第04話【混迷する若者】

Last-modified: 2009-03-20 (金) 11:30:28

「艦長!!ヤマト君が一人の少女と戦っています!」
「ッ!?どういうこと?」
端末にうつされているヤマトのバイタルとデバイスコンディションが異常をきたしていた。
「わかりません。しかし、彼女を捕獲しようとしています。」
「じゃあ、もしやヤマト君…。」
(あれはヤマト君が探しているメイさんなの?そして説得?)
とは口に出せなかった。
捕まえて、主の居場所を突き止めなければ意味がないのだ。
「クロノ執務官は?」
「闇の書を所有中の者を追い詰めましたが…、現在は何者かと交戦中。」
リンディがクロノの写っているモニターに目を向ける。仮面をつけた男とクロノが対峙しているところだった。
「まずいわね。とにかく、ヤマト君を止めて、ユーノ君に連絡!!」
「はい!!」

「(はい、なんとかやってみます。)」
エイミィからの指示を受けたユーノはヤマトのサポートに向かう。
「フェイトはなるべく、剣の人を押さえてて!
(それから、なのはは鉄槌の子を!アルフも、そのまま相手をひきつけてて!)」「(うん、わかった。)」
「(あいよ!!)」
「ユーノ、気を付けて!」
「うん、フェイトも…無理はしなくていいから。」

「俺に話してくれ!!なんでこんなことをするのを!」
「話したら、ヤマトやそこの関係者に傷つくから!!」
ヤマトのライフル・ロングサーベルモードが空を切り、ビルの床に突き刺さり、床を破壊する。
「そんな!!」
フォルティスによる射撃。しかし、ヤマトの一閃により、脆くもかきけされてしまう。
「クロノやリンディさんに言ってくれればこちら協力してくれることもあるのに!!」
特攻をしかけるヤマト。
『サーベルモード』
迎え撃つメイ。
緋と蒼の二つの魔力が反応し、疾風や雷光が走る。
だが、ヤマトのゼータスタイルは単調だった。銃から発生した魔力刃のみなので、メイにとってそれは反撃のチャンスであり、右のサーベルでビームライフルを破壊して、左のサーベルで突きを繰り出す。
狙いはライフルそのもの。
これで決める!!
『バイオ・フィールド』
しかし、メイは突きを繰り出し、直撃するものの。ヤマトの体から出る闘志でサーベルを弾かれて、ヤマトの蹴りが先にメイを捉え、そしてそれは疲労しているメイには十分な一撃だった。
意識が飛び、飛翔魔法を維持出来なくって、落下を開始する。
『ファンネルケージ』
背中のフィンファンネル五機をメイの周囲に配置し、ピラミッド型のケージが完成する。
「捕獲する!」
「ストラグルバインド!!」
「ッ!?」
ヤマトの体に緑色の紐状の魔力が巻き付き、ピラミッドは消え、霧散した。
「ユーノ!何をする!!もうちょっとで…!」
「まって、ヤマト君、落ち着いて!捕獲は分かるけど、自分を見失わないで!」
「メイの捕獲のことで頭がいっぱいだった…ありがとう」
ユーノの言葉で静止をするヤマト。

同じころ、落下を続ける。メイをシグナムが抱きとめていた。
もちろん、その場にはフェイトもいるのだが、フェイトは攻撃せずに、二人を見守っていた。
「大丈夫か?一条寺メイ。」
返事はなかった。どうやら軽い脳震盪のようだ。
その時、シャマルからの念話が入った。
「(闇の書の力を使って、結界を破壊します。)」
「(わかった)」
シグナムは了解の返事をして、フェイトに向き直る。「悪いな、もう少し戦いを楽しみたいところだが…、どうやら、時間のようだ。この勝負は私が預かる。私の名はシグナム、闇の書を守護する騎士だ。そして、炎の魔剣レヴァンティン。お前は?」
「時空管理局嘱託魔導士フェイト・テスタロッサ。この子はバルディッシュ。」凄まじい轟音がなり響く。「直撃を喰らえばただでは済まない。守ってもらえ。」
そう言い残し、シグナムはメイを抱えたまま飛び去った。

「フェイト!なのは!こっち!」
ユーノがフェイトとなのはを呼び、アルフと二人がかりで防御魔法を展開し、闇の書による魔法攻撃を無事にしのいだ。

「ヤマト君、よくがんばったね」
今は、なのは、フェイト、ユーノ、アルフ、クロノも帰還し、ミーティング中だった。
「まぁ、姿を見れただけで十分です。」
ヤマトは言った。メイ捕獲のことで頭がいっぱいで周りのことは少し気にしていなかった。
リンディは彼女が無事、ヤマトなりに頑張ったと褒めて、ミーティングの解散を指示する。
「フェイトさん、ヤマト君は先に家に戻っててちょうだい。私はまだ仕事が残っているから。」
「はい。」
「分かりました」
2人は返事をして部屋を後にした。
「メイは敵だけど、無事で良かった…結果オーライかな」
ヤマトは微笑んだ。
「ヤマト…」
「ヤマト君…」
なのはとフェイトの顔は少し複雑だった。

転送ポートまでをなのはとフェイトと通路を歩く。
ヤマトはメイ捕獲から頭を離れ、普通にした。世間話や学校の話をしながら、リンディに借りたマンションへ向かった。

「一条寺メイ、大丈夫か?」
目を覚ますと、そこはメイが寝泊まりしている寝室だった。
「…、私は…どうして?」
「一条寺ヤマトにやられたみたいだな。」
「そう…ですか。また…。」「また…?」
シグナムが顔をしかめ、聞き返す。
メイはベッドから体を起こし、自分が知ったことをシグナムに話す。
「今、シグナムさんが言ったヤマトは私と共に同じ部隊に入っていた人です。」
すると、部屋のドアが開き、シャマルが入ってきた。「メイさん、起きて大丈夫何ですか?」
「あっ、はい。」
「シャマル、主には何て伝えたんだ?」
「シグナムと稽古中に脳震盪を起こしたって伝えときました。」
「…、酷い言われようだな。
それで、一条寺ヤマトはなぜ、奴がそうだとわかった?」
「私とヤマトは双子なんです。私が妹でヤマトが兄なんです…。私はヤマトを想っていましたし、ヤマトも私を想っていました。」
「兄妹想いなんですね?」
シャマルが聞いた。
「かも…しれませんね。統合世界は戦争中でいいコンビネーションを見せていました。」
「しかし、こっちの世界に来ていたとはな。きっかけはやはり、MSとかいうもののぶつかり合いか…。」
「みたいです。…、ところでシグナムさん、シャマルさん。聞きたいことがあるんです。」
「なんだ?」
「なんですか?」
「何で…、管理局とか言う機関が私たちを狙ってきたんですか?
私は、この数日、シグナムさんや、ヴィータちゃん、ザフィーラさんとリンカーコアを集めるために、変な生き物と戦ってきました。あなたたちは、リンカーコアを集めてどうするつもりなんですか?」
その質問にシャマルは動揺を隠せなかったようで、落ち着きがなくなり、おろおろしていた。
一方、シグナムは平然とし、凛とした声で答えた。
「管理局が狙っているのは、闇の書だ。」
予め聞かれることを予想していたのか、シグナムは手にしている本をメイに見せた。
「闇の…書?」
頷くシグナム。
「しかし、この闇の書はまだ完成していない。」

シグナムがパラパラと本を捲ると、途中から白紙になっていた。
「リンカーコアを吸収し、対象者の魔力から新たな魔法を書きしるし、特殊な魔法があったならそれを記録する。用は魔法の図鑑みたいなものだな。もちろん、完成すれば、記録された魔法は使用できる。」
「完成させて、何を…?」
「主は足が悪いだろう?足が悪くなったのは闇の書のせいだ。完成させれば主の足は、闇の書の力により、直るだろう。
元通り、歩くことも出来るようになる。」
「私達のせいなんです。はやてちゃんの足が悪くなったのは…。」
シャマルが上擦った声で言った。
「闇の書は、主を選ぶ。今回は主にはやてを選んだ。そして、主はやてと幼い頃から共にあった闇の書は、主はやての魔力を少しずつ、これまでずっと魔力を奪ってきた。やがて、それは主の足を蝕み、足を動かすことが…。歩くことが出来なくなった。」
「その影響は今も…、続いてるんですか?」
シグナムもシャマルもただ頷くだけだった。
「はやてちゃんは今までのマスターとは違って、私達を道具の様に扱ったりしませんでした。
人じゃないのに、人として接してくれたんです。だから…助けてあげたいんです。
病院に行ってもどうにもならなくて、私達に残された、これが最後の方法なんです。」
必死に訴えるシャマル。メイには返す言葉が見付からなかった。代わりにでる言葉。
「このままだと…はやてちゃんはどうなるんですか?」
「さぁ、だが、ロクなことにはならんだろうな。」
シグナムの声のトーンが落ちた。
「闇の書に選ばれてしまった…、運命なんでしょうね。」
とシャマル。
守ってあげたい。助けてあげたい。メイはそう思った。まだはやては九歳だ。なのに、こんなに幼いときからこうなることが、この理不尽な運命が決まっているなんてことがメイには許すことが出来なかった。
誰だって、限界が決まっているなんて思いたくない。運命で未来が決まっているなんて思いたくない。学生の時にモビルスーツに乗ったのは運命もしくは何かの成り行きなのか?
未来(あした)がほしい。決まっていない、まだみたこともない未来(あした)がほしいはずだ。はやてにも、シグナムやシャマル、ヴィータ、ザフィーラにも、それは人に限ったことではない。現にこの三人と一匹がそうではないか。
頭を垂れているシャマルとシグナムにメイが言った。「まだだ、まだ終わらんよ。クワトロ・バジーナ大尉が言っていた言葉」
しっかりと前を向いたメイの目にはなにがしかかの決意が込められていた。

「こっちでいろいろと調べた結果、一人を除く四人は人ではないことがわかった。」
空間に写るモニタにシグナム、ヴィータ、ザフィーラ、シャマル、メイの姿が写っている。それを見ながらクロノは考え込む。
「人じゃないって言うと…、私…みたいな?」
フェイトが言った。
「馬鹿をいうな!」
クロノが怒ったように声を荒げる。
リンディもそれに続く。
なのはも…、ただヤマトだけは驚いていた。
「何回も検査してちゃんと結果がでてるだろう?二度とそんなことを言うな。」
「クロノの言うとおりよ、フェイトさん。
あなたは、ただ生まれ方が他の人とちょっと違うだけだわ!」
「ご、ごめんなさい。」
「どういうことなんです?」興味を示した。ヤマトが口を挟むとクロノに一喝された。
「君は、命令違反を侵してるんだぞ?そのせいで、闇の書の主に関する情報を手に入れられなかったことを忘れるなよ。それに、他人の過去に首を突っ込むもんじゃない。」
「あなたにそんなこと言われる筋合いはない。、闇の書を前にして逃したんでしょ?」
「なんだと?」
拳に力を込めるクロノ。
「やめなさい!クロノもヤマト君も!!ヤマト君、あなたは協力者でしょう?協力者になった以上、命令には従いなさい。」
咳払いをしてから、リンディは続ける。
「そう言えば、まだちゃんと理由を聞いてなかったわね?命令を無視した理由を…。答えてみなさい。」
「彼女を捕まえて、説得をしたいからなんです!」
「そう言えばヤマト君は彼女を探していたわね」

「だが、実際に君が捕まえようとした子は彼等、ヴォルケンに手をかしてただろう?だったら分からないんじゃないのか?」
「そ…、それは…。」
「ほら見ろ。言わんこっちゃない。」
クロノに言い負かされるヤマト。
「なんだと…」
ヤマトは席を立つ。しかし、フェイトに袖を掴まれ、また座り直した。
「これからは勝手な行動は慎むように。わかったかしら?ヤマト君。」
「了解したであります。」
ヤマトは敬礼しながら返事をする。

ヤマトは再び席を立ち、自分の部屋に閉じ籠ってしまった。
「初めて見た時は冷静に見えたけど、感じ悪いな。あいつ。」
クロノが言った。

ヤマトはベッドに仰向けに寝転がり、天井を見つめていた。
天井の模様の数を数えては、分からなくなり、また最初から数えなおす。それを何度繰り返しただろう。
分からなくなったころに、ドアがノックされた。
ヤマトは一度だけ、ドアに目をやり、それを無視してまた天井の模様を数え始めた。
「入るけどいいか?」
クロノだった。
部屋のドアをあけ、中に入ってくる。
「悪かった。さっきは言いすぎた。ごめん。」
「僕もだ。失言なことを言った挙句、失礼な事をした。心から大変お詫び申し上げている」
何処まで数えたか分からなくなり、再び天井の模様を最初から数え始めるヤマト。クロノは一言言って、ヤマトの部屋にいたが、やがて出ていった。
「何をやってるんだろう…、僕…。ブライト艦長の前ではそんなことはしていないのに…後でリンディさん達にも謝っておこう」
ヤマトは起き上がり、コートを着て部屋を出た。
リンディ宅のドアをノックする。
「どうぞ、どこかへお出かけ?」
「そうですけど…先にリンディさんに謝っておきたいことがありまして…先ほどのミーティングではあんなことを言ってしまってすみませんでした」
ヤマトは心をこめて謝罪をして、それを見たリンディは誰だってそう事はあると言われた。クロノもヤマトと同じ行動をしたことがあった。
そうそう話すとヤマトは反抗期なのでは?と言った。
「それもそうね」
「じゃあ、行ってきます」
ヤマトはこう告げ、リンディ宅を後にした。

特に行く当てもなく、街をさ迷う。
雪がパラつき、街はそれに合わせたかのようなイルミネーションを点灯させていた。
途中、ふらふらとコンビニにより、雑誌を立ち読みし、それに飽きると、またふらふらと歩き出した。
寒かった。
(もう帰ろうかな…)
手袋はつけていないので両手をポケットに突っ込んで歩く。
何も考えずに歩いていくうち、公園に着いた。
ブランコに腰をかけ、空を眺める。
星は見えない。
外灯のせいか、とも考えたが、雪が降っているのだから星が見えないのは当たり前かと思い直す。
「メイ、半蔵、雪代さん、みんな…。」
意味もなく言葉にしてみる。それは白く濁り、やがて空気に溶けこんだ。
「ここにいたんだ…。」
声のした方をみるとなのはだった。
近くにはフェイトもいた。
「風邪…引くよ?」
「かもね…。」
三台あるブランコの内、真ん中にヤマト、左になのは、右にフェイトが座る
「昔の私の話、聞きたい?」
「別に…。聞いても聞かなくてもどっちでもいいし、さっきはちょっと気になっただけで、問いつめるつもりはなかった。」
ヤマトはブランコを足を使って前後に揺らす。
錆び付いた鉄の音がなり響いた。
「プレシア・テスタロッサ。これが、私の母さんの名前。」
フェイトは静かに、記憶をたどりながら、自分の過去をヤマトに話始めた。

プレシアにはアリシアと言う娘がいたこと。そしてとてもアリシアをプレシアが可愛がっていたこと。
ヤマトはブランコを揺らすのをやめ、フェイトの話に耳を傾ける。
フェイトは淡々と話を続ける。できれば思い出したくないからだ。
「もういい…」
表面をなぞるようにして、過去を話す。
やがて、事故でアリシアが死に、プレシアは名誉を剥奪され、汚名を着せられて姿を消したこと。
アリシアの死を受け止めることが出来ず、生き返らせようと研究を開始したこと。
その過程で自分が産み出されたこと。
「産み出された…は正しくないのかな?」
自嘲気味にフェイトが笑った。
ヤマトはフェイトを無言で見つめる。
さらにフェイトは続けた。自分はアリシアとは外観だけで、中身は似ていなかったこと。
プレシアに従順だったこと。笑って欲しくて、願いを叶えてあげたくて、ジュエルシードを集めたこと。
なのはと出会い、戦ったこと。
何度も、何度もなのはが自分の名を読んでくれたこと。
そして、プレシアは最後まで自分を娘と認めてくれなかったこと。
笑いかけてくれなかったこと。
そして…。
「大体、こんなところ…だね。」
「ヤマト…。」
「フェイトちゃん…」
「だからさっき、自分が人じゃないっていったのか…。」
なのははフェイトに近づき、彼女を慰める。
「次はヤマトの番だよ。」
「えっ何?」
「ヤマトも、何かあったんだよね?」
なのはとフェイトにじっと見つめられるヤマト。「……。と、とりあえず、帰ろう?風邪引くよ、2人とも。それにお腹が空いたな」
「えっ?う、うん。」
「そうだよ、フェイトちゃん。」
はぐらかされたと、思いつつも、フェイト、ヤマトは途中でなのはと別れ帰路に着いた。

PM9:00八神家、キッチン
学校そしてバイトから帰ったメイは一人で鍋を食べていた。はやては月村すずかという友達の家に泊まりに行っているらしい。
メイの行っている学校はヤマトが行っている学校と同じだか、女子部である。下校時の帰路にはヤマトと鉢合わせの時もあり、互いは言葉を一度も出さないですれ違う。
(たまに下校時の帰路で見かけるヤマトと一緒にいる2人の女の子は誰だろう。1人は戦って知っているけど)
なのはとフェイトのことである
シグナムはお風呂に入っていて、ザフィーラは絨毯の上で丸まっていた。
シャマルは居間でアイロン台を出し、洗濯物にアイロンをかけていた。
ヴィータはメイの正面に座り、アイスを食べている。「メイさぁ…。」
野菜ばかり残った鍋から、長ネギをお椀によそっているメイにヴィータが話かけた。

「何?ヴィータちゃん。」
「カートリッジ使いすぎ。」さっきの戦いを思い出す。合計八発。シグナムは一発、ヴィータは二発しか使っていなかった。
「えーと。」
口に運びかけていた白菜をお椀に戻す。
「…ごめん。」
「まぁ、あのテクニックで、高町何とかの魔法から助かったからいいんだけどさ。」
「なるだけ、押さえるよ。」すると、黙々とアイロンをかけていたシャマルが顔を上げ、
「じゃあ、メイさんもカートリッジ造るの手伝ってもらえます?」
そういいながら、アイロンのスイッチを切り、メイとヴィータの元へとやってきた。
「えっ?」
「作り方は私が教えますから…。」
棚からコップを取り出して、メイが出しておいたお茶を注ぐ。
「すみません。」
「別に、責めてるわけじゃねぇって。あんたのお陰で、助かったのは事実だし…。認めたくねぇけど。
闇の書だって、今回使っちゃったけど、戦闘要員が増えたんだ。蒐集速度は格段に上がるはずだし…。」
「ただ、カートリッジはシグナムもヴィータも使うものなんで…。」
「分かりました。じゃあ、シャマルさん。お願いします。」
「ところでお前さぁ、野菜ばっか食べてるけど、肉とか食べないのか?」
先ほどからアイスを食べながらメイの食の進め方を見ていたヴィータは素直な疑問を口にした。
「…てか、この鍋、野菜しか入ってないよ?」
メイも素直に答えた。
「まぁ、肉団子は私が全部食べちゃったんだけど…。蟹とかまだあるじゃねぇ?」
「蟹なら私が…。」
小さく手をあげるシャマル。
「でもまだカキがあると思いますよ?」
ゴホンッ!
居間から聞こえてくる咳払い。メイ、ヴィータ、シャマルの三人の視線がザフィーラに向けられる。
「すまん。我が…。だが、まだ海老があったと思うが…。」
鍋の中をみてみると、海老らしきものは何も残っていなかった。
「一条寺メイ、すまない。海老は私が…。」
廊下にめんする扉をみると、タオルを片手に、風呂に入ったせいだろう。頬を染めたシグナムが立っていた。
「えと…気にしないでください。居候の身だし、野菜は体にいいしね。」
夜中にお腹空くだろうなぁ、などと考えつつ、メイは再び箸を進めるのであった。

マンションへの帰り道を歩くヤマトとフェイト。
「そう言えば、フェイトはさっき、自分が人じゃないって言ってたな?」
「うん…。」
「造られた人間だって…。」「うん…。」
「けど…、だけどそれって僕のいた世界だとそう珍しいことでもない。」
「それは…どういう意味?」
「僕がいた世界では、そのフェイトの母さんがやったようなことが一般化されてたんだ。
もちろん、魔法なんて使えないから、そこは化学技術になるんだけどな。それに、いくらクローン人間を造っても同じ人間になるとは限らない。記憶の植え付けなんてことも出来なかった。」
「そうなんだ。」
「あぁ、僕はクローンとは違うけど、遺伝子操作でつくられたんだ。髪の色や目の色、学習能力や運動能力だって一般人よりも遥かに高い。死ぬような病気にだってかからない…。僕がいた世界では、僕みたいな人のことをコーディネイターって言うんだ。強化人間にニュータイプ…」
「後の二つは何なの?」
フェイトは二つの用語に興味を示している。
「ニュータイプは…(アムロさんに聞けば早いけど)一言でいえば進化した人類。それじゃなかったらナチュラルやオールドタイプは凡人な人間になるかな。
強化人間は精神操作や薬物投与でニュータイプやコーディネーター並の能力を得たオールドタイプ若しくはナチュラル。でも精神不安定や暴走するときだってある。」
「すごいんだね、ヤマトは。」素直に感嘆するフェイト。「だから…。人じゃないなんて言うなよ。自分の為にも、俺たちの世界の奴らの為にも…。そのことは禁止」
「うん…。ごめんなさい。」

そーっと玄関のドアを開けるヤマト。
「リンディさんとクロノ…いる?」
「いや、大丈夫だ。」
廊下に、リンディもクロノもいなかった。
今は午後10:30過ぎ、ヤマトはともかく、フェイトは見付かれば怒られるだろう。と言うわけで、泥棒のようにコソコソと家の中を確認しているのだ。
リビングの方に明かりはついているが、気配はない。さっと、家の中に入り、フェイトが音を立てないようにドアを閉め鍵をかけた。「じゃあ、私、明日学校だから…。」
「あぁ、悪かった。心配かけて…。僕も学校だし」
フェイトは頭を降ってそれを否定し、自分の部屋に戻ろうとして、ピタッと動きを止め、ヤマトを指差す。
「ん?」
ヤマトは意味が分からず、フェイトの人指し指を見つめるばかり。。
「ヤマト君、私たちには何も言うことないのかしら?」フェイトが指したのはヤマトではなく、その後ろで仁王立ちするリンディに向けたものだった。
「心配したんだぞ?二人とも部屋にいないし…アルフも。靴箱を除いてみたら靴が二足なくなってるし…。」
仁王立ちしたリンディの後ろからクロノが出てくる。
「ごめんなさい…。」
フェイトは謝った。
この後、フェイトは明日学校があるので床につくことを許されたが、ヤマトは一時間、リンディとクロノから説教をうけ、さらに態度に関すること、命令違反に逆らったことに対するきちんとした理由を言うまで寝かせてもらえなかった。
「トホホ、僕も明日学校あるのに……」

翌日、日が上る前。
部屋のドアをノックする音でヤマトは目を覚ました。
「…ん、ふぁ~い。どうぞ」

「ヤマト、学校があるだろ。」
慌てて、ベッドから抜け出し、部屋着から外出用の服に着替える。
「しまった!訓練はイメトレでする」
目覚ましをセットせずに寝てしまったらしい。
「朝御飯食べていくから、ゆっくりでいいよ。」
「あぁ。」

居間に行くとすでにリンディが早起きして朝食を準備してくれていた。
「おはよう。ヤマト君。」
「おはようございます。」
昨日の命令違反の理由は、前にいた世界で、味方だったということでなんとか言い逃れることができた。
リンディもクロノもそこは理解したのか、あるいは異世界の事情に口を挟むべきではないと判断したのか、納得してくれた。
「それはわからんでもないが、とにかく、次からはちゃんと命令には従うように…。」
とクロノがまとめて、説教はお開きとなった。
「じゃあ、フェイトさん、携帯電話は学校帰りでいいのかしら?」
「あっ、はい。お願いします。」
申し訳なさそうにフェイトが言う。
トーストにスクランブルエッグ、ベーコンに野菜サラダを机の上に並べリンディも席につく。
「いただきます。」
「「いただきます。」」
三人は箸をとって朝食を食べ始めた。

『シュランゲフォルム!!』『ハイマットモード!』
渦を巻く刃の蛇の中心をヤマトはスルリと抜け、ライフル一発の弾丸を消費する。
魔法陣を展開し、自分の両腰の脇に独特の音を発っしながら紫電を伴った青い魔力が発生する。
『バッセル』
バシュッ!!
と一直線にシグナムを目がけ、シールドから超高速でブーメランが撃ち出された。
シグナムはそれらを防御障壁でガードしてみることにした。三つの円を繋ぐ三角形の紫色の障壁が展開され、バッセルが命中し、炸裂した。
障壁の上からであるにも関わらず、衝撃が体を駆け抜け、無理矢理十メートルほど後退させらる。
しかし、魔力ダメージはない。
「よし、やめだ。」
「はい。」
メイはゆっくりと降下し、着地する。
「今の魔法は多用できるな障壁の上からでも対象にダメージを与えることができるようだ。最も、魔力ダメージは与えられないようだが、障壁がなければ、相手を吹っ飛ばすことも可能だろうな…。」

今回も偏狭の世界までシグナムと一緒に転移し、結界を張ってもらってその中で魔法の訓練をしてもらっている。
大方の基本を習得し、独自に応用までしているヤマト。あとはデバイス、ナイトジャスティスが習得している魔法を一通り使ってみて、どんな魔法なのか、どんな効果を持っているのかを確認する作業を行っていた。
「大丈夫ですか?」
シグナムがフッと笑う。
「障壁の上からならそんなにダメージはない。心配するな。
さて、そろそろ引き上げるか。
主が午前中には帰ってくる。迎えてやらんとな。メイは学校だな」
「はい。」
「それから、明日からはザフィーラもお前に稽古をつけてくれる。」
「ザフィーラさんが?」
「あぁ、お前、前回、ヤマトに負けただろう?それに、どうも接近戦になると力負けしたり、汗って攻撃したりするところが目立つ。
だから、私が剣の使い方を教え、ザフィーラが接近戦でお前と模擬戦闘を行ってくれる。
そこから、私がお前の弱点を見つけ、補う対策を施す。
管理局のことだ。また、交戦することもあるだろう。テスタロッサやヤマトは接近戦では脅威のスピードを持っているし、ヤマトに至ってはパワーも射撃脅威だ。」
「はい。それは、身を持って体感しました。」
「ならば、全力で稽古に励め。勝つために…。」
「はい…。」
結界を解除し、二人は八神家へと戻り、メイは学校に行く支度をした。。

「ヤマトはいくつ、射撃魔法を使える?」
まだ半分しか太陽が顔をのぞかせていないなか、マンションの屋上でフェイトとヤマトは基礎訓練を行っていた。
大方の基礎は終わり、今は自分の使える、またはデバイスが習得している魔法の確認を行っていた。
「射撃や射撃にちなんだ魔法はいっぱいあるけれど…ハイメガやフルバーストモードは砲撃として…
フリーダムのルプス、バラエーナ、クスィフィアス、ダブルゼータのダブルビームライフル、ダブルキャノン、ゼータのハイパーメガランチャー・バースト、ビームコンフューズ、ビームライフル、Hi-νのフィンファンネル、ハイパーニューバズーカかな」
「接近戦はそのラケルタとゼータでの銃剣…。」
「ハイパービームサーベル。」フェイトは暫し考え込み、
「あの人は、近・中距離タイプだよね?」
と言った。もちろん、あの人と言うのが誰をさしているのかヤマトには察しがついた。
「…たぶん。この世界では…。」
「…たぶん?」
「前の世界では苦手な距離がなかったように思う。2人一緒でオールレンジだったから」
「とにかく、遠距離は完璧として、接近戦にいろんなバリエーションを混ぜないと。私も接近戦主体だから」
「…そうだね。」
「今日、なのはに相談して、ヤマトの訓練の手伝いを頼んでみるよ。」
それだけ言うと、バスの時間だからと言って、フェイトは鞄をせおい、屋上から出ていった。
ヤマトも行く準備をして、高等部のバスが来るまで待った
「(そういうことになっちゃったんだけど…、駄目かな?)」
「(ううん、いいよ。私が模擬戦闘の相手をすればいいんだよね?)」
フェイトとなのははバスを待ちながら念話で話をしていた。
「(それで、ヤマト君が何で命令違反したのかわかったの?)」
「(ううん、わかんなかった。でも、私にはヤマトが怖い人だとは思えないんだ。)」「(フェイトちゃんがそう思うなら、間違いないよ。)」二人は顔を見合わせ、にこっと笑い、丁度やって来たバスに乗り込んだ。

「ただいま~。」
「あっ!はやてだ!!」
そう言って一番に駆けていくのはヴィータだ。そのあとに、メイシャマルが続く。
玄関までいくと、一人の女の子が車椅子を押してくれているところだった。
「ありがとう、すずかちゃん。」
「ううん、私こそ、昨日は楽しかったから、また泊まりに来てね。はやてちゃん。」
「あなたが月村すずかちゃん?」メイが声をかける。
「はい。」
「ありがとう。車椅子はもういいよ。あとはシャマルさんがやるから…。これから学校でしょ?もう七時半過ぎちゃってるし、遅れちゃうよ?私も学校だし」
「えッ!?あっはい。ありがとうございます。
じゃあね、はやてちゃん。またね!」
「うん、すずかちゃん、またな~。」
パタンと玄関のドアを閉め、鍵をかけるヴィータ。
「はやて、おかえり!」
「ただいま、ヴィータ。」
はやては、微笑み、ヴィータに答えた。
「はやてちゃん、今日は十時から病院ですよ。」
「うん、わかっとるよ。」

海鳴大学病院
メイは学校に本当の事情を連絡して遅延登校扱いで登校する形となる。

「じゃあ、私、ちょっとはやてちゃんの薬を取ってきますんで…。はやてちゃんを頼みますね。」
「分かりました。」
シャマルは処方箋をもって受付へと向かった。
「ごめんなーメイちゃん。学校に遅れてまで連れて来て」
「いいの。私も心配だから」
「はやてちゃん。」
「あっ、先生…。」
メイははやてが先生と呼んだ女性に視線を向けた。
はやてとその女性は二言、三言かわすと、メイへと向き直り、挨拶をする。
「どうも、八神はやてちゃんの担当医です。」
「あっ…どうも、はやてちゃんがいつもお世話になってます。」
ちなみに、メイとはやては遠い親戚と言うことになっている。
「シャマルさんは?」
「今は薬を取りに行ってますね。何か御用ですか?」
「えぇ、少しはやてちゃんのことでお話があったもので、では、え~と。」
「メイです。」
「メイさん、ちょっと来てもらえますか?」
「ヴィータちゃん、はやてちゃんのこと頼めるかな?」
「んっ?あぁ、いいよ。」
メイはヴィータにはやてを任せると、診察室に案内され、患者用の椅子に座るように促された。
「はやてちゃんの容態なんですが、相変わらず、足の方の原因はわかりません。一応、様々な治療を試してはみたんですが…、どれも結果がでずじまいで…。」
「はぁ…。」
「それで…、ですね。はやてちゃんに直接言おうか迷ったんですが…まだあの子は九歳ですし…。」
「はい。それで…一体何の話ですか?」
担当医はなんだか迷っているようで、しばらく無言で手元にある資料の整頓を始めたりしていたが、やがて決心したのか、重たい口を開いた。
「はやてちゃんの病気が悪化しています。
足から上…、つまり内臓、消化器ですね。そこにまで麻痺が広がって来ています。」
メイの鼓動が早くなる。
「……それで……このままだとはやてちゃんはどうなるんですか?」
担当医は首を左右に降り、「近いうちに発作がおこると思います。
先程も話したとは思いますが、現代医学では解明できない病気です。
覚悟をしておいてください。」
覚悟、その言葉が重くメイにのしかかってきた。

「大丈夫?ヤマト君…。」
ヤマトは息をきらし、大の字に戦技室中央の床に寝転がっていた。
「大丈夫…。」
ディバインシューター…、厄介だ。
なのはの遠隔コントロールによる追尾型の魔法。全包囲360度からの攻撃。避けるので精一杯で、なのはに近付いてもいいように追い込まれてディバインバスターで弾き飛ばされ、再び間合いをとられてしまう。
ファンネルとドラグーン、ビットなら幾度も避けたが、モビルスーツと生身は全然違うと感じた。
「…量産型キュベレイの全30機のファンネルも避けたのにこのザマ…。」
「今日は、ここまでにしようか?私も疲れたし…。」
「訓練の相手をしてくれてありがとう…。」
なのはがクスッと笑う。
「じゃあ、先に帰るね?もう結構、夜も遅いし…。」
「あぁ…また…。」
ヤマトは立ち上がり、戦技室から出ると、フェイトが待っていた。
「お疲れ様。」
そう言って、タオルを差し出す。
「ありがとう。」
「リンディさんが、今日の夕飯何がいいかって言ってたよ?」
「僕は…、何でもいいよ。フェイトは?」
「私も、何でもいいかな。」そんなことを話しながら二人は帰路に着いた。

深夜、八神家居間。
ヴィータ、シグナム、シャマル、ザフィーラ、メイは集まっていた。
「主は?」
「はやてならもう寝たよ。」シグナムの問にヴィータは眠たげに答えた。
無理もない、一旦はやてと布団に入ったので眠くなったのだろう。
「それで、メイ、話しとはなんだ?」
ザフィーラがメイに問う。メイは病院で聞いたことを全て話した。ヴィータには言わない方がいいかもしれないと思ったが、下手に「大丈夫だよ」とも言えなかった。
自分もかつてヤマトに安易な口約束をし、傷付けてしまったことがあったので、ヴィータには正直に話しておいた方がいいだろうと判断し、深夜にヴィータも集まるようにと言っておいたのだ。
「そうか、予想はしていたが…、浸蝕のスピードが思っていたよりも早いな。」
「はやて…。」
「はやてちゃん…。」
ヴィータとシャマルがソファに座り、うつむく。
「明日から、四人で魔力の蒐集を行う。シャマルは主についててやってくれ。一条寺メイ、ヴィータ、ザフィーラ。いいな?」
三人は返事をし、床に着いた。

「じゃあ、私は本局に行くから、エイミィ、あとはまかせるわよ?」
「はい!艦長。」
午前九時、リンディは対策本部を離れ、本局へ転移した。

「あれ?エイミィさん?」
「こんにちは、ヤマト君、って髪の毛が凄いことになってるよ?」
キッチンで買ってきた野菜やれなんやれを冷蔵庫にしまっているようだった。
なのはも来ており、ヤマトの姿をみてなのは、フェイト、アルフも笑っている。
「ヤマト、昨日は頑張ってたもんね。」
結局、なのはとの模擬戦の後、家に帰ってから、フェイトと対策を話し合い、寝るのが十一時過ぎてしまっていた。
本来なら寝過ごすはずもないが、昨日はつかれていたのか…泥のように眠ってしまったようだ。
「もう一時?気付かなかった」
「そうだよぉ、今日はヤマト君、お寝坊さんだね。」
「と、とりあえず、顔を洗ってくるよ。」
そう言って、洗面所で顔を洗い、歯を研く、髪も水を使って撫でつけ、タオルで顔をふいていると、突然警報がなった。

シグナムはヴィータがてこずった魔物の相手をしていた。ムカデのように足が何本も生えており、さらに触手も生えている。
さっきから、何度も攻撃を当ててはいるのだが、中々倒れてくれない。
自分の攻撃力が落ちてきているのだろうか?
「なるほど…、ヴィータがてこずるわけだ…。」
レヴァンティンに弾丸を込める。
しかし、その行為で生まれた僅かな隙を突かれ、触手によって絡め取られてしまった。
「ぐっ、しまった。」
魔物が容赦なくシグナムの体を締め付ける。
その時だった。
『スキュラ』
バシュ!!
と聞き慣れた声と音が響く。魔物に着弾後、炸裂し、その衝撃で魔物が一瞬怯む。
『ビームソードモード』
触手の隙間を緑の閃光が駆け抜け、一瞬にして切り裂き、シグナムの拘束を解いた。
「大丈夫ですか?シグナムさん。」
「あぁ、助かった。」

触手を斬られ、痛みに狂った魔物が暴れる。しかし、次の瞬間、
『サンダーブレイド』
言葉の意味通り、紫電を伴った金色の魔力の剣が魔物に突き刺さる。
「ブレイク!」
凛とした声が響きわたった。とたんに、魔物に刺さっていた剣が爆散し、体を破壊する。
「テスタロッサ!?」
「管理局の子か。」
シグナムは冷静に状況分析する。
自分とテスタロッサ、メイ、この中でスピードで劣るのは自分だ。恐らく、メイとテスタロッサはスピードでは互角。しかし、ハイマットモード時のメイはテスタロッサよりも早い。
だが、そうすると、メイに抱えてもらって、逃げると言う手もあるが、それはプライドが許さない。実際、メイのスピードも落ちて、捕まってしまうだろう。
メイはまだ魔法を覚えてから一週間もたっていない。戦闘経験も少ない。
ならば…。
「一条寺メイ、お前は逃げ…」
「シグナムさんは行ってください。ここは私が引き受ける。」
「お前…。」
「時間を稼ぎます。」
「すまん、頼んだぞ。一条寺メイ。」
シグナムは飛翔した。

「ここは、引いてくれないかな?」
フェイトは首を左右に振り、否定する。
「私は管理局の嘱託魔導士、そしてあなたたちは法を犯し、第一級捜索指定のロストロギアを持っています。逃がす訳にはいかない。」
「そう…。」
(近いうちに発作が起きると思います。)
フェイトがバルディッシュを構えた。
(覚悟しておいてください)蘇る担当医の言葉。
「それじゃあ…仕方ないよね…。…私は…あなたを討ちます。」
決して、撃ちたいわけではない。しかし、今は時間がないのだ。捕まるわけには、負けるわけにはいかない。
『ラケルタ・アンビデクストラス・ハルバード』
『サイズフォーム』
サーベル形態のジャスティスの白い筒が連結。互いの魔力刃から火花が散る。
そしてカートリッジを一発消費し
『ハーケンフォーム』
「ハーケンセイバー!!はっ!!」
突攻をかけながらのハーケンセイバー。光の刃がメイを襲う。
『フォルティス』
「これで!!」
撃ち出された魔力の奔流がハーケンセイバーを直撃。両者はぶつかり合い、爆散。
『ブリッツラッシュ』
不意に響いたバルディッシュの声。
太陽を背にし、空中からの縦一閃の攻撃。メイは後ろに跳躍し、そのまま飛翔する。
『ハイマットモード』
ジャスティスから合計3発のカートリッジが排出された。フォルティスが展開、銃を構え…
「同じ手は通用しないよ!」フェイトがそう言った瞬間、メイの体が設置系のバインドに拘束される。
「なんなの!?こ、これは!動けない…」
「フォトンランサー、ファランクスシフト!」
フェイトが魔法陣を展開し、巨大な魔力の塊がいくつもフェイトの周囲を取り巻く。
「前回のお…」
『ファンネル』
ジャスティスのカートリッジ左右一発ずつ消費され、薬筒が弾け跳ぶ。
背中の魔力で出来た小型兵器、計6機が一斉に射出された。「当たってぇぇ!!」
不規則な動きをしながら、フェイトヘと向かっていくそれらは尖端にリングを発生させ、8つの兵器から連続で幾つもの魔力の奔流が撃ち出される。
まるでなのはのディバインシューターを思わせる様な魔法。しかし、それとは全然異なる魔法。
フェイトは放とうとしていた魔法を解除し、ファンネルの攻撃から逃れることに専念する。
(何?この魔法。何でバインドが…!?)
『バッセル』
今度はメイが上空から攻撃を仕掛けようとしていた。ファンネルが使用者の元へと戻っていく。
『プラズマランサー』
「ファイア!!」
計8つのプラズマランサーがメイヘと向かってとんで行く。
一方、メイはファトゥムを一旦たたみ、くるくる回転しつつ降下し、プラズマランサーの間を縫って回避する。一度通りすぎたプラズマランサーが方向転換し再び発射される前に、ファトゥムを展開、
『フォルティス』
二つの緑の光弾が紫電を伴いながら発生し、超高速で発射された。

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