球の海上。
ラフレシアとの戦闘で小破したF91が完全修復されている。
「まだ、僕に戦えって言うのか?」
シーブックは自分の心の中に話しかける…
-もちろん返事は返ってこないが
シーブックは状況を把握するため周囲を見回すが、セシリーの姿はおろかビギナ・ギナの残骸さえも見当たらない。
だがその時だった。
「くっ……!」
ネオ・サイコミュシステムがシーブックの脳に青いMSとMDのような集団が戦闘を繰り広げるビジョンが伝えられる。
「奴らとドンパチしろというのか……?」
シーブックはレーダーに目を送る。すると1キロ程離れた場所でMSの反応を観測する。
「……仕方がないが、殲滅する」
「こんな奴らにっ!!」
シンは苛立ちながらも次々と傀儡兵を撃墜してゆく。
遠距離の敵は左背部の「高エネルギー長射程ビーム砲」で、
近距離の敵には「アロンダイト」で戦うデスティニー。
だが撃墜しても撃墜しても際限無く湧いて出る傀儡兵。
「こいつら……これじゃ……キリがない……!!」
撃墜しても湧き続ける傀儡兵に焦るシン。
このままではいずれデスティニーのエネルギーが切れてなぶり殺しにされるのがオチだ。
(くそ……そんなことになってたまるか……!)
シンは邪念を振り払いアロンダイトで敵を斬り続ける。
だがその時だった。
シンの目の前に一機のMSが現れたのは。
(白い……MS……?フリーダム?)
あの白いMSに敵対する意思が無いのなら今は傀儡兵を倒すのが先だ。
そう判断したシンはガンダムF91に構わず傀儡兵を撃墜していく。
だがその時。
「なんとぉぉぉー!!」
F91は右肩に装備されており、ビームライフルより出力が高い「ビームランチャー」と両腰にあり、宇宙世紀0120年代から旧式化になっても130年代でもで最強と謳われている高出力ビーム砲「ヴァリアブル・スピード・ビーム・ライフル」。頭文字5文字取って「ヴェスバー」を構える
刹那-。
F91は2セットのビームをドカドカと発射しながら回転を始め、次々と傀儡兵を撃墜してゆく。
「おわっ……!何なんだあいつは……!?」
シンは急いで回避行動に移る。
F91が放つ閃光に当てられた傀儡兵は次々と破壊されていく。
一方シンはかろうじてランチャーとヴェスバーの一斉掃射から逃れた傀儡兵を撃墜し、
ついに残った傀儡兵達は撤退していくのだった。
なんとか傀儡兵を退けたシンは傀儡兵を消し去ったF91のパイロットに交信を図る。
「俺はザフト軍所属のシン・アスカだ。アンタは?」
(ザフト軍だと……?)
シーブックは聞き覚えの無い組織名に一瞬混乱する。
「おい、アンタ、聞こえてんのか?」
「……俺は……クロスボーン・バンガード(以下、CV)所属の、『キンケドゥ・ナウ』だ」
こんな得体の知れない所で初対面のMS乗りに本名を名乗るのは得策では無い。セシリーがベラ・ロナと名乗っていたようにシーブックも偽名を使う
そう思いシーブックは閃いた名前を名乗る。
「CV?連合軍の組織か?」
CVなんて組織少なくともザフトでは聞いたことの無いシンはキンケドゥ(シーブック)に問い掛ける。
「その質問に答えることは出来ない。それより今は何年だ?」
シーブックはシンの質問を遮り逆に質問する。
「な、何だよアンタ……。今はCE73年だろ」
(CEだと……?どういうことなんだよ?…)
シーブックは黙りこみ、考える。
すると
「おい、キンケドゥ!さっきから一体何なんだ!」
とシン。
「どうやら俺はこの世界の人間では無いようだ」
「はぁ?何言ってんだアンタ?」
シンはキンケドゥ(シーブック)に近付こうとした、その時だった。
F91とデスティニーの間を桜色の閃光が走る。
(何……!?)
「今度はなんなんだ!?」
シンとシーブックは砲撃の方向-デスティニーとF91の上空を見る。
そこにいたのはまだ小学生くらいの少女二人と、緋色の髪の毛に犬のような耳をはやした女性だった。
「な……!?人が……浮いてる……!?」
と、驚愕するシン。
キンケドゥも内心では驚いているが言葉には出さない。
少女達は何か話しているようだ。
「どうする?あれって傀儡兵かな?」
「でも何か話してたみたいだよ?それに傀儡兵にしてはなんかロボット臭いし……」
本来なら傀儡兵がいるはずの場所にロボットがいる。なのは達にとってこんなことは始めてだった。
「じゃあ、私が交信してみるよ」
と、フェイト。
フェイトはシン達に接近する。
「なんだよコイツ!?なんで浮いてんだよ!」
(……珍しいな)
「おい、キンケドゥ!アンタ何で落ち着いてられるんだよ!」
「少なくとも奴らは敵ではない。サイコミュがそう言っているんだ」
「はぁ?」
シンにはキンケドゥの言っている意味がさっぱりわからなかった。誰だよサイコミュって。
「私は時空管理局嘱託魔導師フェイト・T・ハラオウン。あなた達の目的は?」
フェイトは二機のMSに話しかける。なのはとアルフは少し離れた場所でフェイトを見守っている。
「目的も何も、俺達も気付いたらここにいたんだ」
とシン。
(この男も気付いたら飛ばされていたのか……)
「恐らく俺達はこの世界の人間では無い」
ヒイロも自分の予測を述べる。
「……わかりました。では、武装を解除して私達と一緒に来てもらえますか?」
フェイトは二人に言う。
だが。
「ふざけるな!何なんだアンタ達は!?何が魔導師だ!ここが別の世界だなんて信じられるか!」
これはオーブ軍あたりがザフトの新型MSであるデスティニーを狙った巧妙な作戦だと思ったシンは
フェイトに叫ぶ。
「じゃあ実際に魔法見たら信じられるんじゃない?」
白い服を着た少女-なのはが言う。
「魔法!?ハッ、そんなもんあるわけないだろ?」
次の瞬間、なのはのレイジングハートから桜色のビームが放たれた。
「な……!?」
驚愕するシン。
「信じてくれましたか?」
「了解した。だが軍事機密のためにガンダムを渡す訳には行かない」
とシーブック。
「ガンダムって何かな?」
「さぁ?」
アルフとなのはは聞き慣れない単語に混乱する。
フェイトはシーブックの言葉に少し安心した。ガンダムとは何の事かわからなかったが。
「……わかりました。では転送します……」
「お、おい、ちょっと待て、俺はいいなんて一言も……」
とシンは言いかけるが、次の瞬間、デスティニーとF91はその場所から消えていた。
時空間航行艦アースラ内
「つきました。ここは時空管理局の戦艦アースラのドックです。」
フェイトはデスティニーとF91に向かいそう告げる。
「な…!?さっきまで海にいたのに……!?」
「これが魔法というものか……すごいなぁ。おとぎ話でしか聞いたことないのにな」
突然転送され驚きを隠せないシーブックとシン。
二人はMSから降り、艦長の前に連れて行かれる。もちろん手はバインドで拘束されているが。
「あなた達があのロボットのパイロットね。私はアースラ艦長、リンディ・ハラオウンです。
あなた達、名前は?」
「シン・アスカです」
「……キンケドゥ・ナウだ……」
二人は名を名乗る。シンは相変わらず嫌味な態度だし、シーブックに至っては偽名だ。
「シン君とデュオ君ね……。あなた達は何がこの世界に来た目的は?」
「気付いたらこの世界にいました」
「俺も同じです」
「……わかったわ。ではあなた達の世界のこと、教えてもらえるかしら」
リンディの質問にシンは答えた。
自分はCE出身であること。CEではザフトと連合の戦争が続いていること。
戦闘中にいきなり飛ばされたこと。
「だいたいわかったわ。つまりあなたはそのMSでの戦闘中、この世界に飛ばされてきたのね?」
「はい。そーです。その通りです」
「……あなたは?」
だいたいの事情を聞いたリンディはシンの態度については後回しにし、キンケドゥ・ナウの世界について質問する。
ヒイロも自分の世界について話す。
自分はシンとは別世界、宇宙世紀から来たこと。
宇宙世紀では第二次ネオ・ジオン抗争、すなわちシャアの反乱から30年ぶりに戦争が発端。でもあともう少しで停戦を迎える。
戦争を起こした張本人を倒して、友人を探していた。
友人のMSについていた花を発見するものの、突然飛ばされたこと。
「なるほど。あなはは戦争が終わって平和になったけど、
お友達を探している途中でこちらに飛ばされた訳ね。そのお友達は?」
「こちらの世界に来た時すでに奴の姿は無かった思います」
「そうなの……わかったわ。時空管理局はキンケドゥ君のお友達を捜し、
あなた達が元の世界へ帰れるように協力するわ」
リンディの言葉にシンとシーブックは少し安心する。
(セシリー、もし君がこの世界に飛ばされていたのなら俺が助ける!)
とりあえずこの世界にいる間シンとヒイロはフェイトとはやての家に居候することとなった。
「じゃあキンケドゥ君は八神家、シン君はハラオウン家で生活してもらいます。いいですね?」
「はいはい。わかりましたよ……」
シンは半ば諦め気味で返事を返す。
「了解しました」
キンケドゥも仕方がないといった感じで了解する。
ちなみにシーブックは名前だけではなく、レシスタンスやCV、
実はCVではことをリンディに伝えていないことが多い。
艦長室から出たところで待っていたのはフェイトとなのは、それにクロノという少年だった。
「私はフェイト・T・ハラオウン。改めてよろしくお願いします」
「私は高町なのは、よろしくね。」
「僕は執務官クロノ・ハラオウンだ。」
三人はそれぞれ事故紹介をする。それにつられてシンも名を名乗る。
「俺はシン……シン・アスカだ」
「……」
「君は?」
クロノはシーブックに尋ねる。
「キンケドゥ・ナウだ。よろしく」
正直シーブックはこれ以上名乗りたく無かった。
その場しのぎで名乗った名前なのに、どうやらこの世界にしばらくいるハメになりそうだからだ。
かといって今更本名を名乗るつもりも無いが。
「シン、キンケドゥ、もう聞いているとは思うが君達にはこの世界で生活してもらう。
シンは僕の家、キンケドゥははやての家だ」
「わかったよ」
「わかった」
クロノに言われ返事を返す二人。
「はやては今ここにはいないが行けばわかるだろう」
クロノがシーブックに言う。
挨拶を済ませた後、なのは達と雑談し、シーブックは八神家へ、
シンはフェイトと共にこの世界の家へと帰宅するのだった。